H21監監第367号
平成21年6月23日
仙台市民オンブズマン
代表 十 河 弘 様
仙台市監査委員 佐 藤 勝 博
同 須 藤 裕 州
住民監査請求に基づく監査の結果について(通知)
平成21年4月30日付けで受理した標記の請求について,地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定により監査を行ったので,その結果について次のとおり通知します。
記
第1 請求のあった日
平成21年4月30日
第2 請求人
仙台市青葉区中央4丁目3−28 朝市ビル3階
仙台市民オンブズマン
第3 請求の要旨
1 請求の趣旨
平成20年度に仙台市が国土交通省が所管する国の直轄事業費の負担金として納付した負担金のうち金2600万円について,国に対し,支払いを請求するなど適切な措置をとることを求める。
2 請求の理由
(1) 平成20年度に国土交通省が所管する国の直轄事業費の負担金として仙台市が支払った負担金のうち2600万円は,国土交通省の出先機関である仙台河川国道事務所の移転に伴う用地取得費に当てられていたことが平成21年3月31日,4月2日の河北新報の報道によって明らかとなっている。
(2) 地方財政法12条は,地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については,法律又は政令で定めるものを除く外,国は地方公共団体に対し経費を負担させるような措置をしてはならないと定めており,同条2項は,そのような経費として「国の機関の設置,維持及び運営に要する経費」を掲げているから,原則として国が地方公共団体にこのような経費を負担させることは許されないのである。
(3) 国道の「新設又は改築」「維持,修繕その他の管理」に要する費用については道路法50条で,一級河川の「大規模改良工事」「その他の改良工事」「維持及び修繕」その他の「管理」に要する費用については河川法60条で,国はそれぞれ都道府県や指定市から一定の割合による負担金を分担させることになっているが,出先機関である仙台河川国道事務所の設置に必要な敷地取得費や建物建設費まで負担させることは法令で許されていない。
国土交通省は「管理」に要する費用であるとするようであるが,道路法13条や50条2項では,国道の「管理」のための費用は国道の指定区間によって分担することになっているから,管理費用とは国道という施設の管理に要する直接経費であることは明白である。国の庁舎の建設などの間接的な経費までをも管理の費用であるという主張は牽強付会の主張である。
(4) 従って,国が仙台市に金2600万円を負担させたことは,地方財政法違反であるから,国は仙台市の損失により不当な利得を得ていることになる。
よって,仙台市長は国に対し,不当利得返還請求をすべきものであるが,それを怠っている。
又,4月1日の毎日新聞の報道では,国土交通省は具体的な使途を自治体には明示せずに直轄事業負担金として請求していたとのことであり,支出した地方公共団体を欺いて負担金を請求した不法行為であると評価することもできるから,損害賠償金としての請求も可能だが,その請求も怠っている。
(5) よって,仙台市長に対し,国に対して2600万円の支払を請求するなどの適切な措置をとるよう求めるものである。
〔請求の要旨に添付された事実を証する書面〕
1. 3月31日河北新報朝刊記事
2. 4月2日河北新報朝刊記事
3. 4月1日毎日新聞朝刊記事
(注)事実を証する書面の内容については,この監査結果への記載を省略した。
第4 請求の受理
本件監査請求は,平成21年4月30日付けでこれを受理した。
第5 監査の実施
本件監査請求について,地方自治法第242条第4項の規定により,次のとおり監査を実施した。なお,本件監査請求の受理については監査委員4名の合議で決定したが,平成21年6月9日付けで木村勝好監査委員及び菊地昭一監査委員が辞任したため,その後については佐藤勝博監査委員及び須藤裕州監査委員の2名により監査を実施した。
1 請求人の証拠の提出及び陳述
地方自治法第242条第6項の規定に基づく証拠の提出及び陳述については,請求人から陳述を必要としない旨の申出があったため,陳述は実施しなかった。また,新たな証拠の提出はなかった。
2 監査の対象部局
建設局,都市整備局
3 事情を聴取した職員
建設局長,同局理事,同局次長,同局参事兼総務課長,同局道路計画課長
都市整備局長,同局参事兼総務課長
4 関係人調査
直轄事業負担金の請求者である国土交通省東北地方整備局(以下「地方整備局」という。)に対して,仙台河川国道事務所移転の用地取得費に係る負担金の金額,算定方法等について地方自治法第199条第8項に基づき,平成21年6月1日付けで文書による調査を実施したところ,同年6月12日に回答があった。
また,回答内容について詳細を確認するため,同日,地方整備局の担当者から事情聴取を行った。
5 監査対象事項
本件監査請求の趣旨等を勘案し,平成20年度に仙台市が国に対して支払った国直轄事業負担金のうち,仙台河川国道事務所の移転に伴う用地取得費に当てられていたとされる2600万円が,地方財政法第12条に違反した違法又は不当な公金の支出となるかどうかを監査対象事項とした。
第6 監査結果
本件監査請求については,合議により次のとおり決定した。
本件監査請求は,請求に理由がないものと認め,これを棄却する。
1 監査対象事項に係る主な事実の経過等
(1) 仙台市における国土交通省が所管する直轄事業負担金は,市域内の国道4号,6号,45号及び48号に係る道路関係事業に要する経費に対して支出している。
(2) 地方負担を義務付けた根拠法令は事業内容により異なり,国道の新設又は改良,維持・修繕等については道路法(昭和27年法律第180号)第50条(政令指定都市に対する負担にあっては道路法施行令(昭和27年政令第479号)第1条の6に読替規定がある。),共同溝の整備・維持管理等については共同溝の整備等に関する特別措置法(昭和38年法律第81号)第22条,除雪,防雪又は凍結防止等については積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(昭和31年法律第72号)第5条の2,電線共同溝の整備・維持管理については電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成7年法律第39号)第22条,交通安全施設の整備については交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年法律第45号)第6条(以下,これらを総称して「道路法第50条等」という。)にそれぞれ定められている。
(3) 仙台市の平成20年度の直轄事業負担金の金額については,平成20年5月に地方整備局から送付された当初予算実施計画により決定した。その後,二度の補正予算に伴い,同年10月と平成21年1月に通知があり,それにより仙台市の負担金の追加,変更がなされた。
(4) 平成20年度における負担金の支出の手続きについては,国から平成20年8月,同年11月,平成21年2月及び同年3月の計4回納入告知があり,仙台市は平成20年9月に1,114,279,980円,同年12月に493,002,264円,平成21年3月に1,211,231,537円及び26,938,334円をそれぞれ支出している。
(5) 国から仙台市に送付された納入告知書には負担金の算定根拠となる内訳書が同封されているが,仙台河川国道事務所の移転に伴う用地取得費については記載されていなかった。
2 関係人調査の結果
地方整備局に対して平成20年度における国直轄事業に対する仙台市の負担金のうち,仙台河川国道事務所の移転に伴う用地取得費に係る負担相当分(以下「本件事務所用地費負担分」という。)に関し,書面による調査及び担当者からの事情聴取を実施したところ,次のような回答があった。
(1) 仙台河川国道事務所における実施事業は,宮城県内における河川事業と道路事業であり,河川事業の負担区分は全て宮城県負担であり,仙台市への負担はない。
(2) 本件事務所用地費負担分は,26,323,362円である。
(3) 仙台河川国道事務所の移転用地は,仙塩広域都市計画事業仙台市あすと長町土地区画整理事業施行区域内12街区のうち4,093.06uである。
(4) (3)のうち本件事務所用地費負担分算定の元となる用地取得費は,平成20年度に取得した2,340u,538,200,000円である。
(5) 本件事務所用地費負担分の金額は,(4)の用地取得費(538,200,000円)から仙台河川国道事務所における河川事業と道路事業の事業費,職員数等に応じ道路事業歳出相当分を算出し,その相当額に対して平成20年度に実施した各種道路事業における工事費等の直接費から按分した仙台市の負担割合を乗じて算出したものである。
(6) 本件事務所用地費負担分を仙台市に求める根拠等に関する地方整備局の見解は,「関係法令に基づき費用の負担をお願いしていることから,「法律又は政令で定めるものを除く」としている地方財政法第12条の規定に基づくもの」と解しており,また,仙台河川国道事務所庁舎は「道路の事業実施に必要な現場事務所であり,専ら直轄事業の実施を担当していることから,道路法第50条第1項,第2項等に規定する「管理に要する費用」に該当するもの」として負担を求めている,というものである。
(7) その他,仙台河川国道事務所の体制等について,回答を得た。
3 理由
(1) 請求人は,本件事務所用地費負担分の支出が,「国の機関の設置,維持及び運営に要する経費」を地方公共団体に負担させることを原則禁じている地方財政法第12条に違反している旨を主張しているので,この点について検討する。
(2) 地方財政法第12条は,地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費について,国が地方公共団体にその経費を負担させることを原則として禁止し,そのような経費の例示として「国の機関の設置,維持及び運営に要する経費」を掲げているが,同時に,別に法律又は政令において定めがある場合には,同条の適用が除外されることも規定している。これは,地方公共団体が処理する権限を有しない事務であっても当該事務の遂行の結果が当該地方公共団体の住民の利益を増進するものについては,地方公共団体に負担させることもやむを得ないと考えられる場合もあるからである。
(3) 道路法第50条第1項では地方公共団体が負担する費用としては「国道の新設又は改築に要する費用」としか規定されておらず,負担金を求めるその他の法令も同様であり,直接的な工事費はさておき,間接経費としてどこまでを直轄事業負担金の対象経費とするかについて明確な規定はないと言わざるを得ない。
(4) しかしながら,事業の実施に当たっては直接的な工事費の他に一定程度の間接的な経費を要することは言うまでもないことであり,しかも地方公共団体に対して国が支出する国庫補助金に関しては地方公共団体の人件費その他の間接経費を補助対象としていることを考慮すると,地方公共団体から国へ支出する負担金においてもその対象経費に一定の間接経費を含めることについては合理性を認めることができる。
また,間接経費の中に庁舎の維持管理費用を含めることについては特段これを排除する定めもないことから,道路法第50条等の規定を地方財政法第12条第1項に定める「法律又は政令で定めるもの」と見なすことができる。
(5) そこで,仙台河川国道事務所移転に伴う用地取得の費用について検討してみると,当該事務所は地方財政法第12条第2項に規定する国の機関に当たるものではあるが,当該事務所の所掌事務が,専ら宮城県内における河川・国道の建設及び維持管理に限られており,さらに地方整備局の回答から,本件事務所用地費負担分は当該事務所が実施する事務・事業のうち国道に関連し仙台市に直接受益が生じる範囲だけを算定対象として合理的に算出されていることが確認できることから,間接経費の対象範囲を明確に定めたものが存しないながらも受益者負担の原則に照らし,本件事務所用地費負担分を道路法第50条等に規定する事務・事業に要する費用に該当しないと断ずることはできないものである。
以上のとおり,本件直轄事業負担金における本件事務所用地費負担分の支出は,地方財政法第12条の規定に違反する違法・不当なものとはいえないものと認められる。
よって,本件監査請求には理由がないものと認め,これを棄却するのが相当と判断する。
第7 意見
監査結果は以上のとおりであるが,本件に関連して,次のとおり意見を付するものとする。
国の直轄事業に対する地方公共団体負担金については,昨今,そのあり方について全国知事会や指定都市市長会等において大いに議論がなされているところである。
そもそも公金の支出に当たっては,その負担する対象,金額等について必要性・妥当性を十分に吟味し,確認することが求められる。今後,当該負担金の支出の際には詳細な内訳,積算の根拠等を国に対して求め,国と十分な協議を行い,その合理性を確認した上で執行すべきものである。
また,直轄事業負担金の対象とする間接経費は,明文の定めがないことに加え,国庫補助金と比較して対象範囲を広く捉えられている現状を踏まえ,国と地方間のさらなる議論を深め,間接経費の対象範囲,負担割合についても法令等による基準の明確化を国に対して求めていく必要がある。
訴 状
平成21年7月22日
仙台地方裁判所 御中
原告訴訟代理人 松 澤 陽 明
電話 022−221−3988
FAX022−227−0360
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
原告訴訟代理人の表示 別紙原告訴訟代理人目録記載のとおり
損害賠償請求事件(住民訴訟)
訴訟物の価格 160万0000円
印紙額 1万3000円
第1 請求の趣旨
1、被告宮城県知事は、国に対し、金1億5710万3203円及びこれに対 する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せ よ。
2、訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 請求の原因
1、宮城県は、平成20年9月1日から平成21年3月31日までの間に4回 にわたり、平成20年度の国直轄道路事業の負担金として合計金93億34 18万0830円を、平成20年度の国直轄河川事業の負担金として合計6 4億5457万0550円を、国からの納入告知書に基づき、国に納付した。
2、国からの納入告知書には、詳細な負担金の明細の記載がなかったが、これ らの負担金額中には、国が国土交通省の仙台河川国道事務所を移転するため に取得する土地代金(仙台市あすと長町土地区画整理事業施行地内12街区 @−1、@−2画地4093,06u)の負担分も含まれており、その負担 金額は、請求の趣旨第1項の金額である金1億5710万3203円であっ た。
3、国道については、道路法50条が「新設又は改築」「維持、修繕その他の 管理」に要する各費用毎に都道府県及び指定市(道路法17条1項の管理の 特例による)の負担割合を定めている。一級河川については河川法60条が 「大規模改良工事」「その他の改良工事」「維持及び修繕」「その他の管理」 に要する各費用毎に、都道府県の負担割合を定めている。
これらの法律においては、負担すべき各費用についての「経費の種目や算 定基準」について明文の規定がない(国が地方自治体に支払う負担金の算定 に当たっては、これら「経費の種目や算定基準」について法令で決めるべき ことが地方財政法11条によって求められている。)。
国(国土交通省)は、国の機関である仙台河川国道事務所の敷地の購入費 用もこれら道路法や河川法の規定による「費用」となるとして、宮城県に納 入告知を行い、購入費用の一部である請求の趣旨記載の金額を負担させたの である。
4、しかし、国の機関である仙台河川国道事務所の敷地の購入費用は、以下に 述べる理由から、地方公共団体に負担を求めることができないものであるこ とは明らかである。にもかかわらず国は、その明細も明らかにせずに負担金 として宮城県に支払をさせて損害を与えたものであるから、被告は、損害賠 償として請求の趣旨記載の金員を国に対し請求すべきであるが、それを怠っ ている。
(理由その1)
5、地方財政法12条は、国の事務経費を地方公共団体に負担させることを原 則的に禁止している。地方財政法12条2項1号は「国の機関の設置、維持 及び運営に要する経費」を地方に負担させることができない経費の例示とし て明示しているのであるから、その例外を法令によって規定する場合は、地 方公共団体に負担させる旨が明文で定められていなければならない。
しかし、道路法、河川法の規定内容にはそうした明文はなく、道路法や河 川法に定められている費用は、条文からみれば直接これらの業務のために支 出される経費に限定されていると解される。これらの法律にいう「その他の 管理」の費用も、本来的に法令上行うべき道路や河川の管理事務を行うため の直接的な事務経費のみを予定していることは明らかである。
(理由その2)
6、平成20年度の直轄負担金の内容を見ると、「国道や一級河川の管理に要 する費用」の名の下に、仙台河川国道事務所の職員全員217名について退 職手当までを含めた人件費の全部、敷地購入のみならず庁舎の建設・維持・ 修繕に関する費用の全部を負担金算出の対象としたうえで、負担金を計算し ている。
しかし、例えば仙台河川国道事務所の庁舎を50億円で建設するのか、1 00億円で建設するのかは、道路法50条や河川法60条の業務の内容から 必然的に決まるものではなく、業務内容とは直接関係なく国交省の意思決定 に委ねられている。
このような庁舎の経費まで負担金として賦課することは、事業によって地 方公共団体にも利益が生じることを理由として課されている「負担金」とい う概念の範疇を超えるものである。
負担金制度は、国と地方公共団体という行政機関の区分、国の仕事と地方 の仕事との区分を前提に、「国の行う仕事の効果・利益が地方にもたらされ る」「地方の仕事の効果・利益が国にもたらされる」から、その「効果や利 益」について応分の負担を求めることには合理性があるとして設けられたも のである。
その趣旨からすると、事業を実施する行政機関が行政機関の運営のために 必要とする職員や施設の経費を負担させようとすることは、行政機関の区分、 国と地方との仕事の区分を無にするものであって、このような経費まで「負 担金」として請求することは許されない。
負担金は、国が受託した事務の対価でもない。道路法50条3項や52条 などに「利益を受ける限度において」負担や分担をさせることができる旨の 規定があるように、負担金とはあくまでも事業によって直接に受ける利益に 応じた負担に限定されるべきもので、事業内容や事業の増減と相対的に無関 係である職員の人件費や庁舎その他設備の建設・維持・修繕費を負担金算出 の対象とすることはできないのである。
(理由その3)
7、仙台河川国道事務所の移転のために購入した敷地は、国の所有地として財 産的価値を保持したまま(その点で道路用地の購入費とは異なる)残ってい くものであり、その購入費は、企業会計上は「経費」となるものではない。 これを地方に負担させることは、実質的に地方財政から国への寄付となるか ら、地方財政法4条の5の割当的寄付金等の禁止条項に触れることになる。
(監査請求を経たこと)
8、原告は、平成21年4月30日に、宮城県監査委員に対して、被告におい て本件訴訟の請求と同様の請求を行う措置をとるよう監査請求を行ったが、 宮城県監査委員は平成21年6月26日付けで監査請求を棄却する判断をし た。
9、よって、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、本訴請求に及ぶも のである。
添 付 書 類
1、資格証明書 1通
1、委 任 状 1通
法律的論点の検討
地方公共団体の一般財源
法定地方税・法定外普通税・法定外目的税(地方税法)
地方交付税(交付税法)
地方譲与税
以上が一般財源で、使途の制限がない
地方公共団体の特定財源
義務的国庫補助金(負担金・委託金・・・地方財政法10条から10条の4)
奨励的補助金(地方財政法16条)
*補助事業を優先的に行うという選択の弊害が発生。
*補助金算定における自治体の超過負担の発生(自治体の積算に対する国の積算との差)。
反対に直轄事業による地方公共団体の負担(地方財政法12条)
負担金の内容が明確にされていないままに負担が強制された。
国の積算内容を自治体がチェックできないという不均等な差別構造。
負担すべき「経費」の具体的な内容
地方財政法10条から10条の3についての経費の種目・算定基準・負担割合は法律又は政令で定められることになっている(地方財政法11条。地方財政法施行令では何らの規定がないので、各法律及び各政令で決めることになるようであるが、道路法や道路法施行令では負担割合を除き具体的な定めがない)。また地方財政法18条は、国から支出される金額は、地方公共団体が当該事務を行なうために必要かつ十分な金額を基礎として算出されなければならないとしている。
地方財政法10条の4の経費は、全額国が負担するが、経費の種目・算定基準の定めについての規定は、前記18条を除いて見当たらない。各法令で経費額がきちんとされている場合があり、「国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律」は選挙等についての国の負担額を具体的に定めている。
地方財政法12条の「経費」も、本来的には地方財政法11条の規定に従って「経費の項目」「算定基準」が定められなければならないはずである。「負担割合」だけは道路法・河川法などで決められている。「経費の項目」や算定基準は決まっているのかが問題となる(新築又は改築・維持修繕・その他管理に要する費用というだけで経費の項目・算定基準は定められたといって良いのだろうか)。
道路法施行令の規定は次のとおり。
「 第三章 道路に関する費用の負担及び補助
第一節 国道の新設又は改築に要する費用の負担
第二十条 削除
(都道府県負担額)
第二十一条 都道府県が法第五十三条第一項 の規定により国庫に納付する負担金の額は、国道の新設若しくは改築又は指定区間内の国道の維持、修繕その他の管理に要する費用の額(法第五十八条
から第六十一条 まで及び第六十二条 後段又は地方道路公社法 (昭和四十五年法律第八十二号)第二十九条 の規定による負担金(以下この章において「収入金」という。)があるときは、当該費用の額から当該収入金の額を控除した額。以下この節において「負担基本額」という。)に、法第五十条第一項
又は第二項 本文に定める都道府県の負担割合をそれぞれ乗じて得た額(収入金(指定区間内の国道に係る収入金を除く。以下この条において同じ。)があるときは当該額に当該収入金の額を加算し、法第五十条第三項
の規定により分担を命ぜられた他の都道府県があるときは、当該額から分担額を控除した額。以下この節において「都道府県負担額」という。)とする。
(国庫負担額)
第二十二条 国が法第五十三条第二項 の規定により都道府県に対して支出する負担金の額は、負担基本額に、法第五十条第一項 に定める国の負担割合を乗じて得た額(以下この節において「国庫負担額」という。)とする。
(負担基本額等の通知)
第二十三条 国土交通大臣は、国道の新設若しくは改築又は指定区間内の国道の維持、修繕その他の管理を行う場合においては、当該国道の所在する都道府県に対して、負担基本額及び都道府県負担額を通知しなければならない。又、国土交通大臣は、国道の新設又は改築を行う場合において、法第五十条第三項
の規定により他の都道府県に分担を命じたときは、当該分担額並びに負担基本額及び都道府県負担額を関係都道府県に通知しなければならない。
2 国土交通大臣は、前項の規定により通知した負担基本額、都道府県負担額又は都道府県分担額を変更したときは、同項の規定に準じて通知しなければならない。
3 前二項の規定は、都道府県が国道の新設又は改築を行う場合について準用する。この場合において、前二項中「都道府県負担額」とあるのは、「国庫負担額」と読み替えるものとする。
」
今回の開示では、人件費・事務費が「業務取扱費等」として事業費の中に組み込まれて、負担金額が算定されている。これが、自治体側が補助金を請求する際の取扱いと同じなのか否かが実質的な問題となる。
自治体側が、地方財政法10条から10条の4について、国に請求している国の負担金の積算は、「人件費」の中に人件費として国交省が算定しているすべての項目を含んで行っているのか。「事務費」の中に「自治体の庁費・各種の設備費」についてまで事業割合を算定して請求しているのかということが問題となるであろう(朝日の耕論21日によると、退職手当や河川国道事務所の営繕費などは国の補助事業では補助対象とされない経費のようである。)。
およそ国と地方自治体の行っている事業は、直接誰のために行っている事業であるかという目的はともかくとして国民・住民を問わずに利益が生じるものである。国と地方でどのように費用を負担するのかを決めるだけのために毎年毎年公務員の人員を割き、事務経費を使うのは無駄である。
企業会計における売上原価(原価計算)と販管費(販売費・一般管理費)との振り分け。
行政上の予算決算における事業費とそれ以外の経費との振り分けはどうなっているのか。補助金における「事業補助」と「運営費補助」の区分はどうなっているのか。
企業会計上は、庁舎の敷地の土地購入は、損失ではなく資産の購入にすぎない。従って経費ではない。経費とならないものを経費として地方公共団体に支払わせることは、不当利得が発生していることになる。
予算の管・項・目・細目をみると、公共事業関係予算は、工事費関係と事務費関係に大きく区分され、目・細目が区分されている。そこの事務費関係では、職員の旅費や庁費が目として記載されているが、そこで計上されるものは、あくまでも公共事業の原価となる直接経費だけである。
追加。
予算の歳入歳出については「節」という区分と「款・項・目・細目」という区分がある。
予算の立て方についても、国と地方自治体では法令が違っているらしい。
国は、財政法・会計法・予算決算及び会計令という法令が関係しているらしい。
地方公共団体は、地方自治法施行規則14条以下で決められている。
地方自治体の予算の立て方だと、退職手当が事業費に含まれないことになるので、国に対する補助金申請には職員の退職手当が含まれない。にもかかわらず国から支払を求められる負担金には退職手当が入ってくるので、そこに会計担当者は疑問を抱いているようである。