† 第12巻 エピソードガイド †
The Five Star Stories XII
 
コミック初版とTales of Joker#34〜38を参考に。
11巻と同様にNT連載時の扉絵が考察の参考になっている場合があるので、可能な限りの補足を入れて整理しています。
 

 

■ 12巻の表紙と扉絵


12巻の表紙は見たまんまクリスティンとネプチューンだが、その背景が「崩壊するプロトン城」というのが気になるところ。
フィルモアの王城が崩壊するとなると、天照による大侵攻、もしくはスタント遊星接近によるカラミティ崩壊ぐらいしか理由が思い当たらない。
この1枚の絵が現すところを無理矢理読み取るとすれば、「プロトン城の崩壊つまりフィルモア帝国の崩壊とともに、ネプチューン、そしてクリスの役目が終わる」といった感じだろうか。フィルモアが無くなれば、当然、彼女がハイランダーであることの意味が無くなる訳だが、ここで云う「役割の終り」とは「FSSにおける彼女の存在意義の喪失」つまり「劇中での死」というイメージなのかな・・・と。

もしくは、このイラストは「彼女が何者かによって助けられているシーン」であって、彼女は自らの全てを捧げてきた対象が粉微塵に崩れていく姿をただ呆然と見つめているのかも知れない。
イラストのタイトルは「Christine & Emperor's Bansheeca」となっているのだが・・・「Bansheeca」って何だろう?バンシー(家に死人が出ることを泣いて伝えるアイルランドの妖精)ともスペルが違うようだし。

次に扉絵のカレンのイラストについて。
カレンと懐園剣とL.E.D.ドラゴンのシルエットからなるイラスト。2つに分かれて流れるカレンの髪が、L.E.D.ドラゴンの2本の尻尾の意匠を引き継いでいることに気付く。・・・となると、2本の懐園剣はドラゴンがもつ「角」の暗喩なのかも知れない。雌剣は鼻先のソードホーン、雄剣は後頭部のメインホーンのイメージか。
単語辞書のヴィナースの項で、『カレンが体にもつ「人類ではないことを示す特徴」とは角ではないか』とまとめたのだが、意外と当たっているのかも知れない。
(2006.04.10)

 

■ シオの門番の正体 (p8)


シオの門番のひとりであるイーヴィー・3の説明に「変体性ファロスディー・カナーン・シュバリエ」と書かれている。その正体については未だ不明な点が多いが、少なくともシステム・カリギュラに属す彼らが超帝國の騎士であることが確定したと。
また、これまでに明かされている説明では、彼らはスタント遊星の惑星「無(ナイン)」に存在しているとのこと(正確には、「無」の衛星ということになると思われるが)・・・。
順当に考えれば、泰皇帝ナインがスタント遊星に向かい、星団史の表舞台から消え去った後に、彼らがスタント遊星に居ついてしまった・・・ということになるだろうか。スタント遊星がサタンたちとも関係浅からぬ凶星であることを考えると、彼らとの接点もどのようなものであるか、気になるところではある。「DESIGNS #1」ではスタント遊星戦で天照と共闘するような解説もでてきてるし・・・。

「門番」という名称から察するに、スタント遊星はサタンがジョーカー星団に干渉する際に「ゲート」として働く星であり、それを監視するために彼らが存在している・・・という考え方もできるか。うーん。
(2006.04.26)

 

■ 廃都アダマ・ジー (p10)


ベイジより東に位置する廃都アダマ・ジーを歩くフンフト。11巻の考察で彼女はハスハ国外の「西側」にいるはず・・・と考察したのだが、この後のシーンを読むと今回のエピソードは11巻のラストからそのままタイムラグなしでつながっていることがわかるので(これについては後述)、彼女はおそらくこのアダマ・ジーの付近で暮らしているということが予想される。
んーっと、つまり11巻で「西に見えたハスハ陥落の炎」を「東から昇る太陽」と勘違いした侍女がオオボケをかましていたってことになるのかな?

アダマ・ジーの遺跡はかつての宇宙船だったらしいのだが、9巻p183に出ていた円盤型の宇宙船がこれにあたるのだろうか?
ただ、p12に出ている「封印の地」はよくみたら超巨大なファロスディー・カナーンの紋であることがわかるので、この辺にはさらに巨大な何か・・・もしかしたら焔星緋帝母艦「星(シング)」と同クラスの艦が埋まっているような気がしないでもない(シングはスタント遊星に向かったので埋まっているはずがないけど)。
ナインがこの地に封印した「力と技術と作品」や、ドラゴンとの契約内容は不明だが、その辺の事情はおそらく3159年の大侵攻もしくは3225年以降のスタント遊星戦まで文字通り封印されると思われる。
土地を「借りた」ってことは「何らかの目的があって」一時的に利用できるよう交渉したってこと・・・だよね。
(2003.06.11)

 

■ ソープの幻 (p13)


ソープの幻に気付くナイン。「いつの日か・・・ここでわしはそなたと会うのじゃな・・・」と云っているので、今回のソープは遠い未来においてここに降り立った姿であると考えられる(ソープの姿である以上、天照がエイリアスを出した訳ではないはず)。うーん、未来を透視したってことか?

ナインが「一万年にわたる長き旅」と云っているのだが、炎の女皇帝がボォスからスタント遊星に向かったのがAD世紀5000年代(そこから一時的に帰還したのがAD8383年)である。星団暦3000年代に当たる現在のところでは、「一万年」に約2000年ほど足りていないはずだが・・・まあ大きく括って一万年と数えているだけか。光子結晶に精神を移し、肉体を失ってまでも旅を続けている彼女の「目的」についても依然不明のままである。天照がラキシスを探すために星団を離れるように、ナインもまた特定の人物を探して宇宙を彷徨っているのだろうか(そしてそれが天照つまり神と出会うことで終焉を迎えることになるのだろうか)。
(2006.04.26 追記)

 

■ ボスやんからミースにご挨拶 (p14)


今まで見てきたボスやんの立ち振る舞いから云えば、やたら高慢な態度をとるようなイメージだが、ここでミースに見せる態度は「国王がマイトにもつ姿勢」である。劇中では、今まで「バランシェとソープ」とか「コーラスとモラード」とか「レーダーとクープ博士」のように、互いに親友となっている関係しか見れなかったから混乱してしまうが、本来であれば、マイトはこれだけの敬意をもって接せられる存在なのだろう。
ちょっとセンセーの意図とは外れるかも知れないが、マイトはMHマイトだろうが、ファティママイトだろうが、すべからく「最高の武器商人」であるはず。どのような国家であれ、彼らを抱えることはすなわち国力の増大に直結するから、最大の礼儀をもってつくすのが国王の役目なのだろう。

逆に、今回のミースのように恐れたり媚びたりしない姿勢を貫くことも一流のマイトに望まれる姿勢なのかも知れない。「マイトは中立」とは云え、一流として認められるまでには誰でもパトロンを必要とする時期があるはずである(バランシェも天照というパトロンにめぐり合うことで一流となった)。そこを乗り越えて完全に独立した状態に行き着いてこそ、多くの国から「中立」の存在として認められ、また頼られる存在になるのだろう。ミースはホントに一人前になったのね。
彼女は毅然とした態度をとっているが、自分の愛した男を殺害した張本人が目の前にいるのである。心中穏やかでないことは察してやりましょう。

p15ではアウクソーの変調に気付いているボスやんが描かれているが、彼ほどの能力者であれば、ミースの胎内に息づいている未知なる存在に気付くことも可能ではないだろうか。最後から2コマ目の微妙な表情は、ミースの心情を察しているのか、それとも彼なりに「何か」を感じ取ったのか?
(2003.06.11)

 

■ 「壊れてしまった」アウクソー (p16)


「Seek out your next」をやられてしまったにも関わらず、未だカイエンを「マスター」と呼んでしまうアウクソー。シュペルターとの「会話」もできなくなったことで「壊れてしまった」と云えるのかも知れないが、彼女の場合は以前一度死んだ際にも記憶を失わず再生するなど、いわばプロトタイプのダブル・イプシロン型ヒューマノイドとも呼べる「体質」、そしてその「性能」が「Seek out your next」を拒否できるほどの力を発揮させてしまっているのかも知れない。
それでもファティマであることには変わりがないので、中途半端なコマンドのキャンセルによってシステムのハングアップ=精神崩壊が起きているとか・・・。
ま、素直に心因性のショックで障害が起きていると考えてあげた方がいいか。悲しいやね。
(2003.06.11)

 

■ シルバー・シュペルターと始動キー (p17)


やっと登場したシルバー・シュペルター。
始動キーについては、これまでの劇中でもアルスキュルの始動キー、今回も登場したシュペルターのキー(以前カイエンがルンに渡した)、ジ・エンプレスの真紅のキーなどが登場しており、全てのMHについている仕様だと思ってました。キー付きの方が珍しい仕様なのね。個人用のスペシャル・チューンMH・・・と云うよりは、強力すぎてちょっとヤバイようなMHにはこのキー・エントリーが付いているらのかも知れない。

カイエンがキーをつけっぱなしにしておいたのには、幾つかの理由が考えられる。
・単純に常につけっぱなしだった(わざわざ持ち歩くのがめんどくさかった)
・シュペルターを博物館行きにはしたくなかった(兵器として存在し続けることを望んだ)
・天照へのあてつけ(天照の管理下ではない誰かが使うことで、天照を困らせたかった)
個人的に3番目を推したい。天照がボスやんを倒していれば、全ての動乱は避けられたはずなのだから。11巻p126下から2番目のコマを見直してみよう。カイエンはこの時きっと天照に対して「あんのバカが・・・とっとと消してくれりゃぁいいのによ」と思ったはずである。

ついでに。
p18の3コマ目でデコースが眠そうにしているのは、今回の戦いが夜明けから始まって、今がちょうど昼くらいだから。今回の話は11巻のラストと同じ日の出来事なのだ。
(2003.06.11)

 

■ 大国における騎士の登用 (p19)


デコースによって語られる大国の騎士団の内事情。国を維持するためのシステムとして騎士団が存在する以上、騎士団員の家柄なども考慮しなければならないのは当然の理である。大国であればそれぞれの王家に長年仕えてきた家臣が存在するのが常であるし、その家臣の誇りを無視して次々と新しい騎士を採用すれば、周囲から恨まれるのも当然である。また、なんだかんだ云っても王家の重臣として位置づけられている家系は、騎士の子供が生まれてくる確率が高いということもある。そこそこに強い騎士であったとしても、騎士の血が遺伝する可能性が低い者を、騎士団の重職に置くということはまずないであろう。

騎士の血が必ずしも遺伝する訳ではない。この原則に沿えば、普通の両親から産まれた騎士がそのまま出生国の騎士団に入ることの方が稀であるということだろう。故に、力を持ちつつも他者から認められることがない騎士たちは、「忠誠を誓う主」ではなく「自分の力を認めてくれる場所」を求めてカステポーのような場所を彷徨うことになる。バッハトマがいきなり国家として成立してしまったのも、なるほど納得の背景である。

ところで、ご存知のとおり、ミラージュ騎士団はこういった大国のルールを無視して結成された騎士団である。「力こそ全て」をモットーとして(家柄はちょっと絡んできているが)殺人狂、暗殺者、ジャンキー、果ては神や異星人まで入れる始末。新興の国家にしかできないことをやろうとするボスやんの「国王の器」は大したものであるが、天照のスケールのでかさには今一歩及ばないようである。「騎士団に入ることそのものが目標なのではなく、忠誠を誓うべき主を見つけることの方が大切」と思っていたブラフォードが天照の出会ってしまったのは、まさしく天運ということになるだろうか。
ついでながら、ヨーンもまた幼少時には大国の騎士団に入ることを夢見ていたことを思い出しますね。エストと出会ったことで、より大切な「騎士として生きる理由」を見つけたのは、幸か不幸かどちらとも云えないですが。
(2006.04.26 追記)

 

■ 左宮は無事 (p21)


負傷者への手当てをお願いするエストに中立であることを宣言し応えてあげるミース。彼女の設備があるという左宮が無事だったのも、おそらくボスやんがミースに怪我をさせないよう気を遣って部下に指示を出していたためである。
今回の戦いでは市街地を戦場にしているものの、結局王宮に乗り込んできたのはボスやん1人。王族は皆殺しにするつもりだったのかも知れないが、最初から王宮を破壊するつもりではなかったと予想される(実際、王宮のほとんどを破壊したのはナインの炎である)。結果としてミースはバッハトマと行動を共にすることになってしまったが、流石にこれはボスやんの策略ではなく、ジョーカーにおける戦争のあり方とマイトの立場、そしてタイミングの良さが生んだ結果と考えていいだろう。

p20のエストのスーツでは、袖口のマークが両方とも黒騎士のマークになっている。以前は左右で逆回転だったので、おそらくセンセーのミス。
(2003.06.12)

 

■ ヘアードの逃げる先 (p22)


地面の足跡の状態からヘアードの逃げている状況を分析するカエシ。7巻ではすえぞうを連れて逃亡するソープとアトロポスを追跡するブラフォードが描かれたが、カエシの能力はブラフォードとほぼ同等らしい。「カエシの目はタカ以上」と書いてあるように、やはり7巻でもブラフォードの視力は5.0〜6.0で「タカ以上」の視力をもつことが描かれている。最近の研究では、実際にズームの機能があるのではないか、とも云われている「タカの目」・・・ブラフォードやカエシのような存在は、もともと超帝國の時代に索敵用に調整された騎士がいたことを示唆しているのではないだろうか。

ヘアードの移動している速度である時速60kmは、1巻でクローソーが逃げ出した時の150kmよりもかなり遅い。カエシが云うようにマグダルを抱えているために半減しているのだろうが、戦闘能力が「3A」のクローソーはやはりかなり速いと考えていいのかも知れない。
ヘアードは「東に向かって」逃げているのだが、これはデプレやギラたちがいるスバース市とは逆方向である。んが、p26ではやはりスバース市に逃げようとしていたことが描かれている。うーん・・・「西」の間違いなのか?それとも追手を撹乱するために一度東へ向かったのか?
(2006.04.26 修正)

 

■ ヘアードの逃げる先 (p25)


マグダルが云っている「聖宮ラーン」は11巻p204を見ればハスハの東端に位置していることがわかる。ヘアードが逃げてきたルートと全くの別方向であり、しかもムチャクチャに遠い。騎士と云えども足で逃げるには遠すぎるので、ヘアードは何らかの交通手段か移送してくれる味方を見つけなければならない。
という訳で、この役目は、ログナーが云うところの「ムンスターから入ってくるヒマ人」ランドが請け負うことになる。
(2006.04.26 修正)

 

■ 姉ちゃんキック (p32)


ログナーの登場の方が先だが、これについては「五つの星の物語」を絡めて後でみっちり書くことがあるので後回し。
さて、アルルから伝授された「対剣聖技」姉ちゃんキックをお見舞いするヘアード。この技は10巻で描かれているようにミラージュのイマラ・ロウト・ジャジャスが放つ母ちゃんキックが本家本元である。オバサン・バージョンではないアルルのキックは既に剣聖カイエンが食らっているそうな。
ケサギの眼帯はダテということが判明。・・・もしかして、左目が遠視で右目が近視なのか?
(2003.07.13)

 

■ Shake it up a BABY (p35)


ログナーとエレーナの会話を整理しておこう。
ナカカラのちょー非常事態というのは、どうやら超反則のMHを携えてやって来たアイシャの妹の参戦を指しているらしい。・・・11巻のコミックで追加されたブーレイ傭兵騎士団の参戦のことだと思ったんですけどね。通常9騎であるはずのブーレイが大部隊となって参戦。しかもリーダー騎が謎の新型MHという状況なのに・・・。

ログナーが云っている「ヒマそうなヤツ」とは、前述のとおり、この後で出てくるランドを指している。ログナーからすれば私怨を捨てきれないミラージュの騎士は全て「ヒマそう」ということになるのだろう。何とも厳しいヒトである。

ログナーがエレーナに云っている「寿引退」とは7巻、8巻で出ていたマイア・トッカータ中佐との結婚を指している。一応、ミスAKDに格上げされたし、こんな美人でファンキーな嫁さんをもらえたトッカータ中佐が羨ましい。

「アトラス」の正体は「DESIGNS #1」で明かされているように、後に剣聖マキシのパートナーとなる星団初の4ファテイマのひとりS.S.Lである。イエッタが「大お姉様」と云っているのは、バランス家の先祖リチウム公が作成したファティマだから。それにしても「大姉様」ではなく「大お姉様」って・・・。
(2006.04.26 修正)

 

■ ログナー復活と五つの星の物語 (p34〜)


3010年のフロート・テンプルにおけるブラック・スリーとの戦いから、20年を経てついに復活したワルツ・エンデことF.U.ログナー。懐かしきセリフと共に堂々の登場。
p34〜37の部分は「NT2003年7月号」の扉絵に記載された情報とログナーがオーバーロード・タンツミンレと戦ったことがあるという過去、「五つの星の物語」との関連性でかなり濃い考察ポイントになっている。これも順を追って考察しましょう。

まず、ナインが語る「五つの星の物語」のシーンから・・・。ドラゴンを召喚するために自らの命を捧げた「アイエッタ姫」、彼女の亡骸から取り出された無数の真珠、そこから発現した「超常の不死王カラミティ・ゴーダース王」・・・アイエッタ姫の名前と彼女の衣装がイエッタとそのスーツデザインに重なること、カラミティ・ゴーダース王の背にバビロンの家紋である「角と翼をもつ獅子」とインシグニア・フラッグのマークがあること、王冠の形が10巻p185でログナーが戴いている王冠と似ていること、さらに不死という伝説そのものからログナーのことを記述した一節であることがわかる。

「五つの星の物語」はカレンがタイカから太古のジョーカーに持ち込んだ伝説であり、一つの見解として、「その内容は現在のジョーカーの歴史を指しており、遠い未来まで語り継がれた結果、お伽話の様相を呈してきてこの形に落ち着いたモノ」という捉え方ができる。したがって、(歳をとらない)イエッタと何度でも蘇るログナーのお話が、虚実を含みながら膨らんでいき、後の世において「不死の王」として語り継がれたと考えることができる。ナインが云うところの「光の王とともに自ら操る燈色のドラゴンの炎をもって(その生まれし星)カラミティを滅す」というのは、8巻で描かれた星団暦3239年のカラミティ爆発を指しているのは明らかであるし。
ログナーが「ただの人間」ではなく、「神々に数えられる存在」であるなら、未来において起こる「タンツミンレとの戦い」を「過去の記憶」として持っていることも一応の説明がつくはず。なぜなら、FSSの神々は時間を通り越して全ての未来と過去を平面的に見ることが可能な次元神であるから。

んが、ボオスの民が民話として作り上げた話について、ナインですらもその起源を正確に知っている訳ではないことを考えると、この伝説はファロスディー・カナーンの時代よりさらに遡った太古の時代に起源を求めてもいいような気がしてくる。また、アイエッタ姫がドラゴンを召喚したことは、ソープも本当にあったこととして口にしている(6巻)し、ログナーの口ぶりでは「タンツミンレとの戦い」もやはり過去のモノとして考えた方がよさそうである。

さらに云えば、ログナーは「神」ではなく「人間」である。彼のもつ記憶は間違いなく「過去の記憶」ということになる。
そして、「DESIGNS #1」で明かされているように、ログナーの正体は「カラミティ・ゴーダース星団皇帝」である。

これらを整理していくと・・・。
アイエッタ姫の体から取り出された「真珠」とはおそらく「受精卵」のことで、これを王が保管し、無数に分裂して悪魔の襲来の度に戦ったというのであれば、アイエッタ姫の父王(おそらくフーバーク大帝と呼ばれる人物)が受精卵を保管しており、常にサタンの襲来に備えてログナーを生み出していたということになるだろう。現在のログナーはドウター・チップにより無限の寿命と不滅の肉体を得た「最後のひとつ」であり、それ以前のログナーはなぜか記憶を受け継ぎながらも、それぞれが別の個体としてサタンたちと戦ってきた・・・と。
かつて炎(ほむら)なる人物をかばってタンツミンレに敗れたというのは、ログナー対サタンという永きに渡り繰り返されてきた歴史において、唯一の敗退を喫した戦いということなのだろう。ちなみに魔王タンツミンレの襲来はAD世紀5000年ごろの話で、超帝國・緋紫の皇帝アーハトが対峙したことになっている。ログナーが庇ったという「炎(ほむら)」なる人物は、その後に超帝國の皇帝となる「炎」の女皇帝ナインを指している・・・といったところだろうか。

その他、ログナーについての考察は「Designs」のページにまとめたので参照のこと。コチラです。
さらに付け足すならば、「Fool for the city」における地球や、タイカにおいて「ログナー」が登場しているのも、ある意味ではこの「受精卵」の顕現なのかも知れない。おそらく惑星オリンポスにおけるアポロたちの戦い(ヴィーキュルとの戦い)でもログナーが登場するのではないだろうか。
(2006.04.26 大幅修正)

 

■ 暴風三王女の扉絵 (p39)


下に並んでいるファテイマは、左からマロリーのパートナーであるモンスーン、セイレイのシクローン、アルルのユリケンヌ。
それから左側の足・・・上段の足はハスハイエローの服に着替えたアルル。中段のバンソーコーの足はセイレイ。たぶんアルルを狙っての上空待機でイライラが続いてまたもやイスを蹴り上げたりしたのだろう。下段の足はマロリーで、カバンはハスハ入りを暗示している。
3人のファティマが抱えているタイトル文字の重さも然ることながら、3人でやっと「微妙なバランスで成り立っている」という部分が、なんともうまく三王女という存在を表しているように思えますね。
・・・ついでに、センセーが机替わりに使用しているトマトの箱。岡山はトマト銀行という銀行があるくらいトマトの産地として有名。トマトジュースもおいしい。
(2003.08.13)

 

■ エートール[FR]初登場? (p40)


p40の2コマ目左下にエートールが描かれている。この場所がナレーションで語られているナカカラ・クルル王国であれば、AP騎士団のディスターブ隊が使用するエートール[FR(フィニトライブ)]である可能性が高い。んが、王都ナカカラでフィルモアの相手をしている(戦っているという意味ではなく)部隊が国境警備している余裕もないと思うので、余裕のある他の部隊が、難民が集中している主要4カ国の国境付近を警護しに来ているのかも知れない。
ちなみにp41のエートールはスキーン隊の[SKS]。
(2003.08.13)

 

■ デプレの立場 (p40)


一連のテリウス議長とバルンガとの会話から、「ハスハ連合共和国」における巫女の立場、そしてデプレや騎士団の立場が見えてくる。テリウスが皇子の名前を一言も口に出さず、(代理)総騎士団長のギラの対応を求めていることから、「共和国」という目から見た場合に皇子の発言力はほとんどないに等しいことがわかる。マグダルとの脳共鳴により昏睡状態に陥ってしまったデプレだが、おそらく彼が健康な状態であったとしても連合会議の出す結論はほとんど変わらなかったであろう。
また、「たとえ巫女が無事であったとしても国は簡単にはまとまらない」という発言から、「聖導王朝」としての巫女の発言力は何よりも勝るものであるが、「共和国」を成立させていたのはやはりコレット王の政治力であったことが読み取れる。
つまりマグダルとデプレがバッハトマを倒すためには、何よりも2人が強烈なカリスマ性を発揮して国をまとめなければならないのである。45年後のハスハント解放戦では多くの義勇軍(ミラージュ、コーラス、ルーンなどなど)が参加しているので、この辺は安心して見ていればいいんでしょうけどね。
(2003.08.13)

 

■ 13支隊の動き (p42)


p41後半からp42まででナカカラの独立を危惧している主要メンバーが描かれる。ハスハ13支隊の中でも配備機体数が多いディスターブ隊がナカカラと共に独立することになると、AP騎士団は総力がかなり低下することになるのだ。またマルコンナ隊がナカカラに出ているという点にも注意。本来はシーゾス王国(11巻巻末の地図参照)に駐留している部隊である。
ただちょっと疑問なのが、今回は共和国を構成する各国とそこに駐留する騎士団(例えばナカカラに「駐留中」のディスターブ隊など)との癒着が見え隠れすること。一応「KF」ではハスハント共和国にいる固定部隊とダンダグラーダ支隊以外は、数年毎に持ち回りで駐留国を移動するという設定になっていたので、ナカカラの独立に対して「そこに駐留していた」ディスターブ隊が助力するメリットって少ないんですよね。うーむ。
ついでに・・・p42の1コマ目、2人のファティマはゲンジャとベクターのパートナー、ポーラとエイジアか。
(2003.08.14)

 

■ アルル感涙 (p45〜)


傭兵ではなくハスハの騎士として迎えられるアルル。以前考察で書いたんですが、アルルやセイレイ、マロリーの存在意義は、いずれ訪れるコーラス26世の戦いまでに「コーラスの種を星団にばらまき、星団全体をやがてコーラスの元に集わせる」ことにあると思うんですよね。フィルモアを恨んでいるセイレイも魔導大戦を通して過去の遺恨を捨てて成長していくのかも知れない。彼女たちが今後どのような騎士たちとつながりを持っていくか、注意して見ていきましょう。

マギーがアルルにツッコんでいるように、FSSのキャラは登場する度にしっかりと服装を着替えていることが多く、アルルのように服装がずっと同じキャラというのは基本的に少ない(ドラゴンたちまで模様替えするし・・・(^^;))。「着替える」というのは生きていればごく普通の行為なのだが、これをやっていないアニメとかマンガ(そして映画)がまだまだ多いのも事実。永野センセーのこだわり(というか感覚的なモンか)が生んだ会話ですね。
(2003.08.14)

 

■ シアン来訪 (p46)


相変わらずのマシンガン・トークと出るたびに違う髪形でハスハ入りしたシアン夫人。マギーがどうやってハスハに来たのか聞いているが、クラトーマを連れてきているのであれば、おそらく彼女のマスターである慧茄と共に降り立ったであろうことが予想される(この後で出てくる真紅のファントムに便乗)。

それにしてもシアンの交友関係は広過ぎ。カイエンとつるんでいたことも影響していると思われるが、慧茄(フィルモア)、ミマス聖帝(バキン・ラカン)、マギー(ハスハ)、ついでに天照(A.K.D.)とほとんどの大国と何らかのルートを持っていることになる。せいぜいトラン連邦とのつながりが見えて来ないくらいか。星団法運営委員会を相手にブチ切れることができるというのも納得である。

シアンさんの涙、いいシーンですね。今までのFSSで一番キャラの心情を描いているシーンかも。
(2003.08.14)

 

■ ロッゾの展開位置とAUGEの参戦 (p52〜)


星団で最も美しいMHがAUGEであることを証明するため、おそらくは単身アルル狙いで参戦したグリ−ン・ネイパー。セイレイもアルルを付け狙っているのに非常に迷惑なケンカの売りっぷりである。
p49からのアルルとゲンジャ、ベクターの会話については、11巻の巻末にある地図を確認してノウランとロッゾ帝国騎士団の配置を把握していないとちょっと判り辛い。ロッゾが動き出したのは展開位置の南側に駐留していた部隊、つまりアルルの迂回ルートにいたはずの1個中隊がAUGEにより瞬殺されたためである。北側にいた2個中隊とその西側の部隊が南下したのは、瞬殺された部隊から増援を送るように連絡が入ったためであろう。つまりこれを足止めするために向かったゲンジャとベクターは、偶然にもアルル(エンゲージ)vsネイパー(AUGE)の一騎討ちの場を作ってしまったことになる。

p50のユリケンヌのセリフ「マスターこの弾道は!」は、p55のセリフ「出力系統がMHと異なります!」に続く。んで、アルルがヴーグラ騎士団(ロッゾの宮殿騎士団)のヘルマイネに驚いている間にユリケンヌはイレーザー音の索敵に入るのだが・・・。「2時」の方向とユリケンヌが云っているのに、左側に視線を移すアルルってのは・・・センセーのミスかな?

ヘルマイネの騎士やファティマが無事なのは、おそらく「AUGEがエンゲージを討ち取ったこと」を見届けさせるため。ネイパーはわざわざ「証人」を用意した訳ですね。イヤな性格してます。
(2003.08.15)

 

■ AUGEの一撃 (p54)


AUGEが繰り出した一撃目は鎌の切っ先を逆に向けたおそらくは挨拶代わりの峰打ち(先端部のビームはちゃんと斬れそうだけど)。この一撃でやられるようなら挨拶を交わしてからのタイマン決闘も必要なしと考えたのだろう。AUGE周辺の土煙の立ち方、エンゲージの吹っ飛び方などから、そのパワーが並みのMHを凌駕していることがわかるはず。
肩から伸びているバインダーの内側に1つだけ微妙な形状のものが見られるが、これがネイパー自身がp66で口にしているケン玉フレイル。もともとはテロル・ミラージュのオプション武装として開発されたもので、第8巻収録時に変更・カットされたページ(TOJ#7p36に収録)でアイシャが「マニュアルにあった」とか云ってた天照の悪乗りアイテムである(天照本人は「上出来」と云っていたけど)。
(2003.09.12)

 

■ ユリケンヌによるAUGEの説明 (p55)


パニクってるアルルに、対峙しているロボットがマシンメサイアであることを告げるユリケンヌ。しかし、AUGEは作成後に様々な改良が加えられているものの、本来はマシンメサイアよりもさらに古いAD世紀から残るマシンメースである。ユリケンヌ(と彼女を作成したアルセニック)はAD世紀以前のメースについてはおそらく知らないために、「MHではない」=「前身のマシンメサイア」と判断してしまっているのだろう。
9巻のネッド・スバースが出ていたエピソード(第5話Episode3)において、ヨー・タイインの部下たちが空を高速で移動するファロスディー・カナーンの兵器に対して「マシンメサイア」と云っている描写があったが、これも「自分たちが使用している兵器と同じモノを敵が出してきた」と誤解しているのであって、目の前の兵器がマシンメースであることを知らなかった(もしくは焦ってそう呼んでしまった)という、今回のユリケンヌと被るシーンになっている。

こういった「設定」と「キャラの知識」とのギャップをちゃんと描くあたりがなんとも面白い・・・と思ったのだが、p57ではネイパーも「マシンメサイア」って呼んでるんですよね。考えすぎなのか、ネイパーもメースを知らないと考えればいいのか(ネイパーは2200年代生まれ)・・・その他の資料でも超帝國の兵器はマシンメサイアになっているし、センセー自身も混乱している様子。
(2003.09.12)

 

■ はめられた? (p56)


アルルが「はめられた?」と思ってしまったのは、AUGEの威嚇の一撃に焦って回線オープンの要求にのってしまった結果、マスコミを通じて自分の位置を周囲に教えてしまった・・・迂闊!と考えたため。アルルたちがここにいることが報道されれば、ここまでどの部隊にも見つからずに移動してきたことが無駄になるし、「アトール皇帝直属の聖導騎士団のMH」がナカカラ方面に移動していたことが周囲にばれれば、ナカカラ駐留中のディスターヴ隊が警戒する可能性が出てくるのだ。また、何よりもセイレイに位置がばれればナカカラに着く前に戦闘になる可能性が高くなるということを彼女は恐れたのである。

もっとも、アルルの位置はセイレイにはバレバレだったようで、この後にタイミングよくセイレイが現れるのも、公宙上からノウランを監視しており、エンゲージが出てきた時点で既に降下を開始したためなのだろう。
(2003.09.12.)

 

■ AUGEの操縦方法について (p56〜)


ネイパーのコクピット内での出で立ち(裸にコードだらけ)を見ている限りでは、やはりAUGEはファロスディー・カナーンのメースに近い(9巻p183のスキーンズなどを参照)コントロール・システムであること、またスロウランサーの使用時のセリフから脳波コントロールによる制御も併用していることがわかる。

ファンタスマゴリア(時間が停止する空間)に保管されたAUGEは、数百年、数千年という歴史の中で、当初の搭乗者はもちろんのこと、自身の作成者や技術者を失ってきたはず。また、メースからマシンメサイアへ、そしてMHへと周囲の技術が移行していく中で、ブラックボックスと化した旧システムを維持できるはずもなく、新たな技術を導入せざるを得なかったのだろう。「KF」ではファティマの導入によりAUGEのコントロール・システムは本来のシステムと衝突したため、星団最初の4ファティマを作成したリチウム・バランスにより選任のファティマ「ダイオード」が作成されたことになったと記述されている。

彼女のコントロールは「半融合制御システム」と呼ばれるもの。おそらく搭乗中は「操縦」や「操作」を行うのではなく、機体の生体ユニットとして稼動しているものと思われる。
(2006.05.01)

 

■ ロッゾの使用するMH (p60)


見た感じ・・・であるが、ロッゾが使用するMHの中にはデヴォンシャ型のMHやハグーダが使用していたマグロウが混じっているようである。デヴォンシャはヘルマイネと同じくパラベラム・スタームがマイトであるから、ロッゾで使用していてもおかしくはないか・・・では、マグロウは?
うーん、一応、ハグーダがライセンス生産しているという設定になっているので、ロッゾ国に輸入している、ということになるだろうか。
(2003.09.13)

 

■ 剣聖の助太刀 (p62)


危機に陥ったベクターを救った真紅のMHファントム(モノクロマンガのため色彩が判り難いが)。ここで彼を救ったのはフィルモアの「おばあちゃま」こと剣聖慧茄である。ではなぜ、慧茄がここでハスハに味方するのか。その理由はp75pと188を合わせて読むとぼんやり見えてくる。

ナカカラは彼女の姪ボルサ・バスコがかつて治めていた土地であり、慧茄にとってもそれなりに縁の深い土地である(ただしボルサは慧茄よりも年上で、ハスハ統一戦争に慧茄は参戦していない)。ボルサの時代に友好国としてハスハを支えて来たフィルモアが、今回は手の平を返してハスハを見限ってしまっているのが癇に障る・・・ということらしい。もっと正確に云えば、そういったナカカラの土地柄とダイ・グがボルサの親戚筋であるという関係をも利用して、元老院が裏で動いているというのが許せない、といったところだろうか。
んが、この理由だけでフィルモアの「国家としての意志」を無視して彼女が単独で動いた、というのは何か妙な感じである。p190に書いてあるような「リハビリ」のためにロッゾのMHを叩いたというのも迷惑な話であるし、アルルたちに味方する理由にはならない。うーん、どうなんだろ。

懐園剣の所持者であるアルルを守ろうとしたとか、カイエンへの弔いとしてハスハに手を貸すことにしたとか、その辺の理由があるとも思えないし。個人的にちょっと保留にしたい部分です。

ところで・・・ファントムの持ち出しやボォスへの移動などは、フィルモアじいちゃんクラブの支援があって初めて可能となる行為だと思うのだが・・・じいちゃんクラブの面々は慧茄がMHに搭乗できない状態にあると考えていたはず・・・これについては後述する。
(2006.04.26 修正)

 

■ ヤンキー王女参戦 (p64)


エンゲージSR3でついに降下したセイレイ。彼女の搭乗するエンゲージはコーラス23世が使用したアーリィ・ジュノーンの再組み立て版(設計の修正と作成はダイアモンド・ニュートラル)という設定。ジュノーンにあったエンジン・トラブルも解消されているとのことなので、ランド・ブースターもつけて出陣すると思ってたんですけどね。2巻と比べてみると、所々にデザインの変更が見られてなかなか面白いです(センセーの描き方の変遷もわかるし)。

ベイルや部下たちのベルリンSR2がもつ旗に描かれている花びらのようなマークが、セイレイの個人の紋章と思われる。バランカやマイスナーではなく、コーラス家直属の騎士団であれば、「楔(2巻p37参照)」の紋をつけた宮殿直属の部隊を連れているのが普通。今回はセイレイ自身も「トリオ騎士団をあずかる」と云っているように、彼女の出陣に当たって換装したベルリンで編成された討伐隊が組まれたのであろう。
(2003.09.14)

 

■ ダイオードのコクピット (p66)


通常のファティマと制御システムが異なるとは云え、あまりにも乙女チックなダイオードのコクピット。飾ってある写真は首もとのタイとダーツの入ったスカートから、星団初の4ファティマ、つまり彼女の姉に当たるファティマの中の誰かに見えなくもない(インタシティの遺影か?)。

それから、「重戦機エルガイム」の頃より続く悪夢の「象さん貯金箱」。「BUSTER」という文字からも読み取れるように、おそらくはバスター・ランチャー使用時の最終スイッチであろう。実はA.K.D.のホエール型戦艦ミルにもこの象さん貯金箱が置いてあり、やはりバスター・ランチャーのトリガーとなっている(7巻p180参照)。
足元にある某アップル・マーク付きのノートPCは、何に使うんだろ?センセーのことだから「これが半融合制御システムの正体!」とか云いそうですが。

ついでに、ネイパーが上を向きながらダイオードと会話しているので、このAUGEにもプロムナード(騎士コクピットとファティマ・ルームをつなぐ通路)があることがわかる。また、クロス・ミラージュからビヨンド・シーカーをぶん取ってきたそうなので、先月号のアルルを捕捉した機械がそれとわかる。ブッシュの中に隠れるくらい小型なのね。
(2003.09.14)

 

■ 星団法の改正 (p67)


ネイパーが話している星団法の中で、3029年に一部改定とある。つまり魔導大戦開戦の1年前である。意外と大きな戦争が始まることを見越して星団法、とくに今回のような交戦権の順位について改定を加えたのかも知れない。ネイパーも3010年にジョーカーに帰還した後に、しっかりと星団法の改定について勉強していたのね。さすが法の番人と云うべきか(でも、星団で最も法を無視している天照におしおきを食らったりするのね)。

さて、軍師的な発言を返すならば、ネイパーは所属不明のMHに搭乗し、尚且つ名乗りを上げていないので、交戦記録を明確に残せる状態には成り得ていない。この点において所属と目的を宣言したセイレイは「騎士の名誉の確立」がネイパーよりも先んじて行われていると判断でき、今回の戦いにおいてはセイレイに交戦権があると云えるのでは・・・。
(2003.09.14)

 

■ 漢字だらけで夜露死苦 (p68)


シクローンが云っている死美羅は「シビラ(Sybilla)」、美微暗・飢州徒鬱怒は「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」、美苦取案・目偉伝は「ビクトリアン・メイデン(Victorian maiden)」である。
シビラはシンプルでオトナっぽい感じの衣類の他、生活雑貨やアクセサリーまで幅広い商品を世に出しているブランド。
ヴィヴィアン・ウエストウッドはパンクでキュートな衣類やバッグ、ハンカチーフなどの小物、男物のアイテムも生産しているブランド(Tシャツ1枚で1万オーバー)。
ビクトリアン・メイデンはエレガントでコケティッシュ、うーんと、ゴスロリ系と云っていいのか?そういう感じの衣類と小物を出しているブランド。
いずれも「人気はあるが身に着けるヒトを選ぶ」ブランドなので、貧乏人はもちろん、センスのないヒトにとって縁の無いブランドである。ヤンキー娘でお姫様のセイレイの御用達ってところか。

支離滅裂、阿鼻叫喚、本末転倒は確かに誰でもわかる言葉だが、実際は口に出したり目にしたりする機会は多い方ではない。むしろセイレイの性格を表したような言葉の羅列にシクローンの「マスターをおちょくるような性格」が見え隠れするのは気のせいか。

ところで、「ジョーカーで漢字を読める人物は天照ただ一人」という設定を思い出すと、ここでのセリフも本来はジョーカーで話されているであろう共用語で会話されていることになる。セリフの中でも「ワケワカんない漢字」ではなく、「ワケワカんない文字」となっており、ここで使われている漢字はあくまでも「ジョーカーにおける漢字のような意味合いを持つ文字」を「日本語における漢字」に置き換えているだけ、と解釈しなければならない。ちゃーんと、先月から一貫して「漢字」とは書いていないのが心憎い。
ただし、今回は「自惚れ」の読み方についても触れているので、漢字、平仮名、カタカナ、アラビア数字とこれだけごちゃ混ぜになっている日本語の現状が、ジョーカーの共用語にも起きている・・・と受け取れる。ま、この辺は気にしなくてもいいんだろうけど。

オマケ。「じゃかあしい」は播州弁。コーラスの母国語・・・な訳ないか。あと「色毛虫」とは色気を振りまくヒトに対する野次(本来は「色気虫」と書く)。もしかしてネイパーがコクピットの中で裸になっていることを知っているのだろうか。
(2003.10.13)

 

■ 日焼け王女 (p72)


日焼けしやすい体質であることが明かされたアルル。「日焼けしやすい」と「色黒」はもちろん違うので、これだけ彼女が悩むのは「本来は白い肌」だからなんでしょうね。
メロディ家が潰れてから日陰者のような生活を強いられてきたことを考えると、なんつーか、産まれからして日向とは相性が悪い体質というシャレのような気もしてくる。そういえば初登場時も日当たりの悪そうな場所でした(10巻p184)。
セイレイにツッコマれた「もん」・・・ブチ切れるシーンでも「もーん」を連発しているのが笑える。
(2003.10.13)

 

■ オーロラビーム (p73)


スクリティが放ったオーロラビーム、その名のとおり強力な磁気嵐を発生させて電子機器を撹乱する兵装と思われる。MH自体にある程度のEMPシールドは装備されていると考えられるが、モニターや感覚器など電磁波に繊細な部分はやはり影響が出てしまうのだろう。前回のグランドジャマーといい、スクリティにはこういった特殊装備が目立つが、スクリティ・ポリティ隊は戦闘に勝つことよりも情報を確実に持ち帰ることを目的とする(戦闘妖精雪風みたいな)警察騎士団であるため、こういった「イタチの最後っ屁」のような兵装が多数追加されているのであろう。

p74の1コマ目、電子機器に影響のある兵装であることを読み取り、ネイパーはすぐさま光学系兵器のスパッドから実剣に持ち替えていることがわかる。さすがナイトマスターってとこか。彼ならもしスクリティが斬りかかってきても、振動で察知して対応することが可能なのだろう。
ついでながら・・・「牽引ビーム」という単語を見て「スター・ウォーズ」を思い出しましたね。
(2003.10.13)

 

■ 慧茄のセリフから (p75)


前述のとおり、慧茄がどのような目的でハスハに味方する行動をとったのかイマイチ不明・・・。ですが、ここでは「その守護国のひとつフィルモア帝国さえも今回の動きは・・・奴らめ」というセリフについて一応細かく見ておきます。

フィルモアは見かけ上はハスハの援軍としてメヨーヨと対峙し、一応は「守護国」として動いているので、ここで彼女が云っている「動き」とは裏の動き、つまりブーレイ傭兵騎士団による戦火の拡大を指している(p179で明かされる)。慧茄が口にしている「奴ら」とは今回の戦争をハスハ解体のチャンスとして暗躍し、ナイアスたちをブーレイ傭兵騎士団として派遣したフィルモアの元老院と帝国議会の連中である。
一見、堅固に見えるフィルモアもこういった内事情を抱えていることは覚えておいた方がいい。表と裏を使い分けるシステムがあるからこそ、皇帝の権限を無視したところで権力争いが起きてしまうし、そういったイザコザもあってクリスの父親バーバリュスがカステポーに来ていた、ということにもつながっている。

次に、超帝國「皇帝」ヤーンについて。カイエンの母親であるヤーン王女は「ディスターブ皇帝団3群皇家シャンシャン帝國ペジック王国第18王女」という肩書きをもっていたのだが、どうやらこれも「皇帝」のひとりであったことを示しているらしく、ヤーン王女が聖宮ラーンを造ったということらしい。んが、彼女はナインと共にスタント遊星の惑星バスターに向かったはずなので、「超帝國の皇帝」として聖宮ラーンを造り上げたのがいつの時代なのか、この辺がちょっと微妙。

また、聖宮ラーンが落ちない限りはハスハも沈まないとまで云い切るその根拠についても不明。魔導大戦の後半では多くの騎士がこのラーンに結集するらしいので、この辺の謎解きは今後の展開を待ちましょう。ちなみにラーンはカステポーにあるので、ここを攻め入ろうとする国があればドラゴンに滅殺されるはずである。
(2006.04.27 修正)

 

■ ネイパーの退場 (p76)


「見せ場もなく終わってしまって観客の皆様に申しわけない」状態のネイパー。ナイトマスターの彼も「若さ」には敵わなかったという感じである。

10巻くらいから読んでいて感じるのだが、現在のFSSの主役たちは連載が開始された時期から比べて確実に第2世代に移行している。2200年代に生まれたネイパーはもちろんのこと、魔導大戦の勃発と共に死んでしまったカイエンもやはり前時代の騎士に属していると見なしていいだろう。彼らがどんなに強くとも、時代の流れの中では既に過ぎ去った世代であるということを、センセーは表現したがっているのではないだろうか。

んで、第2世代にいろいろと託す役回りとして慧茄が出てきたと・・・。そう考えると、第1世代で最も重要な人物、ボード・ビュラードがどのように絡んでくるかが気になるところ。これまでほとんど絡んできていないのが逆に不気味っす。
(2003.10.13.)

 

■ コーラス御三家の会議 (p77〜)


久々の登場となるエルメラ・コーラス、リザード・マイスナー、トラーオ・バランカの3人。トラーオの兄ルーパス・バランカの姿が見えないが、彼は摂政として4世(フォース)の後ろに立たなければならないので、こういった裏方の話し合いはトラーオが担当なのだろう。何気に集まっているようでコーラス3王家のトップ会談であることに注意。んでは、細かく見て見ましょう。
あ、その前にエルメラが口にしている「いてこましたろかー」は浪花弁。やっぱりコーラスの母国語は関西系なのねん。

まず、セイレイの「交配相手」について。とりあえず現時点では不明・・・前フリから行けばジャコーとかダイ・グなのかも知れないけど。ただ、今後のコーラスを考えてみるとなかなか面白い。セイレイに子供となるコーラス5世(フィフス)は強力な騎士であるとされている。また、リザード・マイスナーは子供がいないので、甥のイェンテが家督を継ぐことになるのだが・・・そうすると、マロリーとの子供で純血の騎士の血を継ぐ者がいずれマイスナー家の国王になるということ。そしてバランカだが、バランカ家の王子マヨール・レーベンハイトは家を出ているので、おそらくはトラーオとシャーリィの子供・・・たぶんランダースの名とファティマ・エフロシューネを継ぐ騎士がバランカの国王になるはず。
つまりコーラスの次の世代、とくに天照と戦うことになるコーラス・フィフスの時代では御三家ともに騎士の血をもつ最強国家になる訳だ。これでアルルが戻ってきて血を遺せば鬼に金棒という感じだろうか。着々とコーラスのお話の準備が整っていることに注意。

んで、視聴率92%・・・「コーラス王朝国内の」視聴率ってことだろうが、かなり多い数字である。ソープが中継を見たかどうかは不明であるが、オージェが参戦した事実は確実に耳に届くはず。しかも友好国コーラスとも事を構えたということで、ネイパーのお仕置きはほぼ確定と考えていいだろう。・・・意外とこの辺のゴタゴタでDr.ダイアモンドにAUGEを渡すことになるのかも知れない。

メロデイ家に対する複雑な思いについて。メロディ家はコーラス22世の姉から分岐した家系で剣聖ハリコン・ネーデルノイドを輩出している。ハリコンはロンド大陸を制覇した人物であり、コーラス3王家がこうしてコーラス王朝を治めていられるのも彼の活躍があったからこそ。アルルの父ピアノ・メロディがフンフト・アトールとの不義で家を潰してしまったとは云え、現体制の礎を築いた王家を体面を気にして取り壊したということで、3王家は心穏やかではいられないってことなのだろう。以前にも書いたけど、この辺の采配でサードが鶴の一声でなんとかしてくれれば、アルルが行方不明になることも無かったはずなんだよね。
(2006.05.16 修正)

 

■ マロリー登場 (p81)


やっと登場してくれたマロリー・ハイアラキ。桜牧師がワスチャに継いでお気に入りキャラなのだ。んで、ディモス・ハイアラキの最後の弟子ってのがポイント。ミラージュ騎士団を出てから行方不明になっていたはずのディモスだが、結局親族を捕まえて技を伝授させてたのね。ミラージュ騎士団でも有名だったと云うより、おそらくはディモスの愛弟子ということでミラージュに入団させようとする動きもあったのだろう。要するにかなり強い騎士ってことですな。

彼女がカイエンに会おうとしていたのは、おそらく剣聖ディモスを介してカイエンが兄弟子(あにでし)に当たるから。・・・おそらく1回ケンカを売ってみたかった、という感じだろうか。んで、マロリーがなぜここでムンスターに向かわなければならないのか?これが問題。
見直してみると・・・リザード女王はセイレイのサポートとしてマロリーを送ることを考えていたようである。んが、マロリーは現在MHを持っていない。したがって、「MHを贈るからそれを受け取ってセイレイを援護してね〜」という連絡を入れたことが予想される。つまりムンスターにMHエンゲージ・オクターバーSR2(旧設定ではMK2)が届くため、それを受け取りに行こうとしているのではないだろうか。

ついでに、彼女の兄であるビュラードも既にハスハに入っているのだが、「ISSUE」の記事では同じくビルトを半脱ぎさせてヒッチハイクで入国したことになっている・・・血は争えないってことで。
(2003.11.13)

 

■ ミラージュの騎士たち (p87〜)


さて、新型のドーリーでご登場のミラージュ騎士たち・・・4台のドーリーにはアイシャ、ブラフォード、キュキィ、ステートバルロが乗っていたことがp132で明かされる。持ち込んだMHについては・・・設定どおりならば、それぞれフレーム・ハカランダ(フレーム・ミラージュのバスター砲なし版)、テロル・ミラージュのロービジ、エレシス、テロル・ミラージュのブラックの4つになるはず。なんだけど・・・これはボツ設定になるかも。

それから、なぜアイシャたちがムンスター方面に向かっているのか、これがよくわからん。ログナーがムンスターから暇そうなヤツが来ることを語っていたので、ムンスターから入ってくるミラージュと合流するために向かっていると思われるのだが・・・。この後のシーンでマグダルを助けた人物ランドこそがログナーの云っていた「暇そうなヤツ」になるため、彼と合流するためと考えるのも無理がある。
まさかドーリーの中身は空でこれからMHを受け取りに行くとも思えないし・・・。うーん。
(2006.04.27 修正)

 

■ アイシャの降格について (p88)


マロリーが口にしているアイシャの「降格」だが、これはルーマー家が天照家直系の家系ではないことを知らなければ云えないセリフである。11巻に書いてあるように天照家の帝位継承権は1位がソープ、2位がラキシス、3位がアイシャ、4位がワスチャとなっているのだが、事実上、ルーマー家に籍を移したアイシャよりもワスチャの方が順位が高い位置にある(ただし、ワスチャは現時点では継承者として加わっていない可能性もある)。兄と同じく他国の事情にも異様に詳しいマロリーに脱帽。
(2003.11.13)

 

■ ヘアードとランド (p91〜)


刺された左足を膿んでしまったヘアード。彼女を救ったのは、ランドアンド・スパコーンであった。ブラック・スリーの襲撃の時もそうだったが、このヒトはホントに強い。
さて、ランドはミラージュの名を捨ててハスハに来たらしいのだが、「KF」によるとナンバーの返上による退団という位置づけで、今後は若い騎士たちのサポートに回るという説明になっている。天照も「目をつぶって」と云っているので、ミラージュのマークはつけていないものの、実質ミラージュの騎士同士で連携して行動することになるのだろう。ランドがMHを使用するか否かは不明だが、ティスホーンの活躍も見てみたいところである。

それにしてもバッハトマの忍者集団って、初登場はジャコー、今回はランド、とミラージュの騎士にやられまくり。意外と巴御前ってミラージュを引き付ける疫病神なのかも(メヨーヨにいた時はアイシャを引っ張ってきちゃったし)。
(2003.11.13)

 

■ ブーレイ傭兵騎士団の移動 (p97)


フィルモアのサイレン部隊とボストークが戦っている場所だが、サイレンの騎士が「東Bの観測隊」と云っていることと、フィルモア本隊がナカカラ・クルル王国と会談中であること、さらに11巻p204の戦力分布図と見比べて考えてみると・・・おそらくは王都ナカカラの東側と考えていいだろう。「残存MHの掃討中」にブーレイが乱入してきたらしいので、メヨーヨ本隊の退陣で逃げ遅れた別働隊を追ってきたところで鉢合わせたってとこか。
(2003.12.11)

 

■ ナイアスの複雑な位置 (p99〜)


教導騎士団こともえぎ騎士団(シルチス・グリーン)の団長でありながら、何故か「白の一番(ブランシュ・トップ)」と呼ばれるナイアス。11巻のカラーページに紹介されているとおり、ナイアスはノイエ・シルチス白騎士団の一員でもあり、白騎士の称号をもつフィルモア最強騎士のひとりである。ノイエ・シルチスお得意の官位の兼任が起きていることが読み取れる。ただし、ここで云っている「白の一番」はフィルモアにおける三銃士の扱いではなく、あくまでもブーレイ傭兵騎士団として動いている今回だけの作戦コードであると思われる。一応白騎士団の団長であるジャンシー・ガラーが三銃士な訳だし。

つまり「白の一番」とは虹の7色をもつブーレイとは別に「白」のファントムを使用している今回の状況下での呼び名であると考えられる。
「ブランシュ隊長」と聞いたヨーンがナイアスに対して「白の一番」と言い換えているのもそれに気付いたため。p99の段階ではヨーンは彼女たちがフィルモアの騎士団であることを知らないので、「赤の一番」などフィルモア三銃士の呼び名と重ねては考えていないはず。「白」のファントムを使用している隊長が「白(ブランシュ)隊長」と呼ばれていることから、それが偽名であることに気付いてここで疑念を口にしている訳だ。非常に細かい演出です。

んで、ナイアスたちがここでブーレイとして動かなければならないその理由だが、これについては11巻の考察でまとめたとおり、戦火の拡大を印象付けることでナカカラ・クルルで行われている会合を急かし、ハスハの解体を狙っていると考えられる。ブーレイを動かしているのは「帝国越権のとある機関」となっているが、これがレーダー8世を中心とするフィルモア老人クラブの差し金と考えると、p75の慧茄のセリフと矛盾が出てくる(彼女は老人クラブに近い位置にいるから)。なので、やはり元老院および帝国議会の中で策略を練っている一部のグループの差し金と考えるのが妥当。
(2003.12.13)

 

■ ナイアスの昔話 (p102〜)


ナイアスの過去の話。ノイエシルチスを首になった・・・というのは、p104で明かされているとおり、天位授与を蹴ったために追い出されたと考えていいだろう。彼女がいた「小さな傭兵団」というのがどの騎士団かは不明だが、カイエンがヒッター子爵でいることを考えると、この時の話はカステポーが舞台で、彼女もカステポー周辺で活躍していた傭兵団にいたのかも知れない。
また、この頃のカイエンは既に「亜矢子」と知り合いだったようである。つまり、ミューズの修行開始の頃、つまり星団暦2989〜2990年(コミック4巻、トラフィックス1)より後の話である可能性が高い。

あと、ナイアスは11巻でやたらと香水臭いことがノンナやキルスティン(プロムナード)によって語られていたのだが、おそらく「ワモンゴキブリみたいな香水」をつけていたカイエンの好みに合わせて香水をつけるようになったのだろう。カイエン自身はそんなに浴びるほど香水をつけていたとは思えないが、ナイアスの性格から云って、ちょっとヤリ過ぎているのかも知れない。香水のつけ過ぎは意外と本人は気づかないようである。
(2003.12.13)

 

■ センセーの趣味のお話 (p107)


ナイアスが泣き喚くシーン、p68のセイレイに引き続いてまたもやセンセーの趣味?丸出しな単語の応酬である。
「シャマスク」は無駄な要素を排除したシンプルなスタイル「ミニマリズム」を打ち出したブランド。「プラダ」は革製品からナイロン製品に移って爆発的に売れたカバンのブランド。やはりミニマリズムの流行にも一役買っている。「シガーソン・モリソン」はニューヨークのワーキング・ガールの間で流行した靴ブランド。3つともニューヨークのOLファッションの定番らしい。

「ピエール・エルメ」は現在パリで最も有名なパティシエ、ピエール・エルメがプロデュースしたケーキ・ショップ。センセーが書いてある赤坂のホテル・ニューオータニの他、舞浜イクスピアリ3Fにも店舗があるらしい。イスパハン(連載時は「イスファンファン」で表記されていた)はマカロンの間にライチとフランボワーズとバラのクリーム、上にフランボワーズとバラの花びらが飾っているケーキだそうで、値段も500円と高め。桜牧師も甘いものに目がないですが、流石に1個500円というのは手が出せませんね〜。
(2003.12.11)

 

■ 理想への道程 (p108)


ヨーンが最も嫌う騎士への道を「理想そのもの」と云うナイアス。ヨーンは「騎士の風上にも置けない人物が騎士となっている」ことに反発しているのであって、裏を返せば「汚い権力を捨て、地位を望まず、剣すら持たなくとも戦おうとする人物」こそが真に騎士と呼べる人物であると心の奥底で願っている訳ですね。ナイアスはそれを見抜いたと。ヨーンを見送ったナイアスは、彼を放逐したのではなくて、逆に「そこへ向かう」ことを促しているのでしょう。

デコースはなぜヨーンを殺さなかったのか、彼がヨーンに残した道もまた「騎士には成りたくないがファティマは手に入れたい」という狂気の道である。彼はヨーンに生きることを強要(または許容)することで、狂気を継がせたのか、それとも狂気を見抜いて生かそうとしたのか・・・。
また、ヨーンは騎士を否定してはいるが、彼自身もまた、ファティマの存在意義を否定する道(=騎士に在らざる道)を選んでいる、という見方もできる。もしかしたらデコースはその「間違い」を気づかせる機会を与えてくれたのかも知れない。

そしてp110の見開き。ヨーンとエストが描く影が面白い。ヨーンから見て「M」・・・MirageのM、ManのMってところか。エストから見れば「W」・・・WayのW、WomanのWである。ヨーンから見て、道のりの先にはエストが歩いているが、その道のりは右往左往している。そのゴールに待つモノは何か。ヨーンの向かう道は矛盾に満ちていて険しい。
今後の展開に期待するなと云う方が無理である。

さて、今回は「ヨーンとフィルモアのつながり」が描かれたというのが興味深い。星団暦18097年において、バッシュの装甲から削りだした剣をもっていたモンド・ホータス・・・彼は遥かな時を越えてエストを手にして黒騎士となったヨーンの生まれ変わりのようである。そして彼が背負っていたのはフィルモアの紋、そしてラルゴのアウチ(「EG」参照)であった。
また、パナロッテが着ていた白と緑の衣装は、星団暦3000年代においてはミューズの着る衣装と酷似している(p197)。トラフィックス2でヨーンとミューズが出会っていることを思い出して欲しい。
これらの符合と「トラフィックス」の名を冠するエピソードであることから察して、センセーがとんでもない大仕掛けを用意していることが予想される。
がんばってついていきましょう。
(2003.12.13)

ん〜、p109のナイアスのピアスがこのコマだけ過去につけていたピアスになっている。前のページまでは円形なんだけど。

 

■ ムンスターにて (p112)


ムンスターに揃ったアイシャとマロリーとヨーン。なぜ3者がここに集合したのか。

前述のとおり、マロリーはおそらくエンゲージSR2を受け取りに来たため。このシーンはアイシャにムンスターへ送ってもらって受領した後のシーンと考えられる。
アイシャについては不明。もしかしたらこの後に集団で来るミラージュ騎士団のために、下準備をしているのかも知れない。この2人が一緒にいるのは、単純に気が合ったためか。アイシャと一緒に移動していたブラフォードの行方も気になるところだが、ムンスターはどうやら戦時中にも関わらずヒトや物資の出入りが激しい港のある都市らしいので、ここからバッハトマに向けて潜入を開始したのかも知れない。

んでヨーンだが、彼はナイアスと共にナカカラ・クルル王国とギーレル・ハスハ王国の国境付近にいたはず。なぜムンスターに来たのか・・・p112の2コマ目のセリフでヨーンはバッハトマに近づきたがっていることがわかるので、こういったヒトの出入りが激しい場所でバッハトマへ潜入する手掛りを得るチャンスを窺っていたことがわかる。・・・結果として、この判断は正しかったことになる訳だが。
(2004.01.12)

 

■ ヨーンが企んでいたこと (p113)


「汚い騎士」としてアイシャを利用しようとしたヨーン。実際のところ、どうやって利用しようとしたのかイマイチ不明。身ぐるみを剥いで出てきたカードやIDを利用するとか、無理矢理脅してドーリーに乗り込むことで港をパスしてバッハトマに入国するとか、そういったことを考えていたのかも知れないが、そもそも一度完敗しているアイシャを利用しようってのが無理ありすぎ。逆にアイシャとマロリーに捕獲されてしまう。
まあ、少なくともここに来てヨーンはミラージュ騎士団のスカウトマンであるアイシャに捕まった訳であるから、結果オーライとも云えるが。

p114の2コマ目の動きが少し判り難いが、まず最初にヨーンが背後に近寄って、次にアイシャとマロリーが二手に分かれると見せかけるように移動、次にヨーンがアイシャを追いかけるために左に移動(この時のヨーンの残像がわずかに残っている。「パッ」はヨーンの1回目の着地音。)、んでアイシャとマロリーのフェイント後の着地シーンが描かれている訳ですね。このコマでヨーンは高速移動中で、アイシャの背中側の「ビュンッ」という文字くらいの位置にいるはずです。んで次のコマでアイシャの背後に着地したのを聞いたために、彼女は振り返ると。アニメにしたら1秒ないシーンだろうけど、想像してみるとなかなか面白いカット。

ヨーンが云っているイカレた女はもちろんキュキィのこと。あれが3001年のことだから、実に29年も経っている訳ですよね。アイシャが驚くのも無理はないです。つーか、ヨーンから見て29歳分年をとっているはずのアイシャが全く変わっていないのもどーしたもんだか。この後で出てくるシケルブ・ユキノジョウの奥さんとアイシャは同い年なのよん。
(2006.05.16 修正)

 

■ ランドの持ってきたモノ (p116)


ランドの使用しているドーリーはクロス・ミラージュ用のドーリー(確かテロルもこのドーリーだったと思うが、テロルはブラフォードとステートバルロがほぼ専任)である。ってことで、おそらくランドはクロス・ミラージュを持ってきているのだろう。ただし、ランドが乗り込むか否かは不明。個人的な予想では後々ヨーンが搭乗することになるのではないかと思う。
(2004.01.12)

 

■ マグダルの容態 (p117)


ティスホーンの診断を信じるならば・・・ボスやんはマグダルの大脳中枢を破壊したつもりでいたようだが、実際にはダイバーパワーを押さえ込むために、意識にバリアを張って眠りについているということになる。ダイバーパワーが何を根源として発せられるのかは不明だが、要は「スイッチを切る」ことで、「パワーが消失したように」思わせたってことか。大脳の中枢が本当に破壊されたのであれば、医学の範疇でも多少の異常があることくらい判別できるだろうしね。

ランドが云っている「ラーンで合流するマイト」だが、おそらくナトリウム・シング・桜子と思われる。「SW」でミラージュの紋をつけている桜子のキャラシートが掲載されているので、この辺のタイミングでミラージュとのつながりが出てくると考えてもいいのではないだろうか。
(2004.01.12)

 

■ シケルブ・ユキノジョウ登場 (p118)


カステポーのヴァキシティで預かり屋をやっていたシケルブ・ユキノジョウが再登場。このヒトもなんと40年ぶりである。シンジケートってーと麻薬や売春を行う大規模な犯罪組織というイメージだが、ここは本来の意味の「企業連合」のことだろう。カステポー中の預かり屋がムンスターで一儲けするために集まってきたってことか。年の功というか、ユキノジョウさんも預かり屋の中で既に長老組みになるんでしょーね。

ユキノジョウがランドに対して「お帰りやし」と云っているので、ランドはムンスターに降りてここを足場にしてマグダルを追っていたことが判る。

イヤリングのシーン。ユキノジョウは流石この道190年のベテラン。親子3人の正体をお見通しでイヤリングを渡してくれたんでしょう。ランドよりも渋いです。
(2004.01.12)

 

■ アララギ・ハイト行動開始 (p122〜)


さて、騎士警察を飛び出してきたアララギ・ハイトだが、彼がいるナカカラとハスハントの国境付近とは、実はムンスターからそう遠くない、少し西側に移動した地点である。彼もまたヒトの出入りが多い場所で何らかのチャンスを窺っていたのかも知れないが・・・うーん、何が何でもファティマを手に入れて騎士団に入ろうとしていたはずなのに・・・根本的に間違っていますね。

ハイトを見てカイエンと勘違いする人間が多かったらしいのだが、以前のカイエンは素顔が全くバレていない謎の人物であったはず(4巻p26の手配書を参照のこと)。雰囲気で勘違いされていたとするならば、少なくとも何らかの形で顔が公表されていたことになる・・・これはおそらく、エープ騎士団の総騎士団長になった時点で顔が公表されてしまったのだろう(たぶんサングラスをつけた状態だったんだろうけど)。

バギィ・ブーフが黒騎士デコースの右翼を務めたとなっているが、確かにハスハント戦の時のデコースのセリフから、ニュートン、マルティー、ハイドン、ブーフがそれぞれ2組交代でデコースの両翼を固めていたのがわかる。MHアウェケンの搭乗者である。

巴御前がヒッター子爵の正体を見抜けなかったのは結構笑える部分。
(2004.01.12)

 

■ バイズビズの登場 (p127)


バギィ・ブーフに話しかけてきた凶悪そうな兄ちゃんは、ミラージュに入団したバイズビズである。p143の5コマ目でソープが「ヴィンズ」の名を出していることからも、一応、確認できるのだが・・・この辺は「DESIGNS #1」を読んでないと混乱する。
カイエンを探していたのはやっぱりケンカ売ろうとしていたのか。マロリーもそうだけどみんな身の程知らずなのね。
(2006.05.06 修正)

 

■ 多重人格な天照 (p129)


天照の生み出したエイリアスであるメル・リンスと東の君が云い合っているシーン。
ボスやんですら「キル・マシーン」と称した冷酷非情のリンスだが、東の君のセリフでわかるとおり、リンスのこれまでのイメージはあくまでも「冷酷なまでの法と秩序の維持」を遂行している姿によって植えつけられたものであることがわかる。10巻のラスト付近でソープとソープ・ダッシュ、リンスと東の君の性格の違いは描かれていた訳だが(10巻p298)、彼女の性格設定は本来「慈愛」と呼ぶに相応しい。かつてカイエンの両腕を切断した時も、実は悲しい気持ちでいっぱいだったのかも知れない。

10巻の考察で「人格が4人分あるのではなく、ソープが便宜的に4通りの考え方に人格を当てはめている」のではないかとまとめたのだが、今回の会話はビリー・ミリガン等でお馴染みの脳内会議に近いモノがある。これを現実の世界でやってしまうのが神たる所以なのだろう。感情を持たずに形態反射を行っているだけ・・・という天照だが、彼が本来持つべき感情の欠片はこうやってエイリアスに溜め込まれている訳である。
56億7千万年後の天照というのは、案外、人格が統合されたことで発現する「真の人格」なのかも・・・と思ってみたのだが、天照大神になったアマテラスは既に人間的な感情を一切捨て去っているとのこと。じゃあ、リンスや東に溜め込まれた「感情」というのは、どこに行ってしまうのだろうか。うーん。

聖宮ラーンがパラ・サイマル(預言者や霊能力者のこと、ダイバー・フォースのひとつ)の聖地で、神官が集っている場所という設定、ル・ゾラやフリエといったダイバーの存在については、次巻以降につながる伏線として覚えておきたいところ。「ゴリゴリゴリ」という音の正体はp142で明らかになる。
(2006.05.06 修正)

 

■ アイシャが賭けたモノ (p133)


アイシャがヨーンに賭けようと思ったモノ・・・それはたぶん「天照に対する愛情」と「王家の責務」が乗った天秤なのではないだろうか。この後の会話を見ればわかるとおり、アイシャはヨーンに自身の姿を重ねている。
まるっきり勝ち目が無いヨーンがもしデコースに勝てたら、彼女は王家の責務(跡取りを産むこと)を放り出してでも最後まで天照一筋に生きる。ヨーンが大方の予想通りデコースに敗れたら、アイシャは天照を追うことをやめて、跡取りを産むことに専念する。そういう「賭け」をヨーンに託したのではないかと。
アイシャが跡取りを産まず、老婆になるまで天照の尽くすことは、連載開始時から既に決められていることである。ってことは、ヨーンの行き着く先も垣間見れる気がしませんか。

んで、なぜヨーンをノウランに向かわせるのか?これがわからん。いきなりデコースにぶつける訳はないだろうし・・・。前線の様子を探らせるつもりだろうか。
(2004.02.11)

 

■ アイシャとワスチャとコーダンテ家と (p135〜)


p135からのアイシャとサリオンのセリフでいろいろと明らかになる。アイシャの移籍の裏事情や、ワスチャと年が離れている理由、さらに先代ビュビュス・コーダンテの死の真実、シナーテ家の動乱などなど。モヤモヤしていたものがかなりスッキリしましたね。
アイシャが話しているその妹に、ヨーンはフェイツ公国で既に出会っているという点もまさに「トラフィックス」。ヨーンはワスチャ(ちゃあ)の裏事情を知らなかっただろうし、おそらくはアイシャが話している妹がワスチャであることも知らないでしょうけどね。

その他、考えた点をいくつか。

アイシャとワスチャの両親を殺したのがシナーテ家の当主であったということは、アイシャから見てサリオンは「親の仇の子」ということ。しかしアイシャはその後のサリオンによるシナーテ家当主の殺害も知っているだろうから、この2人は互いに複雑な感情があるということは覚えておきたい。さらに、アイシャが老婆になって引退する時には、その容姿(逆立った髪型)までも引き継いでミラージュを引っ張っていく役目をサリオンが負うという点である(p160からその発端が描かれるが)。複雑な感情がどのように昇華されて行くか、この辺のドラマも楽しみになってきませんか?

それから、シナーテ家の動乱に組した左翼大隊についてだが・・・この話を聞くと彼らは殺戮を好む狂人集団ではなく、むしろ「悪・即・斬」な集団である気がしてくる。コミック6巻での一悶着も、腐りきった王族やそれを維持しようとする体制に対する反発だったのかも知れない。
p139下から2コマ目。キンキーの後ろに胸から下だけ描かれている女性・・・服装のイメージからしてマドラに見えてしまうんだけど、スパークとマドラの切り替わりって、左翼大隊では周知の事実なんだろうか。スピナー(カーリー)はこんな服、着ないよね。
(2004.02.11)

 

■ じゃーじゃー姫とサリオンと (p140)


p140の1コマ目でサリオンは「ラキシスの入城で愛想尽きた」と云っているが、コミック10巻のブラック・スリーの襲撃の際にはちゃーんと玉座を守ろうとしていたし、その後も挙兵するよう進言していたのはご存知のとおり。こうやって自嘲気味に話していても、義理堅い性格であることが見え隠れする。意外とジャコーのような熱血漢とも気が合うような気がしますね。

またここでの会話は、天照の正当性と公平さについて、じゃーじゃー姫とサリオンが話しているシーンになるのだが・・・3075年のハスハント解放戦では、この2人がミラージュ騎士団を率いて動いていることが描かれている(11巻p18)。つまり、サリオンの国を思う気持ち、死んでいったミラージュ騎士を思う気持ちは、ちゃんと天照に酌んでもらうことになるのだろう。出張騎士扱いなのに、サリオンに付き添うように行動しているタイトネイブがイイ感じ。
(2006.05.16 修正)

 

■ ミラージュマークをつけた人物 (p142)


ミラージュのマークをつけた2人の人物がグリース本会議が荒れていることを報告に来ている。おそらく議会においても先のブラック・スリー襲撃への報復や、ハスハへの出兵という意見が持ち上がっているのだろう。
さて、この2人についてだが、ミラージュのマークをつけているとは云え、現役の騎士で該当しそうな人物はいないし、ノーナンバーの長老とも異なるようである。A.K.D.の議会は上院と下院、貴族院によって構成されており(野党というのはおそらく民選議員で構成される下院のことだろう)、本来はレオパルト・クリサリスが貴族院の代表、ログナーが議長を務めているのだが、おそらく報告に来ている2名は彼らの代理として、もしくは正式な後継者としてミラージュのマークをつけていった人物ではないかと考えられる(それとも白髪顎鬚の人物がクリサリス?)。

またここでの会話から、ミラージュ騎士が既にハスハ入りしていることを、議会の方々は知らないらしいことがわかる。ランドが云っていたように、現在動いているミラージュは基本的に陛下が「目をつぶって」いられる範囲内で動いている訳だから、当然といえば当然か。公式には「手出ししない」ことを宣言している以上、ミラージュが参戦しているとバレればまたもや議会は大荒れになってしまう訳だし。
もし議会がミラージュの潜入を知ってしまったら、ミラージュの騎士たちは「主君に逆らって独断で判断した」と云い切らなければならず、さらに命令違反の責を問われて最終的には天照自身の手によって処分を受ける、つまり処刑されなければならない訳である。ミラージュ騎士団の面々も実はかなり正念場であるということは理解しておこう。A.K.D.は絶対君主制であるから本来は議会なんぞ無視してもいいのかも知れないが、国民に対して責任のある行動を示していることが、天照のカリスマ性を維持しているのだろうし。
(2004.03.12)

 

■ 不機嫌なラキシス (p143)


p129の「ゴリゴリ」という音はラキシスが大黒柱をかじっている音だったことが判明。
問題なのは、何故ここまで不機嫌なのか、という部分。これまでのラキシスの行動パターンから考えれば、ソープが相手をしてくれないとか、手を出してくれないとか、出番が少ないとかそういった理由のような気もするが・・・。うーん、「普通」のマンガであれば、女の子の不機嫌と来れば「生理」と相場が決まっている訳だが、いくらカレンを産む予定のラキシスでもこの場でそういった状況になるとは正直思えないし・・・。

またソープのセリフから、キンキーとブローズも既にハスハ入りしていることが判明(ニュータイプ2003年10月号の扉絵ではキンキーがファティマ・イルペオを連れて迷子になっているシーンがあったのだがコミックには収録されていない)。あと「マドラモードのスパーク」というセリフから、ソープはやはりマドラの存在についてもしっかり知っていることがわかる。ただし、スパークが既に出掛けていることについては、未だに気が付いていないようである。相変わらずの大ボケっぷり。

ところで・・・ミラージュ騎士は現在、グリース議会の与り知らぬところで動いている訳だが、この後でソープとラキシスはハスハ入りし、その際には「ザ・ブライド」と凶悪な左翼大隊を引き連れて来ることが判明している。また、3075年のハスハント解放戦には斑鳩を始めとして大部隊で参戦しており、彼らはしっかりとミラージュのマークを付けて動いていたので(11巻冒頭シーン)、この間に天照は議会に対しても公式参戦することを告げていることが想像される。
天照が「何をもって」参戦に踏み切るのか、が今後の大きなポイントになる訳だが、おそらくその理由というのがこの後に登場する「シオの門番」もしくは「システム・カリギュラ」なのではないだろうか・・・というのが桜牧師の予想。
(2003.03.12)

 

■ コーネラ帝国の参戦 (p145〜)


ついに登場したコーネラ帝国。アジャンタ・ルーパート2世、スケーヤ・エレクトナイツの面々、MHカン、マイトのバルター・ヒュードラー、そしてアルルの弟子にしてコーラス王朝バランカ領出身の傭兵騎士マヨール・レーベンハイト・・・。まずはそのカッ飛んだデザインと強烈な存在感を楽しみましょう。久々にセンセーのセンス大爆発である。
MHカン(KAN)がカナルコード・エリア・ナインの略語ということが判明。カナル(kanal)はドイツ語で周波数帯やチャンネルのこと、コード(kode)はコードや符号といった意味があり、普通はカナルコード(kanalkode)でテレビ番組やラジオ番組の番組コードを指している。エリア・ナインについては・・・不明。設定上のEタイプ・エトラムル・モンスターはまだ未完成らしい。

少し笑ったのが試作機をβ騎と云っているところ。完成すればβの呼び名は外される訳だが、ご存知のとおり、後にA.K.D.に没収されたカンは改造されてカンαとなる。この場合のβとαは全く意味合いが異なるが、表記だけ見ているとまるでA.K.D.に没収されてから完成したかのようでちょっと面白い。
3騎だけで何をやろうとしているのかは、次巻以降を楽しみにしましょう。

それにしてもマヨールが初代騎士団長になるのね。シャリシャン・ホーカは2代目騎士団長ってことか・・・彼の方が名前が出てきたのは先だったのにね(もしくはボツ設定となるか)。
また、一応気にしておきたい点が、シオの門番ビビエ・6が口にしている「聖宮ラーンの東宮と西宮の乱」という単語。パラ・サイマルの聖地で闘争があったというのは、今後の展開でも引き合いに出されるかも知れない。
(2004.03.13)

 

■ 「シオの門番」について (p145〜)


今巻からいきなり登場した「シオの門番」そして「システム・カリギュラ」について。仄めかされていた「ブーレイ傭兵騎士団の真の統率者」というのは、今回の会話から考えて彼らのことを指していたと考えて間違いないだろう。雰囲気から云えば裏社会を牛耳る秘密結社のイメージか。カリギュラとは古代ローマにおいて暴虐の限りを尽くした皇帝ガイウス・カエサル・アゥグストゥス・ゲルマニクスのこと。「暴帝」とも呼ばれた人物であるから、そういった黒幕的な人物が彼らのトップに座していると考えられる。
またマヨールが「シオの門番」と呼ばれる存在について事前に知り得ていることから、アルルや金剛のラインからつながって微妙にモナーク・セイクレッドが絡んでくる存在のような気もしてくるのだが・・・以下はニュータイプの記事から考察。

センセーの説明によると、「システム・カリギュラ」は中国の伝記に出てくる饕餮(とうてつ)のような存在らしい。
饕餮(とうてつ)は四凶のひとつ。古代尭帝の時代に中国の西方の果てに存在していたとされる4匹の凶悪な怪物(もしくはその種族)を四凶と云う。伝記によってそれぞれ由来や姿が異なっているようだが、中国が統一される以前の時代に各民族が信仰していた神や精霊などが、体系的に整理されていく過程で怪物として定着してしまったらしい。饕餮(とうてつ)は羊の体(もしくは牛の体)にヒトの頭をもつ怪物で、欲深く、暴食を繰り返し、他者から略奪することを好んだとされる。また9匹の龍の子供「龍生九子」の5番目という設定もある。
四凶に関する伝記の内容は様々であるが、FSSのフィルターに当てはめた場合は、この世の全ての諸悪の根源という設定や、そもそも彼らは古代皇帝の縁者や子孫であったという設定が興味深いところである。

んで、システム・カリギュラとシオについてだが、彼らはスタント遊星の惑星である無(ナイン)に3000年か4000年くらい前から存在しているらしい。時期的に見て、超帝國皇帝ナインが超(バスター)から帰還した時期(コミック9巻のナッカンドラ・スバースのエピソード)から、さらに500〜600年後・・・つまりAD世紀の末期に当たる。ナインらのバスター行きは魔王ノストスパスムスの討伐(AD世紀6000年頃)に関係していたらしいことが仄めかされているが、そこからさらに2000年以上経っているとなると、ほとんど情報のない空白の時代である。

また、スタント遊星とともにクラウン銀河を周回している惑星バスターにいるはずの彼らが、なぜ遠く離れたジョーカー星団に干渉できるのか?この点についても不明である。これまでに公開されている情報で、システム・カリギュラは超帝國皇帝の開発機関であったことが明かされているのだが・・・彼らの「本体」がナインのように光子結晶体になっているのだとすれば、距離に関係なく星団に現れたり、自在に体を変形させて腕から剣のようなものを出現させるといった芸当も可能になるだろう。しかし、精神を実体化させるようなマネはおそらくナインにしかできない芸当であるし、12巻のキャラシートに説明されているように、彼らは「変体性ファロスディー・カナーン・シュバリエ」である。おそらくは「変幻自在・不老不死の生身の肉体」をもっており、独自の移動方法によりハスハに降り立っている、と考えるべきだろう。

次に、彼らの行動原理は「知識欲」であるということ。
何か面白そうなモノに首を突っ込んでくるというのであれば、12巻で描かれるフィルモアの民族大移動につながる基盤づくり、新機軸MHであるカナルコードの開発に興味を示すのは当然のことであろう。また、人造人間マキシや謎の存在「ショウメ」といったモノに興味をもつというのも納得である。しかし、コミック2巻で描かれたコーラスへのブーレイ派遣にはどのような意図があったのだろうか・・・これが実に難しい。
考えられるものとしては・・・まずフィルモアがコーラスに干渉すること事態が、民族大移動への布石となっているということ。コーラスが弱体化すれば、フィルモアの移動も多少は楽になる。んが、これだけでは動機として弱い感じもするので、桜牧師としては「懐園剣の捜索」が裏の目的としてあったのではないか、という意見を推したい。これはかなり突飛な考え方なのでアレですが・・・。

懐園剣を携えていたハリコン・メロディの剣聖在位期間がたったの1年であったことや、彼のファティマ「光のタイフォン」には特殊な任務が与えられていたことを考えると、彼が剣聖であった時に「何か」が起きていたことが想像できる。とくにハリコンが剣聖を退位した(もしくは死亡した?)というエピソードの詳細については伏せられており、その後、アルルが歴史の表舞台に登場するまでは懐園剣も行方知れずになっていた、というのが怪しくはないだろうか。人外の領域から届けられたアイテムである懐園剣であれば、カリギュラが狙っていてもおかしくはなく、実際にアルルは「ミスト・ブレイカー」の持ち主としてシオのメンバーに目をつけられている。

つまり、剣聖ハリコンの時代に懐園剣に関してカリギュラやシオの干渉があり、それを避けるために懐園剣は意図的に隠匿されたのではないかと。懐園剣を狙うカリギュラは、コーラスが乱れればそれを携えた騎士が現れると踏んで、ブーレイを派遣した・・・これが2989年。んが、結局は天照の介入もあって現れなかった(偶然かも知れないが、この時期はメロディ家は取り潰されていてアルルはコーラスと縁を切っていた)。といった裏事情があったのではないだろうか。

まあ、この辺はいつもの桜牧師の脱線なので読み流して欲しいのですが、ハリコンがカリギュラと対峙した過去があるからこそ、その情報がメロディ家に伝わり、アルルの弟子であるマヨール・レーベンハイトも彼らの存在を事前に知り得ていたのではないか、と思えるのである。
さらに付け足すならば、ナトリウム・フンフト・アトールとピアノ・メロディの不義・・・これももしかしたら懐園剣を表舞台から消そうとしたために(つまりカリギュラの目から逃すために)起きた悲劇だったのかも知れない。ハリコンの懐園剣を託されたピアノ・メロディがアトール皇帝であったフンフトに相談し、恋仲になってしまったとか・・・あるいは懐園剣を行方知れずの状態にするため、メロディ家をわざと犠牲にするくらいの状況を作り出したとか・・・まあ、この場合はアルルやセイレイに真実が伏せられているということになるので、あまりにも無理があるか。

ただ、フンフトが皇帝の座を失ったことでマドラ・モイライが暴走したというエピソードもあったようなので、こういった背景がある中でマドラが懐園剣を手にするという展開があれば、本当にFSSらしい、新たなトラフィックスとも呼ぶべきエピソードが完成すると思うんですよね。

とりあえず、そんなところで。・・・「知識欲」で生きているシステム・カリギュラであれば、最も面白いと思われる対象は、「天照」や「ラキシス」だけでなく、モナーク・セイクレッドの騎士「ログナー」なるはずなんですよね。
なんで彼らがログナーに接触してこないのか・・・この辺も微妙に気になるところではありやす。
(2006.05.07 大幅修正)

 

■ ワスチャの参戦 (p152)


ハスハの大地を疾走する高速ドーリー。電話で話している少女と謎のファティマの正体はp222以降の「PRIMA CLASSE HUGTLANG」で語られるとおり、ワスチャ・コーダンテとファティマ・ヒュートランである。11巻の巻末に掲載されている「プロムナード」のラストをそのままFSSにつなげるとすれば・・・彼女たちの目的は桜子と共にヨーン・バインツェルを探すこと・・・ということになる。

ワスチャが電話で話している相手は天照。で、おそらくはラキシスの大黒柱かじりを話しているのだろう(ただし、天照はワスチャを心配して連絡を入れたものと考えられる)。ただ、天照はヨーンがアイシャに保護されたことを知っているので、ワスチャがここでヨーンの居場所について情報をもらった可能性はある。ヨーンはアイシャの独断によりノウランに向かうことになるが、うまく事が進めば姉妹の対面を介してノウランでヨーンに追いつくことになるかも知れない。
また、聖宮ラーンに集まる騎士の中にヨーンやワスチャも含まれているのであれば、このドーリーに乗り込んでいるはずの桜子もラーンに向かうことになる。という訳で、マグダルの治療には桜子が当たることになるのでは・・・と予想。

この最新型のドーリーと搭載されているMH(カルバリィR)の正体も、「PRIMA CLASSE HUGTLANG」で明らかとなる。
ドーリーに描かれているハートマークの横に「RUMINOUS」とも呼べる文字が描かれているが、これは「プロムナード」のルミナス学園に引っかかっている。ルミナス(luminous)とは「光る」とか「輝く」とか「発光、夜光」という意味。

あとは、ヒュートランが150年前(2880年頃)に活躍した戦場についも気になるところだが・・・おそらくは無名の騎士をマスターとしていたはずなので、とくに今後のエピソードに絡むようなものではないであろう。
(2006.05.07 修正)

 

■ 覗き見 (p156)


京とアレクトーが出てくるシーン。どうということはないのだが、桜牧師は10分ほど考え込んだので一応解説。
アレクトーが京に「しっ」と云って止めたあとで、壁の影から覗いているのはパルスェット。彼女はヨーンを見ていて、その後ろからさらに京とアレクトーが見ていて微笑ましく思ってるというシーンである。パルスェットであることに気付けなかったですよ。
(2006.05.01 KuMaさんの指摘により修正)

 

■ 皇帝陛下の威厳 (p157)


ラキシスに一言伝えるために新聞紙を丸める陛下。この一言の裏にはp153でワスチャからもらった助言が活かされているはずなのだが・・・。
ワスチャが何を教えてくれたのかは現時点では不明なので諦めましょう。
(2004.04.13)

 

■ 替え玉・斑鳩 (p158〜)


斑鳩の着替えから一連の流れについてこまごまと考察を。

まずじゃーじゃーとパナールが同じ制服を着ているのだが、じゃーじゃーの後ろにある鞄は明らかに学生鞄なので、2人はフロート・テンプル内の学校に通っていることが判る。「DESIGNS #1」によると、彼女らはクラスメイトらしい。ミラージュ騎士(しかもレフト)が通っている女子高なんつーもんがあるのか・・・。

パナールは右利き、じゃーじゃーは左利き。

ミラージュの「血の十字架」をつけているスタッフが複数登場しているが、このマークはミラージュ騎士だけでなく、F.E.M.C.つまり魔導団やその支援部隊を含む全ての構成員が使用するマークなので、MHのマイスターや専属のファティマ・マイスターはもちろんのこと、執事やスタイリストがつけていても何ら不思議ではない。p142で出ていた貴族院の代表者も、ミラージュ・コーアの一員ということなのだろう。

それからアイシャの影武者として議会に登場した斑鳩だが、これはじゃーじゃーが云っているようにかなり「えーかげん」で、ホントにこれでいいのか疑問。
まず、アイシャはルーマー王国に移籍しているので、「グリース議会」に復帰していいはずがない。彼女は既に「グリース国首相」ではないのだから。「全デルタ・ベルン議会の決議が遅れる事を憂慮され」と云っているが、他国の王女が議会に乗り込んでくるというのは、本来、一国の議会においてはムチャクチャに非常識な立ち回りである。同じ東方10国とは云え、今の日本に例えれば国会の議論が進まないという理由で、隣の県に移籍した前県知事がいきなり県議会に出張ってくるようなもんである。
まあ、それだけアイシャは大人気でカリスマなのよんと云われればそれまでなんだけどね。

「今度のアイシャ様」というセリフについて。なぜ野党のオバサマは「今度の」という単語を用いたのか。
これはおそらく、「天照やアイシャについては影武者がいる」という噂が国民の間でまことしやかに囁かれているためであろう。とくにアイシャはかなり年をくっているにも係わらず、「若作り」もしくは「厚化粧」によってほとんど年齢を感じさせない顔である。年をとらないアイシャを見て半ば冗談で「アレは影武者なんだよ」という会話が交わされているのだとすれば、例えばメイクを変更したアイシャ本人であっても「今度のアイシャ様はオレ好みだ」とか「今度のアイシャ様は影武者3号に違いない」みたいな云われ方をされてきたことが想像できる。
したがって、多少メイクが変わって、ドレスもグリーンからオレンジになり、さらに少し背が低くなったような気がしても、大方の国民から見れば「アイシャ」であり、冗談が好きな人物であれば「出た!影武者4号!」と云い放ったりする状況だったのではないかと。そういう背景があって、いつまでも若作りのアイシャに対して野党のオバサマは嫉妬と羨望を込めて「今度の」と呼んだのだろう。

次。ダグエラン・ルスが「斑鳩陛下もこれで晴れて王朝の役を担う事になり・・・」と云っているが、アイシャの影武者として表舞台に立った以上、王朝の役を担っているのはあくまでも「アイシャ」である。斑鳩が王朝の役を担っていることにはならないのでは・・・。魔導大戦終結までの45年間、「若くなりすぎた」アイシャで国民を誤魔化しきれるのか、やや疑問が残る。

最後に。p143の考察で『3075年のハスハント解放戦には斑鳩を始めとして(ミラージュ騎士団が)大部隊で参戦しており、彼らはしっかりとミラージュのマークを付けて動いていたのでこの間に天照は議会に対しても公式参戦することを告げていることが想像される』と書いたのだが、もしかしたら天照が議会に対して宣言したのではなく、斑鳩が天照を無視して(アイシャのフリをして)「A.K.D.も参戦する!」と宣言したのではないだろうか。そしてそれこそが斑鳩に云うところの「第3次王朝動乱」なのかも。
うーむ、もしそうだとしても天照は「終わりよければ全てよし」で済ましちゃうんだろーなー。そういったドタバタで斑鳩が半ばやけくそでミラージュ騎士団の「司令」に落ち着くのかなーとか。
(2006.05.07 修正)

 

■ パルスェットとヨーン (p162〜)


ヨーンがパルスェットをパートナーとするシーンについて。
パルスェットの「はいっ!マスター」の笑顔と、コミック10巻でエストがデコースに応えた時の笑顔は対になっているので注意。エストとパルスェットは40年くらい前にザンダ・シティの売春宿で共に働いた仲であり、彼女らはトラフィックスという舞台の上では対存在に位置している。

それから、成人直後のファティマではなく、他者からファティマを引き継ぐことがどういう意味をもつか、よーっく考えてみよう。パルスェットはモラードの下で再調整を受けているため、ミハエル・レスターが所属していたあるいは雇われていた騎士団の機密事項をヨーンに話すということはない。しかし、これまでの経験は彼女の中で確実に蓄積されているはずである。
レスターがパルスェットをパートナーとした時期は青銅騎士団を退団してからと思われるが、それでもヨーンはパルスェットをパートナーとすることで、
・デヴォンシャ型フォーマットMHの搭乗経験
・アシュラ・テンプルとの交戦経験
・もしかしたら剣聖カイエンとメイユ・スカの交戦記録(レスターが見ていたので)
・さらにバル・バラを使用するミハエル・レスターの腕前や彼の記憶の一部
その他もろもろの経験を活かしたサポートを、MHに搭乗した際に受けることになる訳だ。
当然、レスターが青銅騎士団で身に着けた剣技や戦法などもパルスェットに何らかの形で引き継がれているだろう。またMHウォーター・ドラゴンについても知っているなど、レスターが見てきたこと聞いてきたことの中には貴重な情報も多く、そこから得た彼の「戦い方」はパルスェットの中で息づいているはずである。

ノイエ・シルチスとメヨーヨが衝突した際、トライトンが「ファティマに従え」と指示していたことを思い出して欲しい。
ヨーンが新たに手に入れた「力」がどれほどのものか。デコースとエストのコンビに挑むにはこれでも技術や経験が全く足りないことになるが、ヨーンとパルスェットが今後どのようにパワーアップしていくかが見物である。

ついでに、今回ヨーンがアイシャから与えられたディグだが、これはおそらく内部に居住空間がある大型のディグだろう。戦地でファティマ同伴で野宿させる訳にはいかないし、任務を帯びてノウランに潜入する以上、ホテル暮らしをする訳にもいかないし・・・という。大型のアンテナが突き出していることから、多少の結界があってもアイシャらと連絡がとれるような装備もあると思われる。エア・ドーリーからMHのスペースを取り払ったようなモノかなーと。
(2004.04.14)

 

■ ディスターヴ隊の動き (p168)


アルルの戦いぶりを見ていたというラドンウェイ伯爵・・・あれ?以前は侯爵だったような・・・まあ、いいか。

アルルが横目で見ているヒトたちはフィルモアの高官である。つまりラドンウェイ伯爵はフィルモアと会談中であることを報告するでもなく、また隠す訳でもなく、無言のまま現状を伝えていることになる。こそこそと会談してハスハから分離するつもりはないし、かと云ってフィルモアを無視して中央の手助けをする訳にもいかない・・・文字どおり現在は「動けない」状態であると。現状をどう受け取るかはそちらに任せるという肝の据わり具合が渋い人物である。

また、3075年のハスハント解放戦においてアルルたち暴風三王女がディスターヴ隊と行動を共にしていた(11巻)ことを考えると、ラドンウェイ伯爵の「今後もハスハに力添えを・・・」という言葉も、共に戦う未来を暗示しているようで妙に深いセリフである。うーん・・・フィルモアとディスターヴ隊の会談は決裂もしくは何らかの約束を取り交わした状態で終了し、ディスターヴ隊はスバースの本隊に合流することになるのだろうか。まだまだわからないですね。
(2004.05.11)

 

■ ラーンとハスハ (p170)


ゲンジャとベクターの会話を整理すると、アルルをラーンに向かわせるのは、まず第1にドラゴンの聖域に逃げ込むことでセイレイの追撃から逃れること、第2に引き続きナカカラとハスハ東部の状況を監視すること、第3にラーンの神学院の動きを偵察すること、以上の3つの目的を同時に果たすためであるということ。

「色々あんですヨ。ラーンとハスハは昔っから」というセリフが具体的に何を意味しているのかは不明だが、おそらくラーンの神学院はアトールの巫女に対していろいろと意見を云える立場の組織なのだろう(p129で東の君が云っていた「神官たち」というのが、この神学院を指していると思われる)。不義を犯したフンフトが帝位を剥奪され、廃都アダマ・ジーへ強制移住することになったのも、こういった組織の裁決があったからと考えれば納得もいく。そうであるなら、ダイバーの能力を失ったマグダルに対して神学院がどういった動きを見せるのか、ギラやバルンガにとっても注意を払わなければならない問題であるというのも納得である。
(2004.05.11)

 

■ シオの門番による監視 (p171)


木陰からアルルたちの様子を窺っているのは、シオの門番であるイーヴィー・3。ここで彼女が潜んでいるのは、やはりフィルモアからの裏の依頼によるものだろう。おそらくイーヴィーは、ディスターヴ隊を本隊から孤立させるよう指示を受けており、本隊からやってきた「使者」を消すために城外に潜んでいたのである。
剣(?)を収めたのは、その「使者」が「壊園剣の所有者のアルル」であることに気付いたためのようであるが・・・とりあえずは問答無用で壊園剣を入手するという訳ではないようである。また、センセーの説明では、シオは人造人間のマキシに対しても執着するらしいことが書いてあったので、その糸口となる壊園剣の動きに注意を払って慎重に行動することにしたのかも知れない(その場合は、シオが既に「壊園剣の正統所有者はマキシである」ということを事前に知り得ているということになるが)。
(2006.05.07 修正)

 

■ ラーンへ (p173)


おそらくはナインに導きによってラーンに向かうフンフト。ラーンの神学院と、そしてドラゴンたちとどのような会話を展開するのか期待しましょう。

これまでの描写で既にラーンに向かうことが決定している人物は、マグダル、ランド、ヘアード、アルル、そしてゲンジャとベクターである。アルルが向かうのであれば、当然それを追跡するセイレイも向かうし、仲裁役のマロリーも向かうことになるだろう。また、勝手な予想ながら現在ノウランに移動中のヨーンもおそらくはラーンに向かうことが予想され、それを追っている(はずの)ワスチャと桜子も一同に加わることになるだろう。となると、アルルと桜子の異母姉妹とフンフトが出会うことになるが・・・。いろんな意味で修羅場になりそうな雰囲気である。
あとはミューズと静、ハレーとそれを追っているはずのビルト、ビルトを連れているらしいビュラードがどう関わってくるか、そろそろ動きがあってもいい頃である。

アース・ドラゴンが飛んでいる位置は廃都アダマ・ジーと聖宮ラーンを結ぶ直線上であるから、p175のコマでフィルモアの皇帝陣がハスハのどの当たりに敷かれているかは判るはず。各キャラが大体どの位置にいるのか、一応、頭の中で組み立てておきましょう。
(2004.05.12)

 

■ フィルモアの動き (p177〜)


ダイ・グとミヤザ・ヘクゼイの会話から、皇帝の決裁権を利用して本星で何やらこっそりやらかそうとしていることがわかる。ただ、決裁権委譲の話は元老からもあったと云っていることや、ミヤザの緊張した面持ちを見ていると、ミヤザが企んでいるというよりはアネッサ・ティルバーがミヤザに入れ知恵して、そう進言するように指示を出していたようにも見える。フィルモアは帝政制の国家だから、内閣官房長官のミヤザがどんなに偉そうにしていても、元老院などから見て格下に位置しているはずだし、何よりもティルバーは元老院議長であるから、シオと契約してブーレイ傭兵騎士団を派遣させている張本人と云える。その辺の事情を考えるに、ミヤザとティルバーは対等に結託しているのではなく、あくまでも黒幕は元老院という捉え方でいいのではないかと思われる。ミヤザはブーレイの正体がもえぎ騎士団(教導騎士団)であることも気付いていないようだし。

一方、ダイ・グの方も元老院がシステム・カリギュラと契約してブーレイを動かしていることは重々承知しているようである。ナイアスの動きをティルバーに聞いているので、もえぎ騎士団は基本的に皇帝配下の騎士団ではなく、元老院や他の議会に所属している騎士団であるということだろう。ナカカラの降下したフィルモアが430騎であることを考えると、それを超える550騎のブーレイ全てがもえぎ騎士団であるとは考えにくい。おそらくはMHだけでなく騎士団員の増員もシオに依頼していたのではないだろうか。ダイ・グがブーレイの戦力を聞いたのは、まさにそれを見極めるためだったのかも知れない。

んで、そのブーレイ傭兵騎士団を指揮しているナイアスについてだが・・・これまでに描かれている彼女の性格を考えると、とてもじゃないがティルバーの裏工作のような作戦に自らの意思で加担する人物とは思えない(命令であったとしても無視しそうだし)。彼女が元老院の指示で動いていているのだとすれば、国の真の思惑を聞かされていない、もしくは裏工作とは別の任務を与えられている可能性がある。と云うのも、ナイアスは3075年のハスハント解放戦に参加しているから・・・戦争を少しでも長引かせようとしている議会の支持に従っているのであれば、ここで戦争終結に尽力するというのは矛盾が生じる。
(2006.05.07 修正)

 

■ 慧茄の来訪 (p185)


騎士団が慧茄に剣を捧げるシーン。剣の持ち方が左右逆なのかなーと思ったのだが、これも「いつでも斬りつけられる」持ち方とは逆に持ちかえることで、敬意を表しているのかなーと。慧茄の横の女性も左手に剣を持ってますよね。実際の「捧げ剣」を見たことがないので、この辺の正式なやり方を知っている方は教えてください。

それにしてもフィルモアの騎士の正装は種類が多い。アルカナ・ナイトの帽子は王冠のマークが入っているし、慧茄の横の女性も帽子を始めとして細部がかなり異なる。センセーのことだから非常に細かい設定を考えているんでしょう。

太皇太后(たいこうたいごう)は皇帝の祖母、皇帝の母なら皇太后(こうたいごう)。ページの端の説明で「太皇太后宮(おおいおおいきさいのみや)は皇帝の祖母以上の総称」となっているが、フィルモアの帝位は直系の子孫に継がれるものではないため、「旧帝の正妻であった女性の総称」というのが正しいのではないだろうか。

ここで、慧茄について少し書いておく。帝国老人クラブのメンバーは、慧茄を指して「足腰が弱っていてMHにも乗れない状態」と云っているのだが、実際のところ彼女はバリバリの現役である。老人クラブのメンバーはこのことを知っているのか否か・・・。

慧茄が現役であることを、帝国老人クラブの全員が「ホントに」知らないのだとしたら・・・おそらく答えはひとつである。
「太皇太后宮」つまり「かつての皇帝の妻であったヒトたち」が、慧茄の情報を隠し、彼女が自分の意志で行動できるように援助をしてあげているのだろう。
「太皇太后宮」は旧帝の妻であったヒトの集まりであり、その世話役も「皇太后宮職」や「太皇太后宮職」といった女性のみで占められているはずである。歴代皇帝が帝国のために我が身を犠牲にしてきたのであれば、その妻であったヒトたちが皇帝の真意を汲み取り、帝国(議会)の意に反して独自の行動をとったとしてもおかしくはないだろう。「男が立ち入れない中宮」であればこそ、老人クラブに隠すこともできるのではいかと。

んが、老人クラブの面々が「ホントに」知らないのか?と云われれば、おそらく答えは「否」で、薄々と勘付いてるのではないだろうか。
少なくとも「慧茄がクラトーマを継いだこと」は前マスターのレーダーが知り得ている情報であるし、マイトであるクープ博士も必ず情報を入手しているはずである。またMHファントムが誰の采配で配置されたのかは謎であるが、「太皇太后宮」だけの力で慧茄に渡すことは不可能であろう。帝国の新鋭機であれば、少なくとも軍の幹部くらいはその存在を知っているはずだし、シャープスが裏で発言した可能性も当然ある。
ってことで、みんなで見て見ぬフリをしているのかなーと。
(2006.05.07 修正)

 

■ アトールの皇帝・ボルサ (p188)


慧茄の姪に当たる人物ボルサ・バスコ・アトール。ボルサは2810年のハスハ統一戦争において、青年カイエンに太天位とネードル・シバレースの名を渡した人物である(なので、今回登場しているカイエンもかなり若い)。彼女はハスハが統一した後の2890年に他界している。

彼女と慧茄の血縁関係はコミック9巻の巻末に詳しいが、一応解説。
バスコの名は初代剣聖ナッカンドラ・スバースの妻サロン・バスコが祖となる。
サロンの娘がアラド・バスコ・スバース。んで、アラドの子供がウゴード・ルース、ディモス・ハイアラキ、ティティンシャ・バスコの3人。
ティティンシャの子供がクリュ・バスコ、ラシャ・バスコ、慧茄・バスコの3人。
慧茄・バスコはフィルモア王家に嫁入りして慧茄・ダイ・グ・フィルモアとなり、ラシャ・バスコの娘ボルサ・バスコがハスハに渡ってアトール皇帝となった。
ラシャ・バスコは慧茄の兄で、彼女とはかなり歳が離れているため、姪のボルサは慧茄よりもずっと年上である。

慧茄・バスコは「ティティンシャが晩年になって聖帝ランダとの間に儲けた子」であり、さらに聖帝ランダの娘としてミマスが存在している。ミマス聖帝は慧茄よりもかなり若く見えることから、おそらく彼女はランダの後妻の子供なのだろう。んな訳で、ミマスはダイ・グから見て祖母の妹に当たる(10巻の考察で既出)。
さらに、上記のクリュ・バスコの息子がオルカオン・ハリスで、オルカオンの娘がピッキング・ハリス(マドラ)なので、ダイ・グとマドラはハトコ(またいとこ)同士になる。

ハスハやバキン・ラカンとも近い位置にいるダイ・グ。なぜ彼がこのような厄介な位置にいるのか・・・これについては、後で詳しく。
それにしても慧茄の息子のノーランドは騎士ではなかったのね。純血の騎士の子と云えども、やはり限界はあるってことで。
(2006.05.07 修正)

 

■ ロッゾの2個中隊 (p190)


慧茄がファントムで乗り込んできた際に、ロッゾの2個中隊を全滅させてきたらしい。つまり、ベクターを助けた後で他のMHも全部蹴散らしてきたってことね。
ハスハの大地を汚す輩として成敗してきたのか・・・あるいはロッゾとシオが契約していること(p150)を見抜いての行動なのか。
(2004.06.13)

 

■ 明かされた真実 (p191〜)


さて、ダイ・グに与えられていた使命がついに明らかとなった。カラミティが崩壊する前に全帝国民を移民させること。・・・ここでポイントとなるのが、「歴代フィルモア皇帝が先延ばしにしてきた帝国の鬼門」であるという部分。
フィルモアのトップが以前からカラミティ崩壊を予見していたのであれば、彼らが星団内のあらゆる紛争に常に絡んできた理由も、「移民先の土地を得るための足掛かりを作ろうとしていたから」ということになるのだろう。今回はナカカラを中心として帝国そのものを確立させることを最終目的としているが、コーラス・ハグーダ戦においてハグーダに加担したのも、コーラス領の一部を得たハグーダを属国とすることで、移民先を作り出す策略だったのではないだろうか。

また、慧茄をフィルモア王家に迎え入れたことも、バキン・ラカンとのつながりをもつための政略結婚だったと考えていいだろう。ハスハやバキン・ラカンともつながりが深いダイ・グが皇帝になったのではなく、最初から他国への移民の足掛かりとなる皇帝を作るために、聖帝の血を引く慧茄が必要だったと。そして慧茄の息子ノーランドは騎士ではなく、体も弱かったために用なしとされ(国事にも携われなかった)、さらにその子供に重責を背負わせることにしたと・・・つまり、ダイ・グは最初から帝国を存続させる目的で「作られた」皇帝なのだろう。
非常に哀しい話である。

また、ダイ・グはそれを自覚しているからこそ、元老院がシステム・カリギュラと契約していることにも口を出さずにいるのだろう。それどころか、元老院が裏でやっていることも、全て自分の責任として背負うつもりのようである。・・・だから、慧茄が「それを許すとお思いか!」と云って責めるのはホントに可哀想なんだよね。許されないことを知りつつ無理を通そうとしているんだから。ちょっと無神経なセリフだす。

んで、結局ダイ・グの計画がどのような結果を迎えるのかは・・・3075年のハスハント解放戦のシーンを見る限りでは失敗に終わっているようである。コミックの巻末にある星団暦を見ても、フィルモア帝国はカラミティ崩壊まで居残っていたことになっているし。
そう考えると、天照が3159年から開始する「大侵攻」・・・とくに3234年からのカラミティ侵攻というのも、ある意味ではフィルモアとその他の国家が他星に移るための大義名分を与えていることになるんですね。星を崩壊させた悪者として立ち振る舞い、しかもスタント遊星と共にやってくる悪魔とも対峙するんだから、ちょっとカッコ良過ぎである。ただ、星団暦が改定される前はK.O.G.のバスター・ランチャーをカラミティの核に打ち込んだことが崩壊の決定的な要因になっていたのに、改定後はその文面が無くなっている点が気になるところ。この辺はまだまだ先になりますな。

星ひとつをそのまま自国として所有している天照・・・ダイ・グの問い「あなたなら国を失う全国民をどうやって救うのか」の答えは4100年のデルタ・ベルン消滅で描かれる。天照はミラージュ騎士団以下、フロート・テンプルの臣下たちをウィルに乗せてあっさりと別の宇宙へ向かうことになる(おそらく国民はほったらかし)。しかもこのデルタ・ベルン消滅は、アトロポスがすえぞうに願った「私を殺して」が引き金になっているのである。なんつーか・・・ダイ・グの涙も神々の前では塵の如く軽いモノになってしまうのがまた哀し過ぎである。

ところで、フィルモア帝国がなぜカラミティ崩壊の未来を見通すことができたのか、という部分が疑問として残るのだが・・・。センセーの解説によると、スタント遊星の接近による影響については、年表を見ている我々読者しか知らないことであって、劇中のキャラクターはカラミティ星の寿命が近付いているらしい、としか認識していないとのこと(ダイバーによる未来透視ではなく、科学的なデータの検証によりぼんやり予測できているレベルであろう)。ただし、それが何時になるのか正確な予想が立っている訳ではなかったため、帝国内でもずーっと先送りになっていたらしい。
(2006.05.16 修正)

 

■ エートール[エンシー] (p196)


ナカカラ南部で戦闘中のエートールだが、ジャスタカークのシャクターと戦っているのであれば、おそらくギーレルに滞在していた部隊。パローラ隊のエートール[HS]である。デザインズ3より、スパチュラー隊のエートール[エンシー]であることが判明。
ジャスタカークはエープ騎士団と争う予定はなかったはず(11巻p160)なのだが、ブーレイの乱入による混乱もあってか前線が乱れてしまったのだろう。
シャクターが追撃をストップされたのも、ジャスタカークの目的・・・国土の返還を考えれば納得。避難民の中にはかつてジャスタカークの国民であったヒトが混じっている可能性もあるのだ。
(2004.07.10)

 

■ クバルカンの介入 (p198〜)


ノンナのセリフから、クバルカンの法王も何らかの意図をもってハスハを分断しようとしているらしいことが判る。センセー曰く、クバルカンの介入はフィルモアの考える移民とはまた別の目的があるらしいのだが・・・この辺は次巻以降に描かれるでしょう。

ノンナの職位「法典神官長」というのは、平たく云えばクバルカンにおける「最高裁判官」ということになるのではないだろうか。そういった立場のヒトが「慈悲のノンナ」と呼ばれるのも妙な感じがするのだが・・・。法でガチガチに固められたクバルカンにおいて、自らが法となって最良の選択を行う神官であれば、おそらくは民草を縛る戒律を和らげる役目を果たすことが多くなるはずである。そういった裁量から「慈悲」という呼び名が生まれたのかなーと。

ノンナが駆るMHカーディナル・バングについて・・・カーディナル(cardinal)とはカトリックにおける「枢機卿」のことで、枢機卿が身につける深紅の衣から転じて「深紅」という意味ももっている。名前から云えば、枢機卿であるミューズが搭乗しても良さそうなものだが、そもそもバング自体が枢機卿クラスにしか与えられない少数生産の特別機である。なので、おそらくは深紅に染め上げた特別仕様の機体をノンナが所有しているのではないだろうか。「教皇の操り人形」というルビは、文字どおり教皇の指示に従って裏仕事を担う機体であるということ。逆を云えば、自身の意志で動けるミューズは「操り人形」ではないということを示唆しているのではないかと。ただし、ミューズ自身が自らの意志で動ける存在であることを気付くまでには、まだ少々時間が掛かるようである。

ここで、3075年のハスハント解放戦(11巻冒頭)を見れば判るとおり、ミューズは「泥のつかない」法王という立場をとっていない。カステポーでの修行を終え、自らの意志で動けることを悟ったミューズは、高見を決める政治家ではなく、先陣に立つ騎士王としての道を選んだことが判る。ノンナの覚悟をもってしても、ミューズの想いは曲げられなかったってことで。漢じゃん!ミューズ!
(2006.05.16 修正)

 

■ クリスの剣と耳飾り (p201〜)


慧茄とクリスの会話以降は素直に感動するシーンなので、軽くひとつだけ。
慧茄はクリスの剣をわざわざ捜してきて(たぶんネプチューンのコクピットか、クリスの自室から)彼女に渡そうとしていたのだが・・・この剣はご存知のとおり、クリスの父親であるバーバリュースの形見である。彼女はクリスを元気付けるために、父親から受け継いだはずの遺志を呼び覚まさせようとしていたことが判る。結果的に慧茄がかつて身に着けていた耳飾りがクリスを覚醒させる訳だが・・・。

耳飾りの「十字架」が意味するところを考えると面白い。洋式の婚姻であれば愛を誓う対象であるから、ある意味でクリスとダイ・グの想いはこの耳飾りの前で「誓われた」とも考えられるし、キリストの墓碑として考えれば行き様のない愛情がこの十字架に「捧げられた」とも受け取れる。この「十字架」を「剣」に変えて戦場に戻るクリスは、十字架と剣のダブル・イメージをもつミラージュのエンブレムを掲げる騎士つまりアイシャの生き様とも重なっている。
クリスの名前からChrist(キリスト)をイメージした方であれば、今回の「十字架」の話はまた別の視点がもてるだろう。フィルモアのエンブレムも「十字」であることを考えれば、クリスは「十字架の中の十字架」と見なすことが出来る・・・つまり「十字架の上で十字に磔にされた存在」であるキリストのイメージと重なる。深いですね。
(2006.05.16 修正)

 

■ オマケ


第6話Act.2も一段落したようなので、オマケのコメント。

クリスに限らず、第6話は女性陣の活躍が多かったことに注目したい。男がどのように足掻いても、次の世界・世代は女性が「生み出す」というメッセージが感じられるのだが、FSSも既に次世代の話つまり「天照の大侵攻」に向けて着々と準備が整えられていることは知っておくべきである。
騎士とファティマの関係に疑問をもっているヨーン、王制国家の成り立ちに怒りをもっている斑鳩、彼らがまさに「世の中をぶち壊す」天照の大侵攻の先陣を斬るのである。魔導大戦を通じてつながりを持ち始めるコーラス、ハスハ、フィルモア、クバルカン・・・彼らはいずれも天照の大侵攻の「壁」となる。多くの女性騎士の活躍は、彼女たちが産む次世代の騎士たちを予見させる。

そしてシオを始めとする異界の者たちの動き。マキシの誕生。「悪魔の駆逐者」ログナー。迫り来るスタント遊星を舞台に神々の戦いも始まろうとしている。

さらに、ハスハに介入してきたフィルモアやクバルカン・・・その結果がどのように結実するかはともかくとして、彼らがこの地に足跡を遺すことは、後の世においてこの地カステポーで立ち上がるコーラス6世のエピソードにもつながっている。

うーん、FSSってすっげーマンガだと思いますよ。ホント。
(2004.07.11)

 

■ んで、プリマクラッセ・ヒュートラン (p221〜)


扉絵のファティマはヒュートラン。パワーゲージ2A-3A-2A-3A-3A、クリアランスおよびタイプは不明。運命の3女神に匹敵する超級ファティマ。
題字「Prima Classe Hugtrang」はフランス語。「Prima」は首席とか極上、最良という意味。「classe」は英語のクラスと同じなので、「ヒュートランは超一流!」という意味になる。まあ、本編を読む限りではファティマとしてのスペックというよりは、「嘘つき」もしくは「厚顔」な部分で超一流という感じでだが(もしくは萌え〜で一流なのか)。
今回はちゃあがいよいよ本格的にFSS本編に絡んでくるということで、描き文字もハニワのトーンを使ったり、平仮名を多用したりと、やたらファンシーになっている。
マグダルやアルルが直面している緊迫感溢れる展開から見れば少々水を差すようなノリだが、ログナーも絡んでくるなど実は魔導大戦の数あるエピソードの中で最も重要な話なのではないかと疑ってしまう。
・・・んなこたーないか。お笑い組みに付き合うことになったパイドル卿がある意味哀れ。
(2004.09.11)

 

■ ナカカラに降り立ったちゃあ (p222)


ヒュートランのセリフ(p222)と桜子のセリフ(p225)を見る限りでは、ワスチャはとりあえず騎士として名を挙げようと思って、乱戦の続くナカカラに降り立ったようである(とくにヒュートランがブーレイ狙いでここに決めたようであるが)。・・・うーん、コミック11巻のプロムナードを見る限りでは、2人ともヨーンを追ってきたように思えたのだが、この辺のつながりはどう考えればいいのだろうか?
ヨーンを連れ去った「背の高い下品な体育倉庫のマットのような臭いのする女(=ナイアス)」を追ってきたと考えればいいのかも知れないが、p152で天照とワスチャが話し合っているシーンがあったので、ヨーンがムンスターにいたことくらいは聞き出せたと思えるのだが・・・。
とは云っても、大ボケな天照のことだから、ワスチャがハスハに降り立ったその目的について、全く感知していない可能性の方が高いか。ワスチャが行きたいといったから、理由も聞かずに最高のMHを貸し与えた・・・という感じの方がいかにも天照っぽいし。
(2006.05.16 修正)

 

■ アシュラvsルミナス (p224)


アシュラ・テンプル対ルミナス・ミラージュというカードは、コミック5巻のアシュラ対クロス・ミラージュを彷彿させるが、リーオ・パイドルのファティマは「データなし」と答えている。ルミナス・ミラージュが「スーパーウルトラスペシャルカスタムフルバリバリごーじゃすチューン」を施されていたとしても、クロス・ミラージュとの戦いのデータが本国へ伝わっていれば、外見上の相似点から「データなし」とはならないはず・・・。つまり、イラーが戦ったクロス・ミラージュと破烈の人形のデータは、本国へ送る前にサンダー・ドラゴンによってしっかりと焼却されてたってこと。また、その他にも既に何度か星団内で出撃しているはずのクロス・ミラージュについては、一切のデータが漏れていなかったということが予想される。
ミラージュ騎士団がいかに表立って行動を起こさない「闇の集団」であるか、逆を云えばいかにこれまで出会った敵を全て消し去ってきたのかが、この辺からも読み取れる。

あと、アイシャがヨーンに渡すMHはクロス・ミラージュ[♂型]と思えるのだが、ワスチャのルミナス・ミラージュとはお揃いの機体ということになる。憧れの先輩と同タイプの機体に乗り込むということで、この辺もちゃんとプロムナードのストーリーを引き継いでいることが判る。
(2004.09.12)

 

■ 桜子とログナー (p225〜)


桜子とログナーの会話からいろいろと気づいた点を整理。

桜子は「あの子の家の名って聞いたこともない」と云っているので、おそらくワスチャは幼名しか桜子に告げていないことが判る(コーダンテ家は有名なので、桜子が知らないはずがない)。気をつけてルミナス・ミラージュの機体内部を観察すれば、四菱の紋から天照家の直系王族であることが判るはずだが、彼女はメカオンチだからMHには触れていないだろうし、まあ紋を見たところで気づかないような感じもする。

桜子の「ふぁっきゅー」の顔は35年前と変わっていない(10巻p122)。

桜子は4大マイトのひとり。つまり、モラード・カーバイト、プリズン・コークス、ミース・シルバー(バランシェ)、ナトリウム・シング・桜子の4人が現在のトップといったところか。

ログナーはアシュラ・テンプル(公式には魔導大戦がデビューのはず)や、リーオ・パイドルが天位騎士であること、またその搭乗機体がアシュラであること、ついでにアドラーでのインタシティの事件など、星団内に起きているほとんどの事象を詳細までしっかりと知り得ていることが判る。間者としての能力の高さ(まあ、ミラージュ騎士団はダイバーズ・パラ・ギルドのおかげで情報が速い訳だが)がこの辺からも読み取れる。

他にも、イエッタはどこに行ったのか?とか、北上しているというブーレイの動きなんかも気になる部分である。ログナーが雷丸で参戦するにはかなりイイ舞台のはずなんだけど、センセーは意地悪だからここでは出してくれない。
(2004.09.12)

 

■ プロムナード第2話 (p229〜)


5年前のワスチャの話が描かれるプロムナードの第2話。11巻p231で話していた「中学の時」の「メイドのバイト」時代の話は、ワスチャとヒュートランが出会う時のエピソードを指していたと。物語は第1話の最後、夏休みに入ったちゃあとキルスティンがジョーディーを捜して旅立つシーンからそのままつながっている。

キルスティンとちゃあがエミリィを待っている場所は、第1話の続きであるなら国外に出る前の空港ということで(荷物に搭乗手続きの際に貼られる札がついてない)、アメリカのどこかの空港ということになるが・・・。ちゃあの後ろに見えているのが「JAL」の窓口だったり、キルスティンが云っている「この国」が日本のことを指しているようなので、ナンカ混乱してしまう。

エミリィが遅れてきたのは、この後で描かれるが、おそらくはK.O.G.の換装に時間が掛かったため。

エミリィはセンセーの中では超美少女を描いていることになるのだろう。ブランドものやアニメに在りがちな萌え〜な衣装でなくとも、美少女はやっぱり目立つのだ!というセンセーの主張が「ちゅどぐわーん」という文字に現れている感じである。むしろセンセー自らが描いている彼女のデカダン・スーツ(扉絵)に対する強烈なイヤミ(こんな格好で喜ぶのはアニメのオタクだけだろ?というメッセージ)に見えなくもない。
まあ、桜牧師はやっぱりデカダンのスーツの方が好みな訳で・・・センセーから見れば時代遅れの読者になってしまうんだろーなーと。

ちゃあのバイト先については、バランシェ家の執事チャーティ・ウッドさんがいることから、バランシェ邸であることが判る。バランシェの死後ということなので、おそらくミースはモラード公に師事していた頃ではないだろうか(プロムナードの「5年前」とFSSにおける「5年前」はおそらく違う)。
(2006.05.16 修正)

 

■ T-64から見えること (p237)


エミリィの両親が独立戦争で亡くなったという話。
戦車のコマの欄外に小さく「あまりのハイブリッドぶりに」とか「T-64」と描かれているので、ソ連の戦車T-64・・・それもハイブリッド化が進んだ近年のタイプ(T-64自体は1966年に制式採用)が投入された独立戦争ということで、おそらくはチェチェン共和国の独立戦争を指していることが判る。チェチェン共和国は1991年に独立宣言をしてから紛争に突入したため、プロムナードの舞台はまさに現代であるということ。

また、彼女が習得しているというセルビア語、クロアチア語、ボスニア語は旧ユーゴスラビア周辺の言葉であるため、チェチェン紛争ではなく旧ユーゴスラビア紛争の可能性もある。んが、ユーゴにT-64が投入されたという情報は確認できなかったので、この辺はイマイチ不明である。チェチェン共和国はロシア語とチェチェン語が使われているため、エミリィの母国語がロシア語であるならば、やはりチェチェン共和国で正解ということになるだろうか(たぶん)。

いずれにしても、エミリィはセンセーの大好きな東欧系美少女であるということ。

んで、エミリィが習得したという言語の後半部分・・・英語、フランス語やサンスクリット語など、これらはインド・ヨーロッパ語族の流れを指しているので、センセーは彼女にアーリア系のイメージ(と云うか血筋?)を入れ込んでいることが見え隠れする。古くからのセンセーのファンであれば、センセーがアーリア民族に対して並々ならぬ思いを持っていることは、よく知るところである。つまりエミリィはセンセーにとって最高の美少女ということなんでしょうね。
総じてみると・・・プロムナードの第2話は「やっぱ東欧系の美少女は世界一なんだよ。」というセンセーの主張がメインテーマになっているってことで。

オンラインげぇむで日本語、中国語、韓国語って・・・もしかして、センセーがPSOをやっていて知り合いになった、エミリィという美少女でもいるんじゃないでしょうね?
(2004.10.11)

 

■ ちゃあの寝癖 (p238)


ちゃあの寝癖のついた髪型はアイシャの初期の頃の髪型に似ている。そんだけ。
(2004.10.11)

 

■ エミリィの性能緒元 (p240)


エミリィの全身が入っているページがまるまるニュータイプ連載時から入れ替わっている・・・なぜにこのページだけ・・・。
しかも、書いてある車がメルセデス・ベンツS600からエクセレロに変わっているし・・・。

正確にはダイムラー・クライスラー社(ダイムラー・ベンツは1998年にクライスラー社と合併してダイムラー・クライスラー社になっている)がマイバッハ・ブランドを復活させて、タイヤメーカーのフルダ社のために作り上げた世界で1台だけのコンセプトカー「マイバッハ・エクセレロ」である。6,000cc、V12ツインターボで700馬力を叩き出すモンスタ・カー。時速350km以上を出す。2005年のフランクフルト・モータショーなどに出品された。ベースはマイバッハ57で、これだけでなんと4300万円以上もするらしい。

一応、連載時の性能緒元は以下のとおり。
■基本車体
メルツェデス・ベンツ S600 スーパーロングPanzer
(30mm防弾ガラス 5mm厚超硬化処理防弾板)
■エンジン
AMG社製6,000cc V12エンジン
ツインターボチャージャー
DTMチューニング EMC書き換え
■ドレスアップパーツ
Carlsson製エアロパーツ
Lolinser19インチアルミホイール
Brabusエンブレム

メルセデス・ベンツS600はLLサイズのセダン・タイプ。5.5リッターのV-12ツインターボエンジンを搭載しているモンスター・カー。んで、AMG社の6.0リッターV-12ツインターボチャージャーに載せ換えた車種は2003年10月17日に販売された「S65 AMG long」である。メルセデスAMG社製では史上最高のパワーだそうで、スピードメーターも360km/hまで表示される。ほとんどというか、完全にスーパーカーである。
ちなみにAMGは1990年にメルセデス・ベンツ(ダイムラー・ベンツの高級ブランド)の傘下に入ったチューニング・メーカー。
DTMとは「Deutsche Tourenwagen Masters(ドイツ・ツーリングカー選手権)」の略でドイツで開催される世界最高のカーレース。つまりレースカー仕様ということ。
EMCとは「Electromagnetic Compatibility(電磁的両立性)」の略語。周辺の機器などに動作を妨害するような電磁妨害を与えず、また電磁環境によってその機器の性能に影響を受けないようにするシステムのことで、EMCの規制がある国家間で製品を輸出入する場合は、このEMCを書き換えることになっている。
Carlsson(カールソン)は正式には「Carlsson Autotechnik」というメルセデス専用のチューナー・メーカー。1989年(たぶん)にRolf Hartge(ロルフ・ハルトゲ)とAndreas Hartge(アンドレアス・ハルトゲ)が創業した。日本ではカールソン・ジャパンが販売を担当、エアロパーツやホイールを販売している。
Lolinser(ロリンザー)は正式には「Sportservice Lorinser」というやはりメルセデスのチューナー・メーカー。1970年代からベンツのチューニング・パーツを作っていたManfred Lorinser(マンフレッド・ロリンザー)が1981年に立ち上げたメーカーで、日本ではイケガミ・コーポレーションがパーツを輸入している。
Brabus(ブラバス)は1977年にBodo Buschmann(ボード・ブッシュマン)が創業したこれもメルセデス専用のチューナー・メーカー。メルセデスのチューナー・メーカーとしては最大のメーカーで、世界50ヶ所に拠点を置いている。日本ではブラバス・ジャパンが販売を担当。
普通に考えてここまでカスタマイズするのは悪趣味のような気もしますが・・・。
ドイツ語の辞書片手に調べたので、間違ってたらゴメン。

これに対してエミリィのデータ
■基本車体
身長 162cm
体重 39kg
B 72cm
W 47cm
H 75cm
足 22.5cm
■エンジン
IQ200オーバー
■ドレスアップパーツ
黒メイド服
白エプロン
リボン付きキャップ

・・・センセーの趣味ってことで。あ、車の話ね。
(2006.05.16 大幅修正)

 

■ 水戸黄門登場 (p244)


んで、ビュラードの登場。コミック9巻のエピソードを読んでいれば判りますね。
バランシェの死後、ビュラードがバランシェ邸を訪れた際にミューズとも出会っていた(6巻p41)ことを思い出すと、ちゃあも給仕をしている間にミューズに出会った可能性があるってことですね。つっても、ちゃあのバイト期間は短かったから、そこまで関連性を求めるのは行き過ぎか。ビュラード自身も何度も訪ねて来ている可能性が高いし。
・・・FSSの設定をそのまま持ち込んで、この人物が国の大統領という設定にすると、ちゃあはアメリカのトップと話したことになるが・・・んな訳ないか。
(2004.10.12)

 

■ その他 (p245〜)


後は小さいことなので適当に。
p246のエミリィのセリフ「私の・・・」の後に入るセリフはおそらく「マスター」なのかなと。
p247のちゃあの姉というのが、そのままアイシャに当てはまるかどうかは少々疑問。アイシャがバランシェ邸に勤めるとは思えない。もしかしたら、アイシャの父親が花嫁修業でもさせて結婚する気にさせようとしたのかも知れないが。
p249の「ルミナス・シティにお館様のお母様が創られた学校」とあるので、ちゃあ、キルスティン(桜子)、ジョーディ(ヨーン)が通っていた学校は「バランシェの母国であるフェイツ公国にある学園」ということ。プロムナードの第1話と照らし合わせると、ルミナス学園はアルセニック・バランスが創設した学園であったが、アルセニックの死後もバランシェがフェイツ公国に戻らなかったため、天照(大おじ様)が代理で名誉理事に収まっていたという感じだろうか。大おじ様の云っていた「古い知り合い」とはアルセニック・バランスを指していた訳だ。
・・・ってことは、天照はバランシェに出会う(星団暦2629年)以前から、母親のアルセニックとは知り合いだった可能性が出てくる。アルセニックの没年は不明だが、5巻のソープのセリフ「アドラーに変なものすごい科学者がいると聞いて」というのも、意外とアルセニックの紹介だったのかも知れない。
(2004.10.12)

 

■ 自己鍛錬プログラム (p255)


なぜ最低ランクの騎士であるちゃあが、ヒュートランのマスターと成り得たのか、数々の憶測を蹴り倒して「もともと最弱の騎士を選ぶファティマだった」というのが正解でした。
んで、この自己鍛錬プログラム、バランシェが「次」を見越して施したものであると云うなら、最終的に以下の二択の目的があったことが想像できる。
1.自己鍛錬を繰り返し、最終的に自己鍛錬が完成された後に、最高のパートナーとMHを得て戦うべき相手を想定している。
2.自己鍛錬により磨かれたプログラムをバランシェが定期的に吸い出し、次のファティマに強力なプログラムをインストールする。
ログナーの「欠陥品」、「失敗作」というセリフを見る限りでは、ヒュートランは終生自己鍛錬を繰り返す雰囲気が読み取れるので、前者の可能性はとりあえず低い。
後者の予想で行けば、ヒュートランによって磨かれた戦闘プログラムは、アトロポスやクローソーに還元された、と考えることも可能だろう。ヒュートランが具体的にどのような騎士のパートナーとなって成長してきたのかは不明だが、「星団中の騎士やマイトが探し回っている」と云われるのであれば、それ相応の戦果は残してきたことが予想される。自己鍛錬を繰り返してきた彼女が「バランシェが死んだ後のバランシェ邸」にいたのであれば、「遺作となった最終作品の製作時期」つまりアトロポスとクローソーの製作時に帰郷していた可能性も出てくる。とくにヒュートランは「150年ぶりの戦場」と口にしているので、その間、バランシェ邸で眠っていたと考えてもいいだろう。

と云っても、バランシェのことだから目的もなしに自己鍛錬プログラムを作ってみたという理由の方が納得できるか・・・。
「弱い騎士を選ぶ」ことを選択したのは、あくまでもヒュートランの出した結論であって、バランシェもそこまで強要してはいなかったのだろうし。

これでヒュートランのクリアランスが「??」になっていることは説明がつくのだが、成長タイプまで謎とされている理由は不明である。自己鍛錬を繰り返すために、素性を隠せるよう可変型ファティマにしたと考えればいいのか・・・。前述のアトロポス、クローソーへの還元を見越しているのであれば、彼女たちの試作としてL-M-S可変タイプを作ってみたという理由付けもできますけどね。
(2004.11.15)

 

■ ヒュートランの嘆願 (p257)


ヒュートランがソープにMHを準備してくれと嘆願しているシーン。これを分解してみると・・・。
ちゃあのパートナーとなったファティマ「エミリィ」は、ちゃあがフェイツ公国の学園(ルミナス学園)に通うことになったため、コーダンテ家預かりとして、フロート・テンプルに入城していたらしいことが読み取れる。んで、ちゃあが夏休み中に桜子に随伴することになった(プロムナード第1話ラスト)ため、エミリィに急遽連絡。連絡を受け取ったエミリィがちゃあとの待ち合わせ(p231)に間に合うように、ソープに嘆願しているシーンであると。
いくら名前を隠しているとは云え、ちゃあがMHをもってA.K.D.(フロート・テンプル)からハスハに入るというのは警戒されるので、おそらくは桜子のマイトの特権をフルに活かして、フェイツ公国の宇宙港から出てハスハに降り立ったのだろう。桜子のp231のセリフ「旅費、その子の分ももつって言ってるでしょー」というのは、おそらくそういう意味ではないだろうか。

ところで・・・ログナーはミラージュ騎士を「ヒマ人」と呼んでいるのだが、ソープもまたログナーを「ヒマ」と評しているのが笑える(p257の最後から2コマ目)
(2006.05.16 追加)

 

■ ルミナス・ミラージュの正体 (p258)


桜牧師は予想外だったので絶句してしまったルミナス・ミラージュの正体。
「装甲換装してバスター砲取り払って」とソープは簡単に口にしているが、実際にはそんなに簡単ではない。ルミナス・ミラージュの装甲形状は明らかにK.O.G.より細身であるから、熱バイパスやエキゾーストが細くなり、エンジンのフケが悪くなる。そうなるとただのデチューンになってしまうので、おそらくはそれをカバーするためにエンジンの出力を高めて多少ピーキーな状態になっているはず。

また、コマンド・ルームや次元航行用デバイスを搭載している頭部が換装されれば、機体のバランスもかなり変わったはずなので、前後のモーメント・バランスも調整が必要。この辺の微妙な作業を2日間でやってしまったソープは流石に星団一のマイスター(つーか、開発者だし)である。しかもコクピットの入れ替え、コンシール・モードの追加、ビヨンド・シーカーと全方位スキャナーのシンクロなど、ドライバのインストールや調整はヒュートランがやったとしても、かなりの作業量だったはず。

ただし、後頭部の時間次元エネルギーの転化ポートも取り外しているので、ルミナス・ミラージュは通常のイレーザー・エネルギーだけで稼動していることになる。K.O.G.だけがもつ3次元での不安定さは解消されていると考えていいだろう。「粗食」と書いてあるのは、時間エネルギーを食わせない状態にするという意味かも知れない。これをラキシスが指示したというのが、なんとも意味深である。
現在のK.O.G.のバージョンがVer.3なので、今回のルミナス・ミラージュはVer.4といったところだろうか。「ずーっといっしょ」と云われたラキシスにも見放され、死地に向かうことになったK.O.G.の心情はいかばかりか・・・南無〜。

あと、ちゃあが今回使用しているドーリー(p152に登場)もK.O.G.専用とのこと。こっちもルミナス学園のマークが描かれていたりするので、時間がないと云いつつソープがペイントしたのかなーとか。・・・案外、ラキシスあたりがノリで落書きした可能性もあり。コクピットの入れ替えでイチゴ柄の壁紙を選んだ時点で半分遊んで作ったことは判る訳ですが・・・それとも大おじ様の心尽くしというところでしょうか。
ソープがなんでフルサイズのバスター砲を持たせたのかは謎。相手がバスター砲を使用してきた場合に対抗するためとか。
(2006.05.17 修正)

オマケ・・・ソープのシャツに書いてあるロゴは、センセーのスタジオ「オートマチック・フラワーズ」のロゴ・マークである。
 

■ ログナーの行動 (p259)


さて、ちゃあの危機に際して「ブン」という謎のリアクションをとったログナーだが・・・これは「ソニック・ブレードのような技を出して、ドラゴン・トゥースを切断した」のではないだろうか。
まずドラゴン・トゥースを切断した時の火花の方向から見て、攻撃は下から当たったことが判るのだが、もし転んだ拍子に下側からトゥースを切断したのであれば、ルミナスの剣の位置は切断したトゥースよりも手前側になければおかしいことになる。また火花の飛び散り方も2回に見えるので、おそらくログナーの放った技がルミナスの剣を弾き飛ばしてからトゥースを切断したのではないかと。
ルミナスの剣が切断されなかったのは、メトロテカクロム(剣)とネオキチン(装甲)の硬さの違いのため・・・とか思いますが、この辺は描写が不足しているので、少々不明な点多し。
(2004.11.15)

 

■ お家のために・・・って (p263)


FSS本編でついにご尊顔も登場し、個人的に萌え度アップのちゃあ。祝!デビューである。コクピットの中にまでガマ口サイフを持ち込んでいる辺りが彼女らしいというか・・・。たぶん中身はバイトで貯めたお金が入っていて、最悪、MHとドーリーを失ってもいいように準備しているんだろうなーと邪推。

んで、問題なのが「お家のためにがんばろー」とちゃあが云っている部分。コーダンテ家はA.K.D.の第2王家(天照家が第1、以前はシナーテ家が第2)で、コミック11巻のカラーページに書かれているように、ワスチャは王位継承権の第4位に位置している。ここで彼女ががんばる理由がイマイチ不明なのだが、おそらくアイシャ(継承権第3位)がルーマー王家に移ったために継承権を失い、尚且つちゃあはまだ正式にコーダンテ家の後継者として認められていないことから、実質、コーダンテ家に継承権がない宙ぶらりんの状態にあることが理由になっているのだろう(おそらく今回のエピソードが第4位に数えられる前の話か)。
もっとも、彼女は王位継承権などには興味がないはずなので、おそらくアイシャが抜けたことでA.K.D.内において「コーダンテ家が没落しつつある」という在らぬ噂が囁かれている背景があり、それを見返すために健気にもがんばっているのだろうなーと。
ただし、p226でログナーが口にしているように、ここで彼女が戦果を挙げたとしても、お家の事情が変わる訳ではないので、この辺の空回りも含めて「ちゃあ」というキャラクターなんでしょうね。

あと、ワスチャの幼名(ちゃあ)についてだが・・・現時点で正式にコーダンテ家の後継者として認められていないので、幼名=現時点での本名ということになるのではないか。ワスチャは元服(女性だから髪上げか)後の名前ということで。
(2006.05.17 修正)

ふぃー。これにて12巻の考察終了っす。
 
 
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