<ストーリー>
私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
…だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。
どら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々を過ごしていた千太郎。
そのお店の常連客である中学生のワカナ。
ある日、求人募集の張り紙を見て「どら春」で働きたいと懇願する老女・徳江が現れ、粒あん作りを任せることになった。
徳江の粒あんはあまりにも美味しく、店は大繁盛。
しかし、心ない噂が彼らの運命を大きく変えていく・・・。
<解説>
たくさんの涙を越えて、生きていく意味を問いかける-
…ラジオの深夜放送のパーソナリティーをしていたドリアン助川。
若いリスナーたちが口にする「社会の役に立つ人間になりたい。そうじゃないと生まれてきた意味がない。」と言う立派な言葉に、思うところがあった。重い障碍があり、寝たきりの人。歩けるようになる前に亡くなってしまった乳児。社会の役に立つことが人の存在価値になるなら、そうした命には生まれてきた意味がなかったのだろうか?
その頃「らい予防法」廃止にともなって、隔離され続けてきた人々の過酷な状況が明るみに出始めていた。
基本的人権を奪われた元患者たちの生涯を思う時、社会の役に立つとか立たないとかの論点は、むしろ暴力的ですらあるように思えた。ならば、どんな立場の人であっても共有できる、生きることの普遍的な意味を、元患者の生涯を背景にして書けないものだろうか。そのように胸の中で誓った…
(キネマ旬報ムック「あん」オフィシャルブックより)
ドリアン助川の同名小説「あん」を、世界を舞台に創作活動を続ける監督・河瀬直美が映画化。
日本を代表する女優・樹木希林をはじめ、抜群の演技力で独特の存在感を放つ永瀬正敏、樹木の実孫である新星・内田伽羅や、芸歴50年を迎えようやく樹木との共演が実現した市原悦子など、豪華キャストで贈る、心揺さぶる作品。
<ご案内>
※映画上映と併せて永瀬正敏さん・ドリアン助川さんのトークショーも可能です。企画の際はご相談ください。