WAJA表彰状
 このページジでは、430MHzのWAJAに関する資料やMIXの独断と偏見の講釈(六甲山と千町ケ峰で沖縄が聞えにくい理由)などを掲示しています。


430MHz WAJA 特記 No.1 JR3MIX 表彰状
WAJA特記No.1
1983.08.24 日本アマチュア無線連盟発行
                                       六甲山と千町ケ峰

 
涙の交信
 大変長い旅でした。
1983年7月30日16:23、それは私にとって本当に劇的な一瞬でした。電話やHFなどでは聞いていましたが、待ちに待った南大東島のJR6SPI奥山さんの声が、430MHzの電波に乗って聞えてきたのです。何年も沖縄からの信号を待ち続けていただけに、応答する声も感動のあまり涙声になり、「ありがとうございました・・・」と言うのが精一杯でした。あと1県の沖縄が待ちきれず、沖縄本島最北端の岬、辺戸岬(へどみさき)にJR3VGH吉田さんの息子さん達二人を派遣し、猛暑の中、1週間にわたり本土向けに運用してくれたことが、昨日のことのように思い出されます。沖縄県名護市のJR6QYV仲嶺さんやJR6RMZ古堅さん各局からは、多くの情報を提供していただき、その上、あつかましくも多野岳や乙羽岳への移動をお願いしたりもしました。神戸市のJH3RVN後藤さんには、アンテナなど資材の提供にご協力いただきました。多くの皆さんのお陰でWAJAを達成できました。

 
夜明けの決断
 この日7月30日は、第5回全国伝搬通信実験の1日目で、我々の千町ケ峰のグループは、3エリアのコントロールをするために、前日の金曜日から移動していました。金曜日は、北方面のコンディションがよく、神戸市から千町ケ峰へ移動してきたJR3LPF城下さんは、,宮城県と交信出来、WAJAにあと沖縄1県を残す我々と並びました。城下さんは土曜日の夜明け前に下山し、南大東島を狙って淡路島に移動しました。南大東島や沖縄本島と交信するには、四国山脈から少しでも離れ、海に近く、ルート上に高い山がなくて、標高1,000m以上の運用ポイントが最も理想的と言えます。残念ながら、千町ケ峰は、まさに前2つの条件が壁になっていますが、神戸市の六甲山は、これらの条件をうまくクリアしています。1000m近い標高があり、真下に100万ドルの夜景の神戸港が見え、淡路島と紀伊半島に挟まれた紀伊水道を抜けて、南大東島までは、太平洋が続くだけです。何回も海図を広げ、六甲山頂と南大東島を定規で結んでは、方位を確認し、コンディションが少しよければ、必ず交信出来るはずだと一人で納得していました。しかし、1979年以降、再三六甲山に移動して、南大東島にチャレンジしていましたが、どうしても交信出来ず、少し諦めかけていたのも事実です。7月30日土曜日の夜明けの尾根のミーティングで、我々のグループに参加していたJE3PZO藤原さんが、千町ケ峰のコントロール役を機嫌よく引き受けてくれました。そして、「田路さんが神戸に行くんなら、一緒に行きましょう!」という吉田さんの言葉で、六甲山移動を決意しました。このまま千町ケ峰で運用を続けていれば、南大東島との交信は実現していなかったと思います。

 
千町ケ峰には
 30日(土曜日)の早朝は、まさにWAJAへ続く道の大きな分岐点であったと言えます。現に千町ケ峰では、六甲山に強く入感していた30日の夕方に南大東島の信号が全く聞えていなかったのです。千町ケ峰は、中国山脈の兵庫県中西部に位置する関係で、1,000m〜2,000mの山々の連なる四国山脈の陰に入り、沖縄からの電波の届く可能性はぐっと低くなります。特に、この時のダクトはあまり強くなかったため、内陸部までは延びず、和歌山や高知の太平洋側の一部分との交信に留まりました。六甲山のすぐ裏の川辺郡移動の所にさえ沖縄の信号は届いていなかったことを、当時の移動局から、後日聞いたことがあります。
                  沖縄が聞えにくいのは?

 台風の影響
 20年近く経過した現在では、「どんな気象条件下で本州と沖縄間がオープンするのか」等については、かなり解明され、ダクトの発生する時期をある程度予測出来るようになってきました。それにしても未だ、1,000kmを超える沖縄と本州をU・SHF帯でつなぐことは容易ではありません。同じ位の距離の北海道と本州間が、再三オープンするのに較べると、どうして南方向がこんなに聞えにくいのか・・・一つの理由は、年中交信できる2局間の距離400〜600kmの位置に相手局がいないことです。沖縄から声を出せば、その時々のコンディションを確かめられるワッチ局が、奄美も含め鹿児島など南九州辺りには少ないこと。もう一つは、全国的に運用が活発になる時期に台風が襲来することです。前者につきましては、南九州の皆さんの積極的な運用を望むしかありません。また、後者は、アンテナの保守管理に大変な苦労があると思いますが、タワーの安価な昇降設備や風に強い形状のアンテナの開発などによって、その負担を軽減出来ると思います。例えば、風船形式のパラボラアンテナや八木アンテナであれば、台風の時は空気を抜いて取り外せます。軽いので脱着が容易で、移動運用も活発になるかわかりません。ハブが気になりますが・・・                                   
 
沖縄を超える日が
 いずれにしましても、私達の創意と工夫次第で、今までは無理と思われていた地域とも交信出来る日が必ずやってきます。父島、石垣島、宮古島と本州間のように。そして、沖縄,沖縄と言っていたのが嘘のように、間もなく台湾やオーストラリアなどとの数千キロに及ぶ交信が可能になることでしょう。
 U・SHF帯の電波には、我々ハムの気付いていない、驚くような特性が一杯あるはずです。
それらは一体どんな特性なのか? 
今日も、MIXは、それらの特性を求めて、「未知への旅」を続けています。 
  JR3MIX

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