TOP 2010年6・7月(英国・2つのナショナル・トレイル) |
|
![]() |
|
![]() ![]() 英国で最も静かなトレイル |
1 はじめに ロンドンの北方400kmに、英国を代表する国立公園・ノース ヨーク ムアー公園がある。公園内は勿論、周辺一帯には多くのフットパスが設けられ、その中でも国内で最も静かなトレイルと云われている「ウオルズ・ウエイ・130km」と英国で2番目に古いクラシック・トレイル「クリーブランド・ウエイ・177km」を今回トレースする。 いずれも長距離ウオーキングのナショナル・トレイルとして人気が高く、トレイル沿いのユースホステル(YHA)を半年前に打診したが一部は満員のため、従来通りのテント泊となる見込み。 しかも、キャンプ地については資料不足のため不安要因で、ダメな場合はB/B泊としたい。ともあれ「60歳代最後のフットパス」として意義深い旅を期待しよう。 歩行時のタイムやポイント等、テント泊歩行者の参考用として「資料編」を作成した。 日 程 |
|
![]() |
2 トピックス&スケッチ ウオルズ・ウエイ 概略総距離=135Km(トレイルから離れて宿泊地までの距離を含む)。 総歩行時間=40時間10分(休憩時間を除く)。 出発日 6月21日(天気 晴):成田空港から英国・Heathrow空港・・London市内 距離:0km。行動時間:0分 |
|
成田空港の免税店で購入したウイスキー・ポケット瓶を韓国の乗継ぎ検査で処分させられた。以前はそれ程うるさくなかったが・・これも南北緊張の余波か。 満タンの ボトルの酒は トクトクと 手触り残し ひといきに消ゆ |
![]() |
第2日目 6月23日(天気 快晴):HessleからNewbald(テント泊) |
|
歩き初めて2時間。薄暗い樹林帯を抜けると小さな集落・ウエルトン村に出た。古い住居の庭先は良く手入れされていた。 野兎や 小リス行交う 集落の 芝生に映える 赤い草花
|
![]() |
|
|
見渡す限り平原のような耕地が続く。水平線ならぬ地平線が円弧を描いていた。 海原の 如く広がる 麦畑 前も後も 左も右も |
![]() |
|
|
丘稜の平坦地は畑。谷とその周辺は牧場で自然の地形をムダなく利用している。 ゆるやかな 尾根に囲まれ 広い谷 草食む牛は 置き物みたい |
![]() |
歩行者が少ないので牛たちは「珍し気に」ジーッと眺めている。時には若牛が親し眼をして後ろからついて来た。 柵を越え 牧場に入れば 牛たちの 興味深げな 視線をあびる |
![]() |
|
|
歩き初めて5日目。緊張が解れたせいか疲労の為か、ポイント部の標識を見落し。ガックルして引き返す。 曲り角 景色見とれて 標識を 見落し進み 反省しきり |
![]() |
|
|
![]() |
どの集落にも教会があり、日常生活に密着しているようだ。敷地内の墓標がその集落の歴史を伝えていた。 中世の 記憶を残す 教会の 小さな窓に 朝の日照らす |
|
|
![]() |
隆起台地を示す切立つた崖が海岸線を形成している。ムキ出しの地層は地球の歴史を刻んでいた。 草原は 海岸線で 崖となり 古生の地層 風化に耐えて |
|
|
![]() |
町の周辺も牧場で三々五々羊が草を食んでいた。人間同様彼らものんびりしてストレスのない眼をしていた。 小羊の つぶらな瞳に 比べれば 間抜け顔した 母親ひつじ |
クリーブランド・ウエイ 第9日目 6月30日(天気 晴):HelmsleyからOsmotherley |
|
石積み柵は放牧の仕切りだけでなく、防火壁にもなるようで、国立公園の管理上も重要とのこと。それにしても、延々と人力だけで築いた労力に感心させられる。 |
![]() |
起点のヘズリー村を離れると樹林帯が広がる。早朝のせいか活発な小鳥の囀りが賑やか。 丸々と 太ったキジが 重たげに つがい仲良く ヤブからヤブへ |
![]() |
|
|
何処の集落でも「売家」の看板が目立つ。人の寿命よりはるかに長持ちする建屋は商品として老後の支えになっているそうだ。田舎暮らしが国民性として定着し、需供のバランスがとれているのだろう。 売家と 看板立てし 庭先に 花はほころび 買主を待つ |
![]() |
|
|
荒涼とした原野に霧が覆うと、浮き上がる古道だけが頼りになる。色彩が乏しい無の世界を進む。 いつの日か ある日ある時 突然に 歩けなくなる 不安が襲う |
![]() |
石の文化は石柵や家壁に限らず石敷路となって集落を結ぶ。生活や交易の源であり、時には戦略の一助になったかも知れない。 野を越えて どこまで続く 石畳 角の丸味に 歳月刻む |
![]() |
|
|
幾日も歩いていると素晴らしい景色にも無感動になってくる「慣れ」は恐ろしい。アンテナを鋭くして貴重な日々を味わいたい。 今日もまた 感動の実を ひとつ食べ 噛みしめながら テント地に着く |
![]() |
|
|
港から十数キロも離れた内地の丘に伝説の船長のモニュメントがあった。他に遮蔽物がないので、何処からでも眺められるが本人としては海近くを望んだのでは。 モニュメント ヒースの丘に 突き出でて クック船長 ゆかりの土地か |
![]() |
第14日目 7月5日(天気 曇):StaithesからWhitby 距離:23km。行動時間:6時間40分 |
|
同じ港でも漁港とヨットハーバーでは浜の雰囲気が違う。国が違えば海に対する文化も違う。 自壁と 屋根の赤さが 海に映え カモメ飛び交う 夜明けの港 |
![]() |
|
|
|
![]() |
|
|
![]()
|
いつものことだが下山日は愉しい。成否は別にして無傷で下山日を迎えたことだけで愉快になる。初日の不安が大きければそれだけ安堵感も増す。帰国までの数日間はそんな気持ちにひたろう。 |
|
|
|
歩行を終えて、今日から3日間北部イングランドの古都・ヨーク市を探索。周囲5kmほど残る城壁上の回廊を辿り街の全容を知る。 いくたびも 戦に備え 補強した 城壁歩き 異国味わう |
|
|
![]() |
2日目はミンスターへ行く。開門前のミサが美しいハーモニーとなって聖堂全体が楽器のようだ。カンタベリー聖堂と並ぶ英国有数の聖堂として人気抜群とのこと。それにしても、宗教力や征服力は想像以上のモニュメントを残すものだ。 堂内の ステンドグラスに こだまする オルガンの音 ソプラノの声 |
|
|
![]() |
アワー・レデイ―ロウ通りは、築700年の二階が「突出している」古い建物が並んでいる商店街。その中に中華店があったので餃子を注文。久振りに東洋の味を味わった。 |
|
|
帰国便では、米国・貿易センターのテロ時に丁度ロスアンゼルスにいて4日間空港止めで難儀した「悪夢」を想い出す。アイスランド火山噴火の件もあるので、今日のフライトを案じながら空港へ着いた。 米国の 悲惨なテロを 想い出し 無事に飛べよと ひたすら念ず
|
![]() |
|
|
大韓航空便はインチョン空港で乗り継ぐ。幸い臨時便があったので、変更を打診したが、「満席」でダメ。でも荷物のことを考えると変更せずに良かった。 |
![]() |
3 あとがき(所感) 1)時期が良かったので、天候に恵まれ予定通り2つのロング・フットパスをトレース出来た。いずれも、ガイドブックで紹介された通り、このフットパスは英国を代表する素晴らしいトレイルで期待に十分応えてくれた。前半の「ウオルズ・ウエイ」は主に耕地と牧場の中のトレイルで点在する古い集落にも人の気配もなく自然に親しむことが出来た。反面、食料や飲料水の入手が困難だった。後半の「クリーブランド・ウエイ」は国立公園内を通る丘陵地帯と海岸沿いのトレイルで構成され、いずれもテント泊よりもB/BやYHA等の宿舎泊が主流のようだった。 2)加えて、荷物の負担を無くし空身で行動出来るように「荷物を宿から宿へ運ぶサービス」が普及しており、体力に自信がない人にも対応「さすがは歩行者大国だ!」と感心した。そのためか宿泊代は素泊で平均8千円で高目(YHAは平均2千円、テント代は平均1千円)。 3)テント泊地の貧弱さもあって後半は、1日行動(2日分の距離)して翌日休養の方式を採用した。今回初めての試みだったが野営地がある場合は従来通り毎日行動した方が「疲労回復」に有利と思えた。疲労は、原因となる「活性酸素」が筋肉内に発生し、回復には休息が必要だが、長期間の疲労は体幹(体内奥)筋肉が疲労し回復に時間がかかる。その反面軽い疲労は表面筋肉の疲労で短時間でも回復する傾向にあるらしい。従って、出来るだけ体幹筋肉が疲労しないよう行動する。 しかし、加齢に伴い表面筋肉が弱体化して体幹筋肉を使う結果疲れが取れ難い。特に、体幹筋肉は平坦路では負担が少ないが登降の激しい山岳路は頻度が増すようだ。 4)表面筋肉の強化と並行してアイソメトリクス(レジスタンス)運動が体幹筋肉の強化に効果あるらしいので検討したい。 5)今回で英国を代表する7コースのロング・フットパスをトレース出来たので、一応の区切りとしたい。欲を言えばウエールズやスコットランド及びアイルランドにも興味深いトレイルがあるが、今流行の「仕分け」で再考したい。 6)食料について ・米飯に半ラーメンを加えたラーメン飯は食べ易かった。 ・朝食に現地で購入したシリアルに砂糖を加え良く食べた(価格及びカロリーも米と同等)。 ・便通効果の為に、リンゴ、ヨーグルトを頻繁に食べた(野菜類は品薄)。 ・牛乳やジュースは量が多過ぎて敬遠。 ・行動食は比較的購入容易なパンとビスケット類(日本より安価)。 7)装備について ・燃料はYHA泊で予定の半分消費し残量(フル1時間燃焼)を最終日に処分した(食糧の改善で10日間位なら小型カートリッジ・110gで充分)。 ・Ordnance Serveyの地図には、水色で1km毎に緯度経度の表示があり、場所表示にも利用されている(例:KiIdal Camping Barn 603 084・・・東経4(603)00m,北緯5(084)00mの意味)。 ・荷物の軽量化のために、前半で用済みの資料や後半不要な装備を起点のHelmsley・YHAにデポした(約2kg)。その結果、機動性が高まり長距離歩行が出来た(CIeveland Wayの標準日数8日間を6日でトレース)。 ・傘は雨風が強いので使用不可(完全カッパとザックカバーで対応要)。 ・円高を活用してScarboroughのアウトドア専門店で英国の湿地帯に対応したウオーキングシューズを格安で購入した(2万円相当品が7千円)。 |
TOP 資 料 編 へ |