仮説の確からしさを検証する

 

 :科学は仮説を選ぶだけではない

 さきに、シンプル・イズ・ベストで選んでみた では仮説を最節約という基準に従って選びだすことを話しました。でも仮説を選んだというだけでは、まだまだ科学としては不十分です。 

 実際、こんな仮説を選びました!! で良いのならば、私達の祖先が周りを見回して、世界は平らであり、月や太陽が大地を回っている。そういう仮説を立てた時点で科学は終わっていたはずです。もしそうだったのなら、今でも地球は平らでその周りを太陽や星が回っていたでしょう。だが科学はそこで留まることはありませんでした(あるいは科学が導入されることでこういう見解は挑戦を受けることになったと言えるでしょう)。

 科学では検証という手続きが非常に重視されます。まず、左のデータを見てみましょう。これは架空動物メゲゲット6匹を捕まえて、その年令と大きさをそれぞれ示したものです。メゲゲットは1年に1つ、尻尾にわっか模様が付け加わるので年令が分かるとしましょう。体長は当然、測定すれば分かります。縦軸は大きさ、横軸は時間です。さて、こういうデータがあった場合、メゲゲットはどんな成長をすると動物であると考えたらいいでしょう?。

 例えば以下のような成長をするのだと考えることができます。

 

  

 この赤い線は6匹のメゲゲットのデータから考えたグラフですが、これはようするにデータから最節約に導き出した仮説です。もしも科学が最節約でよい、というだけの哲学だったらここで作業は終わりです。6匹のメゲゲットからメゲゲットの成長を最節約に説明するグラフが得られました、ここで作業はストップしてしまうでしょう。

 

 仮説を確かめる:

 でもここでとどまらないのが科学です。科学は選んだ仮説が妥当なのかどうか、それを果てしなく確かめる作業ですし、これが他の学問と大きく違うところです。

 ではこの仮説というかグラフが妥当なのかどうなのか?。それを確かめるにはどうすればいいのでしょう?。

 例えばメゲゲットを捕まえて、それを飼育して成長の様子を実際に見てもいいでしょうし、もっとたくさんのメゲゲットを捕まえてデータをとって確かめることもできるでしょう。もしもこのグラフが正しいのなら、他のメゲゲットを捕まえてデータをとってもおよそこのグラフに乗ってくるはずだと予想することができます。では実際にそうなるのか確かめてみましょう。

 そうしたらこうなりました。

 

 青い3つの点は新しく捕まえた3匹のメゲゲットのデータです。ほとんど最初のグラフに乗ってきますね。このことからすると、このグラフは正しいと考えてよいようです。

 このように、新しいデータが仮説を支持するのかしないのか?、それを見ることで最初の仮説の確からしさを確かめることができます。こういう作業を検証といいます。

 では検証が終わったらそれでいいのでしょうか?。いやそうではありません。仮説の検証は果てしなく続きます。例えば2000年あまり信じられてきた天動説は地動説にとって代わられました。2世紀以上のあいだ信じられてきたニュートン力学も最終的にはアインシュタインの相対性理論にとって代わられました。信じられてきた、あるいは支持されてきた年代に関わりなく、検証は続くのです。

 例えば新しく8匹のメゲゲットを捕まえたら上のようなデータがとれました。これを見ると、どうも最初のグラフは少し修正した方がよいようにも見えます。

 修正するべきか、あるいは修正する必要がないのか?。それはもっとたくさんのデータを集めたり、あるいはきめの細かい調査をすればたしかめられるでしょう。こうして科学ではえんえんと仮説を検証するという作業が続くのです。

しかし、以上でも薄々感じられることですが、グラフを描けばそれで問題ない、グラフを描けば科学であるというわけではありません。今度はそれを考えてみましょう。

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