Part7監督・罰則
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Ⅰ 監督処分

1監督処分とは-違反状態是正と再発防止の措置
Case 国土交通大臣は、自分に相場より高く別荘地を売りつけた宅建建託(東京都知事免許)を霞が関に呼びつけ、事前聴聞の上、免許取消処分をしようと考えているが、できるのだろうか。

  監督処分は、本法が守られなかった場合に、監督官庁が行う違反状態是正及び再発防止のための措置だ。

これに対して、罰則は、監督官庁等の告発に基づき、裁判所が科す制裁(お仕置き)だ。
    宅地建物取引業者と宅地建物取引士(又は資格者)に対して、次の処分が行われる。
      
監督処分の種類
 宅地建物取引業者  指示 業務停止  免許取消 
 宅地建物取引士  指示 事務禁止  登録消除 
 〃  資格者  ×  × 登録消除

  宅地建物取引業者に対する<指示処分と業務停止処分>から見ていこう。

2 宅地建物取引業者に対する監督処分
1 指示処分と業務停止処分
7-1 宅地建物取引業者に対する指示処分・業務停止処分(65条)







































処分内容 
1)指示処分 違反状態是正のため、必要な措置を指示する。
2)業務停止処分 1年以内の期間、業務の全部又は一部の停止命令。
処分事由 
1)指示処分 
宅建業法に違反した。
業務に関し取引の関係者に損害を与えた、又は損害を与えるおそれが大きい。
業務に関し取引の公正を害する行為をした、又は取引の公正を害するおそれが大きい。
業務に関し他の法令に違反し、業者として不適当であると認められる。
宅建士が監督処分を受けた場合に、業者の責めに帰すべき理由がある。
2)業務停止処分 
業務に関し他の法令に違反し、宅地建物取引業者として不適当である。
宅建士が監督処分を受けた場合に、業者の責めに帰すべき理由がある。
次にあげる、宅建業法の違反があるとき
  □名義貸しの禁止□専任の宅建士の設置□営業開始時期の制限※
□営業保証金の不足額の供託※□誇大広告の禁止
□自己所有に属しない宅地建物の売却制限□取引態様の明示
□媒介契約書面交付及び価格の根拠明示□重要事項の説明
□契約締結等の時期の制限□契約書面の交付□手付金等の保全措置
□所有権留保等の禁止□不当な履行遅延の禁止□守秘義務
□報酬の制限□業務に関する禁止事項
□従業者証明書を携帯させる義務・従業者名簿を備付ける義務
□事務所新設にともなう弁済業務保証金分担金の納付義務※
□還付充当金の納付義務※□特別弁済業務保証金分担金の納付義務※
□社員の地位を失ったときの営業保証金の供託義務※ 等 
④国土交通大臣又は都道府県知事の行った指示処分に従わない 
⑤宅建業法に基づく国土交通大臣又は都道府県知事の処分に違反した 
⑥宅地建物取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとき 
⑦ⅰ)営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が、5年以内に宅地建物取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとき、又は、ⅱ)法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人、もしくは、ⅲ)個人である場合において、その政令で定める使用人のうちに、5年以内に宅建業に関し、不正又は著しく不当な行為をした者があるに至ったとき







宅建業法違反がある以上、例外なく、監督処分の事由にはなる。
他の法律違反や違法とまでも言えない不当な行為が監督処分の理由になるためには、業務関連性(業務に関して)が必要である。
宅建士が処分を受けたとき、業者にも責任(業者の責めに帰すべき事由)があると、業者に対する処分事由になる。業者の責めに帰すべき事由があるとは、業者が指示したとか、業者の監督不行届があった等である。
業務停止処分の事由を全部覚える必要はない。宅建業法違反があると、ほぼ業務停止処分の事由になると考えておけばよい。
処分権者 
指示処分・業務停止処分とも、
免許権者(免許をした都道府県知事又は国土交通大臣)及び
その場所を管轄する都道府県知事
つまり 指示及び業務停止は、免許権者の他、その場所を管轄する都道府県知事もできる。
ただし、2)③で※印のもの(営業保証金絡みの規制)は、免許権者のみ処分を行える。 

2 免許取消処分 
  免許取消処分は、最も重い処分で、一定の免許取消処分は、5年間続く免許欠格事由になる。

7-2 免許取消処分(66・67条)
処分事由 
1)取り消さなければならない事由 
①免許を受けた後、免許欠格事由にあたることとなった場合 
免許換えをしなければならない事由に該当しながら、していないことが判明した
③免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、又は、引き続いて1年以上事業を休止したとき 
④廃業等の届出がなく、廃業等の事実が判明したとき 
不正手段により免許を受けたとき 
業務停止処分の事由にあたりその情状が特に重いとき、又は、業務停止処分に違反したとき
⑤⑥は、5年続く免許欠格事由になる。1-11
2)取り消すことができる事由 
①免許に付された条件に違反したとき 
②業者又はその事務所を確知できないため官報・公報で公告し、30日を経過しても業者から申し出がないとき  
2  処分権者 
免許権者(免許をした国土交通大臣又は都道府県知事)だけ   
免許取消しは、免許権者だけ

Caseの答 Caseの国土交通大臣は、東京都知事免許を受けた宅建建託の免許を取り消すことはできない。取り消すことができるのは、東京都知事だけ。

3 宅建士(及び宅建士資格者)に対する処分
  まず軽いほうの処分だ。
7-3 宅建士に対する指示処分・事務禁止処分(68条1・2項)











処分内容
1)指示処分 違反状態是正のため、必要な措置を指示する。
2)事務禁止処分   1年以内の期間を定め、宅建士としてすべき事務を禁止する。
処分事由 
1)指示処分
 
①業者に、自己が専任の宅建士として従事している事務所以外の事務所の専任の宅建士である旨の表示をすることを許し、業者がその旨の表示をした(専任の宅建士の名義貸し) 
②他人に、自己の名義使用を許し、他人がその名義を使用し宅建士である旨の表示をした(宅建士の名義貸し) 
③宅建士として行う事務に関して不正又は著しく不当な行為をした
2)事務禁止処分 
指示処分の事由にあたる又は指示に従わない
処分権者 
登録をした知事その場所を管轄する知事
 指示及び事務禁止は、登録知事の他、その場所を管轄する都道府県知事もできる

   次は、重い処分。
7-4 宅地建物取引士又は宅地建物取引士資格者に対する登録の消除(68条の2) 









宅建士についての事由
  ①登録を受けた後、登録欠格事由にあたることとなった 
  ②不正手段により登録を受けた 
  ③不正手段により宅建士証の交付を受けた 
  ④事務禁止処分を受ける事由にあたり、情状が特に重い 
  ⑤事務禁止処分に違反した
宅建士資格者についての事由 
  ①上記①②にあたる 
  ②宅建士がする事務を行い、情状が特に重い
処分権者 
  登録をした知事だけ
 登録消除処分をできるのは、登録をした知事だけ!!

4 事前及び事後の手続
  事前及び事後の手続きも問題となる。

7-5 聴聞と公告



すべての処分で聴聞(69条)
国交大臣又は都道府県知事が監督処分を行おうとするときは、行政手続法の意見陳述のための手続区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
免許取消・業務停止処分の公告(70条)
国交大臣又は都道府県知事は、業者に対し業務の停止又は免許取消処分をしたときは、その旨を公告しなければならない。

7-6 大臣免許業者への監督処分と内閣総理大臣との協議
(71条の2)
   国土交通大臣は、その免許を受けた業者に、監督処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。

Ⅱ 罰則

  罰則は、記述肢の一つか二つで問われるので、ポイントをおさえておけばほぼ切れる。そのポイントは次のとおりだ。
7-7 罰則のポイント 
 1 免許制度にさからう行為はきつく処罰される()。
 2 業務運営体制上の規制違反には罰則(罰金)が科される。
 3 罰金よりも軽い過料の制裁は、宅建士の違反行為に科される。
 4 雇い主と行為者の両方を処罰する両罰規定*がある。
両罰規定 業務に関する違反行為につき、行為者を罰するほか、業務主である業者に対しても、罰金刑が科さる。行為者と業務主の両方を罰するから両罰規定という。とくに、不正手段により免許を受けた・無免許営業をした・名義貸しをした・業務停止処分に違反した・事実不告知等をした場合には、業務主である法人に対して1億円以下の罰金を科す。
2のせつめい 本法は、業者を監督する法律なので、下記の業務運営体制上の規制
【業者名簿の変更の届出・専任の宅地建物取引士の設置義務・契約行為をする案内所等の事前届出・標識の掲示・事務所に必須の三備品(報酬額掲示・業務に関する帳簿・従業者名簿)の掲示又は備置、従業者証明書を携帯させる等】
違反には、すべて罰金の罰則が設けられている。
   これに対し、業務上の規制違反で罰則があるのは、誇大広告の禁止違反契約内容
記載書面(37条書面)の交付
義務違反などにとどまる。

7-8
 罰則一覧 (主なもの)
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はこれらの併科
不正手段により免許を受けた/無免許営業/名義貸しをして営業をさせた業務停止処分に違反
  2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はこれらの併科
重要な事実の不告知等
  1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又はこれらの併科
不当に高額の報酬要求
  6月以下の懲役・100万円以下の罰金又はこれらの併科
営業保証金を供託した旨の届出前に営業開始/誇大広告/不当な履行遅延、手付貸与等による契約締結の誘引
  100万円以下の罰金 
規定を超える報酬の受領
50万円以下の罰金
免許申請書又は添付書類に虚偽記載/無免許で表示又は広告/名義貸しにより表示又は広告をさせた/宅地建物取引士の設置義務違反/業者名簿の変更の届出義務違反/契約行為をする案内所等の事前届出義務違反/標識の掲示義務違反・事務所に必須の三備品(報酬額掲示・業務に関する帳簿/従業者名簿)の掲示又は備置義務違反・虚偽記載/従業者証明書を携帯させる義務違反/守秘義務違反/信託会社等の営業の届出義務違反/
10万円以下の過料
宅建士証の返納・提出義務違反/重要事項説明の際の宅建士証の提出義務違反
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