ケニア旅日記A

10月7日(火)
 日本を発ってから初めて、8時間近く…というか連続した時間をベッドで過ごした。…が、それでもユキちゃんは起きることができず、朝食をパスした。だって、起床は6時30分だもんね。 朝食のビュッフェもgood。ちゃんと目の前で注文通りの卵料理を作ってくれる。私はベーコン入りのオムレツにしてもらった。横にミニクロワッサンを添えてくれる。他には、パンやスイカやパイナップルなどフルーツを食べる。

 8:30にロッジを出発し、サファリドライブに出かけた。公園までの道の途中で、キリマンジャロがキレイに顔を出してくれた。「おお〜っ!」と感激のあまり、柚木さんがジョンさんに、「ジョンさんはキリマンジャロに登ったことあるんですか?」と聞いた。するとジョンさんは「ケニア人、山とか動物、興味ないです。」…。あ〜、そ〜ですかぁ…と、しぼむ一同であった。そら、そうやわな…。

 今日は、まずホロホロ鳥の群れやゲレヌクに会った。ゲレヌクは後足で立って葉っぱを食べていた。ヌーやシマウマ、象も見た。イボイノシシもいた。なんか、かわいい!ジョンさんは「イボちゃん」と呼んでいた。ジョンさんもサリムさんも、やはり視力がいいのか、遠くからでも動物をすぐ見つけてくれる。所々には、アリ塚がある。バッファローの群れも近くにいた。真中分けのスケベおやじのような顔だ。ヌー同士が角を突き合わせてのケンカも見た。今日は水場の方へ行ったので、緑の多い大地に点々とたくさんの動物が一度に見られた。水のある所には、鳥も集まっている。アフリカハゲコウは、顔がすご〜く汚い。他に、名前はわからないけれど、くちばしがスプーン状の鳥もいた。ホオジロカンムリヅルはカラフルで大きい。フラミンゴもいる。あちこちにアカシアの木が生えているが、アカシアは根が大きいから雨が少なくても水分を吸収して育つことができるという。
アンボセリの中で唯一、車を降りられる丘、オブザベーション・ヒルに登る。360度のパノラマに感動した。延々と緑の大地が広がっている。広い広い広い!ライフルを持ったガードの人がふたりいて、かっこいいので、こっそり写真を撮らせてもらった。

 ランチはアンボセリロッジでとった。改装したばかりらしく、すごくキレイだ。ちょっとうらやましくなってしまった。料理もおいしく、ワインを飲んだ。メニューは、豆のカレー煮、ホウレンソウのソテー、キャベツやポテトのボイル、ポークやラム、パンもバターロ−ル、ライスもある。デザートもフルーツがおいしかった。昼食後、ロッジのショップでお土産を買った。なんとなく安心に感じるが、きっと他より少し高いんだろう。それでもメゲずに値切って36ドルでせしめる。これが高いのか安いのか、よくわからない。現地の物価を知らないから仕方ないけど。

 午後は、マサイ集落を訪ねた。ひとり20ドルの入場料(?)を払えば、写真を撮ってもいいという。子供たちは人懐っこく、すごくかわいい。「ジャンボ〜!」と手をたたいてくる。観光客に慣れているようだ。カメラを向けると、勝手に並んでいる。着ているものはTシャツやトレーナーだが、砂埃で汚れまくっている。村のすぐ外の井戸で、洗濯している子供がいたので、洗っているのだろうが、とにかく砂埃がすごいのだ。
 最初のイベント(?)は、マサイさんの家訪問だ。中は狭いが涼しく、牛の皮をマットにしたベッドと石のかまどがある。家はすべて女性が作るという。枝を格子に組み合わせて、土を塗ってあるようだ。(後に聞くところによると、土ではなく
牛糞…。) 次にマサイさん女性チームによる歓迎の歌だ。写真の逆光の都合で、並ぶ場所を移動してもらったら、結果的に太陽に向くこととなり、めちゃくちゃまぶしそうだ。途中、日本女性チームも列に混ぜてもらい写真を撮るが、しかめっつらのマサイさん達の中で、サングラスの日本人だけが脳天気に笑っていた。
 次が、木で火を起こす実演だ。板の穴にロバの糞を詰め、そこに木をこすりあわせることで、火を起こすらしい。でも村長さんの腕には立派な時計もあることだし、本当はライターを使っているんじゃないの…と、疑ってしまう。そして、とうとう恐怖のマーケットタイム!!商品の並べられた机の向こうで口々に「マダァム!」「マダァム!」と呼びかけてくる。手にとったら終わりと思って、とにかく手を出さずにいる。村長まで、よってたかって動物のアクセサリーなどを売ろうとする。しかも高い。ちょっと恐怖の時間だった。
 最後に学校を見に行った。1993年に木の下で5人の生徒と始めたそう。授業中なのにいいのかと思うが、観光プログラムに組み込まれているので、きっと毎日こういうことをしているのだろう。授業は、算数、英語、スワヒリ語、サイエンスらしい。算数の授業中(足し算だった)にもかかわらず、先生の指図で歌を歌ってくれた。先生は
ニコリとも笑わない。こっ、恐い。
私たちの払った20ドルなどで、机を買ったり服を買ったりするという。生活費の安いここで20ドルは大金だろうし、村長は時計をしているし、金銭感覚がよくわからない。学校を出ると、砂嵐のように砂が吹きつける。真っ白だ。息もしにくいほどだ。マサイの人々は、私たちが車に乗りこむまで"買って買って攻撃"で来る。すごいバイタリティだ。こちらもめげずに買わない。マサイの槍を買ってくれと言われ断ると、槍を分解して一部だけでも買ってくれと言われた人もいる。すごい…。

 4:30頃にはロッジに帰りつき、ポレポレで過ごす。洗濯をしながら、部屋の前で写真を撮ろうということになり表へ出ると、いつものマサイ君がいる。写真を撮ってやると仕草で言うのでお願いすると、次は一緒に並んで写すことになった。これがいけなかった。「マサイ、フォト」と片言でお金を要求する。ふたりで「これか!」と思って、しらばっくれて「はぁ?」とか言っているのに、あきらめない。マサイ君は、とうとう布の端に包んであった自分のお金を見せてニヤニヤ。「No,Money」と答えると、腕時計をくれと来た。しゃあないと私達はボールペンとお煎餅をプレゼントした。気の弱い若いマサイ君は、腑に落ちない顔で苦笑いをしながらも、去っていった。大阪女は強かった。後で他の人たちに聞くと、みんなお金を取られていたらしい。やれやれ。マサイ族の商売っ気を見せられ続けた一日だった。

 夕食に出るときに、部屋から出て空を見上げると、そこには満天の星空があった。数え切れないほどの星。空の真中には、白い帯があり、それが天の川、ミルキーウェイかな。気持ちがキレイになるような気がする。夕食のメニューは、キッシュ、スープ、ティラピアのグリル、パイナップルフラン、紅茶。夕食後は、夜の餌付けが見られるというので、みんなでヘミングウェイ・バーに行った。10:00の餌付けの時間になると、ハイエナがあらわれ、シーンとした中で、骨をかじっているのか、それとも肉を食いちぎっているのか、ガリッカリッという音が響く。そういう音を聞くということも、すごいことだと思った。

10月8日(水)
 朝7:00、朝食をとりに部屋を出ると、マサイ君他ポーターさん達が山のようにいて恐かった。気を取り直して、朝食では、プレーンオムレツとカリカリベーコンを焼いてもらって満足。今日でキリマンジャロ・バッファロー・ロッジともお別れだ。その名の通り、庭でキリマンジャロをバックに記念写真をたくさん撮った。8:00に部屋を出発する前から、ポーターさん達が部屋の外から「はよ出ろや。」ってな感じでジ〜ッと、こちらの様子をうかがっている。暇なんだろうが、なんとなく恐い。

 そして長旅が始まった。ケニア山麓まで440kmの旅だ。ガッタガタの道を、ドワンドワンと跳ねながら行く。1.5時間で、やっと休憩。最初に行った土産物屋だった。「見るだけ。」「チェンジかな。」「みてみて。」相変わらずの攻勢だが、絶対に買わない。

 次に止まったのは、ランチのためナイロビ市内だった。椎名誠の「あやしい探検隊アフリカ乱入」にも出てくる日本食の「赤坂」だ。トイレもとっても清潔だ。久しぶりの畳の上で、焼き魚弁当を食べた。味も日本的で、魚は巨大で「ん?」と思うが、ちゃあんと大根おろしも添えられている。ちなみにジョンさんはカツ丼を箸で上手に食べていた。食べながら、みんなで話している時に、ジョンさんは「今の大統領、私、反対です。」と言う。そんなことを、こんなところで言っていいのか?!どこまでも真面目なジョンさんは、ケニアの行く末を案じているのだ。もうすぐ選挙があるらしく、本当に真剣に考えている。日本とは大違い。反省…。
 近くで両替もして、いざマウント・ケニアへ。途中休憩は、やはり土産物屋。木彫りのサイを2300シリングから500シリングに値切って買った。500シリングはダメと最初言われたものの、「じゃあ、いらない。」と、ちらつかせたボールペンを取り上げて出て行こうとしたら、「他の人には言わないで。」と他の店員から隠れて500シリングで売ってくれた。「I like this pen.I want this pen.」とタダのボールペンに執着してくれて、ちょっと胸が痛んだ。「内緒だから包めない。早くカバンに入れて。」若い女の子だったので、良心が少し痛む…。

 やっとのことで到着したマウンテン・ロッジは、特筆もののすばらしさだ。前日までの広々とした場所とは違い、かなりうっそうとした山の中にある。外観も山小屋風で素敵。ロビーの大窓には、みんな歓声を上げた。窓からは、下の沼地に象やバッファローが、いっぱいいるのが見える。すごい、すごい!

部屋もすごくキレイで、ベランダからは、やはり下の沼地が見える。シャワーを浴びた後、外を見ていると、ヒヒの群れもやってきた。レストランが、また素敵だった。雰囲気も、まるでホテルのレストランだ。メニューも、ナポリタン・スパゲティ、ビーフコンソメスープ、ラムのグリル・人参・ホーレン草・ポテト添え、デザート…と、充実。隣接するバーも、モリイノシシの剥製があったりと、いい感じだ。食事のすぐ後には黒サイも見ることができた。部屋のベランダのすぐ斜め下に餌付け台があり、ホテルスタッフが生肉をくくりつけていたので、何が来るのかと思えば、ジェネットキャットという、わりと小さな動物。しっぽはシマシマで、細い体はブチ、顔もかわいいけど、生肉をカリッカリッと食べていた。

 この日どこかで、両足首をグルッと一周、ダニか虫に食われたらしい。かい〜、かい〜。

10月9日(木)  

 7:00からの朝食、レストランへ行こうと部屋を出ると、ギョッ!ここでもポーターさんたちは部屋の前の廊下にズラズラ〜。「ジャンボゥ。」「ジャンボゥ。」と口々に挨拶してくれるが、なんとなく気を使う…というか気になる。朝食は、ちゃんと卵料理やソーセージのオーダーをとり、トーストなどをテーブルに運んでくれるスタイル。パイナップルの輪切りも、ジューシーでおいしかった。
 8:00に出発して、まずはトムソンフォールズで休憩をとる。高さ74mのキレイな滝だ。滝はキレイだけれど、土産物屋の攻撃がすごい。
「みてみて。」「みるだけ。」「ノー高い。」うるさいっちゅうねん。

次の休憩場所は、なんと赤道!…といっても道の真中に看板がポツンとあるだけ。もちろん土産物屋は、もれなく付いてくる。まずは、その土産物屋のお兄ちゃんによる、赤道の不思議の実演を見る。北半球と南半球で、水が回りながら流れ落ちていく方向が逆になり、赤道直下では回らずに真っ直ぐ落ちていく。目の前で見せられて「オオ〜ッ!!」と思ったけど、本当なのか。「なんでそうなるの?」という疑問はそのままだけど、とにかく赤道通過証明書を200シリングで買ってしまった。ついでに、店でかかっていた歌
「♪ジャンボ、ジャンボジャンボ♪」が気に入って、「ベスト・オブ・アフリカン・ソング」のテープをボールペンとタバコで値切って、2本で800シリングで買った。それにしても、よくぞこれだけ、あちこちに掘っ立て小屋風の土産物屋があるものだ。客が来るまでボ〜と過ごしている時間に、品物を拭いたりディスプレイ考えるなど働けば、もうちょっと売れそうなのに。でも、これがケニアらしいポレポレ精神かな。
 ナクル湖国立公園のゲートに着くと、もうそこからイボイノシシが見える。中へ入ると、幹の黄色いアカシアがたくさん生えていて、その間に、インパラやバッファロー、イボイノシシ、そして白サイがいる。とてもキレイな公園だ。湖面には、一面のピンクフラミンゴが!!ここでは車を降りて、湖の近くまで行くことができる。足元はぬかるんでいて、一見白い塩のしっかりした地面に見えるが、ズルッといくらしく、一歩一歩、慎重に歩く。ジョンさんは先頭に立ち、足元を確かめて「だいじょうぶです。」と呼んでくれる。ていねいな心遣いに、うれしくなった。フラミンゴは昔は200万羽いたというが、今ではずいぶん減っているらしい。…とはいっても、私の目には、とにかくたくさんだ。一直線に並んで飛んでいる様子が、とてもキレイだった。昼食は、レイク・ナクル・ロッジで。ここのダイニングルームはキレイで味もおいしかった。ティラピアのフィレがタルタルソースをかけて食べると、まるでフィレオフィッシュだ。庭に来ているインパラやバブーン(ヒヒ)を見ながらランチをとり、バーでお茶を飲んだ。優雅な午後のひととき。
 今日の宿泊はレイク・エレメンタイター・ロッジだ。満腹でウトウトしている間に到着したが、目を開けると、もっとキレイなロッジだった。できて2年の新しいロッジ。ブーゲンビリアの咲き乱れる庭を通っていくと、部屋はコテージ風で、正面がガラス張りのドアで、中も清潔でオシャレ。到着したのが3時過ぎと早かったので、花の咲き乱れる庭をゆっくりと散歩し、湖の見えるベンチで優雅に時間を過ごした。木漏れ日の中で鳥の声を聞きながら、なぁんにもない大地をボ〜ッと眺める。めちゃくちゃ贅沢だ。
 夕食は、暖炉のあるレストランでだった。メニューは確かメインがポークのグリル。デザートがバナナのフリッター。…が、なにせ、おなかが疲れて調子がイマイチで、食へのこだわりがなかったから、何を食べたのか記憶が薄い。みんなすっかり打ち解けてきて、夕食時にも話が弾むようになった。ロッジに温泉があったら最高だねという話になり、ジョンさんにもみんなで勧めて、話が盛り上がっていたところ、突然ジョンさんは
「では、また、あした。」と、いきなり話を切ってしまう荒技に出た。この日本人ども、話が長すぎるで…と思ったのか。ジョンさん、恐るべし。