◇伝統鍼灸治療の実践書<研究・論考・治験集>

選経選穴論と脉状診  福島賢治著

B5判普及本 本文305ページ  定価5.000円 送料込

 

本書は漢方理論に基礎をおいた病理・選経選穴・脉証と脉状、手法等の臨床研究や漢方鍼医会における講演・講義をまとめて一書としました。
また、講義に準備した病証考察・学術参考資料・医考等も数編掲載しました。これ等は、すべて「漢方はり治療」の学術構築に繋がるものである事は言うまでもありません。読者諸兄氏の建設的な意見・指摘等を期待致します。

第1章 選経選穴論と脉状診の研究
第2章 研究・論考編 臨床研究3 論考6 
第3章 病証考察・症例・医考編
   

第4章 学術参考資料編

 


自 序

日本の伝統鍼灸医学は平成5年頃を境として大きく変革されてきた。それは、日本経絡学会や日本伝統鍼灸学会に参加するとはっきりと感じる。
日本における伝統鍼灸治療の中心は「経絡治療」である。その経絡治療も、創設以来すでに60年以上も経過している。昭和14年に大まかな方針により「古典に返れ」の合言葉の元に発進したのであるが、以後、余り進捗性も無いままに時は過ぎてしまった。
平成4年頃から、日本経絡学会のシンポジウムで「証について」が5年間に亘り討論された。ここで、経絡治療が抱える諸問題について大いに意見交換がされたのである。当時、鍼灸界も二世の時代に入り、今までタブーとされた論点について議論が出来る時代になっていたのである。この数年間は、日本の伝統鍼灸医学にあってはまさにターニングポイントになると私は考えている。
この時期を境として、伝統鍼灸医学は違和感のある衣を脱ぎ捨てたのである。そして、正統鍼灸医学の本道を目指して歩を進め始めたものと大いに期待している

漢方鍼医会の創立は平成5年である。会創立の理念は、臨床において患者に説明ができる鍼灸治療、治療家自身も納得のいく治療学術の構築にあった。それには、鍼灸治療の中に「病理」を正しく構築する事にあるものと以前より考えていた。会の創立はこれの実行である。病理は「証」と同義であると考えても良い。正統医学である漢方理論を基礎におき、臨床研修を通して臨床学術を構築するのが目標である。その目標とする治療法を「漢方はり治療」と平成7年に決め、鍼灸師ではなく「漢方鍼医」を目指して同志と共に臨床研修を行っている。

本書は漢方鍼医会創立以来10数年、毎月の研修会や8月に開催される夏期学術研修会等においての講演や講義を中心として一書としたものである。本書出版の目的は、漢方理論に基礎をおいた病理・選経選穴・脉証と脉状、手法等の臨床研究にある。決して、学理論の弄びでは無く臨床実践を通しての学術構築にその目的がある。

最近の研修会では、衛気営気の手法・漢方腹診・体表観察等の臨床学術を中心に研修を進めている。これ等の臨床学術は正統な漢方理論の骨子である。目標である「漢方はり治療」の臨床学術構築はもう少しであると大いに意を強くしている。

  2005年薄暑の日に記す 


≪第1章≫ 選経選穴論と脉状診の研究

○はじめに

【1】素難医学の陰陽五行論について
1. 素問
2. 霊樞
3. 難経
@五行穴の確立  A五行穴病証の確立  B難経の治療法則
C難経医学の目的
<参考資料>難経の全内容一覧

【2】難経が論ずる選経、選穴論について
1. 45難について
2. 49・69難について
3. 50難について
4. 33・64難について
5. 63・65・68難について
6. 62・66難について
7. 69・79難について
8. 67難について
9. 73難について
10. 70・74難について
11. 75難について
12. 77難について

【3】難経68・69難の選穴論に対する問題点
1. 68難について
2. 69難について

【4】選穴論の研究
1. 病気の根本は精気の虚にあり
2. 選穴の意味
3. 経穴について
4. 臨床選穴論
@選穴論の基本  A穴性論の基本は五味論にある
<参考>素問における五味論の文献
1.蔵気法時論  2.陰陽応象大論  3.五蔵生成論  4.生気通天論  5.六節蔵象論
B五味論の選穴論的考察

【5】要穴選穴の基本表
1. 五行穴について
2. 12原穴について
3. 募兪穴について
4. 15絡穴について
5. げき穴について
6. 八会穴について
7. 下合穴について
8. 熱兪穴について
9. 水兪穴について

【6】要穴選穴の基本表作成
<資料1 要穴選穴の基本表>
1. 五気と蔵気
2. 病理と病証-1
<資料2 基本証の病証>
3. 病理と病証-2
<資料3 五兪穴病証表>
@五兪穴病証 <資料4 五行穴・五要穴表> 
A下合穴の選穴 <資料5 下合穴表>  
B絡穴の病証と選穴 <資料6 絡穴表>
C募兪穴の病証と選穴  D原穴の病証と選穴
E八会穴・熱兪穴・水兪穴の病証と選穴 <資料7 八会穴表>

【7】脉状と脉証
1. 祖脉について
2. 祖脉の臨床的意義

【8】病理と脉証
1. 病理の重要性
<資料8 基本証の病理・病証・選穴・治法表>
2. 陰虚・陽虚と寒熱について
3. 伝統鍼灸医学の流れ
4. 臨床と気血営衛
<資料9 人体の気の構造>
@衛の病理  A栄の病理
<資料10 陽気の循環> <資料11 陽気の発散・停滞> 
B血の病理  C津液の病理

【9】脉状と脉証の臨床考察
1. 証の基本と病理
@精気の虚について A陰虚の重要性 B調経論について
C証(病理)の基本について
2. 脉状と脉証
@脉状と脉証の意味論 A八祖脉の重要性と陰陽脉分類
B六祖脉の「虚実脉」について…七脉状論の提唱
<参考資料>七脉状の文献と臨床的意義
C弦脉の重要性について
3. 虚脉の考察
@虚の意味論 A虚の種類
4. 虚脉の臨床考察
@虚脉と虚熱 A浮沈脉との関係 B蔵府と虚脉の特徴
5. 実脉の考察
@実の意味論 A実の種類
6. 実脉の臨床考察
@基本的診方 A浮沈脉との関係 B蔵府との関係
7. 浮脉の臨床考察
@浮脉の意味論 A浮虚の脉証 ◆陰虚証について
B浮虚の病因と病理 C浮実の脉証について D浮実の病因と病理
E浮脉の脉証における臨床応用
8. 沈脉の臨床考察
@沈脉の意味論 A沈脉の脉証 ◆陽虚証について
B沈脉の病因と病理 C沈実の脉証について D陰実証と陰盛証について 
E沈実の病因と病理 F沈脉の臨床考察
9. 遅脉について
@遅脉総論 A遅脉の病位 B遅脉の病因と病理
10. 数脉について
@数脉総論 A数脉の病証 B数脉の病因と病理
11. 滑脉について
@滑脉総論 A滑脉とは(脉状と脉診) B滑脉の病理と病症 
C病脉としての滑脉について D脉位と滑脉の臨床
12. 渋脉について
@渋脉総論 A渋脉とは(脉状と脉診) B渋脉の病理と病症
C脉位と渋脉の臨床考察
13. 弦脉について
@弦脉総論 A弦脉とは(脉状と脉診) B弦脉の生理 
C弦脉の病理と病症 D脉位と弦脉の臨床考察

【10】脉状と脉証の臨床考察の意義
1. 脉状と脉証の意味
2. 七脉状と寒熱論

≪第2章≫ 研究・論考編

【1】研究
1. 下合穴の臨床研究
1.はじめに  2.臨床実践における選穴の意義
3.下合穴の考察(霊枢・本兪編第二) 4.臨床実践  5.症例報告
6.まとめ  7.質疑応答
2. 表裏の臨床研究
1.はじめに  2.気の病位と病証(外感病)
3.血の病位と病証
@形質の病証 A三焦理論 B四要理論 C病証の進行経過について
D五臓六府の病変
4.まとめ
3. 寒熱の臨床研究
1.はじめに 2.寒熱の病理考察  3.寒熱の重要点  4.湿邪について
5.熱邪と燥邪について 6.臨床応用  7.手足厥冷  8.寒証・熱証
9.寒熱と経絡・蔵府の関係  10.まとめ

【2】論考
1. 素問・霊枢における気の考察
1.はじめに  2.気の分類  3.気の生理と病理  4.気の診断的意義 
5.気の治療上での応用  6.「内経」に於ける気の分類
2. 八綱理論の臨床応用
1.はじめに  2.八綱について  3.寒熱の重要点  4.表裏の重要点
5.虚実の意義  6.陰証と陽証  7.陰虚と陽虚 8.表裏について追加
9.寒証と熱証  10.食欲について  11.不眠症について
3. 臨床虚実論の考察
1.はじめに  2.虚実の定義  3.精気の虚  4.病理の虚  5.病理の実
6.病症の虚実 
4. 鍼灸臨床の病証考察(1) 虚証について
1.はじめに 2.虚証について 3.陰虚について 4.陰虚の病証 5.陽虚について
6.湿症について 
5. 臨床脉診の修得は漢方病理の理解からはじめる
1.はじめに 2.脉診文献の多様性と臨床脉診について
3.鍼灸臨床における病理  4.浮沈脉の脉証と病理
5.脉状診と脉差診(虚実診)について  6.まとめ
6. 漢方はり治療の治療体系について
1.はじめに  2.大阪の地と緒方洪庵の「敵塾」  3.緒方洪庵の偉さ
4.漢方はり治療の治療体系における骨子
5.漢方はり治療と精気について  6.精気神論と腎・心・脾胃と精気
7.陽気・陰気と病気の本質  8.心腎と三焦  9.陽虚・陰実・陽実の臨床応用
10.津液(水)の調整と寒熱の臨床  11.陰虚について 
12.漢方はり治療と虚実について 13.漢方はり治療における虚実の理解
14.扶氏医戒之略
<参考>扶氏医戒之略

≪第3章≫ 病証考察・症例報告・医考編

【1】病証考察
1. 泌尿器病証の考察
1.はじめに  2.浮腫と小便不利  3.排尿異常  4.夜間排尿、小便閉、尿失 
5.まとめ
2. 循環器病証の考察
1.はじめに  2.血圧について  3.証について  4.病理について
5.心臓疾患  6.賁豚気・征仲・驚気
7.臨床上の注意と選穴について   8.症例   9.まとめ
3. 冷えの病証考察資料
1.はじめに  2.文献と古方のとらえ方  
4. 臨床病症の病理考察資料
1.肩こり症  2.不眠症  3.自律神経失調症  4.食欲不振
5.冷え症  6.頭痛と頭重  7.便秘と下痢  8.腰痛症  
9.肩関節痛(五十肩)

【2】症例報告
1. 顔面神経麻痺の症例
1.はじめに  2.病因と病理  3.蔵府経絡について  4.症例
5.考察
2. 高血圧病症の症例
1.はじめに  2.高血圧病症の整理  3.伝統鍼灸の治病理論
4.症例  5.まとめ

【3】医考
1.難経系医学の脉診再考
1.はじめに  2.難経の脉診  3.内経の三大脉論  4.脉診の目的  
5.脉診法の発見  6.寸口脉診について
7.六部定位脉診法の成立に対する考察  8.経脈の成立
9.素問・霊枢・難経の成立  
10.九鍼十二原論(古鍼経)と素問の三部九候診  11.扁鵲学派について  
12.素問の三部九候脉診  13.素問における尺寸脉診について  
2.歴史人物の病気考察
1.足利尊氏   2.杉田玄白   3.夏目漱石   4.正岡子規

≪第4章≫ 学術参考資料編

1.難経の特質と全体構成について
1.難経について 2.難経の特質 3.難経の全体構成 4.難経の主な註解書
2.陽気・陰気の覚書
1.はじめに  2.古典の基本理論  3.古典の生理学
4.蔵の生理作用 5.古典の病理学 6.臨床の場における陽気陰気の考察
3.八綱理論の大要
1.はじめに  2.八綱理論とは  3.八綱理論の運用
4.表裏に関する資料
1.はじめに  2.気の病位と病症(外感病)   3.血の病位と病症
4.三焦弁証と四要理論  
5.体表観察と臨床 (漢方鍼医会学術部編)
1.はじめに   2.目的   3.臨床応用の診察範囲
4.気血津液の具体的触覚と病証  5.臨床応用と運用
6.臨床実践の場における体表観察の実際   7.結語
6.衛気営気の手法について (漢方鍼医会学術部編)
1.はじめに   2.基本刺鍼の重要性   3.自然体について
4.押手の構え方(押手の意義)  5.刺手の構え方(刺手の意義)
6.気血津液と手法   7.衛気・営気の手法   8.補の手(押手づくり)
9.標治法としての営衛の考え方
〈参考〉衛気・営気の手法を難経より
衛気営気の証別手法
7.難経刺法論
難経70.71.72.74.76.78.79.80難の和訓と要点
8.気血津液の臨床病証
1.気の臨床病証  2.血の臨床病証  3.津液の臨床病証
9.鍼灸臨床における病証資料
1.虚証  2.実証  3.湿証  4.燥証  5.風証  6.寒証  7.熱証
8.労証  9.冷証
<参考資料>人迎気口脉診の脉証と病証
10.経穴についての資料
1.名称  2.数  3.分類  4.経穴の臨床的意義  5.経穴の取穴方法
11.鍼灸医学の参考図書案内  

あとがき