とある事情で家業の漢方薬店を廃業し、古ぼけた団地に移り住んだヒナ子と清治の夫婦。どこか世を捨てた雰囲気のふたりに、住民たちは好奇心を隠せない様子で…。
自らを舞台役者と思い定め、映画の世界からは長く遠ざかっていた藤山直美。今回は「阪本監督が撮ってくれるなら」と久々にスクリーンへの復帰を決意。阪本順治監督『顔』以来16年ぶりにタッグを組んだ。
大阪近郊にある、古ぼけた団地。昭和の面影を残すその一角で、山下ヒナ子は、夫で元漢方局店主の清治とひっそりと暮らしていた。半年ほど前に店を閉め引っ越してきたばかり。腰は低いがどこか世を捨てた雰囲気に、住民たちは好奇心を隠せない。調子のいい自治会長の行徳と、妻で“ゴミ監視役”の君子。クレーマーで次期会長を狙う吉住に、暇を持て余した奥様連中…。ときおり訪れる妙な立ち居振る舞いの青年・真城だけが、山下夫妻の抱えた過去を知っていた-。
飛び交うブラックな噂と妄想、やがて訪れる仰天の結末。
その隙間から、人が生きていくことのオカシミと切なさがほろほろとこぼれ落ちてくる。