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テント担いで四国遍路・2巡目 (徳島・高知編)

期 間:平成19年2月27日から3月14日 


高知・浦の内湾のご来光


   はじめに

 初めて四国八十八寺を徒歩巡拝して6年が過ぎた。その間、国内の自然歩道や海外のフットパスを数コース・トレースする事が出来た。
 6年前に比べれば体力の低下は避けられないが、山旅を重ねることで、装備や食料の簡素化を学び荷物が軽くなった。又、歩き方もそれなりに改善されたので、今回同じコースを巡拝して初回との相違を体験したい。巡拝方法は前回通り3回の区切り打ちにするが、全日数を均等割で計画。ともあれ、初回の記録を読み返して野営地等、要点のチェックが出来たので気持ちにユトリが持てることはありがたい。
 情報によると、以前の歩き遍路は年間2百数十名だったが、現在は4千名を越え特に若者が増えたらしい。これも行き過ぎた「成果主義」の反動で自然回帰への現象かも知れない。その辺に興味を持ちつつ、春の足音に誘われ新宿駅発・夜行バスで徳島駅へ向かった。

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 §1 行動の記録  
  総徒歩距離=414km(26Km/日)、実働総時間=117時間(7時間20分/日)


第1日目 2月27日(天気 曇り):JR徳島から7番寺先1.4km御所小学校脇
                 (距離20Km)行動5時間20分。 
 夜行バスが数分遅れたので、予定電車に乗れず1時間ほど徳島駅で待たされ「出だしからタイミングが悪い・・」とボヤキが出る。しかし、バス終点・徳島駅のひとつ前のバス停・鳴門西で下車すれば1番寺(→) へ徒歩で行けるらしいので、事前の調査不足を反省。
 1番寺を出て直ぐに民家のオバサンが「お接待デス」とジュースと小巾着を渡してくれた。納経時に毎回財布から小銭を出すのが面倒なのでこの小巾着は重宝した。 
 今日は各寺の間隔が短いので、お寺での納経に時間がかかると思っていたが時期が早いので以外に空いていた。
 5番寺敷地内の通路に「百薬に優る薬の遍路みち」の案内板に勇気づけられ、今夜の野営地・御所大橋へ向かう。記憶を辿りながら前回の場所へ行くが草が茂り設営出来ず、近くの空き地を野営地(←)にし隣接した御所小学校で水を補給した。



 第2日目 2月28日(天気 晴後曇り):御所小学校脇から端山休憩所
                   (距離 21Km)行動5時間30分。
 納経所は朝7時から開くので、前日済ませていない時は、2時間ほど(約7km)手前で野営すると待ちがない。しかし、今日は4km手前のため開くまで1時間待たされた。
 誰もいない8番寺の境内を散策(←)して開所を待つが、夜明け前の寒気がこたえる。その分遅く出発すれば良いのだが、寒くて寝ておれず早目のテント撤収となった。
 当然ながら、寺の周辺は墓所が多く中には「咲いて散るのは野の草花、散って咲くには人の花」と洒落た文句の墓標があり故人の人柄が伺える。
 明日は、最初の難所・12番焼山寺への「へんろころがし」が待っているので、今日は早目に野営地を決めたい。
前回と同じく11番寺で水を補給して端山休憩所に到着。雨模様で屋根下にテントを張りたいが同休憩所は固定台座が邪魔してテントが張れないので、道脇の農作業小屋(→)を使わせてもらう。 



 第3日目 3月1日(天気 快晴):端山休憩所から五ケ峠
                  (距離17Km)行動7時間30分。
 12番寺まで高低差は700mだが途中2つの大きな登降(→) があり実際には1200mほどの登りなる。
5時間かけて焼山寺に着くと境内はバス便の参拝者で大賑わい「お大師さんは道中に在り」と遍路札の一句を思い出す。大型バスで繰り入れる参拝者は年々増加の一方で何処のお寺も改修・増築され金ピカが目立つと一層この一句に納得。
 杖杉庵から梅の花が満開の遍路道を辿る。前回の泊地・鍋岩もヤブでテントを張る状態でない。先へ1km進むと五ケ峠に無人の庵(→)があり、軒下のスペースにテントを張る。水も使える快適な野営地だ。
 夕食の準備をしていると数組の歩き遍路(民宿利用)が通過して行く。中には「近くの民宿が満員で宿はまだ随分先・・」と疲れた様子である。最近の人気で歩き遍路も増えて民宿の対応が追いつかないようだ。そんな様子を見るとテント持参の良さが判る。



 第4日目 3月2日(天気 快晴):五ケ峠から上鮎喰橋
                  (距離30Km)行動9時間。
 昨日の登降と異なり今日は徳島平野へ向けて下降の一途。尾根筋の寂れた県道を分岐点だけ注意して進むとやがて周囲が明るくなる。
 5時間歩いて疲れた頃、入田小学校脇の休憩所(→) に着く。所内のお湯、コーヒー、ミカン、飴など地元ポランテアの行き届いた心使いがありがたい。
 行動時間は予定オーバーだが13番寺から17番寺まで今日中に参拝。上鮎喰川橋の河原のグラウンドにテントを張った(←)



 第5日目 3月3日(天気 快晴):上鮎喰橋から法泉寺善根宿
                  (距離27Km)行動7時間20分。 
 連日の好天気はありがたいが、夜間の冷え込みが厳しい。「今年は暖冬だから・・」と甘く考えて来たが、寒気団が居座りしばらくは日中も気温は上がらない。でも「雨で濡れるよりマシ」と厚着をして歩く。
 地蔵院から国体用の立派な眉山登山路が重複してウッカリ遍路道の分岐点を見逃し登山路を進む。登りが続き過ぎるので慌てて引き返し地蔵越から県道203号に戻る。
 19番寺を参拝後、県道28号線を歩いていたら軽ライトバンが停まりオヤジさんが「お接待デス」とお茶とパンを渡してくれた。運転手は奥さんで夫婦の接待とは珍しい。 
 昼近くになって「今日はこの辺でテントを張ろう・・」と野営地を探して進むと、櫛淵小学校脇に八幡神社(←)があり日当たりも良いので荷を降ろす。ほどなく二人連れの小学生の女子が遊びに来て「・・ドウゾ」と飴を2つ差し出した。接待の習慣が子供も頃から出来ているのに感心した。
 30分程して数人の70・80代のジーチャンやバーチャンが来て、ゲートボールが始まった。世間話に加わると「今夜は冷えるヨ・・」と心配して「直ぐ先に泊まれる所があるから行ってみたら・・」と善人宿を紹介してくれた。「これも接待」とありがたく受けで再び荷を担ぐ。
 1km先の法泉寺が敷地内にプレハブの無料宿泊・休憩所があり(→) 「今夜よろしくお願いします」と申し出た。最近の遍路ブームで休憩所や仮眠所があちこちに設置されているので助かる。



 第6日目 3月4日(天気 快晴):法泉寺善根宿から道の駅・わじき
                 (距離24Km)行動7時間50分。 
 お陰で昨夜は布団を敷いて暖かく安眠出来た。でも、天気予報では明日は雨らしいから、今日は出来るだけ先へ進みたい。
 勝浦町まで県道16号線を進み、“おつるさん”の愛称で阿波の三難所・20番寺への遍路道を行く。寺(←)までシングルトレイルの昔道が千年の歴史を偲ばせる「歩き遍路ならでは」のコースだ。
 農作業のオヤジさんが「ご苦労さま・・」と云って、資料パンフ「昔ながらの遍路地図・最後まで残った空海の道」をくれた。
 20番寺から21番寺までも旧道で途中数ケ所の休憩所で一息いれながら進む。明日は雨ため、気温も高くなり久し振りに汗をかく。
 前回の野営地・坂口屋から足を延ばし、舎心ケ嶽の道の駅まで行きテントを張る(→) 。ここにも休憩所があったが「仮眠はご遠了下さい」と注意張紙がある。野宿者に不都合があるのだろう。野宿者より民宿利用者が圧倒的に多いので休憩専門にしているようだ。他の休憩所も狭くてテントスペースがないのが一般的でテント泊は例外扱いに思えた。



 第7日目 3月5日(天気 雨):道の駅・わじきから日和佐・竜宮公園
                 (距離25Km)行動7時間。 
 納経の開始時間を加味して遅めに出発。雨と強風に煽られながら22番寺に到着。気温が低く濡れているので休んでいると震えが来る。
 食事もそこそこに国道55号線を今日の野営地・日和佐へ向かうが、国道は大型車が多く水飛沫と風圧に煽られ「バカなオレ!」と惨めになって来る。救いは前回行った「日和佐の温泉・千羽湯」の心地良さだ。これも2巡目の心強さで、ある程度先が読め助かる。
 日和佐に着く頃は太陽が顔を出したので、入浴中に濡れた衣類を干し、名物の讃岐ウドンと鯵寿司(←)を食べて1週間分の疲れを癒した。近くの竜宮公園に設営(→)
 明日から室戸岬まで75km。気の遠くなる道が待っているが、道の駅のオバサンによると「34km先の穴喰町にも温泉がある」らしい、温泉目指して頑張ろう。



 第8日目 3月6日(天気 晴):日和佐・竜宮公園から穴喰温泉
                (距離35Km)行動9時間40分。 
 国道が混まない早朝に出発。ライトが無くても海岸沿いの一本道だから間違う心配はない。2ピッチ過ぎると背面の水平線からご来光が昇り長い一日を告げる。国道は一路見えない室戸岬へ向けて南下し、道路案内板の岬までの距離表示が確実に近ずき励みになる。
 牟岐町の警察署脇に地元の老人会による接待所があった。9時から開くとのことで準備中だが「お接待ドーゾ」と誘ってくれ、熱いお茶と自宅で蒸かしたサツマイモをご馳走になった。
 計画では海部町の泊まりだが温泉に魅せられて7km先の穴喰町まで進んだ。ここの休憩所は高床式で床下にテントスペースがあり設営(→) 後、直ちに温泉に行く。
 源泉は30度沸かしでナトリユム塩化物だが、料金が400円と銭湯並には驚いた。



  第9日目 3月7日(天気 快晴):穴喰温泉から佐喜浜
                  (距離23Km)行動6時間10分。 
 連チャンの温泉で疲れが取れた。特にアキレス腱の違和感が和らいだのでホッと一安心「痛みがエスケレートしないように・・」と早めの手当てが長期間の活動には特に重要。
 新設の休憩所で休んでいたら3名の歩き遍路が通った。皆定年を迎えたオヤジさんで、町中を散歩する早さでスタスタ歩いて行ったが、長距離歩行のペースにしては早過ぎだ。
 荷物が軽いとは云え、130歩/分程度の歩速で長時間歩きは厳しい(自分の目安は100歩/分程度=3.5km/時間)と思えた。
 昨日距離を稼いだので、岬までの行動にユトリが出てくる。お陰で計画泊地・入木集落から5km先の佐喜浜に野営(→) することが出来た。町のスーパーで夕食の副食を調達し海岸防波堤下にテント設営。



 第10日目 3月8日(天気 快晴):佐喜浜から室戸市
                  (距離25Km)行動7時間20分。 
 今朝も冷え込みが厳しく早々に起床。星座に促がされて出発し55号線を南下する。  「空海も眺めた海・・」と想像しながら背面の水平線から昇るご来光(←)を拝む。一昨日距離を稼いだので、早目に青年大師像に到着。
 25寺まで高低差160mの石段を登り昼前に着き、再び国道55号線まで下降して西方へ海岸沿いに進む。
 室戸町で屋台のヤキトリ屋さんに「お遍路サーン」と呼びとめられ焼きたてのカシラを一本接待してくれた。熱々の焼トリは味わう間もなく胃袋に収まった。
 26寺で納経をしていると「オジサン!」との声に振り返ると日和佐で逢った単独・テント泊の娘さんがいた。だいぶ早いので驚いたら「途中車に乗せてもらった」とのことで納得。それにしても、60Lザックを担いだ娘遍路は珍しい。来月初旬まで通しで巡拝するらしい。民宿利用でなく野宿遍路はめったに逢わないので仲間意識が生まれて話が弾む。
 室戸市内に適当な休憩所はないので、西面の山地に入り古い祠の脇にテント設営(→)
 


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