タイワン (2008.3/2009.3)

 行政院農業委員会農業試験場の招聘で、2008年に引き続き2009年3月末にもファレノプシス生産に関する講演とシンポジュウムに参加するため、タイワンを訪問し、彼の地の食物を味わい、植物を見聞することが出来た。2008年は旧市外のホテルに滞在し、近くの食材市場をタップリ見学することが出来た。
 タイワンは北回帰線が島の上を通り、熱帯・亜熱帯気候であり、洋ランの無加温での栽培が出来る。逆に、低温が必要な種類についての栽培は、日本に比べハンディキャップがある。タイワンでは、特にファレノプシスの栽培が盛んで、世界のファレノプシス生産の中心となっている。ファレノプシスに関しては、研究、品種開発、生産技術のどれをとっても世界の最先端である。
 ファレノプシスは、タイワンでは無加温での生産も可能であるが、自然条件では冬季には花成誘導域の低温になり自然開花する。これは、リレー栽培用の株供給地としては不都合な点である。冬季には暖房により、高温で花茎の発生を抑制することは可能であるが、それは栽培コストの増加につながる。したがって、高温処理によらない低コストの花茎抑制法が望まれている。
 ファレノプシス研究に関しては、最近タイワンの占める位置は大変大きく、ファレノプシスを研究のテーマにする大学・研究者は多い。日本人としては残念であるが、「Phalaenopsis」で検索し、ヒットする最近の論文の多くはタイワンで行われたものである。国立台湾大学、国立中興(Chung-Hsing)大学、国立嘉義(Chaiyi )大学、国立高雄(Kaohsiung)大学、国立ピントン(Pingtung)科技大学、そして試験研究機関として雲林県古坑郷にある農業試験場花卉中心、台中の国立自然科学博物館植物園など、多くの研究機関でランの研究が行われている。間違いなく、現在ラン研究の密度のもっとも高い地域はタイワンである。
 ファレノプシスの品種開発の中心は民間企業で、大手の一心(Ihsin)世界蘭業(SOGO)台大(Taida)など、また庭欣(Tying Shin)蘭園など個人的な小規模農場で、世界市場をターゲットにトップレベルの品種の育成や、原種の収集増殖(佳和蘭園;Jia Ho Orchid)が行われている。リレー株の生産も盛んで、育品(Yu Pin)生物科技では自動化された大規模な生産農場で、輸出用の株の生産が行われている。従来日本では、白大輪系品種の生産がメインであったが、世界市場とタイワンの育種成果の影響により、日本でも多様なミニ、ミディ品種が普及してきている。
 最近はオンシジュウム(文心蘭)の切花生産も盛んになってきている。嘉義県大林鎮のオンシジュウム生産グループを視察した時の情報(2009.3.26)では、台湾のオンシジュウムの切花生産本数は2千万本でその90%が日本向けの輸出である。大林鎮グループは40の生産農家で、年間350万本を生産している。ネット遮光だけの露地栽培、品種は3品種で、タイからのフラスコ苗から選抜したもの(ナンシーの変異種、その他)と、日本のパテント品種(純黄色のもの)の3品種である。
 自然条件がオンシジュウムの生育に適しているため、ネットによる遮光だけの設備でうまく成長し、株間も余裕を持って栽培できるため、日本での株間を詰めた温室栽培に比べると、良い品質の製品が出荷できる。栽培は、タイワンで増殖したフラスコクロン苗でスタートし、プラ大鉢に植えて移植なしで5年間切り続け、鉢の外にリードが張り出したものは廃棄する。植え込み材料は、大粒のバーク、砂利で、肥料は日本のロングを使っている。品質改善のための液肥による施肥試験も行われ、その結果では施肥の改善によって、太いバルブが形成され収穫増が期待されていた。切花は、長さと枝振りにより品質はA〜Dの4等級に共同で選別され、共同出荷される。農薬の購入・管理も共同で、農薬の適正な使用、削減を図っている。問題は台風対策で、そのため鉢には砂利を入れ、鉢重をかなり重くして、鉢が転倒しないように対策されていた。

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