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< 九州自然歩道・縦 断  >

 前 編 ・・・鹿児島・佐多岬から宮崎・牧水公園
期 間:平成15年1月29日から2月18日

関 連 資 料・・・・  <概念図&タイム&写真へ>  <会計&資料へ> 

佐 多 岬
 
 
1 はじめに
 3ケ月前に東海自然歩道のトレイルを完歩した。その達成感と共に「次の目標は?」と意欲に急がされて環境省発行の平成14年度白書をめくり、<長距離自然歩道整備の概要>から「九州自然歩道」のトレイルに着目。
 まず、ルートを確認するために九州各県の観光関連部に資料の請求をする。あわせてインターネットで田嶋直樹著「九州自然歩道を歩く」のガイド書を入手し、国土地理院・1/5万地図上にトレイルをマークする。
 現地の状況は不明だが一応の目安が出来たので、距離と標高差を基に1日の行動距離、加えてテントの設営地を決める。
 長距離(約1000Km)トレイルでは、1日の行動距離の設定が重要になるので1日平均20Km・平均行動時間7時間を基準に標高差を加味し、数回修正しイメージを固めた。
 小刻みのステージでは交通費が嵩むので2回のステージにして、費用軽減のためフエリー便を利用しよう。最近の船は乗り心地も良いらしいから「船旅・初体験」を期待し初めての九州の山旅に花を添えたい。
 出発の週は、暖冬の予報に反し大型寒波の到来で海は荒れている。船のスケジュールを心配しながら川崎港に向かう。
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




  2 行動の記録   概略総距離446Km ― 総行動125時間50分(実績値)
 予想通り悪天候で29日・19時の川崎出港は大幅に遅れ「宮崎港は4時間延着」との船内放送にガックリ。不便な佐多岬までの乗り継ぎがすっかり狂ってしまった。


 第1日目 1月30日(天気 晴れ)
:宮崎港から油津駅
                        (距離0Km) 
 今日中に志布志駅まで行き、明日の始発バスに乗れば終着の佐多岬まで乗り継ぎの便が良かったが、最終電車に間に合わず途中の油津駅止となる。
 駅待合室のベンチに寝袋を出して6時間ほど仮眠とする。ウトウトしていたら足元が重いのでフードから覗くと、子猫が丸くなって寝ていた。人懐こいので飼い猫のようだ。こちらも少し暖のたしになるのでそのままにして夜明けを待つ。


 第2日目 1月31日(天気 晴れ):油津駅から佐多岬
                         (距離7Km)行動1時間20分。
 志布志駅、鹿屋バスセンター、根占、そして大泊集落で乗換え計2時間の待ち合わせをしてやっと佐多岬バス停に到着。本土最南端の佐多岬へ入場料100円也を払い500m程徒歩で山道を進んで展望台に着きしばらく展望を楽しむ。
 今日は屋久島、種子島が見えめずらしいとのこと。他に観光客もいないので、手持ち無沙汰の売店のオバサンに「シャッターをお願いします」と記念写真を撮る。
 以前は新婚旅行初め、九州の代表的な観光ルートで大賑わいをしていたそうだが今やその面影もない。帰路は徒歩でバス道を大泊に引き返す。
 菜の花やピンクの山桃が咲いて「さすがは南国!」と異国情緒を味わいながら大泊に着き海岸沿いのキャンプ場に設営。明日からの山旅の無事を祈念して地酒の「いも焼酎・小鹿」でカンパイをする。


 第3日目 2月1日(天気 曇り後雨):大泊キャンプ場から野尻野
                          (距離33Km)行動8時間30分。
 県道36号を3時間ほど北上するので未明でも道に迷うことはないが、初日だから、夜明けを待って出発する。外之浦、間泊、そして竹之浦と太平洋側の集落は漁村独特の風景に旅情を感じる。太平洋にそそぐ郡川に出て郡の集落から川と別れて緩やかな坂道を1時間ほど歩き松山の集落に着く。
 道端で農作業をしている兄さんに道を確認すると「新道が出来ているヨ」と教えてくれた。この先の折山集落から山道のトレイルになっているが、荒れていて取り付き口も判らないので迂回道の舗装道を進む。
 小雨は本降りに変わり雨具を被り視界が悪い。県道を地図を頼りにひたすら進むと、三叉路に出て小休止現在地を確認後重い荷を担ぎ出発。
 30分歩いても地図と地形が合わず(どうもオカシイ・・?)と近くの民家で聞くと、ナント!三叉路で間違えて通った道を引き返して来たようだ。キツネに抓まれたような気持ちだがミスを認めて反省しょう。
 テント予定地の野尻野集落までは残り6kmはあるので1時間のロスは痛い。視界が良ければ地形から方角も判断出来るのだか・・・。本降りの雨とガスでは途中の集落に着いて進行方向を判断するしかない。
 野尻野の3kmほど手前で「何処まで行の?」と軽トラのオバサンが車を止めてくれたので「野尻野デス」と云うと「道が違うヨ、近くを通るので乗んなさいネ」「歩いておりますので・・・」と返事をしたが、無理に「乗れ乗れ」と云ってくれるので、(道を間違え、雨も降っているので・・・好意に甘えて)と荷台に乗せてもらう。
 里道の角を何度も曲がり5分ほどで野尻野に着く。お礼を云って今後の予定を話すと「大変ネ、これ食べて頑張って」と缶コーとバナナ1房(5本)をくれた。
終日の降雨で乾いた場所もない(少しでも水気のない所・・)と草むらを選び廃校になった小学校の校庭にテントを設営。
 夜8時ごろ雨は上がり急に冷えてきたので明日は晴れるようだ。

 
 第4日目 2月2日(天気 晴れ):野尻野から花瀬公園
                        (距離28Km)行動8時間。 
 集落の裏手から牧場と風力発電設備を通り舗装道を詰めると<野首岳>の手書き表示板を見つける(地図上の登山口を探したが廃道になっていた)。
 樹林帯は山頂まで続き南アの山のような苔むした倒木と静けさに(これが九州の山か・・)と厚い落葉の踏み跡に従う。
 大隈半島南部の山塊で野首岳(897m)から辻岳(773m)まで3kmほどの縦走路だが山頂直下部以外の稜線部は舗装され山道の面影はない。
 辻岳から標高差400mを下り県道に出て、大久保、滑川、門木の各集落を経て八重(ハエ)集落から舗装旧道を進み尾根を越えて花瀬川の花瀬自然公園・キャンプ場に着く。今日は良い天気で気温も高く「絶好の洗濯日和!」と公園で昨夜の濡れ物を干し下着を洗う。
 シーズン・オフで広いキャンプ場は貸切だ。今日は大きなミスもなく無事トレース出来たが、地図にない新道が交差したり廃道もあり山道(点線路)は今後も要注意。明日の行程は吾平町まで県道歩きだからライトを灯し早めに出発しよう。


 第5日目 2月3日(天気 曇り):花瀬公園から吾平町
                       (距離27Km)行動8時間。 
 上原集落で昨日の県道・68号と合流して橋口町交差点で445号線を渡る。7時過ぎると通勤の車が多くなり歩道もない側道歩きに気を使う。笹原峠から旧道が笹原に迂回しているのでこちらを進む。壱岐集落から再び新道に合流、通勤車から業務車に代わったが相変わらず車は多い。
 今日の半分行程が過ぎたので池田町の食品スーパーで昼食を購入。リンゴ等でビタミン補給に努める。十数軒の集落の段、中野、真戸原を過ぎ、金山の手前に<養老温泉>の看板があり(一風呂浴びよう)と事務所へ行くが開店休業なのか不在。
 金山で県道と別れ佐野集落経由で吾平山上陵へ向かう。佐野からの林道も拡張され4車線の立派な新道に戸惑う。途中にもこうした新道が多くあり道路族健在ナリ!と納得。
 吾平町の配水場の広場にテント設営後、トレイルから外れた吾平山上陵の見物に出かける。ここは神武天皇の両親の墓とか、岩壁の下を流れる吾平川の渕一帯は宮内庁管轄の聖地になっていた。


 第6日目 2月4日(天気 曇):吾平から浜田・海水浴場
                      (距離29Km)行動8時間10分。 
 今日のトレイルは第二回目の登山路で陣ノ岡(484m)と横尾岳(426m)に登る。平地が標高100mだから大した登りではないが、道標は思い出したように所々あるだけで道を尋ねながら歩くので気を使う。登山道に入ってしまえば1本道で迷うことはないが、取り付きまで2度間違え引き返し(ごめんネ・・・)と身体に詫びる。
 横尾岳の下降中に自然公園があり展望も良いが時間が早いので先へ進む。公園から舗装林道を5kmほど下り海岸通りの268号線・浜田町に着く。
 ガソリンスタンドで「この近くにキャンプ場はありせんか?」と尋ねて海水浴場を教えてもらう。町はずれに「坂元温泉」がありテント設営後今回はじめての温泉で疲れを癒す。


 第7日目 2月5日(天気 雨):浜田から御岳登山口
                      (距離24Km)行動5時間30分。 
 昨日と同様にライトを頼りに1時間程269号線を鹿屋市内の方面へ向かうと夜が明ける。明日は難所の高隈山(御岳と大の柄岳)に登るので今日は出来るだけ先に進んでおきたい。<霧島ケ丘公園>を抜けて特攻隊の基地だった鹿屋飛行場跡の西側を横切る。
 広大な敷地と大空は、鹿児島湾に向け飛び立って行った特攻隊員を偲ぶには充分な雰囲気を漂わせている。鹿屋市内の今坂町で24時間営業の大型スーパで食料購入。ここから3km北上して大浦町に着き、いよいよ御岳への登りになる。
 登山口へはさらに4km舗装林道を進む。途中作業中のトラックが下ってきて、運転手が「山の登るの?」「登山口は杉林の急な登りダヨ」と教えてくれた。
 しばらく行くとそれらしい場所に着いたが、道標もなく云われなければ見落とすような所だ。明日から登り始めることにして今夜は道脇にテント設営。強風大雨注意報が出ているので明日の山道が案じられる。


 第8日目 2月6日(天気 晴れ):御岳登山口から堀切手前1Km
                        (距離22Km)行動8時間20分。
 夜半に雨も風も止みホッとする。出発して1時間半ほど急登を進むと舗装道に出る。道なりに御岳の山腹に建つアンテナ塔へ行くと6合目の看板が道脇にあった。案じた通り山道に雪が出てきて身が引き締まる。
 7、8合目ではすっかり雪山の雰囲気で先が思いやられるが、晴天で視界が良いので救われる。高度を上げると360度の展望で東方の志布志湾から西方の鹿児島湾、開門岳、桜島と展望を堪能。
 御岳から大の柄岳まで6kmの稜線は樹林帯で積雪の切れ目がない。特に北斜面のトレイルは積雪で消えている。「雪山のトレーニングをするとは・・」とグチを云いながら尾根を見失わないように慎重に進む。要所に赤布と張綱あり助かった。
 無事大の柄岳山頂に着いた時はホッとして疲れが一度に出た。視界が悪ければトレース出来る状態でなかったので、好天気に感謝しつつ下山路を下る。
 大の柄岳側の登山口から林道になり(これで雪道ともお別れ・・)とシゴカレた数時間を思い出しながら最初の集落・垂桜に着く。ボーツとして歩いてしまいトレイルから外れ大野原集落を迂回してしまうが、設営時間になったので県道の脇の杉林にテント設営。明日から舗装道歩きになるので山道を探す苦労は半減するだろう。



 第9日目 2月7日(天気 曇り):堀切手前1Kmから輝北うわば公園
                       (距離28Km)行動7時間20分。
 雪山のトレースが終わって不安材料がひとつ解消して、早く出発したくなり5時にテント撤収。舗装道はライトが弱くても歩けるので今日は早くテント地に着いてノンビリしよう。とセッカチになったツケが30分後に到来(堀切の交差点で現在地を勘違いして再度大の柄岳方面へ30分進んでしまう)。小便のキレだけでなく頭のキレも悪くなった・・と反省しつつ大隈湖へ向けて県道71号を辿る。
 大隈湖は大きな人造湖で湖畔にハイカラな<アジア太平洋農業研修センター>が建っている。湖北岸の井出集落から尾根越えをして一本柊集落へ林道を行くのだが工事中で迂回道を通り岳野に出る。トレイルは北上して牛根峠を越して<世界一星座が美しい>とPR看板がある輝北うわば公園に続く。
 公園はキャンプ場はじめ草スキー、パラネタリュウム、トレイルセンター等多彩な設備を持つ大型公園で、シーズン中は賑わいそうだ。管理人に断って一等地にテントを張る。レストランは臨時休業で小さな土産物店には欲しい果物類はない。
 トレイルセンターの建物は立派だが資料類は貧弱だ。せめて備え付けでよいので、詳細な最新のトレイルを表示した資料が欲しいと思った。(利用者が少ないの必要でないのかも知れないが・・)。


 第10日目 2月8日(天気 雨):輝北うわば公園から国分市石橋中学校
                        (距離24Km)行動7時間10分。 
 正式なトレイルのはずだが両側の下刈り雑木が道を塞ぎヤブこぎを強いられる。やっと上場牧場からの林道に出て一路北上。牧場経由にルートが変更になったのかも知れない。狐ケ丘のススキ原を通り大水溜で県道に出る。県道504号に合流して4km程北上すると西牧之原交差点で国道105号とぶつかる。
 国道を避け旧道へ入ると工事中で車は通行禁止になっていて静かな道になる。亀割峠で海岸沿いを走る国道220号に合流して国分市内に入る。交通量が多い歩道のない道を3km進み、検校川・大橋脇の大型スーパで今夕の食料を買う。
 そろそろ設営の時間なので雨の中を屋根のあるテントサイトを探して進み<土曜日で学校は休み>の石橋・中学校に設営。
 夕方生徒が1クラス校庭に集まったので、慌てて引率の先生に「今晩一晩テントを張らして下さい」とお願いする。
 終日の降雨で地面はタップリ水分を吸っているので、庇付きコンクリト床はありがたい。公共の建物で軒下を借りれる所が限られているので、雨天日はテント場を確保するのに神経を使う。


   
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