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本 の 宅 配 便

   読み聞かせのちょっとしたアイデアのページです
             千葉昌之 HIP


1.欠席した子の言葉
 
実践の始まりは、欠席した子の言葉です。 

 休んだ時って、たいくつなんだよなあ。何にもすることがなくて。

 風邪にかかって、1番つらいのは本人です。熱・咳・腹痛‥で苦しみます。そして、少しよくなってくると、次の事も心配になってきます。「学校でみんな何をしているのかな」勉強のこと、遊びのことです。

 私は休んだ子に「学習プリント」を出そうと考えました。しかし、これでは宿題です。「休まなきゃよかった」なんて言われたら、本末転倒です。そこで考えたのは、「本の宅配便」です。

2.本の宅配便 

 ○○さんは2日以上休んでいるんだ。 手紙を届ける時に○○さんの好きなこの本を持っていって。

 休んだ子には手紙を届けていました。班のメンバーや仲の良い友達がコメントを書くのです。この手紙は、近所の子か私が届けていました。これに本をつけ加えるのです。名付けて「本の宅配便」。ただし、本は「2日以上休んだ子」としました。
 この実践で気をつけなければならない事は次の点です。
  ●届けた本を絶対に読みなさいという意味ではない。
 
風邪がよくなってきて、読書ができるようになって、かつ暇だったら読んでみてね、というものです。だから、別に読まなくてもいいのです。子ども達にその旨を伝えることはもちろんのこと、「学級通信」で保護者にも説明しなければなりません。
 さらには、次の事が教師にできなくてはなりません。(私は、今はできるか不安です)
  クラス1人ひとりの「好きな本」を知っている。(選ぶことができる)
 また、「クラスの子、1人ひとりがお気に入りの本を持つ」ということも必要です。こちらの方が難しいかも知れませんね。

3.「本の宅配便」の事例
 「本の宅配便」の事例を3点ほど紹介します。9年前の事例です。 

@祖父を亡くした子に
  ある朝早く、○さんの祖父が亡くなりました。○さんは小さい時い母親を亡くしました。父親・祖父・祖母と4人暮らしです。祖父と祖母は2か月程前から入院していました。
 おじいちゃんになついていただけに、とても悲しかったことでしょう。夕方、クラスの子ども達のメッセージと学級通信・その日使用した学習プリント等を持って、○さんの家に行きました。
 もう1つ(1冊)持っていったのは次の本でした。●阪田寛夫著「てんとうむし」
 ○さんは、学級文庫にあるこの詩集が大好きでした。1週間に1回は借りているという具合でした。休み時間もよく読んでいました。また、「先生、聞いててね」と、暗唱した詩を聞かせてくれました。
 「○さん、てんとうむしも持ってきたよ。」と言うと、少しニコッとしました。私はその笑顔を見てホッとしました。

Aどうしても借りたかった本
 ▽さんは、ある本を借りたくて借りたくてたまりませんでした。●今江祥智著「ぽけっとにいっぱい」
 読んだ方はおわかりになるでしょうが、ぽけっとに入るくらいの短くてかわいらしい話がいっぱいつまった本なのです。メルヘンチックな▽さんは、この本が借りたくてしょうがなかったのです。
 なぜ借りれなかったかというと、私が時々読み聞かせに使っていたので、机の中にしまっておいたからです。
 「先生、文庫にいつ入れるの」「貸してほしいよ」「早く全部、読んでよ」と毎日のように言いにきました。
 そんな▽さんが、風邪で2日間、休みました。熱はないが、食欲がなく体力がないとのことです。
 「よし、ぽけっとにいっぱいを貸してあげよう」ということで、この本を持っていってもらいました。▽さんは、この本を見ると非常に喜んだそうです。手紙に書いてきました。
    ●‥‥、休んだのに、こんなにうれしいことは初めてです。
 ▽さんの喜ぶ顔が思い出されて、私の顔もほころびました。

B先生、私、とっていないよ
 □さんは、とても楽しい女の子。いつも、ユーモアたっぷりの子です。そんな□さんが2日間、休みました。その時に届けた本は次の本です。●角野栄子著「ハナさんのおきゃくさま」
 このクラスの人気投票で第2位に選ばれた本です。もちろん、読み聞かせにも使いました。
 次の日、□さんは登校するなり、私の所にきてこう言いました。
 「先生、昨日、私の家の郵便受けに、本が投げ込まれました。私はとっていませんからね」これを聞いて、私も周りにいた子も大爆笑。こんな事例もあって、思い出に残る実践でした。1年間だけの実践でしたが。

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