kanon-SS
written BY神名

昔の思い出・・・


これは、祐一が中学の時の話です
「祐一〜」
「・・・ん?ああ・・・雪菜か」
「あいかわらずね、祐一は」
「なにがだ?」
「そのぼ〜としたところよ」
「・・・悪かったな」
雪菜とは中学からの付き合いで、別に恋人というわけではない。
まわりがどうみてるかはしらないが
「考え事をしていたんだ・・・」
「・・・また、いとこの名雪さんのこと?」
「ああ・・・それと、そのときの記憶・・」
「・・・そっか」
俺の記憶・・・あのころの記憶は・・どこにいってしまったんだろうか・・・
「・・・ねえ、やっぱりいとこの名雪さんに会ってみたら?」
「・・・それは」
いやだ、そう、なぜか俺は名雪に会うのを拒絶しているのだ
「・・・・やっぱり、いやなのね」
「ああ・・・」
「・・・・・思い出せないのなら、無理に思い出さなくてもいいじゃない・・」
「ああ・・・でも」
なにか、そう、なにか大切な・・・
「しょうがない、お昼おごってあげるから、元気だしなよ!」
「悪いな、雪菜」
「いいって」
そう、いつも俺が記憶のことで落ち込んでいると、そういって励ましてくれるのだ
「本当に、悪いな・・・」
「そう思ってるならたまにはおごってね」
「ああ・・約束する」
・・・約束?
「・・・・どうしたの?」
「・・・・・いや、なんでもない」
・・・・なぜだ?「約束」ということばになにか・・・・
「?はやくいくわよっ!」
「・・・・ああ」

ある夜
「えっ?転勤?」
「ああ、急で悪いな」
「悪いわね、祐一」
「いいよ、・・・で、いつから?うちは社宅だから家族で、だろ?」
「基本はな」
「いつごろ?」
「春からだ。でも、もしかするとそこには一年くらいで、すぐまた別のところへ行くかもしれん」
「困るでしょう。祐一の進学のことを考えたら、いちいち付き合って引越ししたり
学校変わったりするの、ハンデになるものね」
「う〜ん、じゃあ俺はめでたく一人暮らしということで・・」
「なにいってるんだ、家のことなんてちっともやらんくせに」
「たしかに・・・じゃあどうするのさ?」
「だからね、家を建てることにしたの」
「へえ・・・どこに?」
「うん・・秋子の住んでる町よ。覚えてるでしょう?秋子おばさん」
「ああ・・たしか」
名雪の母親の名前だ
「会いたいでしょう?いとこの・・・えっと」
「名雪だ」
「そうそう、名雪ちゃんに」
それどころか、その町にすら行きたくない
「そんなこといって、仲良かったじゃない」
「・・・怒るぞ、母さん」
「どうしたのよ?祐一」
「・・・別に」
「?変な子ね」
引っ越すということは・・・雪菜ともお別れか・・・
別れは慣れてるけど・・・やっぱり寂しいものだ・・・

「・・・・いち」
「・・・・・」
「・・・ういち」
「・・・・・ん?」
「ゆういちってば」
「・・・雪菜か・・なんだ?」
「なんだ?じゃないわよ、どうしたの?ぼーとして?」
「おれはいつもぼーとしてるぞ」
「今日はいつもよりすごかったわよ」
「気のせいだろ・・・」
「そうかしら」
「そうだ・・・学校終わったら、どこかいかないか?」
「えっ?祐一から誘ってくるなんて珍しいわね」
「いやならいいが・・・」
「そうね・・・おごり?」
「う・・・まあ、たまにはな」
「やった、じゃあどこにいく?」
「そうだな・・・いつもの商店街でいいだろ」
「そうね・・じゃあまた放課後」
「ああ」
・・・・・・・・・・・・・
「やっと終わったな」
「そうね」
「じゃあいくか・・・」
「いきましょ、祐一」
しばらくして
「ここにはいりましょ」
「喫茶店か・・・いきなり食べ物とは・・・」
「・・・だめ?」
「まあ、いいか。入ろうぜ」
「うん」
・・・・・・・・・
「ご注文は?」
「俺はコーヒー」
「私は・・・イチゴサンデー」
「またか・・・」
「だって、好きなんだもん」
「・・・・俺も食べようかな」
「えっ?」
「すみません、イチゴサンデーもう一つ」
「かしこまりました」
「祐一・・・甘いもの好きだったっけ?」
「まあ、たまにはいいかなと思っただけだ」
「ふ〜ん」
イチゴサンデーか・・・たしか、名雪も好きだったよな・・・
「あいつも、イチゴサンデー好きだったな、そういえば」
「あいつって?」
「・・・・・」
「祐一?」
「・・・雪菜、あとで話がある」
「えっ?いいけど・・・今話せば?」
「・・・・あとでがいいんだ」
「・・・・わかった」
「わるいな」
「うん・・・いいよ」
「おまたせしました、イチゴサンデーに、コーヒーになります」
・・・・・俺たちは無言で食べつづけた。そして
「ありがとうございました」
店を出ると
「わぁ、雪が降ってるね」
「・・・ああ」
雪が降っていた
「雪、積もらないかな・・そしたら祐一・・」
「・・・・・・雪が・・・・・・赤い・・・・・」
「えっ?」
「・・・・・赤い・・・・雪うさぎ・・・・・女の子・・・・・」
「・・・・・・ゆういち・・・」
「・・・・・・」
俺は、泣いていた。
なぜたかはよくわからないが、とても・・・そう、とても悲しくなったんだ
「うう!ぐぅ・・・」
「・・・・ゆういち」
ふわっ
「・・・・・雪菜」
雪菜が、俺のことを後ろから優しく抱きしめていた
「ゆういち・・・話があるんじゃなかったの?」
「・・・・・」
「ゆういちが話さないなら、私が先にいいたかったこといっちゃうよ?」
「・・・ああ」
「・・・・わたしは、祐一のことが好きだよ・・・・」
「・・・・・・」
「友達としてじゃなくて、一人の異性として」
「・・・・・・」
「・・・・・本当は、好きだなんていいたくなかった・・・」
「・・・・・・」
「だって、祐一は・・・名雪さんのことが好きなんだよね・・・」
「・・・そんなことないっ!おれはっ!雪菜が!」
「・・・それは嘘だよ、祐一」
「どうしてっ!?」
「好きだからこそ、まわりがみえなくなるほど、必死に・・・必死に思い出そうとしているじゃない・・」
「違うっ!」
「自分の気持ちに嘘をついちゃだめよ」
「そんなことっ!」
「祐一は、怖いだけよ・・・本当のことを知ることに、恐怖しているだけ」
「・・・・・」
「だから・・・昔の記憶が戻って、それでも、私のことが、
好きでいてくれたら、そのときは・・・」
「・・・・」
「そのときは、祐一から「好きだよ」っていって・・・」
「・・・わかった、約束する」
「・・・・・うん」
・・・・・・・・・・・・・
「そうだ、祐一、話があるんじゃないの?」
「ああ、半分は、雪菜と同じだ」
「えっ?」
「好きだって、いいたかった」
「ゆういち・・・」
「もう半分は、引っ越すことになったんだ・・」
「えっ?どこに・・」
「名雪のいる町、記憶のなくなった町だ」
「そっか・・・そうなんだ・・・」
「でも・・・」
「でも?」
「かならずここに・・・雪菜のところへ
かえってくる。だから、それまでまっていてくれるか?」
「うん・・・まっている、ずっとまっているから・・・ゆういちぃ」
・・・はじめてみる、雪菜の涙
「うわぁ〜ん、ゆういちぃ〜・・・ゆういちぃ」
おれは自分が泣くのを堪えて、雪菜が泣きやむまで
抱きしめつづけた

「じゃあ、祐一は秋子の家にいてね」
「ああ」
「わるいな、祐一」
「いいって」
学校の都合で親より早くいくはめになったのだ
「それに・・・」
「名雪ちゃんに早く会えるしね」
「・・・・・」
「あら?当たったの?」
「・・・・まあね」
ピンポーン
「あら、だれかきたわね」
雪菜だ
「じゃあ、いくから」
「ああ、気をつけてな」
ガチャ、バタン
「おはよっ、ゆういち」
「・・・寒いぞ」
「私だって寒いわよ」
「もう一月だし、当たり前か」
「そうね」
「しかし・・・見送りが雪菜だけなんて・・・」
「ああ、だってみんなに今日だって、いってないもん」
「・・・・なんで?」
「ふふ、なんででしょう?」
・・・・困ったやつである
「・・・・・」
「・・・・・」
駅に着いた
「ゆういち・・・」
「ゆきな・・・・」
キス
「またねっ!」
「またなっ!」
電車の中、必死に涙を堪えた
「また、必ず・・・」
そう、つぶやいた

「・・・・・おそい」
たしか、一時にここで待ち合わせじゃなかったか?
「・・・・・さむい」
もう三時だ
「・・・・・腹減った」
もう限界、そのとき
「・・・・・雪、積もってるよ」
名雪だ



私はシリアス苦手だなぁ・・
名「ねぇ・・私の出番一つだけだよ・・・」
うう、なゆちゃんすまないねぇ〜。なれないことするから・・
名「それに、雪菜って誰?」
そ、そんなことは祐一君にでも聞きなさい(あせあせ
名「そうだね、祐一〜どこ〜?」

2000年12月29日HOMEへ