サンスイ(SANSUI)
SAX-200
AM/FMマルチ・ステレオアンプ
メンテナンス
 1964年に SANSUI から発売された SAX-200 を GET しました。FM/AM 受信機能を搭載した真空管式レシーバです。外観は経年の割には結構美品でした。左右のスピーカを接続し音出し確認を行ったところ、右のスピーカーから僅かな音が出て、左のスピーカーからは全く音は出ない状態でした。メインボリウムを動かすものならば、けたたましいガリ音が発生し、とてもではないですが聴いて居られない状況です。早速、メンテナンスを行いましたので以下に紹介いたします。
 
SANSUI SAX-200

@ クリーニング目視チェック
 まずはクリーニングから始めます。トップカバー、ボトムカバー、フロントパネルを取り外し、エアーで埃を吹き飛ばします。外観は結構美品です。目視チェックでは 6BM8 の赤熱、及び電解コンデンサの液漏れを確認しました。チェック時に単線の半田部の断線があり、修正しました。
 (2007年8月25日)
 
目だった汚れ/錆はありません 6BM8 赤熱を確認 コンデンサ・トゥイーター用の特別端子
への改造がなされています

硝子目盛板は水洗い 半田は特段問題なし 後方からのショット
失敗談
 電源を入れるとランプが点灯し目盛が浮き上がる機構となっています。硝子板が少し汚れていたので洗剤をつけて水洗いしました。するとシルク印刷の一部が文字欠けしてしまい、あわてて裏からホワイトペンで補修しましたが、上手く書けず失敗してしまいました。しかし、文字ニジミが寧ろ年代を感じさせるようになりましたので、現状のままでOKとしました。


フロントパネルも水洗いしましたが、結構綺麗です。


A 音出し確認
 右のスピーカーから僅かな音が出て、左のスピーカーからは全く音は出ない状態でした。メインボリウムを動かすものならば、けたたましいガリ音が発生し、とてもではないですが聴いて居られない状況です。



B 故障箇所の特定/修理
 トップカバーを外し、真空管を確認したところ、6BM8 の真空管4本のうち1本に赤熱を確認しました。25年程前に交換されたと思われるOILコンを疑い交換することにしました。また40μF/400Vの電解コンデンサ1本が液漏れを起こしていました。早速、OILコン4本をフィルムコンデンサに交換、そして40μF/400Vの電解コンデンサが手元に無く、代替品として手持ちのチューブラコンデンサ100μF/250Vを2本直列で使用しました。交換後に単体測定をしたら、40μF/400Vの電解コンデンサは完全に容量抜け、OIL コンデンサは4本の特性は揃っていましたが、やはり3分の1程度に容量抜けでした。その後、ボリウム類に接点洗浄剤や復活剤をスプレーしたところ、何ら問題ないレベルまで修復しました。低音/高音ツマミはあまり変化を感じないことから、やはり OIL コンの劣化だと思っていますが、今回はこのままでエージングをしようと考えています。最初は僅かな電源ノイズが気になったのですが、通電している間にあまり気にならないレベルになりました。電解コンデンサは通電することである程度は復活するのでしょうかね。
 FM/AM チューナーに関しては感度といい、現在のものよりも見劣りはしますが特段問題ないものと思います。主目的はAUX に CDプレーヤーを接続し楽しむことになりそうなので、FM/AMチューナー部は使用出来ればよいレベルと思っています。

コンデンサー交換作業 (2007年9月1日)
Before
黒い4本の OIL コンは交換します 6BM8 赤熱 電解コンデンサの液漏れ

After
手持ちの0.1μF/600V 見事に赤熱が直りました 100μF/250Vを2本直列で使用


C 試聴/エージング (2007年9月17日)
 Victor XL-Z511 CD-Player に接続し、スピーカーは SANSUI SP-30 及び YAMAHA NS-10M にて試聴してみました。流石に 6BM8 も良い音がします。この日も大変暑い日で室内は36℃にもなっていましたが、高温エージングを兼ねて1時間ほど試聴しました。難点は VOLUME を回転させると未だ若干のガリ音が発生します。また BASS は OILコンの劣化のようで十分に機能しません。TREBLE はまあまあです。何れにしても OIL コンデンサの交換は必須のようです。
 FM/AM チューナは正常です。MAG に切り替え PHONO に MM を入力したところ若干音圧レベルが低いようです。カートリッジの出力レベルが高いものを使用すれば何ら問題ないと思います。TAPE に MM を接続すると音圧レベルはジャストだが、RIAA 補正がないためなのか、高音が強調される。何れにしても PHONO、TAPE は正常のようです。

エージング風景

約2W+2W出力中
この音量で十分な位です。
FM/AM/MC/KC の文字が洗浄により消えてしまい
ホワイトペンで書きましたが文字が滲んでしまいました。
しかし、写真だと分からないですね。。。

(硝子パネルは洗浄後、保護フィルムが張ってあります)
オシロスコープで大体の出力を確認


D 更にメンテ (20070924)
 MAIN VOLUME のガリだけは皆無にしようと思い、ボリウムをばらして清掃をしました。これで MAIN VOLUME のガリは皆無となりました。ただ気になる点として、BASS VOLUME は四分の一辺りが一番低音が効くので、前オーナーのメンテ時の誤配か、OIL コンデンサの劣化とも思っていますが、BASSやTREBLE は一度設定してしまえば、そう変化させることも無いと思い、今回は現状のままとなっています。

使用VRは東京コスモスのFR-24GT
1964年5月製
流石によいつくりになっています。

真空管上部は何と 67.0℃ にも 外気温は 29.9℃ アース線を接続したほうがノイズが少ない
上昇温度は 37.1 ℃にも


一番上が SAX-200 です。
一番下の AU-9500 が潰れそうです。



E まとめ
 6BM8/ECL82 は電力増幅用五極管と電圧増幅用三極管が収められた複合管で手軽感があるためなのか、 このようなレシーバや低価格なアンプに使用されているようです。
 このアンプには正直、音には期待していなかったのですが、真空管らしい太い良い音がいます。SQ-38D や SQ-38FD のような繊細な音質は無いものの、結構パワフルな感じです。長時間聴いていても疲れを感じさせない音質でしょうか。何といっても PHONO は AU-111 と同じように素晴らしいものを感じました。今回は必要最低限のメンテナンスだったのですが、これだけの再生音を秘めているアンプなので、更にメンテナンスを行えば、まだまだ品質良化に期待できるアンプだと思います。
 何時になるかは不明だが、電源周りの電解コンデンサやプリ部の電解コンデンサを交換したいと思っています。また、PHONO の X-TAL と MAG の音圧レベル切り替えSWは音質に影響するので、MAG に直結したいとも思っています。

スペック
<パワーアンプ部>
ミュージックパワー 23W+23W
最大出力 16W+16W
周波数特性 20Hz〜80kHz -2dB以内(8Ω負荷)
歪率 1%以下(出力13W時)
出力インピーダンス 8Ω、16Ω、32Ω
<プリアンプ部>
利得(出力12W、1kHz) Phono MAG:79dB、1.1mV
Phono X-TAL:51dB、40mV
Tape(MIC):84dB、0.8mV
AUX:46dB、70mV
S/N比 Tape:55dB以上
トーンコントロール CR型
50Hz、+13dB〜-15dB
10kHz、+10dB〜-14dB
イコライザー NF型
Phono:RIAA
Tape:NAP
<FMチューナー部>
受信周波数 76MHz〜90MHz
帯域幅 200kHz(-3dB)
電気的忠実度 30Hz〜15kHz ±2dB以内
感度 3.5μV(S/N 30dB)
<FMマルチプレックス部>
方式 スイッチング方式
周波数特性 50Hz〜15kHz ±2dB
チャンネルセパレーション 35dB(1V、1kHz)
歪率 1%以下(0.3V入力、1kHz)
<AMチューナー部>
受信周波数 535kHz〜1605kHz
帯域幅 6kHz -3dB
感度 50μV以上(S/N 20dB)
<総合>
付属回路 ラウドネスコントロール
スクラッチフィルター
ランブルフィルター
AFC
テープモニター
FMステレオインジケーター
使用半導体 真空管(15個) 6AQ8:3個
6BE6:1個
6BA6:3個
6BM8:4個
6BL8:1個
6DA5:1個
12AT7:1個
12AU7:1個
ゲルマニウムダイオード OA-91:9個
シリコンダイオード SE-0,5B:2個
セレン整流器 TC-0,2P:1個
トランジスタ 2SB-381:4個
バリキャップ 1S-352:1個
電源電圧 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 120VA
外形寸法 幅436×高さ147×奥行343mm
重量 13.3kg
SANSUI SAX-200
\44,700(1964年発売)



戻る