ラベルを何に貼る?

 あなたの家で走る男:再び

 

 さて、ある日、あなたが家に帰ると奥の部屋から裸の男が髪を振り乱して走って出ていきました。おまけに家の人は皆、何も見ていないといいます。実際、男がいた形跡はなにもありませんし、皆があなたを騙す理由も思い当たりません。とりあえず家の人がウソをついていないと考えた場合、この男の正体はなんでしょうか?。

 幽霊?、幻覚?、夢?、妖怪?、宇宙人?、

男の正体がたとえ人間でないにしても、候補は無限にあるのです。

 

 とはいえ確かなことがあります。正体の候補には幽霊とか心霊と呼ばれるなにかがあるということです。

 ”裸の男が髪振り乱して”、ではあまり迫力がないというか、変な人が家に忍び込んでいたんじゃない?、で話が終わりそうですが、もしこれが誰もいない部屋に一瞬、白い姿の女性が見えた、そういう話だったらどうでしょうか。最初は家族かと思っていたら、その家族が後ろからやってきたら。そして気がつくと部屋には誰もいなかったら・・・・・・。

  多くの人は「幽霊だ!!」と言うのではないでしょうか。でもちょっと待って下さい、心霊とか幽霊ってなんでしょう?。

  名前や呼び名というものは、人間が認識している”何か”を指し示す言葉のはずです。では、幽霊や心霊とは何を指し示しているのでしょうか。それに、何をもって”これは幽霊あるいは心霊である!!”と断言しているのでしょう?。

 

 ちょっと例え話で整理しましょう。私たちは言葉というラベルを持っています。このラベルは名詞であったり形容詞であったりしますが、私たちはこれを色々なものに貼りつけています。

 私たちはある性質を示す気体を水素と呼んでいます。これを”ある気体に水素というラベルを貼っている”と考えてください。同じように私たちは、ある種の樹木に実った果実に”リンゴ”というラベルを貼りつけています(ようするにリンゴと呼んでいるのです)。

 またある種の動物に”犬”というラベルを貼りつけます。またある動作で動く犬に、”速く走っている”というラベルをさらに貼ったりもします。

 私たちは色々なラベルを持っていて、ものによってラベルを貼りわけたり、もっとたくさんのラベルをはったりしているのです。

 ところでラベルを貼りつける、つけないの基準はなんでしょうか。私たちはラベルを貼りつける時に”このラベルを貼るもの、貼らないもの”と区別しているはずです。つまり私たちは”カテゴリー”とか”グループ”とか”クラス”、”類”、”ジャンル”といったものを認識してラベル貼りを行なっているのです。

 

 では私たちは”心霊”とか”幽霊”というラベルをいかなるジャンルのいかなる物に貼りつけているのでしょうか。そしてその貼りつけの定義とはなんなのでしょう?。

 

 私たちは何にラベルを貼りつけているのだろう?

 

 例えば、水素についてならラベル貼りの基準は明白です。気体の性質は正確に計ることができるし、個人による誤差はあっても、基本的にほとんどすべての人が計測できるでしょう。水素というラベル貼りは簡単な作業です。言い換えれば”水素ラベル”は定義もはっきりしているし、カテゴリーとしても明瞭なのです(比較的)。

 犬についてはどうでしょうか。”犬ラベル”の貼りつけの基準とはなんでしょうか。実は私たちは動物のある系統にたいして犬というラベルをはっているのです。動物の系統は形態や遺伝子から推測することができます。とはいえ、どこまでの系統に犬というラベルを貼るのか、それにはすこしあいまいな部分が残ります。言い換えれば”犬ラベル”は定義はおおむねはっきりしているものの、カテゴリーとしては不明瞭な部分が残ります。

 

 では心霊はどうでしょうか?。どうも心霊や幽霊と私たちが呼んでいるものは、時や場所や人によって見えたり見えなかったりするようです。

 私たちが心霊ラベルを貼る相手はなんでしょうか?。そしてこのラベルを貼る基準はなんでしょうか?。そして心霊はカテゴリーとして明瞭なのでしょうか、不明瞭なのでしょうか?。

 

 ちょっと具体的な物を例にして考えてみましょう。

 さて次ぎの写真を見て下さい。この写真はハンドルネーム、蒼井騎士さんが撮影した飼い猫ミミちゃんの写真です。写真の中でミミちゃんは洗面所でお水を飲んでいます。写真はミミちゃんの後ろから撮影されましたが、ミミちゃんのおしりを見て下さい。

 

モデル:ミミちゃん(飼い猫)

 撮影:蒼井騎士さん 心霊写真鑑定(冗談):ムラさん(小説家)

 蒼井騎士さんが飼い猫ミミちゃんを撮影したところ、なんとミミちゃんのおしりに苦悶する老人のような顔が!!。これを見た、にわか霊能力者のムラさんが言うには、

 ”これは水を飲めずに亡くなった老人の霊です。ネコちゃんがあまりにおいしそうに水を飲んでいたので、うらやましくて現れたのでしょう。心配はいりません。悪い波動は感じません。”

 と鑑定してくれました(無論、あくまでジョークです^^)。実際のところは、ミミちゃんのお尻にできた影です(多分)。

小説家、ムラさんと蒼井騎士さんには感謝(^^)/。

 

 恐ろしや、ミミちゃんのおしりに”くっきりと”老人の顔らしきものが浮かんでいるではありませんか!!。これは心霊でしょうか?、それとも他の何かでしょうか?。

 

 実際のところ、これはミミちゃんのおしりに出来た影なのですが、見た目はまさにいわゆる心霊写真です。いや、むしろまれにみる”恐ろしい〜〜”写真です。ところが!!。でたところが悪いせいか、この写真をみてビビる人はほとんどいないようです(というより皆無)。

 なぜなのでしょうか?。心霊はネコのお尻に出てはいけないのでしょうか。どうもそうらしいです。ではなぜお尻にでてはいけないのでしょう。言い換えれば、この写真に私たちは心霊ラベルをはるべきか、否か、いずれなのでしょうか?。

 さらにいえば、霊能力者に鑑定してもらえば、それが判断できるのでしょうか。世の中の人はなにやら怪し気な写真を撮ってしまうと、それを心霊と考えて、霊能力者のところに持ち込んだり、鑑定してもらったりしてもらうようです。ですが、そもそも霊能力者の能力は正しいのでしょうか?。どうすれば彼らの能力が確認できるのでしょうか?。

 

 まず、世間一般で考えられていることから察すると、霊能力者は怪し気な写真が心霊写真か否か、それを教えてくれるようです。ところでその心霊写真に実際に心霊が写っているのか、それを確かめるにはどうすればよいのでしょうか?。そう、霊能力者に見てもらえばよいのです。 

 では霊能力者の能力の正しさをどう確かめたらよいのでしょうか。簡単です。”心霊現象”を記録したもの、心霊写真(ミミちゃんの写真)などを見せて確認すればよいのです。それを見て心霊であると言ったらその霊能力者の能力は正しいと言えるでしょう・・・・・。あれ?、話がおかしくないでしょうか。

 

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