萌え学 深海3000フィートの生物たち
2011年4月28日発売
PHP研究所
1400円 萌えイラスト
Koi あぷぷ いちこ 伊藤いづも うすら氷 093
かつらぎにや 九頭龍剣之介 黒法師げぼぼ こそり
佐々未とりの 蒼次郎 高岡まなる 燵成 ときのぶっと
朝永公 トリル $ 中村べーた 波澤 nigo ニム
845 はなぉ ひゆ 古川れもん もっさり優
やっか 雪詩さひろ Iouis&Visee
以上の皆さん(敬称略)
北村は本文テキスト/説明図/生物の線画を担当
pp48~49の補正に関して:2012.10.07追記
48〜49ページ、ヒゲナガダコの紹介で、学名を間違って表記していました。正しくはキロサウマ・マレーイ(C irrothauma murrayi )です。これに従い、48ページ下段のトリビアと、49ページ下の固有の能力と特徴の部分に補正が必要になります。補正は以下の通り
48ページ、Triviaの全文を次のように補正
属名のキロサウマ( Cirrothauma )を直訳すると”驚くべき巻き毛”。意訳すると”驚くべき有触毛類”。種名の murrayi は人名のマレー(Murray)に由来するらしく、マレーイと呼ぶのがおそらく妥当。
49ページ、固有の能力と特徴 三行目 を以下のように補正
...良く似ているキロテウティス・ミューレリ( Cirroteuthis mulleri )がいるので注意。
また、以上の補正を示したカードも作成しました。画像をクリックするともっと大きな画像を見ることが出来ます。大きな画像を「用紙(A4)に合わせる」という条件で普通に印刷すると、カードの部分が元データの寸法(110mm×160mm)とおよそ同じになります。
概要:
深海生物を萌えイラスト、擬人化娘で紹介するという企画。ただ、元の生物を読者が知らないのでは何がどう擬人化されたのかがそもそも分からないので、生物の線画も入れ込むことが2010年の終わりあたりに決定。見開きで左ページが擬人化娘、右ページが北村による線画とテキストという構成になりました。
また、今回の仕事は見ての通り萌え本。ゆえに北村の仕事はむしろおまけです。もちろん”おまけ”だからといってテキストの手を抜いているわけではありません。ただし初心者向けなので内容は網羅的かつ基礎的。その一方、トリビアでは学名の由来や研究者などにすこし触れています。
*余談:テキスト、トリビア、共に2010年の3月には制作完了。とはいえ、シリーズものということもあって順番待ちをしている間に、実作業上では後発のこっちの本が2010年の夏に販売されるということに。だからね、あれなんだ、フジツボの学名の由来を知らないとかラテン語の辞書を引いていないなんてことはあり得ないんだよお嬢ちゃん。本を書く時には文字数の制限とか、表現の規制とか、論文とは違う配慮が必要だということ、予測できないのかい?
形と姿に関して:
本書にも一応、深海生物の線画があります。しかし深海生物のフォルムをもっと詳しく知りたいという人は例えば
「日本産 魚類検索図鑑」東海大学出版会
「日本産魚類大図鑑」東海大学出版会
「潜水調査船が観た深海生物」東海大学出版会
[Fishes of the Gulf of Mexico] University of Texas Press
などを参考のこと。あるいは学名でググればそれなりに画像がヒットします。Youtubeで画像を見れる生物もいます。ただし、そうした画像の多くは不鮮明です。これは水が光を吸収するため。ネットで見る美しい写真を、現場で撮影された生態写真と勘違いされている人もいますが、そうしたものの多くは採集後、船上の水槽で撮影されたものです。標本写真や図解もありますが、それらは側面から見たものが大部分であり、三次元の形が今ひとつはっきりしません。さらに、深海生物は採集されたら生きていても体が破損したり、色が変わったりします。画像や標本の色や形が、自然本来の姿や色であるとは限りません(例えば本書の149ページ参照)。現場で撮影された動画の場合、形態はかなり正確ですが、先に述べた理由で多くは不鮮明になりますし、水と照明のせいで色が変わって見えることもしばしばです。深海生物の形や色にはかなりな程度、推論が入っていること、形の把握、それ自体が事実というよりむしろ仮説であることを念頭に入れておくべきでしょう。
トリビアと学名に関して:
見開きで左ページ、擬人化萌え娘の下に、小さくトリビアのコーナーがあります。トリビアの大部分は学名に関することです。学名はラテン語、あるいはラテン語化されたギリシャ語が用いられます(上記以外の言語に由来する学名もあります)。ラテン語はかつてヨーロッパの国際語としての役割を果たしていました、ラテン語のアルファベットは英語のアルファベットと共通です。一方、ギリシャ語はラテン語(ひいては英語)と少し異なるアルファベットを使っています。
ですから、ギリシャ語に由来する学名は、アルファベットをギリシャ語のものからラテン語のものに書き換えたものです。ギリシャ語とラテン語(ひいては英語)表記の対応は以下のようになります。
以上の対応表におけるカタカナは読み方です。また、Aα、というのはギリシャ文字の大文字と小文字。矢印の先にあるのが対応するラテン語/英語のアルファベットです。ちなみにギリシャ語のシグマには大文字のΣと小文字のσがありますが、もうひとつ、Sに似た形のものがあります。これはシグマが単語の最後にきた時にとる形なのですが、この表記、パソコン上ではしばしば文字化けします。ですから以上の対応表はjpg画像で示しました。
見ての通り、1つの文字に対して複数の書き換えがある場合があります。例えばカッパは大抵はcに書き換えられますが、kの場合もあります。ウプシロンはyと書き換えられることが多いですが、uに書き換えられることもあります。
例えばフクロウナギの属名Eurypharynxはちょっと面食らう例でしょう。
同じ語の中で1つのウプシロンはuに、別のウプシロンはyに書き換えられています。こういった例があるので、半ばメモ的な意味も込めてトリビアでギリシャ語をそのまま使っている箇所もあります(同書114ページ参考)。あるいは当初はギリシャ語のアルファベットと英語のアルファベットを並記していたのだけれども、文字数の都合で片方を削った場合もあります。
そういうわけで本書のトリビアではギリシャ語をギリシャ文字で表記している場合と、ラテン文字(ひいては英語のアルファベット)で表記している、両方の場合があります。統一感がありませんが、まあこれはしょうがないということで。
ちなみにギリシャ語の単語を複数組み合わせて学名を作る場合、名詞+名詞であれば、単語の語幹にoをつけて間をつなげます。ようするに語幹-o-語幹で複合語を作ります。本文88〜9でも説明しているように、ギガンテース+キプリスがギガンテースキプリスにならず、ギガントキプリスになるのはこのためです。
*語幹:ギリシャ語、ラテン語、英語などでは、名詞は複数形、単数形、あるいは所有格などのような格の違いで語尾が変わりますが、変わらない部分もあります。語幹、というのはその部分を指す言葉(らしい)。
*複合語を作るには-o-でつなぐと書きましたが、以上のEurypharynxはそうなっていませんね。eurys+pharynx が euryopharynxにならないのは、eurysが形容詞で、なおかつ語幹がyで終わるからのようです。こういう場合、大抵はoなしで結ばれるのだそうな。例:oxy-gen。参考:「ラテン語小文典 附 ギリシャ語要約およびラテン・ギリシャ造語法」岩波書店 1957
参考文献:工事中
160〜1ページの塩分濃度などは[chemical oceanography and the marine carbon cycle] CAMBRIGE 2008をまんま参考にしました。海洋の大循環や各海域の塩分濃度、比重を知りたい方は参考にしてみてください。