<ほぼ完全の免税店1>

店員「すみません、ここは写真出来ません、コピーの店ですから。すみませんね」

 カメラを持っている僕が奥への仕切りを越える際に警告。でも撮影。撮影表示ランプを消しているのと、撮影位置のため全く気付かれていない。奥のコピー品と言うのは、時計、ライター、革製品、アクセサリーなど、およそ僕に興味が無いものだった。むらさきさんは壁面にある革のベルトのコーナーへ。人を掻き分ける感じに進んでいかなくては行けないので、ビデオカメラを引っ掛けたりぶつからないか心配になる。


奥、入ってすぐのところ


ベルトコーナー

ペ「コピーの店だから写真はだめですって」
む「へー、そいあんだ
(そうなんだ)
 
通り掛かりの店員さんが「ベルトどうですか?革ジャンは?」と寄ってくる。むらさきさん、ハハハといった表情。続いて革のズボンを見に行く。真っ黒。僕は中学生時代に流行っていた横浜銀蝿を思い出した。むらさきさんは手にとって眺めている。
ペ「ちょっと、宇崎竜童じゃないんすよ。(笑)」
む「昔持ってたんよ」

ペ「そーなんすか?(笑)」

む「もうだめになったから」
やはりその経験が。
む「
(商品構成が)革だけってのはどうかの?」

む「昔持ってたんよ」
革のズボンコーナー


仕切りの壁面にはシューズ

 奥から出る。ショーケース内の商品を見てウケてしまう。
ペ「むらさきさん、むらさきさん。このでけー(でっかい)ジッポー買っていくってのは。(笑)」
む「おおっ!(笑)」
ぺ「すげー。おもろい
(面白い)わ。(笑)」A4判くらいの大きさなのだ。
む「昔もっとでかいのあったよ」
ペ「ああ、そうなんすか」
む「これ。どう?ライター」とむらさきさん、そのショーケースの上に籠に入っておいてある拳銃型のライターを指す。
ペ「ああ、これ、T畑が好きそう」
実物大だ。
 T畑というのは、同じく僕の勤務する店の常連で、サバイバルゲームなどもするガンマニアなのだ。むらさきさんは、他のものに目を移すが、僕は珍しくてしげしげと観察。すると価格を見てびっくり。すぐむらさきさんに教える。彼はこの値段だったら買うのではないか?という気がしたのだ。
ペ「あの拳銃のライター、450円(4,500W)ですよ。いや〜、おもろいなぁ」
 
免税店は「高い」と言う印象があったが、こんな掘り出し物が。しかもホルスターまで付いている。
ペ「小が450円。大が750円」

む「安いよ、これねぇ」

ぺ「ええ、T畑、絶対ウケるわ。これ」

む「しかも、あれじゃない?ほら」

ペ「ターボライター」
むらさきさん、そうそうと相槌。
む「これ良いな。買っていくかな?」
少しいろいろな角度から眺めたと思ったら。
む「買うよこれ」

む「買うよこれ」
安い!うれしそうな表情

 ははは。僕、爆笑。本当に買うとは。
む「ベルトの1番良いやつ」
と、他のを手に、ホルスターに付いているベルトの品定め開始。
む「これだな」
店員「欲しい?」
 包みに入る。ビニール袋を用意される。むらさきさんは財布のWを調べ始めた。
ペ「おかしい。(笑)」
店員「これね、荷物に入れないでね。手持ちしてくださいね」
ペ「はぁい」

店員「出るときにね、はい」
 
このやり取りでピンと来た。万引き防止の警告だ。僕の店でもこういうときがある。万引き、と言うのは店側からすると相当に頭に来る行為である。この店はほとんど日本人専門だ。ということは日本人がやっているから、警戒しているのだ。情け無い、韓国まで来て。何してるんだ、一体。しかも観光客だと同一人物が連続して来る可能性も低く、網をはって捕まえる事も難しいだろう。それ以来より気をつけるようにした。疑わしい行動は止めよう。

む「…これじゃない」
財布のお金を確認

む「…これじゃない」
 
むらさきさんは自問自答するような感じで、僕に赤い札を見せる。
ペ「違うっしょ。緑のやつ。10,000Wで払えばいいです」
と、指差す。
 すると、驚いたような口調で店員さんに呼びかけられる。
店員「お客様!これ。お客様。4,000円ですよ、日本の金で4,000円」
 えっ!?事態が把握できない僕達。
店員「日本の金で4,000円。75,000
(7,500の言い間違えだと思います。)。”円”でしょう?」
 
プライスカードの単位を指す。10,000Wを両手に広げて、硬直しているむらさきさん。

ペ「あっ、違うわ」
 
ようやく意味が判った僕。
ペ「日本円だ!すいません」
 
日本人観光客相手なので、単位が全て「円」だった!今まで行ったことのある免税店は全て「W」か「ドル」表示だったので、ここもそうだと思い込んでいたのだ。
店員「そう、4,000円。日本円で4,000円」

む「日本円!?」
むらさきさんも理解。
む「じゃあ、いいや」
 
あきらめて、財布にお金をしまうむらさきさん。洒落で買うには高すぎる。店員さんに謝る。
ペ「ごめん、Wだと思ってました」
店員「円の表示ですよ、お客様。(笑)」
 
ごめんなさい、と再度言い直してその場を離れた。むらさきさんと照れ笑い。
ペ「ははは、なんだぁ。(笑)」

む「そうだよな、やっすい
(安い)と思ったよ。(笑)」
 
そこに先ほどの店員から「安すぎたでしょう。(笑)」という突っ込みが入る。ばつが悪く、店外へと脚を進める。途中「2個5,000円」という別の売りこみの文句を聞く。本当に僕、韓国は3回目か?恥ずかしくなってきた。むしろ慣れた為に起こったミスなのかもしれない。

 他に興味があるものも無いしで、外で集合時間まで待つ事に。
ペ「”ごめんなさい”ってそう言えば俺、(韓国語で)言えないんですよ」
 
むらさきさんは「ほう」と相槌を打つ。必要な言葉だなあ、と思う。間違いは必ずするので謝らなければいけない場面もあると思うのだ。
む「気ィ付けんといかんな」

ペ「ああ、まぁ日本人が多いところはそうでしょうね」

む「やばかったわ」
 
ここでむらさきさん、タバコを一服。ビデオカメラに今の出来事の解説を入れる。
ペ「ターボライター買おうとしましたが、日本円だったので急遽止めました。(笑)」

む「確かに”カモ”で、もういいやっ。(笑)」
 
カメラ目線のむらさきさん。爆笑する僕。
む「”円”と”ウォン”を気ィ付けなきゃいけないよ。(笑)」

ペ「ええ。もう3回も来ている俺が騙されたくらいだから、ヤバイなぁこれぇ。(笑)…ということでT畑君、あれはちょっと覚悟要るよ、買うの。ターボライターなんだけどね」
 
この頃T畑はターボライターを欲しがっていたのだ。

 暇なのでビデオカメラの性能を調べがてら、辺りの風景を写す。店の前の通りをズームアップ。しかしピントが全く合わずボケボケ。
ペ「あっ、ピントがマニュアルなんだ」
 
100mほど先でお姉さんが道に落ちている枯葉を掃除している。そしてサラリーマン風の中年男性が、通りを行き交う。
ペ「ああ、Fの文字の意味(ファインダー内の表示)が判りましたよ。ピントがマニュアルになってましたねぇ。…さあ、掃除するんだ。(笑)おあ、邪魔だおっさん。おっさん邪魔やってぇ〜。おっさん、あんたや。邪魔や邪魔。おしっ、お姉ちゃん、お姉ちゃん」
 
しかし、おっさんがどいたとき、掃除していたお姉さんはいなくなっていた。むらさきさんに説明。
ペ「判りました、意味が」

む「何?」

ぺ「フォーカスが、あの〜、手動になってたんです」

む「ああ、なるほど」

ペ「ボケボケ。(笑)ひょっとしたらさっきの店の中でも、全部ボケボケかも」
(ちゃんと撮れていました。)
む「ああ、なるほどね。ちょっと俺、あこのデビルをもうちょっと。(笑)」
ペ「デビルマン?」
む「デビルレディ」
 
何のことか判らず、むらさきさんについていく。それは隣の建物の看板、と言うか装飾用の彫像だった。バスの中から見つけていたのだろうか?像を撮影。

む「あれは、造型としての価値は十分」む「好きなんだ俺」
デビルレディ

む「あれは、造型としての価値は十分」
ペ「ええ〜、そうかなぁ?(笑)」
む「すばらしい」
ペ「なんか〜、ちょっと、韓国版モリガン
(カプコンのヴァンパイアシリーズのゲームキャラクター)て感じ。(笑)」
む「おお〜!言えとるね。けど、こう言うの好きなんだ俺本当にうれしそうな声。僕は近くの看板に目が止まる。黒い。

ペ「との発見、との」
ナイトクラブの看板

ペ「との発見、との。うわ〜、との、こんなところに出張。う…そろそろ時間なんで止めましょうか。(笑)」
 
「との」は、主に食事の面で家を御用達にしている野良猫の事だ。最近姿を見せない。なついているので少し心配している。
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