おかしくも切ない日常を描いた“ハートウォーミング介護喜劇映画”
高齢化が猛スピードで進む日本では深刻な社会問題として扱われることが多い「介護」「認知症」をテーマにしながら、現在85歳となる森崎東監督が、観る者を軽やかで明るい気持ちにさせ、涙も誘う温かい作品に仕上げた。
原作は、長崎在住の漫画家・岡野雄一が自信の経験をもとに描いたエッセイ漫画。
ペコロスは小さなたまねぎのことで、岡野の愛称。
「ハゲた息子が母に会いに行く、その繰り返し」と岡野自身が語る通り、息子ペコロスが介護施設にいる母に会いに行く、その日常をベースに、原爆が落とされて間もない頃の父母、酒乱だけどほんとは優しい父と過ごしたゆういちの少年時代、母の元を訪れる父の幻影といったエピソードを織り交ぜて描かれている。
元々は地元長崎でひっそりと自費出版された本だが、それに注目したプロデューサーが映画化を熱望。Facebookに応援ページを立ち上げ、瞬く間に売り上げを伸ばしていった。
完売と再版を繰り返した後、西日本新聞社から再編集版が発売され、全国で185,000部を超えるベストセラーに。
Facebookの応援者は増え続け、クラウドファンディング(インターネット経由で一般からの出資を募る方法)による資金集めも行われた。
「ボケるとも悪かことばかりじゃなかかもな」というセリフの通り、老いることやボケることを否定しない本作は、介護する者、される者の両者を前向きな気持ちにさせてくれる。
誰もが直面する可能性のある介護や認知症に対する心の準備の仕方、そしてその後の新しい生き方へのエールやヒントをも示唆してくれる、森崎東監督ならではの人間讃歌なのである。
認知症の母みつえと、バツイチ・ハゲちゃびんの僕
いとおしくて、ホロリ切ない 僕らの毎日。
<ストーリー>
だいじょうぶ。なにかと不安もおありでしょうが、 笑いと愛を お届けします。
岡野ゆういちは長崎生まれの団塊世代。漫画を描いたり、音楽活動をしたりと趣味にうつつを抜かし、仕事に身が入らないダメサラリーマン。
母みつえの認知症がはじまったのは、夫さとるが亡くなった頃からだ。それから10年、さとるのために酒を買いに出たり、危うく轢かれそうになったり。汚れた下着がタンスから大量に出てきたり…。ケアマネージャーに勧められたゆういちは、悩みながらもとうとうみつえを介護施設に預けることにする。
みつえが入ることになったのは、老人たちがみんなで合唱するような明るい雰囲気のグループホームだった。だが、みつえは部屋にこもってしまう。みつえの記憶は少しずつ過去へ遡っていっているようだった・・・。