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 高齢者疑似体験
   福祉ボランティアの実践をする人のためのページです
             千葉昌之 HIP


 このページは、社団法人 長寿社会文化協会の方の了承を得て、作成されています。

1.準備・文献等
 自分で疑似体験の用具を作成して行う高齢者疑似体験もありますが、より正確な体験活動を行うためにも、人材活用を行うことをおすすめします。次の組織を利用するとよいでしょう。「ふれあいのある高齢化社会をサポートします」が合言葉の組織です。 

 WAC(Wonderfull Aging Club)社団法人 長寿社会文化協会

 (パンフレットより引用します。)1988年に経済企画庁を主務官庁として認可された、民間の高齢化社会団体としては始めての全国社団法人です。現在、1万人の会員数を持ち、いろいろな団体と手を結びながら、高齢化社会が、高齢者自身の積極的社会参加により、活力のあるものとなるように、多彩な活動をくり広げています。将来は多くの会員の参加を得て、世界最大の高齢者支援組織「全米退職者協会」(AARP)のように、スケールメリットを生かした事業展開を計画しています。
 スタッフの方はWACを「ワック」と呼んでいました。

 平成11年度に、旭川市で「ボランティアサミット」が行われ、私の小学校のボランティアクラブも参加しました。その内容の1つとして「高齢者疑似体験」を行っていました。これが面白い体験でした。私も早速、名刺をいただきました。 

う ら し ま 太 郎

 「うーん、良いネーミングだ。」と思わずうなってしまった疑似体験プログラムの名前です。うらしま太郎のように、あっという間におじいさんになってしまうということなのでしょう。
 装備は、右図のようになっています。耳栓や特殊眼鏡、手足の錘などを装着して、75歳〜80歳位になった時の身体的機能低下や心理的変化を擬似的に体験できるようなプログラムになっています。
 子どもの感想の中に多かったのですが、「怖くなった」「不安になった」という声が非常に多かったです。身体的機能低下ばかりではなく、心理的変化があったようです。

2.実践

@総合的な学習の時間の中で

 総合的な学習の時間の活動の1つとして行いました。5学年では「おとしよりとともに」という活動を22時間で編成しました。大きな2つの活動をメインとした活動です。
 ●高齢者疑似体験              ●特別養護老人ホーム訪問
 この2つの活動を核として、高齢者の介護の仕方や、訪問の計画やまとめを活動の中に組みいれていきました。

A保護者や先生方への呼びかけ

 5学年の子ども達79名の活動ですが、せっかくの体験活動なので、保護者や先生方にも呼びかけました。保護者の方には、学年行事のように参加の是非を問う文書を配布しました。当日は、子ども79名、保護者・教諭20名の約100名という大規模な活動となりました。時間も4時間設けました。

B準備等 

 旭川の学校では初の試みだったようでした。が、電話での何回かの打ち合わせと、当日の10分程度の打ち合わせで活動は行われました。
 5学年の教室は3階にあります。この隣にパソコン教室という部屋があります。教室を2つぐらい合わせたぐらいの大きな教室です。パソコンは、まだ導入されていません。ここを体験活動の中枢としました。机や椅子を用意したりして、準備を行いました。

C体験活動

 6名のスタッフの方が指導して下さいました。子どもたちのあいさつや注意事項を聞いた後、早速体験活動に入りました。次の活動を行いました。

●階段(のぼり、おり)    ●トイレ(便器にしゃがんでみる)   ●教科書を見る(ページをめくる)   ●壁の掲示物を見る   ●廊下歩行   ●自分の名前を書く 

 子どもたちが装着した装備は右写真の通りです。7つの装備がありました。
特殊眼鏡〜加齢によって生じる白内障による色覚変化、ぼやけて見える状態や視野の狭さを再現します。
荷重チョッキ〜体験者の体重に対比させた重りを入れたチョッキをつけて、加齢に伴う前かがみの姿勢を再現します。
膝サポーター・重り〜膝にサポーター、足首に重りをつけ、筋力の低下に伴い、膝関節が動きにくくなる状態を再現します。
肘サポーター・重り〜関節を固定して、手首につけることで、筋力の衰えによっておこる肘関節の緩慢な動きを再現します。
靴底サポーター〜足首の関節を半固定することで、歩く時につま先が上がらず、つまずきやすくなる状態を再現します。
耳栓〜高音域を聞きづらくした耳栓をつけることで、老人性難聴に特有な聞きにくさを再現します。(子ども達が各自用意しました。)
手袋〜手指の触覚、圧覚、温覚などの低下により、物がつかみにくい、落としやすい状態を再現します。
 これに「杖」を持って歩くわけです。

 「手袋」だけでも、3枚あるのです。まずは、ゴム手袋のようなものをつけます。肌にピタッとする手袋です。次に白い手袋をつけます。運転するときに使うのに似ています。最後に手のサポーターをつけます。手袋の形をしたサポーターです。これで、もう物はつかめなくなります。
 特殊眼鏡も少しびっくりさせるものでしたが、私は手の感覚がなくなることに驚きを覚えました。
 子ども達の多くは、「見えなくなる」ということに不安を覚えたようです。

 この後、保護者の活動、先生方の活動へと続いていきました。

C装備をつけたまま給食を食べる

 装備が6セットあるので、6名の子ども達が装備をしたまま、給食を食べました。隣のクラスの3名は、給食を時間内に食べることができなかったそうです。私のクラスの子も1名は、「もう、だめ」と途中でギブアップしました。

D子どもの感想

●今日は、お年よりの体験をして、こんなに大変なんだということが、よくわかりました。チョッキを着て、その中におもりを入れて、とても重かったです。腕につけた時、関節も曲がらなく歩きづらかったです。階段も降りずらかったし、のぼりずらかったです。お年よりの方は、いつもあんな体でかわいそうだなと思いました。とてもいい勉強になりました。
●思ったより楽でした。1番不自由で 嫌だったのが、目でした。階段とかは楽にふつうにのぼれたけど、何か本を見るときに、色の識別とかがやりずらくて大変でした。お年よりはこんなに大変なんだと思いました。このやつは、365日ずっとということなので大変だなと思い知らされたという感じがしました。とても良い体験でした。
●今日は、老人の体験をしたあと、給食もつけたまま食べていたら、腕が痛くて、途中ではずしちゃったけど、70歳の後半から80歳ぐらいまでの人は、これをつけたように何でもしているなんて、すごいなあと思いました。私だったら、そんなことはできないと思います。
●私は重りをつけたり、めがねをとりつけたり、その時、こんなに大変だったなと思いました。トイレに行った時、すわる時に足が曲がらなくて大変だし、色や字を見るとき、目があまり見えなくて、字も書けなくて、名前がぐちゃぐちゃでした。1番こわかったのは階段です。足が曲がらなくて、とても怖かったです。老人は大変だと思いました。                          

 北海道には札幌にプロモーション本部が、旭川に支部があります。旭川のスタッフの方は遠くは函館から根室まで行かれたそうです。医療関係の団体に出向くことが多いと聞きました。学校での実践は、まだ少ないそうですよ。

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