思いつくまま印象記 旅体験あれこれ その11《前編》
 意外な発見、見直した「先進国」
成熟の国 イギリス(ブリテン)・3人旅・2週間 

[ボートからのビッグ・ベン] [ヘイマーケット方面からのエディンバラ城] [クライストチャーチのダイニングルーム]

 はじめに…イギリスはイマイチ惹かれるものがないかなと思ったのですが 
 2003年は三上が3年生の担任で、夏の海外旅行はもちろん、一度も海外に出かけない1年間でした。
 04年の夏は、西矢の従姉夫妻と海外旅行の予定でしたが、体調が思わしくなく、05年に予定していた西矢の母との約束のイギリス(BritainとかUKとか言うべきでしょうが、本多勝一氏の説に立って、日本での通称を使います)への旅になった次第です。
 母は以前にも触れたように、相当世界各国を周っていますが、イギリスだけは僕たちとの旅にとってあるという感じで、お待ちかねの旅。
 僕たちは、大英博物館もあるし、一度は行っておく方がいいかな、という感じで、それほどそそられた訳ではないのですが、出かけてみて、今回も色々な発見がありました。
 節約のために大韓航空を使いましたが、仁川空港でのロスタイムもさほどではなく、ロンドンに夜着き、関空にも夜着くというパターンで、「飛行機の中で寝なくては」という強迫観念にとらわれなくていいというのは、大変好都合でした。
 尚、いつものことですが写真説明は写真上でクリック下さい。


月・日 行               動 宿泊B&B、ホテル
7月21日   関空9:40⇒11:30仁川空港13:00⇒16:55(時差8時間)ロンドン/ヒースロー空港 ライムグローブ
7月22日   バッキンガム宮殿トラファルガー広場・ナショナルギャラリー劇場博物館・コベントガーデン ライムグローブ
7月23日  セントポール大聖堂ギルドホール・イングランド銀行博物館タワーブリッジ・ロンドン塔 ライムグローブ
7月24日  国会議事堂・ウェストミンスター寺院大英博物館・大英図書館 ライムグローブ
7月25日  ロンドン8:55→14:00エディンバラ エディンバラ城・ロイヤルマイル   レアーグ
7月26日  カールトンヒルピープルズストーリー・聖ジャイルズ教会スコットランド博物館/ロイヤル博物館 レアーグ
7月27日  エディンバラ7:37→9:56オクセンホルム10:30→10:54ウィンダミア オレストヘッド・蒸気船博物館 ブレンダンチェイス
7月28日  ボウネス→〔クルーズ〕→レイクサイド→〔SL〕→ハバースウエイト(往復)ベアトリクスポターの世界 ブレンダンチェイス
7月29日  ウィンダミア7:57→8:17オクセンホルム8:24→9:19プレストン9:27→10:25リバプール  アルバートドックリバプール大聖堂・マシューストリート アイビスH
7月30日  リバプール8:49→10:24バーミンガム11:28→12:20ストラットフォード・アポン・エイボン  シェイクスピア生家ロイヤルシェイクスピアシアター・エイボン川   グロブナーヴィラ
7月31日  アン・ハザウェイ・コティッジ ・コッツウォルズツアー  ウッドストック
8月1日  ストラットフォード・アポン・エイボン9:30→12:00オックスフォード  オックスフォードストーリー聖メアリー教会・クライストチャーチ聖歌隊  リヴァーH
8月2日  トリニティカレッジ・ニューカレッジ・マートンカレッジ・クライストチャーチカレッジ             ヒースロー空港21:30⇒  機中泊
8月3日                ⇒16:20仁川空港19:05⇒20:50関西空港 ほぼ予定通り

イギリスに対するイメージがボーっとしていた
 同僚や友人にイギリスへ出かけると言うと、僕達の最近の旅を知る人は、少し意外な顔をしてくれました。
 若い内に行っといた方がいい地域へと思い、アジア、南米などの旅が続いたものですから、ヨーロッパの「普通の国」へ出かけるのは、却って意外感があるようでした。
 実は僕達自身もそうだったのです。西矢の母は今年喜寿を迎えました。彼女は「エディンバラに行きたい」と思うものの、適当なパックツアーもなく、僕達の旅に期待してくれていたので、ではもうそろそろ、という感じで出かけました。
 だから、冗談で「これは親孝行の旅」などと言っていました。もちろん、大英博物館もあるし、何と言ってもヨーロッパ文化のひとつの中心ではあるわけで、一度は訪れねばとも思っていたのですが、当初はそう気乗りのする旅でもなかったのが本音でした。
 イギリスのイメージがボーっとしていたのです。スイスやオーストリアなら素晴らしい自然、ドイツも自然と歴史、イタリアならルネッサンス、スペインならイスラム文化との融合…。ではイギリスは?産業革命の発祥地、議会政治の先鞭、帝国主義・侵略の先頭、…世界の覇権国の頂点、そして急激な凋落。過去の栄光をどう見ているのか、少し斜めに観ていた節があります。
 演劇(シェイクスピアやミュージカル)やサッカーやイギリス文学(『嵐が丘』とか)に興味があったりすれば、また違ったイメージがあったのでしょうが、僕達はそうではありませんでした。最近の『ハリーポッター』にも興味を持てませんでした。ケン・ローチなどのイギリス映画は面白い、とか思うくらいでした。
今回も、にわか勉強から始まった  [出発前、旅行中に読んだ本]
 そこで、いつものことで、出かける前の勉強が始まったのですが、役に立ったのはネット通販のアマゾンです。前から少し利用していたですが、このサイトはオススメです。情報豊富、スピード迅速、廉価、なんだか宣伝料を貰っているような言い方ですが、いいです。古本もリンクしているので在庫がなければそれも入手可能です。廉価はその意味です(1500円以上買えば送料も無料)。余談ですが、その昔関心を持っていた技術史の中岡哲郎と言う研究者が居られ、その方の『イギリスと日本の間で』は絶版ですがユーズドで買い求め、殆ど新品のようなものが入手できました。
 何冊か読んだ中で、たまらなく面白かったのは森嶋通夫さんの『イギリスと日本―教育と経済』『続イギリスと日本―国民性と社会』でした。装丁の帯にも書かれていたのですが「リクエストに応えて アンコール復刊」だったのでグッドタイミングでした。初版が1977年と78年ですから、30年近く前の本なのですが、復刊されたということは、内容が今も有効だからでしょう。
 そして興味津津で読み始めたら、森嶋氏の訃報が新聞に掲載されました。正直言って「しまった!」と思いました。氏については数冊一般書を読んだり、時々の発言で護憲論者であることは知っていたのですが、こんなに早く亡くなられるとは思っていませんでした。読んだ本は大半が講演録なので、その話口調から察せられるお人柄に好感が持て、一度聞いてみたいものだと思っていたので、しまったと思った次第です。
追悼・森嶋通夫さん
 僕は一応専攻が経済学でゼミは置塩信雄さんだったのですが、新聞の追悼記で伊東光晴さんが「置塩氏を世界に紹介したのも森嶋氏だった」という記述があり、その置塩さんも昨年末に亡くなられ、一層感慨深いものがありました。訃報記事に「日本で最初にノーベル賞を取るなら森嶋氏だろうと言われていた」とか書かれているのを見るにつけ、ほんとに力のある人は、一般書を書いても、講演しても解りやすくできるものだなと感心します。
 何が良かったのかを書き出すとこのサイトの趣旨にそぐわないので割愛しますが、イギリス=固定的な階級社会という通説を実証的に覆すことだけでなく、高校や大学のあり方、日本の政治や経済への貴重な提言に満ちています。個人主義とは何か、教養とは何か、イギリス病と言われるものの原因は何か、…。もうズット前からこういう提言をされていたのなら、それに学ぶべきであった。そうしてこなかったから、この課題は、今も課題として残っている。
 今回の参議院選挙で辻元清美がスローガンにした「ボチボチの暮らし」を実践したらいい、即ち「小国のススメ」のようなことも言われています。最近のブレア―の外交政策を考えると、疑問な点もありますが、先の本のカバーに「英国はかつての大英帝国から小さな福祉国家へと変貌した」とあります。人に喩えて言うなら「如何に美しく老いるのか」。同様のことを論じた対談本『イギリス病のすすめ』も面白かったです。
 当たり前のことですが、何と言ってもイギリスは資本主義国としての超先進国です。だから、日本や合州国が直面したことを逸早く体験し、それなりに克服して来ていることになります(例えばスモッグはロンドン原産。元祖福祉国家の功罪も議論の的)。その体験から学ぶことは多いのではないか、それが結論です。この30年ほどのサッチャーとブレアに代表される保守党と労働党の政策の変遷、経済状況と治安状況の変化、人々の微妙な気質の変化等もあるのでしょうが、今は治安は大変良好なことは確かです。
 そして、コンセプトは「成熟」のような気がします。イギリスの旅でも、その一端は見た気がします。
物価が驚くほど高い
 さて、いつものように、先ずは旅の基本情報。母からの情報によればイギリスのパックツアーに人気がないのは、パックでもイギリスは高いからだそうです。
 これは、僕達がこの間物価の低い国ばかり…エジプト、ベトナム、中国…に行っていたからではありません。それも感覚的には残っているかも知れませんが、現地で会った日本人やあの僕達のバイブル『地球の歩き方』にも、1ポンド(£)が100円程度の感覚とか、1ドルの感覚と言われています。為替レートは、今概ね1£=210円程度ですから、大体日本の物価の2倍ということになります。日本の地下鉄は高いので有名でしょうが、それでも初乗り200円です。それが2£ですから、420円、昼飯を食べようと思えば、一品で6£くらいしますが、日本なら600円程度として、2倍感覚に思えました。
 その上、レートも春には200円を切っていたのに、一気に210円程度、両替の際には228円くらいになったりしますから、物価の高さは悩みの種でした。準備段階で「なんで、イギリスはこんなに物価が高いの!?」と西矢は叫ぶことしきりでした。 
 物価高の一つの原因は消費税(VATと言いますから正確には付加価値税)にあります。17.5%の高率ですから相当な寄与率でしょう。最近日本でも実施されたように完全内税方式ですから、普段は全く見えません。内税方式は税の問題を忘れさせる効果があるのでしょうね。最近の間接税事情は知らないのですが、ドイツや合州国を旅した経験では8%程度でしたから、相当なものです。
 地下鉄が400円以上もするのですから、名目賃金が高くなければ人々は生きていけない訳で、きっと高いのでしょうが、国際競争力というような問題はどうなっているんでしょう?
イギリスの安宿と言えば、B&Bですが
[ロンドンのBB街][エディンバラのBB街]  旅の費用も、随分節約に苦労しました。ただ、節約しようのない経費が積み重なります。今ひどいのは合州国であることは筑紫さんなんかも言われてますが、靴底迄調べられるのは我慢するとしても、息子夫妻がメキシコに行くのに合州国の空港で乗り換える際、出入国税とか空港管理税等が付加され、たまげていましたが、そういう費用は幸い乗換のソウルでは取られませんでした。ただ、ロンドン・ヒースロー空港の使用料は何と6200円ですよ!こんなことを言うと顰蹙ものですが、僕は前から関空の使用料をもっと上げたら良いと思っています。府税を大量投入するのは関空を使わない人にも負担を強いる訳で、そうではなく受益者負担増で行くべきだと思うのです。
 愛用のユーレイルパスにイギリスは加盟してないし、イギリスだけの旅にユーレイルパスは要りません。イギリスに同様のパスがあり、ブリットレイルパス。これが31300円(8日間用)。航空運賃はいつもの大韓航空で仁川乗換ですが、129000円。先の諸経費を入れて14万円弱ですから、この段階で17万円。
 これに宿泊費、食費、現地での交通費、見学料がプラスされるので、物価高が予想されるイギリスでどう乗り切るのか、家のローンにあえぐ僕達にとって、不安ながらも腕の見せ所(笑)でした。
 宿泊は有名なB&B(BedとBreakfast)を探すことになるのは当然として、どんな感じの佇まいかよく判らず不安でしたが、大半は3階建ての日本で言えばテラスハウス風のものでした。ですから、そういう一帯では何軒もBBが続いています。【写真左上】ロンドンには夕方に着くので心配し、電話予約したのですが、そういう心配は無用のようでした。マア、現地で探しても何とかなる印象でした。 [ロンドンのルームサービスの朝食] [エディンバラのホテルのような食堂]
 BBの由来は別として、今は通年ビジネスとして展開されているようで、僕達は朝出て夕方帰るまで顔を合わしませんから、個人主義の国ですから余計なお節介もないし、他の泊り客とも接触することはない文字通りBEDと朝食の提供ということになります。よく言えばテラスハウス、でも基本は長屋です。イギリスで都会を歩き、車窓を眺めただけですが、住居は長屋風のものが多い印象でした。先にも書いた森嶋さんは70年代の終わりに「日本のこれからの課題は住宅問題だ」と指摘されていましたが、イギリスにはそれこそ長い住宅問題の解決のための葛藤があったのだと思います。ですから、長屋とは言え3階建て、4階建てが多く、一軒あたりの居住スペースは広いように感じられました。
 詳しいことは判りませんが、古い建物でも大切に使い切っている感じで、その一つがBBかも知れません。石の文化の強みかも知れません。ロンドンなんかは過密問題のためか、殆どの建物に地下がありました。その建物が以前何であったのかに規定されるのでしょうが、談話室風のものがあったり、ダイニングルームが結構広かったりする【写真左。エディンバラで】場合もありました。最初に泊まったロンドンでは、朝食のルームサービスを売りにしていましたが、ダイニングルームがないのです【写真右】。 [エディンバラBB レアーグ]
 そして問題のお値段ですが、一部屋当り、最低が最も物価が高いと警戒したロンドンで46£(1人当り3000円強)、最高が部屋も広く高級感あふれるエディンバラの80£(1人当り6000円弱)でした【写真右】。心配したほどではなく何とか乗り切ることができました。もちろん何れも税込み、朝食付き(当たり前ですが)。値段はエンスイートかどうかで相当変わり、そうでなければ共同トイレ・シャワーになるのですが、これも聞けば恐ろしいですが、泊り客が少ないので混み合う等ということはありませんでした。ツインしかないと言うBBは少なく、大半はトリプルOKでしたし、値段もツインの1.5倍ではなく割安になったようです。
噂通り、食べ物は高くて不味い。自衛策が功を奏したかな
 さて、食べ物。イギリスの食事の不味さは定評があり、それでいてさっきの高物価ときていますから、大変です。どちらか一方ならまだ我慢できるのでしょうが、倹約派としては堪りません。 [妙さん愛用の電気ポット]
 僕達は、日本食を懐かしがるタイプではありません。でも今回は昨年イギリスを廻った知り合いが「高くて不味い。美味しいものを食べようと思ったら半端な費用では無理」と言われていたので、一計を案じました。それは、例の「さとうのご飯」、パック味噌汁、佃煮、ふりかけ、緑茶ティーバッグの持参です。ウィンダミアでこの話をしたら「BBで電子レンジ貸してくれますか?」と神戸の方に聞かれましたが、いい質問ですね。僕らの旅はいつも旅行用電気ポット持参なんです【写真右】。さとうのご飯はボイルでもいけるんですね。
 しかも驚いたのですが、どのBBでも、ティーセット設置が売りで、電気ポット備え付けですから、2台で対応し、スピードアップになりました。ティーセットは、日本の旅館だったら緑茶のティーバッグが置いてある所に、もちろん紅茶、そしてネスカフェのパックやミルクの小パックがあるという案配です。 [ストラトフォードのBBの朝食風景]
 BBですから、朝食は確保されています。因みに、イギリス人はこういうことに頓着しないのでしょうか、どこへ行っても、イングリッシュブレックファーストはウルトラワンパターンです。玉子料理にベーコン、ソーセージ(パリっとしていない)を基本に、焼きトマト、マッシュルームが付いたりというプレートです。それ以外にBBによってはフルーツが付いたりします。コーンフレークもお好みによって、という感じで僕達はこれで十分です。ただ、毎日これでは飽きないかなと余計な心配をしたのですが、ボリューム的にはOK。【写真は、今回のBBの朝食では第1位だったストラドフォード・アポン・エイボンのウッド・ストック】
 問題は、昼食と夕食。ロンドンの実質2日目、セントポールからの眺めを堪能した後、ランチタイムを迎え、初めて入ったレストランの料理が噂にたがわず、高くて不味かったので、「ヤッパリ!」ということになりました(尤も、この時食べたかったのはスパゲッティだったので、イタリア料理なのですが)。
 いつもそうなのですが、旅の序盤は慣れず、食欲が湧かないことが多いようです。そのことと、イギリスは結局どの町に行ってもスーパーマーケットが沢山あり、テスコ、センズベリ―、ブーズ等、少し探せば必ずあり、そこで胃の調子に合わせて気に入ったものを買い求め、それをBBで食べようということになりました。イギリス人も結構スーパーのサンドイッチなどを街中でもパクついていますから、これも現地流かも知れません。パンにいろいろなものを挟んでも良いし、ご飯をベースにしてもいい。皆に初期に人気があったのはサーモンのスライス。安くて美味しかったです。
 イギリスといえば、フィッシュ&チップスで、これを現地の人もよく食べているのですが、だからと言って安い訳ではありません。白身の魚のてんぷらとポテトチップなのですが、大き目の魚だったら、テイクアウェイでも1000円近くします。第一、こんなものを一人で食べるような胃を持ち合わせていません。これにケチャップをかけたりするんですが、この食べ方も僕らからするとデリカシーに欠けます。母が持っていたポン酢でこれをご飯のおかずとして頂き、大変結構な夕食となりました。 [ウィンダミアでの夕食]
 色々な料理がテイクアウェイならレストランで食べるより2£程安いのですが、イギリスの人もそうしています。特に良かったのは中華料理。もちろん中国人が作っているんですから安心感があります。これも「晩ご飯」のおかずにピッタリ。 [エディンバラのロイヤルマイルで昼食]
 それではイギリス料理は食べなかったのかと言うと、少しは食べました。湖水地方のウィンダミアで、今日こそイギリス料理をレストランで!という日だったのですが、倹約派揃いの僕達は途中見かけた「本日のランチ、4.5£、6時まで」の張り紙に惹かれてこれを食べました。3つの中からチョイスできるので、一人ずつ別のものを頼み、回し食べしたのですが、マアマアでした【写真右】。が、もう一回食べたいと思うほどのものではありませんでした。因みに手前の料理がフィッシュ&チップスです。帰国後、三上の職場の事務室の人が言っておられて、なるほどと思ったのですが「イタリア料理やスペイン料理の店はあるけど、イギリス料理の店なんてありませんもんね」。そうですね。
 昼食は行動中ですから、適当なレストランがあれば入るのですが、先に書いたスーパーが結構ありますから、適当に見繕って公園とかで食べることも多かったし、これも現地の人も見かける光景でした。【写真左上】
タクシー料金だけは割安感
  [リヴァーボート船上からロンドン塔] [ヴィクトリア駅とロンドンバス] 現地での交通費は地下鉄が初めに書いたように高く、どこでもそうですがバスは安めだったようですが、あまり使いませんでした。ただ、有名な赤い2階建てのロンドンバスは観光用だとばかり思っていたのですが、ロンドンだけでなく他の町でも一般のバスは殆どが2階なんですね。むしろ団体観光バスが普通の形のバス、観光用のバスは2階がオープンになっていました。ロンドンバスには一度は乗っておかなくては、ということになり、同じことなら、一日乗車券を購入しましたが2.5£でした。【写真左(後はヴィクトリア駅)】
 国内では滅多に乗らないタクシーも最近は海外では使うようになったのですが、それは日本に比べて格安だからということもありました。イギリスでもタクシー代だけは日本より安いように思いました。ロンドンは地下鉄が発達していますから使いませんでしたが、湖水地方のウィンダミアやリヴァプールで乗った感じでは、3£程度が多かったので、マア、日本の初乗り料金くらいで、もう少し走ったように思います。
 テムズ川を行き交うリバーボートは市民の足ではありませんから、やはり高めですが、川から眺める名所の姿は得難いものがありますから、仕方ないでしょうね。【写真右(後はロンドン塔)】
ナショナルギャラリーや大英博物館は無料、ロンドン塔は3000円弱
 見学料、入場料の類いは結構かさむのですが、あの有名なナショナル・ギャラリーや大英博物館が無料なので、感激します。ところが、対照的なのが有料施設の高さです。最も高額なのはロンドン塔で、13.5£ですから、3000円弱。セントポール寺院、国会議事堂の見学も7£、この落差には驚きを超えて呆れてしまいました。エディンバラにあるスコットランド博物館・ロイヤル博物館も無料。その他充実した展示をしている博物館でも無料のところは沢山あるんですが、有料施設の料金を只にしろとは言いませんが、いくら何でも3000円近く取るのはどうかと思います。

さすがに、ロンドンは見所多く、相当動き回りましたが、見残しも多くなりました
[ヴィクトリア駅構内]  さて、時間順に画像と印象を掲載します。初めに表を掲げた通りに旅は進んだのですが、冒頭にロンドンを持ってきたのは正解でした。ロンドンの町の印象は清潔で空気も綺麗、意外と人も少なめで、首都にしては快適でした。それでも、やはり他の街に比べると混雑の度合いは大きく、ゆっくりできない印象でした。だから、こういう町を最後に持ってくると疲れるんですね。
 主だった所はそんなに離れていず、地下鉄も発達していますから、どんな順番で見てもロスは多くありません。そう書けるのは結果論で、正味3日間のプランには頭を悩ましました。『歩き方』にはよく見るとそう書いてあるのですが、現地で気がつくことも多々あります。国会議事堂はロンドン滞在最終日に見学OK初日だったりしました。バッキンガム宮殿も、衛兵の交替式は7月は毎日でなく隔日くらいで、それも奇数日とか法則的ではないようです。
 あまり積極的に見たいわけではなかったのですが、僕達のロンドンでのBBがヴィクトリア駅の近くで、宮殿は歩いていける距離だったこともあって初日に見学に出かけたら掲示に「Today」とありました。まだ10時過ぎだったので、開始まで1時間以上あったのですが、場所取りですから待ちました。開始の頃には黒山の人だかりになっていました。
 マア、古典的に色々大層にやるのはいいのですが、チョッと時間がかかり過ぎでは。騎馬兵とかがもっと雄大に展開するのかと思ったのですがそうでもありませんでした。メインイベントも何が入っていくのかと思いきや、自家用車が何台か入っていくのでちぐはぐな印象でした。ただ、楽隊が伴奏し、その中にイングランドとスコットランドの合体の象徴でしょうか、バグパイプ隊も入っていて、マーチングするのは面白かったです。
[黒山の人だかり] [衛兵の交替セレモニー] [バグパイプ隊も退場]

 公園沿いの広い通りを歩いて10分ほどで、トラファルガー広場に出ます。そこにナショナルギャラリーがあり、広場には噴水なんかもあり、そこで遊ぶ子供達も居ますが、特に咎められていませんでした。ここで昼食をとりましたがもちろん違和感はありません。 [トラファルガー広場と後にナショナル・ギャラリー]
 このナショナルギャラリーだけでなく、イギリスは撮影禁止が多く、日本並みという感じ。日本以外の美術館・博物館ではフラッシュだけ禁止の所が多くなってきているように思うのですが、イギリスでは、監視の人が居る所では撮れないし、撮れてもぶれてしまうことが多くなり、残念でした。それが狙いとは思えませんが、気に入った絵の絵葉書を買うしかなく、そこは大賑わいでした。だからこのサイトにも画像無しです。 [プリンス・オブ・ウェールズ劇場]
 美術館の見学は結構疲れるもので、レスタースクエアへ回って休憩。その間に三上はマンマ・ミーアの劇場であるプリンス・オブ・ウェールズ劇場へ。大冠高校が来年20周年記念行事の一環で劇団四季のこのミュージカルを鑑賞するのです。当日残っているチケットがあれば売り出されているTKTSを一応覗きましたが、本管さんが観たというチキチキバンバンはあったのですがこれはなし。ここでディスカウントチケットでもあれば観ようかとも思っていたのですが、チョッと体力的、時間的、経済的に無理でした。だから、せめて劇場だけでも覗きに行った次第です。この辺りには劇場やショッピングゾーンがあり、喧騒の場でした。
 コベント・ガーデンも大賑わいだったのですが、もう人込みは限界かなと思っていたので、劇場博物館だけ入りました。期待せずに入ったのですが、これがなかなか優れた博物館で、演劇の好きな人には興味深い内容のディスプレイがされていました。
[劇場博物館の衣装などの展示] [キャッツの紹介等] [劇場博物館のポスター等の展示]

[セントポール大聖堂の外観]
 先に行くか、後から行くかは別にして、町を一望できる所があればできるだけ行くようにしていますが、今回それに当るのはセントポール大聖堂。2日目のトップはここで、ドームの上に登ることでした。母は膝が痛くなるので、ローマのヴァチカン・サンピエトロに登った時も相当しんどかったようです。でも登り切った時の眺めと爽快感は今も語り草になっています。今回も全くその通りになりました。530段の階段だったのですが、三種類くらいの階段で、途中に休憩スペースもあり比較的楽に登れたようです。 [セントポール大聖堂からテムズ川]
 もちろん、360度の展望でロンドンの町を見渡すことができますし、南にテムズ川が流れている光景はなかなかのものでした。風も爽やかで陽射しも気にならないくらいでした。こんなにいい眺望を得た今となっては、ロンドン・アイ(単なる大型の観覧車です)なんて無粋なものを造る気持ちが理解できません。しかも、11.5£もする! [地下納骨堂のネルソン]
 ここには、地下納骨堂があり、とても全部を見ることはできませんでしたが、大きなものが有名な人のものなのでしょうが、ウェリントンやネルソンのものには学校の先生みたいな人が若者に解説をしていました。【写真右】
 この地下納骨堂の彼等にしても、先のトラファルガー広場にしても、近代の歴史に関しては、殆どが対ナポレオン戦争で活躍した人物やイギリスが勝った戦いなんですね。ナポレオンが遠征したということは、周辺地域からすれば「侵略」なわけで、その侵略を跳ね返した指揮官が今も銅像等として残っており、英仏関係というのは一筋縄ではいかないものなのでしょう。
 CITYに向い、ギルドホールを見学。中世の同業者組合で封建領主と闘う際には [ギルドホールの全景][クラフトギルドの紋章] 先進性を発揮したということで、何となくドイツがイメージされるのですが、もちろんイギリスにも存在したわけで、その名残がここに見られます。それが経済の中心であるシティに在ってもおかしくはないわけです。クラフトギルド(手工業者組合)の紋章などが壁にあり、個性的な模様が面白かったです。【写真左】 [イングランド銀行・王立証券取引所]
 そこからそう遠くないイングランド銀行の一廓に、博物館があり、目立たない入口を入ると趣向を凝らした博物館がありました。イングランド銀行の前が王立証券取引所で、よくガイドブックなんかに書かれているパリっとしたビジネスマンが闊歩している等ということはなく、むしろ二つの建物の間の小さなスクエアはのどかな印象でした。尤も一旅行者が世界経済の中枢に入って行ったらご迷惑でしょうから外からの印象に過ぎませんが。【写真右】 [タワーブリッジ]
 先に書いた美味しくない昼食の後、タワーブリッジを経て、ロンドン塔へ。タワーブリッジは跳ね橋は滅多に上がらないし、他の史跡がそれなりの色柄で保存されているのに、その一部が青のペンキで塗られていて、興醒めし、しかも、今素晴らしい眺望を体験した直後ですからタワーに上がる気にはなれず見ながら通過。
 ロンドン塔は、世界の観光地という感じで人も多かったです。3000円近い入場料をとってもこれだけ入るんですから、そのドラマティックな歴史が遺産なんでしょう。多くの国王関係者、政治家がここに幽閉され、処刑されたので、幽閉されていた部屋には落書が彫り込まれ【写真下右】、それが遺産として残っています。紙と木の文化と石の文化の違いでしょうね。でも、とことん歴史に詳しいわけでもないのでその落書を吟味する時間はありませんでした。ただ、処刑の行われた跡地は別に今何があるわけでもないのですが、人が集まっていました。【写真下中】
 行列ができていた建物は、クラウン・ジュエルズ、直訳したら王冠の宝石?の陳列のある所。国王が戴冠する時、同じ冠を引き継いでいくのかと思っていたのですが、一人ひとり違うものが作られるようで、その歴代の王冠が展示されているのです。これはヴィクトリア女王、あちらはエリザベス1世の…というわけです。そんなものに興味はないのですが、なかなか列を抜けられませんでした。

[ロンドン塔全景] [ロンドン塔幽閉の部屋から処刑場] [幽閉室の落書き]

[ボートからのビッグ・ベン][ボートからミレニアム橋とセントポール寺院]  ロンドン塔の前からリバーボートに乗り込んだのですが、これがまた人気で結構な客がありました。僕達が乗ったのは船長がガイドも兼ねる小さな船だったのですが、冗談を言ってるようで乗客は笑っているのですが、理解できず淋しい思いでした。この日は地下鉄の1日乗車券を買っていたのでそれを見せると料金は1/3ディスカウント。
 ボートはテムズ川を行き、見所を両岸に眺めながらウェストミンスター寺院・ビッグベンへ。大阪市のアクアライナーでも結構いけるんですから、川から眺める光景はなかなかのもので、あっという間の30分間でした。【写真右】


[ウェストミンスター寺院の正面]
 いよいよロンドン最終日。何を諦めるか結論を出さねばなりません。この日から国会議事堂の見学解禁。大英博物館未見。この二つがメインになります。先に触れたバスの1日乗車券の日になります。ヴィクトリア駅でチケット購入、バスマップを入手して、先ずはウェストミンスター寺院へ。王室の教会だから、戴冠式もここ、ダイアナさんの葬儀もここだったそうですが、次の予定があるのでゆっくりできず。
[下院議場の様子][議事堂のガイドさん・もちろん隠し撮りです]  国会議事堂は通年見学可ではなく、国会の夏休みに当る時期のみのようであることに気付く。10月から昨日7/23まではだめ。だからラッキーな巡り合せになった次第。しかし、ここは完全ガイド付き。25名をグループにしてガイドさんに付き従わなければなりません。写真撮影なんてもっての他という雰囲気。そして、日本で言えば東本願寺に国会があるようなもので、広い建物に一つひとつ歴史がある訳ですからガイドさんの話も長い!チョッと辟易。マア、国会議員はそういう荘重な雰囲気の中で何を感じながら出勤しているんでしょうか? [議事堂横のクロムウェルの像]
 ようやくお目当ての上院・下院の議場へ。上院の方は回りの装飾も深紅を基調にゴテゴテしているのですが、下院はテレビとかでお馴染みの緑のシートを基調にした簡素な作り。ほんとに狭い所でビックリしました。ここであの党首討論とかやってるんだ、と感慨深かったです。
 議事堂の横の銅像は何かと見れば、さすがにネルソンとかでなく、ピューリタン革命の指導者・オリバークロムウェルでしたが【写真右】、アイルランドとかを虐めていますから、サア、彼等の受け止め方はどうなんでしょう?
[イラク攻撃反対の抗議掲示]  国会前にパーラメントスクエア、国会広場?があり、そこに歴代の有名首相の銅像とか建っています。そこと議事堂との間の道路に相当長い「イラク攻撃反対」の展示がされており【写真左】、日本でもお馴染みになった虹色の旗なども立っていました。少し声をかけようと思ったんですが、スタッフは二人だけで、誰かと話し始められたし、次の目的地大英博物館へ急ぐことにしました。
 バスで移動し、大英博物館前の庭【写真@】でサンドイッチなどで昼食。入口前ではいい匂いをさせたホットドッグ屋さんもありましたが、僕達はここへ来る前にコンビニで購入済みで残念!?。いよいよイギリス訪問のメインイベント開始ですが、残された時間は2、3時間のみ。日本語の鑑賞ガイドもあるのですが、どこをどう回るのが効率的なのか、イマイチよく判りませんでした。
 ただ、エラそうに言うようですが、今まで見てきた博物館の寄せ集めみたいなところがあり、パスしてもいいところが結構ありました。エジプトはカイロの考古学博物館、アッシリアはベルリンのペルガモン博物館、ギリシャは僕達の初めての海外旅行で訪れた所、ペルーで見た遺跡、ベトナムの博物館、洛陽の博物館、…という訳で、どうも目玉がないように思えました。尤も、ロゼッタストーン【写真B】は入口付近にあり、これはここでしか見られないものでした。それと、入った所のグレイトコートは建築としてユニークでした。【写真A】

[大英博物館の外観] @[入った所のグレートコート] A[ロゼッタストーン] B[アッシリアの入口] C[ギリシャ神殿] D[双頭の大蛇] E[とぐろ巻く蛇] F[日本コーナーの茶室] G[エジプトのミイラ] H
 
 日本コーナーの展示【写真G】もあまり充実しておらず、後のエディンバラのロイヤル博物館の方が数段上、という印象でした。南米の双頭の大蛇【写真E】とか、アフリカのとぐろを巻いた蛇【写真F】とか幾つか印象深いものがありました。ミイラもカイロにはなかった迫力のあるものもありました【写真H】。
 ところで、ここにあるものは帝国主義的侵略を重ねた結果として奪ってきたものだから元へ返すべき、というような意見には賛成ですが、この程度のものなら返さなくてもいいのでは、と思いました。それだったらドイツのペルガモンの方が凄い。と言うのは、ペルガモンは元の所に殆ど残っていないんですから。ギリシャにしてもカイロにしても今はこれより豊富な内容で展示されています。
 それよりネイミングで気が付いたのですが、大英博物館なんて相変わらず大仰な名称だなと思っていたのですが、実はそれは訳語の問題だと気付きました。Great Britain(British)なんて名乗っていないのです。単なる「British Museum」なんですね。イギリスという国名を日本が勝手に付けているので、イギリス博物館というわけにも行かず、ブリティシュ博物館でいいものをGreat Britainの名残みたいな変な訳語になっているんでしょうね。
 続いて、この博物館が手狭になって図書類を移動開館したこれまた大層な大英図書館(もちろん「British Library」)にバスで移動しました。閉館の5時ギリギリで慌てましたが、ここには大憲章(マグナ・カルタ)の現物【写真下中】、グーテンベルク印刷の聖書【写真下右】とかがありますから、それだけを見た後、直ぐ追い出されました。ここも無料なのですが、外観もスッキリした建物になっていて、この金の使われ方は凄いと関心。
[大英図書館のゲート] [マグナカルタの原本] [グーテンベルクの聖書]
 
 大英図書館の直ぐ東に明日乗り込むキングスクロス駅がありますから、下見して、少し長いロンドンバスの乗車でヴィクトリア駅方面へ戻りました。結局、テムズ川の南岸には行けないままになってしまいました。夕方になると空は明るくても閉館になるので、仕方なしです。シェイクスピアのグローブ座くらいは行きたかったのですが、断念し、ロンドン見学は終了することになります。

 
エディンバラへは列車で。ブリットレイルパス使用開始 [エディンバラへ向かう車中で昼食][キングスクロス駅・乗り込む列車]
 この日からブリットレイルパスを使うことになります。8日間有効のパスですから、帰国直前までOKです。ただ、鉄道事情がこの段階ではよくわからないので、色々不安はありました。スコットランドの首都・エディンバラまで約5時間の旅です。もし座れなかったらかなりキツイ。イギリスの鉄道は座席の予約は無料。でも変に予約してもバラバラの席でも困るし…ということで、当日に賭けることに。でもやっぱり心配で、当日キングスクロス駅で予約できるか聞いたら「早朝でないと無理、今から自分で探しなさい」と言われたのですが、それもそのはず、この列車は素朴なシステムで座席の上に予約済みのカードが差してあるのです。だから今頃言ってももうカードは差込済み。始発駅ですから早くに列車はホームに入っていて、このカードのない座席に座ればいいわけです。カードのない座席もそこそこあり、しかもワンボックスOKでひと安心でした。 
[車窓風景・街並]  早朝で朝食の時間帯に間に合わなければコンチネンタルブレックファーストということで、BBがコーンフレークとかマフィンを前日に用意してくれました。それを適当に自分で食べたり、残りはお持ち帰りで、車両で食べたりでき、好都合でした。この日もエディンバラに向かう車中でいただいた次第です。【写真上右】
 イギリスは例のサッチャーの時、分割民営化で鉄道会社が何百とあると聞いて心配でしたが、そんなことは旅行する分には全く影響はなく、チケットのチェックもパスを見せればOKだし、時刻表もどの列車がどこの会社のものであるかなんて判りもしませんでした。初めて見るイギリスの田園風景や時たま現れる街並【写真左】を眺めながら次のプランを考えるのんびりした半日でした。この車両は長距離だからか、喫煙車両があり、時々お邪魔しましたが、空席がいくらもあり問題無しでした。

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