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Ⅰ業務処理の原則と
大げさな広告やおとり広告は禁止 |
|
Case 「今月は、 墓地を見下ろす宝パレスの販売強化月間とします。海を一望にできるシャトーシーサイドの 広告を見てきた人にも、同物件は売り切れたと言って、宝パレスを勧めてください。」と宅社長の訓示。
しかし、これって、いいのかなあ。 |

宅建業法は、業務上の規制の冒頭で、次のような業務処理の原則と従業者の教育の努力義務を掲げている。
5-1 業務処理の原則と従業者の教育の努力義務
| 1 |
業務処理の原則(31条1項)
宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならない。 |
| 2 |
従業者の教育(31条の2)
宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。 |
せつめい
1の信義誠実の原則とは、一定の状況下では、相手方等関係者の正当な期待に沿った行動をとらなければならないという原則。同原則は、私法全般の原則でもある(民法1条2項)が、宅地建物取引の専門家である宅地建物取引業者に自覚を促す意味で、重ねて明記した。条文できっちり定めた条項に違反しない行為も、専門家としての注意義務に反する行為は、本条違反となる。
2の従業者の教育は、<宅地建物取引主任者>から<宅地建物取引士>への呼称変更に伴い、宅地建物取引業者の責務として、追加された努力義務である。

Caseの評価 「海を一望にできるシャトーシーサイドの広告を見てきた人にも、同物件は売り切れたと言って、墓地を見下ろす宝パレスを勧めてください。」という宅社長の訓示は、信義誠実の原則にも従業者の教育の努力義務にも反する残念な行為である。
さらに、同訓示は、より具体的な規制にも違反する。

虚偽の広告や大げさな広告は禁止される。
5-2 誇大広告等の禁止(32条)
宅建業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る
| |
①宅地又は建物の所在、規模、形質、
②現在もしくは将来の利用の制限、
③環境、
④交通その他の利便、又は、
⑤代金、借賃等の対価の額もしくはその支払方法もしくは
代金もしくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせん |
|
|
について、 著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。 |
せつめい
| * |
広告媒体は、新聞・雑誌、立て看板、放送、インターネット等どのようなものでも、規制の対象になる。 |
| * |
広告自体の規制だから、誇大な広告をすれば、取引にいたらなくても、また、見た人が信じなくても違反である。 |
| * |
売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」は、本条に違反する。 |
| * |
監督処分と罰則 誇大広告禁止に違反すると、業務停止処分の事由であり、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又はこれらの併科の罰則がある。 |

Caseの答 売るつもりのないシャトーシーサイドの広告は、おとり広告に当たる。おとり広告は誇大広告の一種なので、誇大広告違反として業務停止処分、情状が重ければ免許取消し処分を受ける。更に、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又はこれらの併科の罰則が課されることがある。 |
Ⅱ未完成物件の広告・契約の時期の制限
Case建築確認申請中の未完成マンションの建主の宅建二氏 から、賃借人のあっせんを頼まれた業者の館氏 、貸借の媒介をする旨の広告を出し、それを見て集まった人と宅氏との間の賃貸借契約を媒介した。 それを見ていたベテラン業者の剛田氏 、「おいおい、それは違反だぞ。」と警告。
どこが違反なのだろうか。
|

開発許可、建築確認など法令に基づく許可等がなければ、宅地造成や建築工事をできない場合が多い。その場合に許可等の前に広告や契約をしてしまい、そのとおりに完成できなかったときは、結果的に詐欺の広告・詐欺の契約ということになってしまう。
そこで、
5-3 工事に必要な許可等の前は広告と 売買の契約・売買の代理・媒介は禁止(36条)
未完成物件は 工事に必要な許可等*の後でなければ、
| |
業務に関する広告 と
売買(交換)の契約・
売買(交換)の代理・媒介 |
|
をしてはならない。 |
ただし、 貸借の代理・媒介はしてもよい。 |
せつめい
工事に必要な許可等とは、開発許可*、建築確認※等だ。
*
※ |
開発許可 一定の土地の造成には都道府県知事の許可を要するという制度
建築確認 これからしようとする建築行為が、建築基準法等の定めに適合するかどうかを確認する手続。確認できなければ、建築行為に着手できない。 |
許可等の前は、業務に関する広告と売買契約・売買の代理・媒介をすることが禁止される。
禁止が解かれるには、許可等が現実に下りていなければならない。申請中では、なお禁止される。
なお、 許可等の前も貸借の代理・媒介は禁止されていない。
そのこころ
許可等を受ける前の物件につき、貸借の代理・媒介はしてよいが、その広告は禁止するというのは、理解しがたいものがある 。が、広告をしないで少人数を媒介するのはよいが、広告までして大々的に行うのは、物件が完成できなかったときの影響が大きいので、許さないということだろう。
Caseの答 建築確認前の建物の貸借の《媒介をした》ことは違反ではない。 建築確認前の建物の貸借の《媒介の広告をした》ことが違反なのだ。 |
Ⅲ 取引態様の明示
Case 完成マンションのオーナーの 宅建二氏から賃借人のあっせんを頼まれた業者の館氏、貸借の媒介をする旨の広告を見たという人から注文を受け、直ちに契約手続に進んだ 。それを見ていた、ベテラン業者の剛田氏、「おいおい、それは違反だぞ。」とまたもや、レッドカード 。 契約手続に入る前に何かしなければならなかったのか。 |

業者が、宅地建物取引に代理・媒介で関与するのか、契約当事者となるのか、を取引態様の別という。 代理・媒介の場合は、業者に報酬を支払わなければならないが、当事者の場合はその必要はない。この問題をはっきりさせるため、業者は、取引態様の別を明示しなければならない。
5-4 取引態様を明示する義務(34条)
宅地建物取引業者は、宅地建物取引に関する
|
①広告をするとき と、
②注文を受けたときは遅滞なく |
|
、 取引態様の別を明示しなければならない。 |
せつめい
取引態様を明示するとは、「売主です」とか、「媒介(仲介)です」とかを広告に記載したり、口頭で告げたりすることだ。
なお、取引態様を明示した広告を見た客から注文を受けたときも、再度取引態様を明示すべきか。

明示すべき である。広告の取引態様の記載を見落としていることもあるので、もう一度はっきりと知らせるべきだからである。

Caseの答 館氏は、取引態様を明示した広告を見たという人から注文を受けたときは、遅滞なく「媒介です」と取引態様を明示すべきだった。
貸主の表示について
取引態様は、売主・貸主・代理・媒介の4態様あるが、当事者となって行う貸借(転貸も含む。)は、宅地建物取引ではない。したがって、貸主である旨の取引態様は、それを明示しなくても取引態様の明示義務に違反しない。 |
Ⅳ 媒介契約規制
Case自宅売却の媒介を宅建建拓に依頼した不動三太郎氏 。 翌日、大手のスッキリハウジングから同物件につき媒介の 申し出を受けた。 不動氏は重ねて依頼するとができるだろうか。
また、知り合いの剛田氏 から、同物件を直接自分に売って くれるよう申し出を受けた場合は、媒介業者を通さず、 直接売って良いのだろうか。 |

1 媒介契約の類型
業者は、媒介や代理を、契約当事者から依頼されて行う。その際の依頼の契約、媒介契約(代理依頼契約)には、次の類型がある。
5-5 媒介契約の類型
| 媒介契約 |
一般媒介契約
浮気できる |
明示義務のない一般媒介契約
黙って浮気できる |
明示義務のある一般媒介契約
浮気告白義務がある |
専任媒介契約
浮気できない |
専任媒介契約
自己発見取引はできる |
専属専任媒介契約
自己発見取引もできない |
せつめい
依頼者が重ねて他業者に依頼できるのが一般媒介契約、
他業者に重ねて依頼できないのが専任媒介契約 である。
一般媒介には、黙って他業者に依頼できる明示義務のない一般媒介契約、と他業者に依頼するときは、依頼先を明示しなければならない明示義務のある一般媒介契約がある。
専任媒介には、その業者が探した相手としか契約できない特約がついたもの(専属専任媒介契約)と、その特約がつかないものがある。専属専任では、依頼者が自分で探してきた者に売る(自己発見取引)ことも禁止される。
各類型のメリット・デメリット
他業者に浮気できる一般媒介は依頼者に対する拘束が弱いが、依頼を受けた業者は他業者に抜かれるおそれがあるので、熱心にはならないだろう。
依頼者が他業者に依頼できなく専任媒介では、依頼を受けた業者は他に抜かれるおそれはないので熱心にやるだろう。
さらに、依頼者が知り合いに売ることすら禁じられる専属専任は、業者は自分が客を探せば確実に報酬が得られるので、一所懸命にやるだろう。
媒介を依頼するときは、この長短を考え、どれにするか選択する。

Caseの答 不動三太郎氏が宅建建拓と一般媒介契約をしていた場合には、スッキリハウジングに重ねて依頼できる。専任媒介の場合には、依頼できない。
自分に直接売るよう持ちかけてきた剛田氏とは、専属専任媒介契約以外の契約をしていた場合には、直接取引をできる。専属専任の場合だけ、直接取引はできない。
|

2 媒介契約書を交付する義務
媒介契約に対する基本的な規制が、書面交付義務だ。
5-6 媒介契約書を依頼者に交付する義務(34条の2第1項)
| 宅地建物取引業者が、宅地・建物の売買(交換)の媒介契約を締結したときは、遅滞なく、契約内容を記載した書面を作成して記名押印し*、依頼者に交付しなければならない。 |
*
|
ここで記名押印するのは、宅地建物取引業者だ。宅建士ではない。 |
 |
貸借の媒介契約は、規制対象ではない!
そのこころ 媒介契約の書面化の目的は、主に報酬をめぐるトラブル防止だが貸借媒介の報酬はそう多額ではないので、書面化するまでもないとされた。 |
媒介契約書には、次の事項を記載する。
5-7 媒介契約書面に記載する事項(34条の2第1項)
| ① |
物件の特定表示 |
| ② |
売買すべき価額 |
| ③ |
媒介契約のタイプ |
| ④ |
当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項 |
| ⑤ |
有効期間及び解除に関する事項 |
| ⑥ |
報酬に関する事項 |
| ⑦ |
依頼者が特約違反をして契約を成立させたときの措置 |
| ⑧ |
その媒介契約が、国交大臣が定める標準媒介契約約款*に基づくものであるか否か の別 |
| ⑨ |
指定流通機構※への登録に関する事項 |
| * |
標準媒介契約約款とは、国土交通省が定めた媒介契約の標準的な書式。 |
| ※ |
指定流通機構 業者が加入しているオンラインの情報交換システムで、国土交通大臣が指定した一般社団又は一般財団法人。通称「レインズ」と呼ばれ、現在、全国に4法人(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)が設立されている。 |
せつめい
| ① |
は、宅地であれば所在・地番・面積、建物では所在・種類・構造・床面積等。 |
| ② |
は、売りの媒介依頼であれば、いくらで売り出すかとの売り出し価格。 |
| ③ |
は、契約内容が一般媒介か専任媒介か、一般媒介なら明示義務があるかないかの別。 |
| ④ |
は、平成30年4月1日から施行される。
国土交通省令で定めるものが行う建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分等の状況の調査を実施する者のあっせんに関する事項である。 |
| ⑤ |
は、契約はいつ終わるか、又、その終わらせ方をはっきりさせておく。 |
| ⑥ |
は、報酬額や支払い時期だ。これに関するトラブル防止が、媒介契約書面化の主な目的だ。 |
| ⑦ |
は、たとえば、専任媒介契約で、依頼者が他の業者に重ねて依頼し契約をしてしま ったときの違約金の定めなど。あらかじめ定めておいたほうが、違反行為の防止になる。
|
| ⑧ |
は、標準媒介契約約款を使えと言っているのではなくこの書式に基づいたかどうかを書いておけと言っているのだ。こうしておけば、おのずから標準媒介契約約款が普及するだろうという考えだ。
|
| ⑨ |
は指定流通機構に物件を登録するかどうかを記載する。専任媒介では、登録が義務づけられている(5-8)が、義務づけられていない一般媒介の場合も登録するかどうかは、記載しなければならない。 |
 |
3 根拠を示せば媒介価格に意見を言える
媒介の売出し価格は、依頼者と業者が相談して決める。が、その際に依頼者は取引経験や情報に乏しいから、業者の主張する価格に押し切られやすい。そこで、業者が一方的に押し切ることがないよう、
5-8 媒介価額についての根拠明示義務 (34条の2第2項)
| 宅建業者は、売買すべき価額(交換の場合は評価額)について意見を述べるとき、その根拠を明らかにしなければならない。 |
| * |
根拠は書面で述べる必要はなく、口頭でよい。その内容は、たとえば近時の取り扱い例からそれでは高いとか安いというように、合理的な根拠を示せばよい。
|
 |
売り出し価格の根拠を示さなければならないのは、業者が価額に意見を述べるときだけでよい。 |
|
4 浮気禁止の代償は有効期間の制限と特別尽力義務
Case 専属専任で自宅売却の媒介の依頼を受けた宅建建拓、 当初契約期間の3か月のうちに媒介できなかったが、
「特約で契約期間が自動更新されていますので、あと 3か月頑張らせてください」と言ってきた。 不動氏は、この特約に縛られて、あと3か月宅建建拓に任せ なければならないのだろうか 。 |

浮気(他の業者に重ねて依頼)を禁じられた専任媒介では、特に一所懸命にやるよう、特別の義務が課される。
5-8-2申込みがあった旨の報告義務
1 媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。
2 この規定に反する特約は、無効とする。 |
*この義務は、平成29年施行改正法で追加された。
5-9 専任媒介の特別規制-有効期間の制限と特別に尽す義務(34条の2)
| 1有効期間 |
| |
有効期間は、3月を超えることができない。これより長い期間を定めても、その期間は3月とする。 有効期間は、依頼者の申出がある場合に限り、3月を限度に更新できる。 |
| 2登録義務 |
| |
① |
専任媒介契約―― 契約締結の日から休業日を除く7日以内に、 |
| |
② |
専属専任媒介契約―契約締結の日から休業日を除く5日以内に、 |
| |
|
国土交通大臣の指定した流通機構*にその物件に関する情報を登録※し、同機構が発行した登録証書を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
| |
*
|
指定流通機構 業者が加入しているオンラインの情報交換システムで、国土交通大臣が指定した一般社団又は一般財団法人。
| ※登録事項 |
①物件の所在、規模、形質、②売買すべき価額 ③法令上の制限で主要なもの ④専属専任か否か等。
媒介依頼者の氏名等は登録事項ではない。 |
|
⇒登録物件につき契約が成立した場合、業者は、遅滞なく、その旨と登録番号・取引価格・契約成立年月日を流通機構に通知しなければならない(成約報告)。 |
| 3報告義務 |
| |
① |
専任媒介契約を締結した業者は、 2週間に1回以上 |
| |
② |
専属専任媒介契約を締結した業者は、1週間に1回以上 |
| |
|
依頼者に対してその業務処理状況を、報告しなければならない。* |
| |
|
*報告義務の報告は、書面でなくてもよい。 |
| 4上記に反する特約で、依頼者に不利なものは無効とする。 |
つまり
| 浮気を禁じられた専任媒介契約では、有効期間が3か月に制限され、 |
| 契約の相手方を探すため、契約日から休業日を除き7(5)日以内に、指定流通機構に登録しなければならず、 |
| 依頼者に対し業務処理状況を2(1)週間に1回以上報告しなければならない。※ |
※( )内は、専属専任媒介の場合
有効期間の制限と登録・報告義務 のゴロ合わせ
| 3か月 浮気はできない |
な(7日)ご(5日)やの |
兄(2・1週間)ちゃん |
| 有効期間の制限 |
登録義務 |
報告義務 |

Caseの答 自動更新の特約は、「依頼者の申出がある場合に限り、更新できる」という定めより、依頼者に不利な特約で、無効となる。したがって、不動氏から更新したい旨を申し出ない限り、契約は更新されない。
なお 業者に代理を依頼する場合も、同様の規制がかかる。 |
Ⅴ 重要事項の説明義務
1 だれが・だれに・いつ・どのように
Case「社長、分譲中の宝パレス42号室を剛田さんに媒介してくれた、業者の館さん から電話で、『明日の剛田さんに対する重要事項の説明は、宅建士の僕がするかね、それとも御社の宅建士の大地君 がするかね、後で電話してくれたまえ、ということです。』」
どういうことだろう。 |
|

重要事項の説明こそ、宅建士しかできない仕事だ。
宅地建物の取引は、知識と経験が必要だが、一般の人はこれらに乏しい。そこで、専門家である宅建士に、物件を取得しようとする者又は借りようとする者に対し、契約を締結する前に、重要な事項につき説明をさせ、契約締結についての判断材料を提供することにした。
5-10 重要事項の説明-だれが・だれに・いつ・どのように(35条)
| だれが |
宅地建物取引に関与した宅地建物取引業者は、 |
| だれに |
物件を取得しようとする者(又は借りようとする者)に対し、 |
| いつ |
契約が成立するまでの間に、 |
どのように |
宅建士をして、宅建士の記名押印のある書面を交付し、物件に関する重要な事項を説明させなければならない。
宅建士は、説明をするとき、相手方に対し、宅建士証を提示しなければならない。 |
*重要事項説明は、同意があっても省略できない。業者間取引では、書面交付は必要だが、説明は省略できる(平成29年施行改正法)。
【注意】ただし、物件を取得しようとする者・借りようとする者が、宅地建物取引業者である場合は、宅地建物取引士をして記名押印した書面を交付すればよく、説明は不要である。したがって、宅建士証の提示も不要である(平成29年改正)
せつめい
説明
義務者 |
説明を受ける立場以外で宅地建物取引に関与した業者だ。
売主(交換主)の場合もあれば、売買・貸借の代理・媒介の場合もある。
業者はその説明の方法として、宅建士に説明させなければならない。 |
説明の
相手方 |
物件を取得しようとする者又は借りよううとする者だ。
業者が当事者として売却・交換をするときは、買おうとする相手方又は交換の相手方に、また、業者が売買・交換又は貸借に媒介・代理で関与するときは、買おうとする者・交換の両当事者又は借りようとする者だ。 |
| 説明時期 |
契約締結についての判断材料提供が目的だから、
契約と同時でもダメで、契約締結前でなければならない。 |
| 説明方法 |
説明は、宅建士から相手方に、一定事項を記載した書面を交付して行なわなければならない。その書面には、宅建士が記名押印をしておかなければならない.
なお、記名押印も説明も、業者の業務に従事する宅建士がすればよく、特に専任である必要はない。
説明をするとき、宅建士は、請求がなくても相手方に宅建士証を提示※しなければならない。
※
|
宅建士証の提示方法 相手方に提示するときに,個人情報保護の観点から、シールを貼って住所欄を見えなくすることができる。ただし、シールは容易に剥がせるもので、宅地建物取引士証を汚損しないこと。ペンなどで塗り潰すことや必要な時にきれいに剥がすことのできないものを貼ること,また住所以外まで見えなくすることは認められない。(通達) |
|
| 場所はどこでもよい。 |
 |
一つの取引で複数の業者が説明義務を負うことがある。
Caseの場合、説明を受けるのは剛田氏だが、宅建建拓が売主として、また、館氏が媒介として関与している。したがって、宅建建拓と館氏のいずれも剛田氏に説明義務を負う。
宅建建拓   剛田
売主 買主
館
媒介 |
| |
複数の業者が説明義務を負う場合は、いずれかの業者の宅建士が代表して説明してよい。ただし、書面への記名押印は、いずれの業者の宅建士のものも省略できない。 |

Caseの説明 Caseでは、売主の宅建建拓も媒介の館氏も説明義務を負うが、説明は、宅建建拓の大地氏か館氏のいずれかが代表して行ってよい。ただし、重要事項説明書面への記名押印は、大地氏のものも館氏のも省略できない。 |
2 説明事項-わかりにくいことを説明する。
Case「建ぺい率・容積率によって、その宅地の上にどれだけの 大きさの建物が建てられるかが決まるので、宅地の売買や貸借 の重要事項説明では、建ぺい率(建築面積/敷地面積)、容積率(延べ面積/敷地面積)
を、必ず説明します。 では、すでに建っている建物の売買や貸借の場合にも、敷地の 容積率や建ぺい率を説明しなければならないでしょうか。」
宅建士の大地氏が新人のさなえさんに重要事項説明のレッスンをして いるときのやりとりだ。
「既に建っちゃっているのですから、売買でも貸借でも、 説明する必要はないんじゃないですか。」とさなえさん。
本当だろうか。 |

説明するのは、一般の人にはわかりにくい事項だ。物件に関する事項・契約条件に関する事項、契約内容ごとの固有の説明事項などがある。
5-11 説明事項1 物件に関する共通の説明事項(35条1項)
| ① |
登記簿上の権利関係 |
| ② |
契約内容の別(契約目的が宅地か建物か・契約が売買か貸借か)に応じた法令上の制限(都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限) |
| ③ |
建物の貸借の場合を除き、私道に関する負担に関する事項 |
| ④ |
飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
|
せつめい
| ① |
は、宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類・内容と登記名義人又は表題部所有者の氏名又は名称。 |
| ② |
は、次ぎのa)b)c)に分けて規定されている
a)宅地又は建物の売買(交換)の契約の場合に必要な説明事項
|
都市計画法の開発許可や建築基準法の建ぺい率・容積率、用途制限等多数 |
b)宅地の貸借の契約の場合に必要な説明事項
|
a)から、都市計画法等に基づく土地建物又は土地の先買制度にかかる制限等を除いたもの。したがって、a)とほぼ同様 |
c)建物の貸借の契約の場合に必要な説明事項
| |
新住宅市街地開発法第32条1項 、新都市基盤整備法第51条1項 及び流通業務市街地の整備に関する法律第38条1項 の規定に基づく制限で、当該建物に係るもの。したがって、a)b)で説明する事項は、全部説明しない。
なお、試験では、当該建物が新住宅市街地開発事業により造成された宅地上にあり、新住宅市街地開発法第32条第1項に基づく建物の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転について都道府県知事の承認を要する旨の制限があるときに、その概要、と出題される(27年)。 |
|
| ③ |
は、敷地の中に私道が含まれるか、含まれる場合は、その面積、有償・無償の別など。私道の負担がなければ、私道負担なしと説明する。 |
| ④ |
の整備についての特別の負担とは、下水道整備の個人負担金など。 |

Caseの答 確かに、すでに建っている建物を借りる場合は、建ぺい率・容積率はどうでも良いことだから説明する必要はない。 しかし、建物を買った場合は、いずれ増改築したり、建て直したりする。そうすると、建ぺい率、容積率は重要な情報で、建物売買の重要事項の説明でも説明しなければならない。
建物売買でも、建ぺい率容積率は不要とするさなえさんの見解は、甘いということになる。
暗記お経 見ただけではわかりにくい登(とう)・法(ほう)・私(し)・供(きょう)~ |
Case 「この書式、おかしいです。だって、一番重要な代金額を記入する欄がないじゃないですか。」と素っ頓狂な声をあげたのは、新入社員のさなえさん。 宅建士の大地氏に、重要事項説明書面の書式を見ながら、レッスンをしてもらっているときのこと。
「いやそれでいいんだ。それには、それなりの理由があるんだよ。」 どんな理由があるのだろう。

次は、契約条件に関する共通の事項だ。
5-12 説明事項2 契約条件に関する共通の説明事項(35条1項)
| ① |
手付、権利金など、代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的* |
| ② |
契約の解除に関する事項 |
| ③ |
損害賠償額の予定又は違約金に関する事項 |
| ④ |
手付金等を受領しようとする場合の保全措置の概要※ |
| ⑤ |
50万円以上の支払金又は預り金を受領しようとする場合において、保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要 |
| ⑥ |
代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容及び当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置(ローンをあっせんするときの内容や、ローンが不成立のときの措置) |
| ⑦ |
瑕疵担保責任☆の履行に関し保証保険契約の締結等を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要※
|
せつめい
| ① |
代金そのもの、借賃そのものは説明事項ではないことに注意。これらは、契約を締結して初めて決まることだからだ。
手付とは、売買契約で契約締結時に買主が売主に交付する金銭等。契約があったことの証拠として授受するのだが、それ以外にも手付だけの損を覚悟すれば契約をやめにできるという効力をもたされることもある(6-6)ので、その授受の目的を説明する。権利金とは、賃貸借契約の際に権利設定の対価として支払われる金銭。 |
| ② |
解除に関する事項とは、どういう場合に契約を解除できる(やめにできる)かについての説明。 |
| ③ |
損害賠償の予定とは、契約違反の場合、損害賠償が問題になった場合は、これだけの額で決着をつけようという特約(権利5-5)。違約金とは、損害賠償とは別に違約=契約違反の場合に罰金として取れる金額の特約。 |
| ④ |
保全措置とは、売主業者が倒産でもして物件の引き渡しができなくなったときにすでに支払った代金充当金は保存して買主に返せるようにする措置。
業者が自ら売主で、非業者(業者でない者)が買主の場合、非業者保護のため、<引き渡しも登記もしないで一定を超える代金充当金を受け取ろうとするならその前に保全措置>を講じなければならないのだが、その措置の概要を説明する。6-7 |
| ⑤ |
支払金や預り金を受け取る場合は、保全措置は義務付けられていないが、講じることはできる。そこで、50万円以上の支払い金等を受け取ろうとする場合は、講ずるかどうか等につき説明せよとした。 |
| ⑥ |
売主業者が住宅ローンのあっせんをすることがあるが、その場合はその内容と、ローン不成立のときの措置である。 |
| ⑦ |
瑕疵担保責任の履行の措置とは、不動産の売主が目的物に欠陥があったときに買主に負う責任が巨額になり、売主業者が払えないことがある。そこで、瑕疵担保責任*の履行(責任を果たす)のため、保険をかけておく等の措置が制度化されたが、それらの措置を講じるかどうかを説明せよとした。
| * |
瑕疵担保責任 不動産の売主が目的物に通常では発見できない欠陥があったとき買主に負う責任で、損害賠償責任と契約目的達成できないときに契約を解除される
|
|
暗記お経 手・解・損・保全・ローンに瑕疵担保責任履行の措置

Caseの答 重要事項説明では、手付、権利金など、代金、借賃以外に授受される金銭については説明するが、代金そのもの、借賃そのものは説明しない。これらは、契約を締結して初めて決まることだからだ。
|

Case「なぜ、昭和56年6月1日以降に新築着工した 場合は、耐震診断を受けていても説明不要なんですか。」 
大地氏から、重説レッスンを受けているさなえさん、 また疑問が生じたようだ。でも、なぜなんだろう。 |

次は売買の場合のその他の説明事項だ。
5-13 売買(交換)の場合のその他の説明事項(規則16の4の3)
宅地売買(交換)では①②③、建物売買(交換)では全部説明する。
| ① |
宅地造成等規制法により指定された造成宅地防災区域内 |
| ② |
土砂災害防止対策推進法により指定された土砂災害警戒区域内 |
| ③ |
津波防災地域づくり法により指定された津波災害警戒区域内 |
| ④ |
石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容 |
| ⑤ |
建築物の耐震改修促進法に基づき、耐震診断を受けたものであるときは、その内容(昭和56年6月1日以降に新築着工したものを除く。) |
| ⑥ |
住宅品質確保法 による住宅性能評価を受けた新築住宅である旨 |
せつめい
①
②
③ |
造成宅地防災区域内 とは、宅地造成にともなう危険のある区域。
土砂災害の危険がある区域。
津波災害を警戒すべき区域。
以上は、は人命にかかわることだから、宅地の売買だけでなく、宅地の貸借、建物の売買・貸借でも説明事項である。 |
| ④ |
石綿の使用の有無の調査結果記録とは、現在使用が禁止されている石綿の使用の有無の調査結果だ。調査記録がなければ説明不要。 |
| ⑤ |
耐震改修促進法に基づき、耐震診断を受けたものであるときは、その内容も、耐震診断を受けていなければ説明不要。
さらに、昭和56年6月1日以降に新築着工したものであるときは、耐震診断を受けていても説明不要だ。これは、同年に建築基準法が改正され、耐震基準が強化された、昭和56年6月1日以降に新築着工したものについては、十分な耐震性があるからだ。なお、昭和56年に改正された耐震基準は、抜本的な改正であったため、今でも新耐震基準と言われる。 |
| ⑥ |
住宅品質確保法 による住宅性能評価とは、同法によるい優良住宅である旨のお墨付きだ。これは、建物貸借の場合は説明不要だ。 |
以上は、無理に暗記しなくても出題されれば、説明事項であることは判断できるだろう。 ただ、新耐震基準の施行年が問題となることがあるので、これは覚えておく必要がある。
KeyWord ゴロッ(昭和56年)と倒れて、新耐震

Caseの答 ●上の説明のとおり、昭和56年6月1日以降に新築着工したものであるときは、新耐震に基づき十分な耐震性があるから、耐震診断を受けていても説明不要なのだ。
つぎは、貸借の場合のその他の説明事項だ。
5-14 貸借の場合のその他の説明事項(規則16の4の2)
| 宅地貸借では①②及び⑥~⑪を、建物貸借では①~⑩を説明する。 |
| ① |
宅地造成等規制法により指定された造成宅地防災区域内 |
| ② |
土砂災害防止対策推進法により指定された土砂災害警戒区域内 |
| ③ |
津波防災地域づくり法により指定された津波災害警戒区域内 |
| ④ |
石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容 |
| ⑤ |
建築物の耐震改修促進法に基づき、耐震診断を受けたものであるときは、その内容(昭和56年6月1日以降に新築着工したものを除く。) |
| ⑥ |
台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況 |
| ⑦ |
契約期間及び契約の更新に関する事項 |
| ⑧ |
当該宅地又は建物(専有部分)の用途その他の利用に係る制限に関する事項(区分建物の場合は、その旨の規約があるとき) |
| ⑨ |
敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項 |
| ⑩ |
管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名・住所(法人の場合は、その商号・名称及び主たる事務所の所在地) |
| ⑪ |
借地借家法の定期借地権又は定期借家、もしくは高齢者居住安定確保法の終身建物賃貸借であるときは、その旨、 |
| ⑫ |
契約終了時における当該宅地の上の建物の取壊しに関する事項を定めようとするときは、その内容
|
せつめい
| ①~④は、売買と共通。なお、①②は、建物貸借でも説明事項であることに注意 |
| ⑦ |
定めがなければ、定めなしと説明する。 |
| ⑧ |
用途の制限とは、使い方の制限。たとえば住居専用マンションであ る等。利用にかかる制限とは、ペット飼育できるか等。規約とはマンションの管理上の約束事を定めたもの。
|
| ⑨ |
敷金とは、建物賃借人が賃借物を使用収益しているときに負うことのある債務(延滞賃料や賃借物を壊した場合の弁償金)の担保(たんぽ)(引き当て)とするため、賃貸人に差し入れる金銭。賃貸借終了後、賃借人が不動産を明渡した後、明渡しまでに生じたこれら債務に充当した残額につき、賃借人に返還請求権が生じる。この精算に関してトラブルが生じやすいことから、あらかじめ説明することにした。 |
| ⑩ |
定期借地権・定期借家権とは、更新されない借地権・借家権(権利Part8)、終身建物賃貸借とは、賃借人の死亡によって終了する建物賃貸借 |
⑤~⑪の覚え方。台・更・用/精・管・定期に終身取壊し と覚える。
だいこうよう で、いったん切って、お経のように読み込む。
暗記お経 だいこうよう せいかん ていきに しゅうしんとりこわし |
Case 「共用部分に関する規約の定め」は貸借では説明不要で、「専有部分の利用制限に関する規約」は貸借でも説明しますが、具体的にはどういうことですか。
用語が難しい区分建物の重説では、さなえさんも、手こずりがちだ。 |

次は、区分建物特有の説明事項だ。
5-15 区分建物の特有の説明事項(35条1項5号の2、規則16の2)
| 売買(交換)では全部、貸借では③⑧を説明する。 |
| ① |
敷地利用権の種類及び内容 |
| ② |
共用部分に関する規約の定めがあるときは、その内容(以下規約関係は、定め〔案を含む〕がある場合に限る) |
| ③ |
専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容 |
| ④ |
建物又は敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨(専用使用権)の規約があるときは、その内容 |
| ⑤ |
計画的な維持修繕費、通常の管理費用等所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の内容 |
| ⑥ |
計画的な維持修繕費の積立てを行う旨の規約及び既に積み立てた額 |
| ⑦ |
所有者が負担する通常の管理費用の額 |
| ⑧ |
管理が委託されているときは、その委託先の氏名・住所(法人の場合は、その商号・名称、主たる事務所の所在地) |
| ⑨ |
建物の維持修繕の実施が記録されているときは、その内容 |
せつめい
| ① |
敷地利用権とは、区分建物の敷地を正当に使用できる権利のことで、所有権・借地権等である。 |
| ② |
共用部分とは、区分所有者が共同使用する部分で、ロビー、廊下などのように初めから共同使用することが決まっているものと集会室・ゲストルームのように規約で設定するものがある。ここでいう共用部分に関する規約とは、集会室やゲストルームを設定する規約のことだ。この共用部分は、区分所有者が共同使用できるもので、賃借人には直接関係がない。よって、賃借の場合には説明不要なのだ。 |
| ③ |
専有部分とは各住戸のことだが、その利用制限に関する規約とは、例えば、居住用に限り事業用としての利用の禁止、フローリングへの貼替工事、ペット飼育、ピアノ使用等の禁止又は制限に関する規約上の定めが該当する。これは、賃借人にも直接関係する場合があるので、貸借の場合でも説明が必要だ。
|
| ④ |
専用使用権とは、1階バルコニニーの前庭の使用権を、面している専有部分の区分所有者に与えるとか、駐車場の利用権を特定の区分所有者に与える場合だ。
|
| ⑤ |
計画的な維持修繕費や管理費用の減免規約とは、たとえばその区分所有建物を建設した地主にだけ上記費用を減免する規約など。 |
| ⑥ ⑦ |
記述の通りのもの。これらについて、滞納がある場合には、それも説明しなければならない。 |
| ⑧ |
管理状態を問い合わせる便宜のために説明する。管理状態は賃借人の関心事でもあるので、貸借の場合にも説明する。 |
| ⑨ |
記録がある限りで説明すればよい。 |
暗記お経  |
| |
敷・共・専・専・減・計・管に管理委託先と修繕実施記録と覚える。 |
| |
シキキョウ センセンゲンケイカン~
カンリ-イタクサキにシュウゼンジッシキロク ♪ |
| |
①②、④から⑦と⑨は区分所有者にしか関係がないので、貸借の場合には説明不要。
貸借の場合にも説明が必要なのは、③専有部分の用途その他の利用の制限と⑧管理委託先である |

Caseの答 共用部分に関する規約とは、ゲストルームを設定する規約など。専有部分の利用制限規約とは、ペット飼育に関する規約など。貸借の場合には、専有部分の利用規約だけを説明する。
|

次は、未完成物件特有の説明事項だ。
5-16 未完成物件特有の説明事項(35条1項5号、規則16)
未完成物件は、
| |
| 完了時における形状、構造 |
| 宅地では接する道路の構造・幅員 |
| 建物では内装・外装の構造・仕上げ |
|
等も説明する。 |
|
せつめい
未完成物件は、説明しないとわからないので、完了時における形状・構造を説明する。図面が必要であれば図面も交付する。
宅地は、宅地造成工事完了時に接する道路の幅員(いわゆる道路付け)が重要だから、これも説明する。
建物では、工事完了時におけるその建物の主要構造部、内装及び外装の構造及び仕上げ並びに設備の設置及び構造等も説明する。

次は、あまり見られないが、割賦販売特有の説明事項だ。
5-17 割賦販売に特有の説明事項(35条2項)
割賦販売(引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上の分割払い)を行おうとするときは、次の事項を説明する。 *
| ①現金販売価格 |
| ②割賦販売価格 |
③引渡しまでに支払う金銭〔いわゆる頭金〕の額及び
1回あたりの賦払金の額並びにその支払の時期及び方法 |
| * |
現在では住宅購入の際は、ローンを組んで売主業者には全額支払うのが一般的で、売主業者と直接、割賦販売契約をすることはあまりない。 |
|
|
Ⅵ 供託所等に関する説明 供託所等に関する説明
Case 大地さん、この重要事項説明書面には供託所等に関する説明を 記載する欄がありますが、これも重要事項説明の項目なのですか。 |

業者が、ちゃんと営業保証金を供託しているか又は宅地建物取引業保証協会の社員になっているかも安心して取引をする上で重要な情報だ。が、これらは業者の信用に関することで、物件に関する重要事項とは性質が異なる。そこで、重要事項説明とは別に規定された。
5-18 供託所等に関する説明(35条の2)
業者は、業者の相手方等(宅地建物取引業者に該当する者を除く。*)に対して、契約が成立するまでの間に、下記区分に応じた下記事項の説明をするようにしなければならない。
| 営業保証金供託業者 |
供託している供託所及びその所在地 |
| 保証協会社員 |
当該社団法人名・住所、事務所所在地ならびに 弁済業務保証金を供託している供託所、その所在地 |
*宅地建物取引業者に該当する者を除く。*
平成29年改正法である。同改正法で、宅地建物取引業者は、営業保証金及び弁済業務保証金の還付対象者でなくなったが、それに対応する、改正である。
供託金額は、説明不要
|

しかし、実際は重要事項説明の一項目のように扱われており、国土交通省が公表している重要事項説明書面にも、さなえさんが指摘したとおり、供託所等に関する説明の記載欄が設けられている。
Caseの答 ●重要事項説明とは異なるが、実際には、同じように扱われている。 重要事項説明ではないので、書面で説明しなくても良い、また、物件を取得しようとする者、借りようとする者のほか、売ろうとする者、貸そうとする者にも説明が必要だ。
|
Ⅶ 契約内容を記載した書面(37条書面)の交付
1 37条書面 だれに、いつ交付するのか
Case 「郷田さん に宝パレス42号室をご購入頂きましたが、
剛田さんは代理人の館さん を立てていたので、37条書面は館さんに渡せばいいのかしら。」
新人のさなえさんが、大地氏にきいている。
「37条書面を渡す趣旨目的から考えれば、そうでないことは明らかだと思うよ。」とたしなめる大地氏であった。 |

宅地建物取引に関する契約は、すべて口約束だけで成立する。が、これを口約束で済ませては、後でトラブルになる。そこで、業者が関与した宅地建物の取引では、契約したことを証拠として残しておくため、契約内容を記載した書面を作成し、契約の当事者に交付することにした。
5-19 契約内容を記載した書面の交付義務(37条)
| 1 |
宅地建物取引業者は、 |
・
・ |
宅地・建物の売買に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、
売買又は貸借に関し、当事者を代理又は媒介をして契約を成立させたときは、その契約の両当事者に、 |
| |
契約成立後遅滞なく、 |
| |
契約内容を記載した書面を交付しなければならない。 |
| 2 |
宅地建物取引業者は、以上の交付すべき書面を作成したときは、宅建士*に、その書面に記名押印させなければならない。
*記名押印する宅建士は、専任でなくてもよい |
| |
|
|
誰に交付か
当事者として売買⇒相手方
代理・媒介として、売買又は貸借を成立させる⇒契約の両当事者

Caseの答 契約内容を証拠として残しておくという趣旨から、契約内容を記載した37条書面は、契約当事者である剛田氏に交付すべきである。
|
2 記載事項 契約内容の重要部分は必ず記載する
Case 「大地さん、37条書面の記載事項には、必ず記載する事項と、 定めがあれば記載すべき事項がありますが、その違いはどこにあるんですか。」
37条書面の書き方レッスンでのさなえさんの質問です。
どんな違い があるのでしょうか。 |

売買の場合に、37条書面に必ず記載すべき事項は次のとおり。
5-20 37条書面に必ず記載する事項(37条)
| 1売買の場合 |
| |
①当事者の氏名(法人の場合、名称)住所 |
| |
②物件の特定表示* |
| |
②-2当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項*
*は、平成30年4月1日から施行される。 |
| |
③代金額、支払い時期・方法(買主の義務) |
| |
④引渡し時期、⑤移転登記※申請時期(売主の義務) |
| |
* ※ |
宅地の所在、地番、建物の所在種類、構造等
移転登記 権利を移転したときにする登記。売主と買主の共同申請で登記する。この登記をすることによって、買主は権利を取得したことを誰にでも主張できるようになる。 |
| 2貸借の場合 |
| |
①②④は同じで、
③は、借賃額・支払時期・支払方法となる。
⑤移転登記時期は、記載しない*。
*なんで 一般に貸借では登記はしない |
せつめい
記載事項は、契約の内容だ。
売買契約は、代金とモノを取り換える契約だから、この契約で、
買主は代金を支払う義務を負い、
売主は宅地・建物を引き渡す義務を負う。
したがって、その具体的内容①~⑤を記載する。
ちなみに、この5事項は、重要事項説明では、説明しない。契約締結前には決まっていな

必ず記載の事項は契約の核心的部分だが、契約にはそれ以外の付随的な約束(特約)が伴うことがある。特約は、定めがある限りで契約内容となるから、定めがある限りで記載することになる。
5-21 定めがあれば記載する事項 *
売買では全部、貸借では①②③⑤が、定めがあれば記載すべき事項。
| ① |
手付金又は権利金等代金又は借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的 |
| ② |
契約の解除に関する定めがあるときは、その内容 |
| ③ |
損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容 |
| ④ |
代金又は交換差金についての金銭の貸借(ローン)のあっせんに関する定めがある場合においては、当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置 |
| ⑤ |
火災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容 |
| ⑥ |
瑕疵担保責任についての定め又は瑕疵担保責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容 |
| ⑦ |
宅地建物に係る租税公課の負担に関する定めがあるときは、その内容 |
せつめい
| ①~④手・解・損・ローンについては⇒5-11 |
| ⑤ |
天災その他不可抗力による損害の負担の定め とは、売買契約成立後、天災その他不可抗力によって、売買目的物が滅失(例:落雷で建物滅失)した場合の扱いについての特約である。民法は、この場合、建物は引き渡さなくてもよいが代金は請求できるという扱いをする(権利5‐12)が、これは一般には不合理なので、特約で変更することが多い。その特約のことである。
|
| ⑥ |
前段の瑕疵担保責任についての定めとは、(後段が瑕疵担保責任を果たすための措置であるのに対し)、瑕疵担保責任の内容に関する特約だ。民法は、瑕疵担保責任として損害の賠償と契約の解除を認めているが、これらを認めないとする特約や修繕義務も認めるといった特約だ。
|
| 後段の瑕疵担保責任履行の措置とは、不動産の売主が目的物に欠陥があったときに買主に負う責任が巨額になり、売主業者が払えないことがある。そこで、瑕疵担保責任の履行(責任を果たす)のため、保険をかけておく等の措置が制度化されたが、それらの措置のことだ。 |
| ⑦ |
租税公課の負担割合とは、例えば固定資産税の負担割合だ。 |
| |
覚え方 定め(特約)があれば記載する事項は、
手・解・損・ローンに不・瑕(瑕疵担保責任特約・瑕疵担保責任履行の措置)・租だ。
このうち、手・解・損・ローンと⑥の後段の瑕疵担保責任履行の措置は、重要事項の説明にもあった事項だが、
⑤不可抗力による損害の負担に関する定め(⇒)⑥前段・瑕疵担保責任についての定め(特約)⑦租税公課の負担に関する定めは、
重要事項の説明ではなかった事項だ。
そのこころ
これらは、契約締結前の段階で説明するのは早まりすぎているからだ。 |
| |
貸借の場合
④ローンのあっせんに関する定め⑥瑕疵担保責任に関する特約等⑦租税公課の負担に関する定めは、貸借では、仮に定めがあっても記載不要。 そもそも貸借では、このような定めはしないからだ。
|
Caseの答 ●「必ず記載の事項は、契約の核心的な部分で、それが決まっていないと契約は成立していないんじゃないかというくらい重要なことがらだ。それに対して、定めがあれば記載の事項は、・特約で定める付随的、派生的な事項だ。
|
Ⅷ 報酬規制
1売買(交換)の媒介依頼者一方から受けられる限度額
Case 業者館氏 が売主宅氏 から同氏所有の宅地 〔代金5,000万円〕の媒介依頼を受け、買主剛田氏 との間で売買契約を成立させた。館氏が宅氏から 受領できる報酬の限度額(消費税額を含む。)は、 いくらになるか。 なお、いずれも消費税課税事業者である。 |
業者が媒介又は代理により契約を成立させれば、依頼者に報酬を請求できる。
それを適正なものとするため、その上限を国土交通大臣が定めており(報酬額告示)、これを超えて、業者は、報酬を受けることはできない(46条)。
5-22 売買(交換)の媒介の依頼者一方から受けられる報酬限度額
| 代金額*(交換⇒高いほうの評価額) |
限度額(消費税込み) |
| 200万円以下 |
〔代金額×5%〕 ×1.08※ |
| 200万円超400万以下 |
〔代金額×4%+2万円〕×1.08※ |
| 400万円超 |
〔代金額×3%+6万円〕×1.08※ |
| * |
代金額は、消費税を含まない本体価格とする。ただし、宅地の売買は、もともと非課税。 |
| ※ |
消費税免税事業者は、1.032となる。この0.032=3.2%は、仕入れにかかる消費税等相当額である。 |
|
せつめい
消費税課税事業者が、媒介依頼者一方から受けられる報酬限度額は、左欄の代金額に対応する右欄の計算をした金額となる。
契約当事者双方から依頼を受けていれば、それぞれの依頼者から限度額の範囲内で受け取れる。
売買の媒介・依頼者一方から受けられる報酬限度額が、売買の媒介・代理の報酬限度額の基本数値になるのでこれはしっかり覚える。
売買の場合、一般には400万円超で、代金額200万円以下とか200万円超400万以下とかの金額は問題にならないが、貸借で居住用建物以外の場合に、権利金を売買代金と見立てた計算方式を取れるので、これらの金額の場合も覚えておく必要がある。
《覚え方1》
| まず、左欄の代金額区分欄は、2×2=4と覚えられる。* |
| 次に右の限度額欄、《200万円以下 代金額×5%》、これは理屈抜きで覚えてしまおう。 |
この下段が《200万円超400万以下 代金額×4%+2万円》。代金額に乗じる数値が5から1を引いた4(%)である。
+2万円は、どういう意味か。200万円以下部分は、5%とれたはずだ。
ところがこの段では、4%になっている。とすると、このままでは、200万円以下の5-4=1%×200=2万円とりはぐれる。そこで、ここで+2万円とする。
|
そして、その下の段は《400万円超 代金額×3%+6万円》。代金額に乗じる数値が4から1を引いた3%である。
+6万円はどういう意味か。200超400以下部分は4%取れたはず。また200万円以下は5%取れたはず。とすると、代金額×3%だけにしておくと、200超400以下部分の4-3=1(%)×200=2万円、200以下部分の5-3=2(%)×200=4万円とりはぐれるので、ここで+6(2+4万円)とする。 |
《覚え方2
》
消費税抜きの報酬本体価格では、2~6の数字が1回ずつ出てくる、ということでも覚えられる。 5% 4%+2 3%+6
| 代金額 |
限度額 |
| 200万円以下 |
〔代金額×5%〕 |
| 200万円超400万以下 |
〔代金額×4%+2万円〕 |
| 400万円超 |
〔代金額×3%+6万円〕 |
※ 以上で計算した金額に消費税課税事業者は8%上乗せできるから、 ×1.08となる。なお、試験では、消費税課税事業者しか出てこない。 |

Caseの答 《計算してみよう》
代金5000万円は、400万円超の数式を適用して、
(5000×3%+6)×1.08が媒介依頼者一方から受け取れる、消費税込の限度額である。
(5000×3%+6)×1.08=156×1.08=156+12.48=168.48
168.48万円が、館氏が宅氏から受け取れる報酬限度額になる。
2売買(交換)の代理依頼者から受けられる限度額
| Case 業者館氏が,宅氏から代理依頼を受けて、宅氏が所有する宅地を代金5,000万円で、剛田氏 に売却する契約を成立させた。この場合、館氏が 宅氏から受けられる報酬限度額はいくらか。 |
5-23 売買(交換)の代理依頼者等から受けられる限度額
代理の依頼者から受けられる報酬限度額は、媒介依頼者の一方から受けられる報酬限度額の2倍以内とする。依頼者と相手方の双方から受ける場合も同様とする。*
代理と媒介の報酬計算の違いは、
○
|
媒介は、依頼者の一方から受けられる限度額(Ⅹ)を規制しているので、依頼者の一方からⅩを超える額を受け取ることはできない。 |
| ○ |
代理は、依頼者と相手方の双方から受けられる合計額が、Ⅹの2倍以内と規制しているので、合計額がⅩの2倍以内であれば、依頼者又は相手方からⅩを超える額を受け取れることだ。
|
|
Caseの答 《計算してみよう》 代金5000万円は、400万円超の数式を適用して、 〔(5000×3%+6)〕×2×1.08
が媒介依頼者一方から受け取れる消費税込の限度額である。
その2倍受け取れるのだから、
(5000×3%+6)×2×1.
08=156×2×1.08=312×1.08 =336.96 336.96万円が、館氏が宅建建託から受け取れる報酬限度額になる。
*代理の報酬限度額が、媒介の2倍であるのは、代理の場合、媒介的活動を伴うのが普通で、それが考慮されたからである。
3一取引を複数業者が代理・媒介したときの報酬
5-24 一取引を複数業者が代理・媒介したときの報酬
報酬額制限は、一取引の総額を制限するものだから、一取引に複数業者が関与したときも、関与した業者の受ける報酬の総額が、国土交通大臣の定める額を限度とするものでなければならない。
たとえば
代理業者と媒介業者が関与した場合、又は複数の代理業者が関与した場合は、その業者全員が受け取れる報酬総額は、《売買の媒介依頼者一方から受けられる報酬限度額》の2倍以内でなければならない。
Caseの答 《計算してみよう》 館氏と大地氏が受けられる報酬総額は、媒介依頼者一方から受けられる限度額の2倍以内だから、
(5000×3%+6)×2×1.08=156×2×1.08=312×1.08 =336.96
の範囲内で報酬を受け取れる。
そして、 媒介依頼を受けた大地氏は、
(5000×3%+6)×1.08=156×1.08=156+12.48=168.48
の限度内でなければならない。
代理依頼を受けた館氏は、336.96-大地氏の受領額 の限度内でなければならない。 |
4 貸借の媒介依頼者からの報酬
貸借の媒介に関する報酬額は、次のとおりだ。
5-25 貸借の媒介に関する報酬額
| 依頼者双方から受けられる報酬額総額(消費税込み)は、借賃1.08月分*※に相当する金額以内(使用貸借は、通常の借賃を基準)とする。 |
| ただし、居住用建物の賃貸借では、依頼者一方から受けられるのは、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月の0.54倍☆に相当する額以内とする。 |
| * |
報酬計算の基礎となる借賃は、消費税相当額を含まない本体価格とする。なお宅地及び居住用建物の賃貸借は非課税。 |
| ※ |
消費税免税事業者の場合は、1.032月分となる。 |
| ☆ |
消費税免税事業者の場合は、0.516倍となる。 |
せつめい
貸借の場合は、原則として、依頼者双方から受けられる総額を規制する。借賃1月分に消費税を上乗せした額である。
例外として、居住用建物の賃貸借では、依頼者一方から受けられる報酬額を借賃半月分に消費税を上乗せした額以内とする。ただし、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合は、依頼者双方から受ける総額が、借賃1月分に消費税を上乗せした額以内であればよい。
| KeyWord 原則双方からの総額規制 ⇒ 居住用建物の特例・一方からの額規制 ⇒依頼を受けるにあたって承諾得ていれば、双方からの総額規制 |

Caseの答 貸借の媒介における、依頼者双方から受けられる報酬総額は、借賃1.08月分に相当する金額以内でなければならないので、依頼者の宅氏及び剛田氏それぞれから建物の借賃の1.08月分ずつを受領したことは違反である。

貸借の代理に関する報酬額は、次のとおりだ。
5-26 貸借の代理に関する報酬
代理の依頼者から受けられる報酬額は、借賃1.08月分*に相当する金額以内とする(使用貸借は、通常の借賃を基準)。依頼者と相手方の双方から受ける場合も同様である。
* 消費税免税事業者の場合は、借賃1月分の1.032月分 |
つまり
代理の場合は、居住用建物の特例がないのを除き、媒介の場合とほぼ同様である。
5-27 権利金の授受のある場合の特例
宅地又は建物(居住用建物は除く )の賃貸借に際し、権利金(権利設定の対価で返還されないもの)の授受があったときは、その権利金を売買代金とみなして売買の場合の計算方法で算出した額を上限として報酬を受け取れる。
居住用建物では、この計算(権利金計算)はできないことに注意!! |
5-28 規定外の報酬は受領も要求も禁止
業者は、規定外の報酬をいかなる名義をもってしても受け取ってはならない。また、不当に高額な報酬を要求してもならない。*
ただし、依頼者の依頼によって行った広告料実費額や調査費用※は、報酬ではないから、この限りではない。
| * |
受領禁止違反には、100万円以下の罰金。要求禁止違反には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又は併科の罰則がある。 |
| ※ |
媒介が成功しなくても請求できるし、成功した場合も報酬とは別に請求できる。 |
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Ⅸ 業務に関する禁じ手
Case 宝パレスを見学にきた剛田氏、今すぐでも契約したいのだが、150万円の手付の持ち合わせがないという。対応した宅建建託の大地氏、50万円ずつ3回に分割して支払えばいいですよ。」と契約締結をすすめた。
これってどうだろう。
また、「手付は50万円にまけますよ。」と言って、契約締結をすすめた場合はどうだろう。 |

1手付貸与又は信用供与による契約誘引の禁止。
業務の公正を守るため、業者がしてはならない禁じ手が定められている。
その第1は、
5-29 手付貸与又は信用供与による契約誘引の禁止(47条)
| 宅建業者は、手付について貸付その他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引してはならない。 |
| * |
手付を減額することや手付金の借り入れをあっせんすることは禁止されていない。 |
| ※ |
誘引行為自体の禁止だから、相手方が契約しなくても、また相手にしなくても違反である。 |
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せつめい
手付貸与による契約誘引とは、今お金がなくて手付けを打てないので契約を締結できないという人に「手付金は貸しますから、契約をしてしまいましょう」などと契約をすすめることだ。また、信用供与による契約誘引とは、「手付は後日でいいですよ」とか「手付は分割払いでいいですよ」などと言って契約をすすめることだ。
今しか契約できないように心理的に追い込み、契約を急がせるやり方は業界の体質を悪くするので禁止した。

Caseの答 ●大地氏が、50万円ずつ3回に分割して支払えばいいですよ。」と契約締結をすすめたことは、信用供与に夜契約誘引に当たり、違反になる。これに対し、手付を50万円にまけるとして契約締結を誘引したことは、違反ではない。 第2は、重要な事項について故意に事実を告げず、又は不実のこと(ウソ)を告げることの禁止だ。
Case 大地氏が剛田氏に紹介した宝パレス 42号室は、事故物件* であった。剛田氏 は、相場より安い同物件を気に入ったよう だが、大地氏は剛田氏に事故物件であること を告げなければならないだろうか。
*事故物件 孤独死や自殺又は殺人などが起きた不動産物件 |

第2に、重要事項につき知っていて黙っていたりうそをつくことが禁止される
5-30 重要事項につき故意に不告知又は不実告知することの禁止 47(条)
宅建業者は、その業務に関し、相手方等に対し、
契約締結の勧誘のため、又はその契約申込みの撤回・解除もしくは取引により生じた債権の行使を妨げるため、
次の事項につき、故意に事実を告げず、又は不実のこと(ウソ)を告げてはならない。
| ① |
重要事項の説明・供託所等に関する説明事項、契約内容記載書面の記載事項。 |
| ② |
このほか、宅地建物の所在、規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額もしくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者もしくは取引の関係者の資力もしくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの。
つまり、およそ相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項 |
について、うそをついたり、知っていて黙っていることを禁じた。

Case の答 ●事故物件であることは心理的な不快感を生じさせるので、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項にあたる。したがって、大地氏は、宝パレス42号室を、ただ安いと思って買おうとする剛田氏に、それは事故物件だから安いということを告げる義務がある。
Case宅建建託の従業者が、宅地の販売の勧誘に際し、買主に対して 「この付近に鉄道の新駅ができる」と説明したが、実際には新駅設置計画は存在せず、当該従業者の思い込みであった。これは、宅建業法に違反するだろうか。 |

第3に行き過ぎた契約締結の勧誘や契約解除の妨害が禁止される。
5-31 いきすぎた契約勧誘と解除等妨害の禁止(47条の2)
| 宅建業者又はその従業者は、 |
| 契約勧誘のため |
 |
おどす(威迫) |
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利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断の提供
絶対もうかりますよ。 |
|
物件の将来の環境又は交通その他の利便について誤解される断定的判断の提供
近日中に鉄道が開通しますよ。 |
|
正当な理由なく、契約を締結するかどうかを判断する時間を与えない  |
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勧誘に先立つて宅地建物取引業者の商号又は名称及び勧誘者の氏名並びに契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに、 勧誘を行う |
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相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する
|
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迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問する |
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深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させることが、禁止される。 |
| また、 申し込みの撤回・契約の解除を妨害するため |
|
おどす(威迫) |
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契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒む |
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手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げることが、禁止される。 |
なお、本規定は、故意であることを要しない。

Caseの答 ●思い込みで物件の将来の環境又は交通その他の利便について誤解される断定的判断の提供することは、本規制に違反する。
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Ⅹ守秘義務
Case 墓地を見下ろす宝パレス42号室は、実は自殺者が出た であった。そのため周辺の同等物件に比べ格安であったため剛田氏 が何故そんなに安いのかときいてきた。しかし、事故物件であることは、業務上知り得た依頼者の秘密である。これを、剛田氏に告げる事は、守秘義務違反となるのだろうか。
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業者や従業者は、業務上、客の家庭の事情など本人が隠しておきたい秘密を知りうる立場にある。それをやたらに洩らされては迷惑だ。 そこで、守秘義務が課されている。
5-32 守秘義務(45条)
宅建業者及びその従業者は、正当な理由がなければ、業務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅建業を営まなくなった後、又は、従業者でなくなった後も、同様とする。
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せつめい
秘密を守る義務は、終生の義務だ。秘密は、業者でなくなった後も、又は従業者でなくなった後も守らなければならない。 ただし、正当な理由があれば、秘密を漏らすこともできる。正当な理由とは、警察や税務署からの問合せを受けた場合、裁判所で証言する場合などだ。
また、前に述べた、重要な事項の告知義務が、秘密を漏らす正当な理由となることがある。
Caseの答 事故物件であることは、媒介の依頼者が隠しておきたい秘密だが、その物件を買いたいという人にとっては重要な事項に当たるので、その人に対する告知義務がある。そして、その告知義務は秘密を漏らしてよい正当な理由になるので、剛田氏に告知することは守秘無違反にはならない。
Ⅺ不当な履行遅延の禁止
5-33 不当な履行遅延の禁止(44条)
| 宅建業者は、その業務に関してなすべき宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払を不当に遅延する行為をしてはならない。 |
せつめい
不当な履行遅延をしてはならないのは、当然のことだ。違反には、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又は併科の罰則がある。
なお、不当な遅延が禁じられているのは、 宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払に限られていることに注意。これは、これ以外の義務は不当に遅延してもよいということではなく、ここに列挙した義務(売買の37条書面の必要的記載事項である 5-20 )が、特に重要であることを示した。 |
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この章からは、最も出題されます。媒介契約契約規制と報酬規制から各1問、重要事項説明から3問以上、37条書面から1問以上、その他誇大広告の禁止、広告、契約時期の制限、報酬規制等から、2・3問出題されます。 |
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