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読み聞かせで心の教育を

   読み聞かせの論文のページです
             千葉昌之 HIP


 この作品は「第28回(平成11年度)読書体験文コンクール」で、「北海道学校図書館協会長賞」になった作品です。


 「小学校3年生にもなって、母親に読み聞かせをしてもらっているのか。それならもっと本を読めよなあ。」声に出してはいいませんでしたが、私は、心の中でこう思いました。

 教師になって1年目。ある保護者が次のようなことを言った時でした。「私は、家で毎日、子どもに読み聞かせをしているんです。」

 今にしてみれば、とんでもない事を思ったものだと恥ずかしく思います。

 教師になって3年目からクラスで毎日5分間の読み聞かせを始めました。昨年で8年目になります。昨年で1年生から6年生までの全ての学年での読み聞かせを行いました。

 4月、始業式の日。『先生は、本が大好きなんですよ。みんなにも好きになってほしいと思います。これから先生が面白い本を読むから、聞いてくださいね。』子どもたちは、「ワ〜ッ」と喜びます。毎年のように、「おはなしのろうそく」という本の中からの「エパミナンダス」という話を読み聞かせています。このお話はとても楽しいお話です。笑いが1分ごとに起こる話です。「あー面白かった。」で終わります。そこで、こう言います。

 『ね、面白いでしょう。これから先生は毎日本を読もうと思います』子ども達は「わあーい」となります。そこで、小さな声でこう言います。『でもね、お願いがあるんだよ。先生が読むときに守ってほしいことが2つあるんだ。1つは、おしゃべりをしないということです。2つめは、手や体を動かさないということです。目の前でしゃべったり、体が動いていると先生はとても読みにくいのです。2つのことを守るなら、どのようなかっこうで聞いてもいいですよ。』

 子どもたちに、「聞く姿勢」を伝えます。そして、もう一つ。

 『毎日読むので、時間を決めます。1日5分間読みます。それ以上読むと、授業時間が短くなってしまうからです。5分間でもけっこう読めますよ。楽しみにしていてください。』

 あまりくどくどと言いません。けれども、聞く姿勢だけはしっかりと伝えなければなりません。あとは、とにかく毎日読み続けることです。

 読み聞かせと同時に、学級文庫を作っていきました。毎月少しずつ、児童書を購入し、学級文庫に入れていきました。『先生、この本を学級文庫に入れてください。』と保護者からの本の寄付もたくさんありました。2年前には、200冊以上の本もいただきました。読み聞かせに応えてくださる保護者の方は、非常に多かったです。

 『先生は、毎日本を読み聞かせて下さっているということで、大変うれしく思っています。うちの子に関して言えば、まだ自分から新しい本を読もうとする意欲がわいてこないらしく、これからどんどんいろんな本を読んで下されば、もっともっと興味がわいてくると思います。自分から「こんな本が読みたい」と思ってくれるまで、いろんな本を体験させてあげて下さい。』このようなお便りに、どんなに勇気づけられたことでしょう。

 学級文庫は、600冊を越えました。また、旭川中央図書館の方から、地域文庫として登録する方法をお聞きしました。多くの方々の協力で学級文庫もずいぶん充実しました。

 「入学式」「遠足」「運動会」「宿泊学習」・・・、学校には様々な行事があります。行事が近くなると、学校は忙しくなります。忙しくなってくると、せこせこした気分になります。子どもも落ち着かなくなります。私も怒りやすくなります。こういう時には、事故が起こりやすいものです。こういうときだからこそ、読み聞かせは大切です。5分間という短い時間ですが、読んでいて私も心が落ち着いてきます。ゆったりした気持ちで学習に入ることが出来ます。忙しいときほど、読み聞かせが必要なのです。

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