ケニア旅日記B

10月10日(金)
  今日は、ユキちゃんのお誕生日。ケニアの空の下で誕生日を迎えられるなんて、ほんとにラッキー。
 朝食は、ここでも卵料理を目の前で調理してくれた。オムレツには野菜(トマト・ピーマン・タマネギを刻んだもの)を入れて、スパニッシュにしてくれる。控えめな(?)私は、トマト抜きだ。嫌いなものは、しょうがない。忙しい朝食の後、なんと7:30に出発した。マサイマラまで5〜6時間の長旅らしい。しかも今日の道の一部は、すごく悪いと言う…。昨日までは、ずっとサリムさんの車に乗っていたけれど、今日は乗る車を「チェンジかな。」したので、運転手はモイガイさんだ。そのモイガイさん、運転が荒いらしく、
ドキドキしながら乗りこむ。…が、走り出すと、別に恐いこともなく、すぐに眠気におそわれた。
1回目の休憩地点の土産物屋は、店員も少なく、ゆっくり品物を見られるしディスカウントもしてくれる。色がきれいで欲しかったマサイ・ブランケットを、600シリングで買ってしまった。ここでは結構みんな買っていた。ところが、マサイマラに近づいての2回目の休憩地点の土産物屋では、ガクンと値段が上がる。木彫りの動物がお茶をしているセットの小さいものがあったので、値段をきくと、180ドルだけど140ドル(15000円以上!)にしてやるなどと、ほざいたので、アホかとぶっちぎって帰る。ここでは、みんな買わない。当たり前だ。

 スピードをガンガン上げている時、突然、ボンッ!シュ〜という音が…。モイガイさんの乱暴運転に悲鳴を上げたタイヤが、とうとうパンク。何もない赤い大地の真ん中で、車を止めて、タイヤの交換となった。こんな時にもケニアの人々は「ハクナ・マタタ。問題なぁい。」…。まっ、これもいい思い出だけどさ。

 1:00にはマサイマラのマラ・パラダイス・ロッジに到着した。ロッジに入ると、レストランのすぐ横の河には、なんと重なるようにカバの群れが!他のカバのお尻にあごをのっけて、くつろいでいた。黄色い鳥も、たくさんいてカワイイ。部屋も結構キレイで、電気の傘には動物の絵が彫ってあり、雰囲気がある。いい感じ。昼食をとった後は、のんびりと洗濯をし、くつろいだ。こういう時間がいい。

 楽しみにしていたマサイマラでのサファリドライブには、4:00に出発した。驚きの連続だった。まず、チーター。食前、食事中、食後…というシーンを3回見ることができた。特に、食事中の姿は印象的だった。子供3匹と一緒だったが、食べているガゼルの下半身はすでに形がなく内臓も出ていたが、ケニアの大地の中で見ると、それが自然の姿なのだと違和感なく受け入れられた。周りの景色のせいだろう。殺生ではなく、彼らの生活の一部である食事だから。チーターを見られて、ジョンさんも「いちにち、3回、チーター、ほんとうに珍しいです。異常です。」と漏らしていた。"異常"というあなたの言い方もすごいんですけど…。

 ライオンの群れも見た。お昼寝中らしく、あまり動いてはいなかったが、中には念願のたてがみライオンもいて興奮した。集まって眠っているところから少し離れた場所には、見張りのライオンがいた。このライオンは寝そべることもなく、しっかり頭を上げている。マングースも、まだ明るいというのに走っていた。キリンにダチョウにアフリカン・バッファローもいた。

 ロッジに戻ってシャワーを浴びてくつろいでいると、河からワニが土手にあがってきていると片岡さんが知らせてくれたので、見に行った。ワニはジーッとしていてフラッシュで写真を撮っても動かない。もしかして背中にファスナーがあってスタッフがワニ当番しているんじゃないのと疑ってしまった。

 ディナーは、カバの見えるレストランでだった。メニューは、ミネストローネ・スープ、マッシュルームホワイトソースのガーリックトースト、インド風野菜の煮こみ(3種のカレー味の煮こみを揚げパンのような薄い皮に包んで食べるもの。ライスもあった。)。

食べ終わった頃、レストランの灯りが消され、スタッフがおたまやスプーンをたたきながら「♪ジャンボ、ジャンボジャンボ♪」と歌い、ケーキを持ってパレードしてくる。前日にユキちゃんのバースデーの話をしていたので、ジョンさんが用意してくれたらしい。そして「♪ハッピバースデートゥユー♪」の合唱。感動的だった。ジョンさんは、ほんとに気のきく人だ。 その後、ケーキを食べながら「♪ジャンボ」の歌の話になると、ジョンさんは日本語バージョンにして歌ってくれた。「♪いらっしゃいませ、ケニア、私の国、問題ない、いらっしゃいませ♪…でも、問題、いっぱいあります。」。どこまでいっても、マジメなジョンさんであった。

 夕食後は、HIPPO BAR(日本語で言うと、カバ酒場!)で、カバの声を聞きながら、ワインを飲んだ。優雅な夜だった。

10月11日(土)
とうとう憧れつづけたバルーンサファリの朝だ。決してヒヒに乗るバブーンサファリではない。(わかっとるわ!)
5:00起きで、5:45出発。すごく眠いけど、ウキウキもある。辺りは、まだ暗い。ジョンさんに送られて、お迎えのウィルソンさんの車で、気球を上げる場所へ向かった。道は当然のことながら街灯もないので真っ暗で、車のヘッドライトだけが頼りだ。サバンナのど真ん中、あるある、気球が。まだ横たわった状態だ。東の空が赤く染まり始めている。朝焼けの写真を撮っているうちに、ゴオーッという音とともに火が気球の中に送り込まれている。そして、ゆっくりと立ち上がる気球。その様子を見ながら、パイロット(?)のビルの説明を聞く。カナディアンであるビルの勢いのある英語は、久々に聞いた気がする。着地する時の注意などを真剣に聞く。ビルは、本当によくしゃべる。
 気球の上がる瞬間は、"浮く"という感じ。そして、ゆっくりと上昇していく。気持ちいい。はるか下には、けもの道が網の目のように見える。ビルの運転で、高度を上げたり下げたりで、木の上をスレスレに通ったかと思うと、グーンと上がっていったりする。空では、日の出が始まった。下にマサイ族の村が見えると、こちらに向かって子供達が下から「ジャンボ!!」と叫んでいる。動物はあまりいないが、広い大地を見下ろせただけでも、ほんとうに貴重な体験だった。 約1時間の飛行後、サバンナのど真ん中、ヌーの長い長い列の真中へ降りる。風が弱いらしく、バスケットが転ぶこともなく、静かな着地だった。
そこから、朝食の場所まで、ビルの案内で少しだけれどウォーキングサファリをした。ビルの「ヌゥ〜」というヌーの声の物真似は、よく似ている。長い草の中で、違う高さの部分部分を、大きさの違う動物が食べ、その草食動物を肉食動物が食べ、その肉食動物が死んだら土に帰っていく…という自然の流れなどを、ビルから聞き、「おお〜っ。」と感動した。

 朝食は、気球を追って地上を走ってきた車によって用意されていた。サバンナの何もないところにテーブルが広げられている。まずはシャンパンを抜いて乾杯した。最高の気分で、すごくおいしい。ちゃんとシェフのフィービーが注文通りの卵料理を作ってくれる。私はここでもトマト抜きのスパニッシュオムレツ。他にはクロワッサンやソーセージ、フルーツなど充分な朝食だ。ドリンクもココアまで用意されている。

 しかし、ふと後ろを振り返って見ると、少し離れたところに、なんとマサイさんたちが、ひとり増えふたり増えと集まりだし、まるで朝市状態になってきた。こっ、恐い。とりあえず、視界に入れないように食事をする。そこへビルがオフィスボックスなるものを手に現れ、「キャッシュ オア クレジットカード?」と商談が始まった。カードと言うと、ビルはおもむろにカードをきる機械を取り出した。サバンナの真ん中で、カード伝票にサインするという経験も貴重だろう。でも、あの気持ちのいい朝食を考えると、350ドルも決して高くはない。いちおうマサイさんの朝市もサクサクとウインドゥ・ショッピングした。帰りは、またジープで動物を見ながらロッジまで送ってもらう。9時頃には着いたので、昼食の時間まで、部屋で一眠りした。
 午後は、川岸の椅子に座って、気持ちのいい風に吹かれながら本を読んだ。本を読みながら、たまにカバの「ブホォーッ」という声(息?)を聞いては河に目をやり、紅茶を飲みながら、涼む。最高の贅沢な時間だった。そうやって1時間余りを過ごし、4:00には最後のサファリドライブへ出かけた。
 インパラの群れはもちろん、またも食後おなかいっぱいのチーターの群れに出くわし、ライオンの群れにも会った。ハゲタカ(アフリカハゲコウ)は多勢で集まり、モイガイさん曰く"会議"をしている。そして何といっても、ライオンの子供!3匹いた。草むらでわかりにくいが、とってもかわいい。それからキリンを見に行っているうちに、ポツンポツンと雨が降ってきた。それからのモイガイさんは、すごかった。パラダイスに戻る道…といっても土の上なので、雨でぬかるむとヤバイらしく、ものすごいスピードで帰り道を急ぐ。
まるでラリーだ。荒れ狂い出す雨の中を、4WDでもないのに、とばす、とばす。途中、スタックしている車に出くわした。サリムさんの車もいて、雨の中をサリムさんが車から降りて駆け寄って行くのを見ると、またあの内股走り。真剣な状況なのに、つい笑ってしまった。スタックした車にはアドバイスのみ残して、こちらは急ぐ。モイガイさんが「うわあっ!」とか叫び、こちらがドキッとした途端、ガンッ!と衝撃があり、みんながいっせいにシートからジャンプさせられる。が、そこはプロのドライバー。一度も車は止まることなく、ロッジへ帰りつけた。大拍手だ。喜んでキャッキャ言いながらロッジに入って行くと、ジョンさんが先にいたが、ニコリともせず「おかえりなさい。夕食は7時半です。」…。冷静だ。冷静過ぎる。もうちょっと帰りつけたことを喜ぼうよ。
 夕食はアフリカン・ナイトだった。スタッフもみな、マサイ族の格好をしている。料理もキクユ族のものなど、いろいろビュッフェ・スタイルで楽しめる。主食のウガリは味のないこふきいもみたいで、他にも魚や芋など、わりと私の口には合っていた。とりあえず全種類少しずつだけれど食べた。食事の後、エントランスのところで、スタッフによるマサイダンスが始まる。喜んで写真を撮っていたら、手を引っ張られて、他のお客さんとともに引き込まれ一緒に踊らされてしまった。マサイの高さを競うジャンプも、ユキちゃんを筆頭に一人ずつさせられた。にわかマサイ君たちと踊るのも楽しいけれど、そばにいるので体臭がつらかった…。ちょっと恥ずかしいけれど、楽しい夜だった。