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「間」のとり方の工夫

   読み聞かせの技術をあげるためのページです
             千葉昌之 HIP


1.読む技術などいらない@

 これを言ってしまってはこのページの意味が無いのですが、あえて言います。次のことです。

 担任や保護者、またはそれに代わる子どもに親しい人が読むならは、読む技術など特にいらない。

 「保護者が語ってくれる」「おじさんが読んでくれる」「大好きなお姉さんが読んでくれる」「先生が読んでくれる」・・・こういう状態だと、子どもは喜んで聞くということです。

 一時、「グリム童話は残酷だ」ということが取り上げられました。詳しく言いますと、「グリム童話には残酷なところがあるので、そのまま子どもに聞かせてもよいものか」「封建的なところがある」「ナチスをあおりたてた」「非科学的だ」等の声です。

 シンデレラでは、「鳩が姉たちの片方の目をつつきだしてしまう」という記述があります。ねずの木の話では、「母が子を殺し、その子を細かく切り、酢で煮てシチューを作り、それを父親が食べる」という記述があります。日本のかちかち山だって、おじいさんがおばあさんの入った汁(ばば汁)を食べてしまうという記述がありますよね。(最近はこの部分はカットされている場合が多いようです。)

 これらの残酷性について、『グリム童話〜子どもに聞かせてよいのか』という本の中で、次のように言っています。

 わたしの経験からいっても、父親または母親が―あるいはそれに代わるような方々が、子どもにじかに語るなら、どんな話も子どもには害を及ぼさないでしょう。大人が気にかけなくてはならないのは、親身になって子どもに語る人の少ないことで、個々の残酷な言い回しではありません。

 つまり、親身になって子どもに語れば技術などいらないということなのです。

 しかし、毎日継続すると、飽きられてしまうという恐れがあります。また、読んでいる自身が「こんなああ読み方では」と嫌になってしまうということも考えられます。親身になればなるほど、「子どもが喜ぶように読み聞かせたい」「子どもがお話好きになるようにしたい」と考えるようになるものです。まあ、このページを読む人も、「子どもの喜ぶ顔が見たい」という人ばかりでしょう。もちろん、私もその一人です。

 ここでは、「親身になって語る人」のための読み方の技術について考えてみます。

2.「間」の取り方のアイデア

 「間をとる」。このことが最大のポイントです。この1点だけ気をつけることで、読み聞かせは向上します。単に「間をとる」といっても具体的ではないので、詳しく書きます。

アイデア1   重要な部分の「前」「後」では、しばらく沈黙する(「間」をとる)。

 以前、参観日が1時間目になったときに、保護者の方にも読み聞かせを聞いていただきました。緊張しました。そうすると、「早口」「棒読み」になってしまいます。早く重荷をおろしてしまいたいという人間の心理なのでしょう。

 「間」というのは本当に重要です。「間」によって、聞き手に考える時間を与えるわけです。「間」、つまり沈黙によって、話について考えるゆとりが生まれるわけです。しかし、やたらめったらとればいいわけではなく、とりすぎるとやはり「間」の意味がなくなってしまいます。とりあえず、重要な場面の前後が良いでしょう。
●主人公が開けてはいけないと言われたドアを開けてしまった。【間】
●登場人物に急に電話がかかってきた。【間】

 何度も読んでいる作品だと「間」をとるところが何となくわかるでしょうが、初めて読む作品には印をつけるなどの工夫をするとよいかもしれません。

 さて、この「間」ですが、私は2種類ととらえています。1つは普通の「間」です。もうひとつは・・・。

アイデア2    子どもを集中させるには「びっくりするぐらいの間」をとる。

 私はこれを「びっくり間」と呼んでいます。文字通り、子どもがびっくりするぐらいの「間」をとります。通常は2秒ぐらいでしょうか。この「びっくり間」は5秒以上です。

 5秒以上「間」をとると、どうなるのか。それは、みんな同一行動を取ります。読み聞かせている人の顔を見る。「あっ、先生、どうしたんだろう」「涙流してるのかな」「くしゃみでも出るのかな」「読むところ、間違ったのかな」等を思っているのでしょうか。一同に「あれっ」といった表情をしています。

 集中していない子(本を読んでいたり、字を書いていたり・・・)そういう子がいる時に、「びっくり間」を開けてみてください、そういう子だって、顔をあげこちらを見ます。目があったら「にこっ」と笑ってやればいいのです。あわてて、本を読むのなどの行為を止めたりします。このように、集中していない場面でも使えます。もちろん、より集中させるためにも、この「間」は使えます。

 他の「間」のとりかたの技術をみてみましょう。なお、野口芳宏氏の提唱される『教室音読』を参考にしています。

アイデア3    題名と本文の間は、「びっくり間」をとる。

 これも、聞き手に考えさせるためです。「この題名からすると、こんな話かな」という考えを持たせる事です。

アイデア4    話題が変わる部分は「間」を取る。

 少し気分を変えて読むといいのかもしれません。

 「間ちがい」「間に合う」「間抜け」「間が悪い」「間が良い」・・・、「間」の大切さを教える言葉が世の中にはたくさんあります。普段のしゃべり方も「間」に気をつけたいものです。というより、読み聞かせで「間」のコツをつかうこともまた大切なことかと考えます。

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