<ストーリー>
暮れなずむ初秋の軽井沢
光り輝く水面に映し込んだのは 頬をなでる翠の風 淡い恋の追憶
着物の仕立てをしながら一人で暮らす市子。
商社に勤める息子の進が帰国すると、市子は一人旅に出ていた。母を気にかけ、進は軽井沢へと後を追う。
そこは昔、市子が疎開していたところ。市子には、やり残していたことがあった。今や世界的な画家となった、かつて心を寄せていた人が描いた一枚の絵-そこには幼い頃の自分が描かれていた。その絵を一目見たい-。
一途な旅路の行方には、思わぬ巡り合わせが待っていた…。
<解説>
若き日の想いを貫く 人生の秋
初秋の軽井沢、市子はかつて想いを寄せ、現在は国際的な画家となった宮謙一郎の展覧会が開催されている美術館を訪れていた…。
戦後の貧しい状況の中、着物の仕立てをしながら過ごした若き日、心に封じ込めた淡い恋の追憶。思い出の絵を捜す旅を通して、市子は人生を振り返る。
故・岡本喜八監督の妻であり、プロデューサーとして長年彼を支えてきた中みね子が監督デビューを果たし、76歳にして新たな人生の一歩を踏み出した作品。八千草薫、仲代達矢ら日本を代表する名優たちが奇跡の共演。
ゆずり葉:春に若葉が出たあと前年の葉がそれに譲るように落葉する様子が、親から子へと家が代々続いていく様子に見立てられる。
「ただ長生きするのではなく、次の世代に何を残せるか」映画のテーマと共に、監督自身の姿も投影されている。