中国のラン事情1(2005.6.12)
この数年、何回か中国に行きましたが、まだ中国のことが良く分かりません。中国は一つの国なのでしょうか。セントレアから上海まで2時間、上海から昆明まで3時間かかります。同じ国の中に亜熱帯も温帯も寒帯もあります。熱帯雨林も砂漠もあります。場所さえ選べばどんな花でも栽培できます。同じ国の中に豊かな人たちと貧しい人たちが同居しています。安くて若い豊富な労働力もあります。一つの国と言うよりは、東アジアと東南アジアの国境をなくした、連合国と考えた方が理解しやすいかもしれません。
今後、中国は日本の花業界にどのようなかかわりを持ってくるのでしょうか。今までは、花生産技術の未熟さが見られましたが、急速に技術が向上しています。日本の大手ラン種苗業者は中国での生産を始めました。培養苗は間違いなく中国が生産大国になるように思われます。ここ2−3年はシンビの開花株の日本からの輸出も続くでしょう。しかし、しばらくすれば、逆に胡蝶蘭、シンビ、デンドロなどのリレー株の供給国として、重要になってくると思われます。
今中国はバブル景気の真っ只中にいるように思われます。しかし、それも長くは続かないのではないでしょうか。中国のバブル崩壊の影響はどんなものなのか、大変気になるところです。
シンビジュウム
2005年の旧正月には中国でシンビジュウムの鉢物が200-250万鉢出回ったと推定されるが、価格は低下し今年の利幅は昨年よりも相当低下した。
・日本からの輸入 合計コンテナー約30本(約6万鉢)
1)数量
広東:コンテナー20本以上(1本は約2000鉢入り、ほとんど豊明市場、四国産地から、うち2本は向山から)
上海:4本(2本豊明市場から、2本河野から)
北京:若干
2)輸入価格
C&F価格は、25-100US$(200−820元)
3)卸価格
ST:300−400元(3900−5200円)
アーチ:700−800(9100−10400円)
・韓国からの輸入 約100万鉢
・中国内生産 約100万鉢
ほとんど外資系の韓国圃場産、河野、向山の中国取引先圃場産が中心。
シンビ培養苗生産と日系企業の動向
・向山蘭園
無錫の馬山に組織培養を中心の会社を設立。
取引先(苗の販売先)
天津順天園、深せん農科集団、浙江の義烏農庄、大漢(上海)
価格は、瓶出し苗、10元前後
苗委託生産先 天津順天園、深せん農科集団と思われる。
・河野メリクロン
昆明教大農業科技に出資。組織培養施設を増設中。
取引先(苗の販売先)
昆明教大農業科技、英茂など
価格は、瓶出し苗、昆明教大農業科技 8−10元、英茂12−20元
苗委託生産先 北京華楽(サッポロビール合弁)
・ノンパテント品種・無断増殖苗の価格
杭州伝化の商品 花前半年程度(ポットサイズ15センチ程度)で45〜50元
韓国系企業錦湖の商品 70元
胡蝶蘭
中国でコチョウランを生産している会社は300社程度で、2004年の生産量は1千万鉢程度と推定される。
2005年旧正月市場で流通した量は
北京200万鉢、上海150万鉢、広東350万鉢、全国では700−800万鉢。
今年の春節のコチョウランの相場
A級( 8輪以上)30−35元
B級(6輪以上)20−30元
実生15−20元
上海には10万株規模の生産会社が6-7社
交大農科新橋花木有限公司のコチョウラン苗の輸出FOB価格
V3フラスコ苗で4.5元/本
1.5号50日順化苗で5.5元/鉢(国内取引もほぼ同じ)
オランダ輸出はFOB2.5号12.5元/鉢、1.5号8元/鉢
ノビル系デンドロビュウム
中国にはまだ人気がない。市場サイズは100万本以下。
浙江省(2社)、山東省(数社)、海南島(数社)が生産している。
大手は森禾種業 http://www.senhe.com/index.jsp
生産数 日本から100万本苗を購入、日本人技術者1年間契約(100万元)
今年の旧正月に数十万鉢を出荷した。価格は、20元/本
旧正月以降、価格は十数元まで下落。
このページは麒麟生物農業(上海)有限公司
の張志豪社長から頂いた資料を基に作成したものです。
中国のラン事情2(2006.3.20)
今年は、3月6日から11日にかけて、上海、アモイ、広州、海南島を視察した。今年の中国のらんの市況は、相変わらずシンビは高値で、コチョウランの安値は変わりないが、ようやく下げ止まったようである。さらにコチョウランは一部では苗が不足し、値段が高くなっている。ラン栽培の技術は総体的にまだまだ未熟で、改善すべき点が多く見られる。コチョウランに限って言えば、急激にしかも大規模に生産を始めた事による弊害が大きいように感じられる。
コチョウラン生産を成功させるには、まず良い苗が得られるかどうかが重要である。良い苗とは、品種的な意味合いの他に、歩留まり率の高い苗のことである。中国のコチョウラン生産では、歩留まりの悪さが大きな問題のようである。その原因の一つは、大量の苗を株で一時に購入して生産を始めた所にあると思われる。フラスコ苗からの生産であれば、苗は無病である。何れの段階の苗かは別として、苗の購入で生産を始める場合には、購入株がすでに病気を持っている可能性がある。不完全な栽培管理により、それがさらに拡大することなど、歩留まりの悪さの原因と考えられる。生産コストを下げるために、質の悪いミズゴケを使用することも、病害を拡大している原因の一つと考えられる。
リレー栽培の要点は、良い苗が安定的に得られるかどうかであるが、大量にしかも長期にわたって安定的に良い苗を得ることは難しい。一時に大量の良い株を購入することはさらに難しい。日本の生産者が最も苦労しているのは、安定的に良いリレー株を購入するルートの構築である。中国のファレノプシス生産はまだその段階には到っていない。
今後の中国のコチョウラン産業関係者は、コチョウランは周年供給できる鉢物素材であり、その特徴を生かした商品として、大切に育てていく必要があることを強く感じた。そのためには、春節の自然開花に出荷をあわせるのではなく、それ以外の時期に需要を創出するような努力がされる必要がある。
胡蝶蘭
(1)2005年
全国販売された鉢数は、600-700万鉢。フラスコ苗から大苗までは約2000万本との推定。
(2)2006年
1)04年から05年の2年間は、鉢物の単価の低迷により、相当の生産者はコチョウラン生産から撤退した。
2)一部の台湾系の生産者は、フラスコ苗から大苗まで、ヨーロッパ、アメリカ、日本への輸出を始めた。
3)一部の生産者は温度処理による開花処理がうまく行えていない。
4)コチョウランは北京、上海、広州などの大都市から、杭州、南京など、さらに中小都市の沿岸部都市への普及により、需要は増えた。
5)春節以外のシーズンでも少しつつ売れるようになった。
2006年の春節販売や、その後の苗販売に以下の状況が見られた。
1)上記1)、2)の反動で、2006年の春節には、南方(広州)のハブを除く、他の都市部のコチョウランは不足気味で、単価は上昇した(05年の推測平均単価は20元/鉢で、06年は30元/鉢以上となった)。
2)2006年の春節に販売された鉢数は、約800万鉢。フラスコ苗から大苗までは約3000万本と推定される。ただし、その内、最低1000万本は輸出用。
3)上記(2)の1)の反動で、2006年春節後の苗市場は、2.5寸苗の奪い合いが生じた(07年春節向けの販売のため)。苗単価は通常の4元/本から7.8元/本まで上昇した(大手数社のデータ)。大手苗生産者は2007年までの苗の予約を受けた。
シンビジュウム
(1)2005年
全国販売された鉢数は、100-150万鉢。フラスコ苗から大苗までは約1000万本との推定。
鉢は半分国内産、半分は韓国からの輸入。僅かが日本からも数本コンテナーの輸入。
(2)2006年
全国販売された鉢数は、多くても200万鉢。フラスコ苗から大苗までは約1500万本との推定。
鉢は国内産は相当増えたが、韓国輸入は4割を占める。日本からの輸入は減った。
単価は、2005年の国内産の推測平均単価は130元/鉢(3本立ち)、韓国輸入株は300元、日本輸入株は300元。2006年は、価格は大きく変わりがなかった。
(3)2007年の予測
河野メリクロンや、向山蘭園の(中国)国内生産や代理店の生産したものが出荷される予定で、国内産のものは一気に増えると推測される。その反面、単価は下がると推測される。また、韓国人による中国国内産や、輸入ものは引き続き増えると予想される。総数は400万鉢の規模となる。
ノビル系デンドロビュウム
大手は森禾だが、他には小規模の生産者もある。
2005年は数万鉢の規模、2006年は多くても10万鉢、2007年はあっても30万鉢程度と予想される。2005年の森禾産のものは平均単価は15元/鉢(3本立ち)。
2006年の旧正月には森禾産の良いい商品は500元(7500円)程度で売れたとの話もある。ノビル系デンドロビュウムを生産しようとする農園も増加するかもしれない。
このページは麒麟生物農業(上海)有限公司
の張志豪社長から頂いた資料を基に作成したものです。