ふしぎな深海魚
海の底までもぐってみよう
2012年10月発売
汐文社
2300円+税 本文執筆・イラスト:北村雄一
概要:
児童向けの本を多く作っている汐文社さんから出した三冊シリーズの絵本第一巻。
本を開いた時のサイズ、つまり見開きがB4。35ページで2300円という結構なお値段です。三冊シリーズすべてを買うと税込みで7000円を越えます。
もちろん一つのページが新書の3.5倍近くあること、絵本なので良い紙を使っていることを考えれば、まあ順当な値段だとも言えます。とはいえ、写真ではなくイラストであること、イラストが黒地のボードにパステルと色鉛筆で描いたこともあって、人によっては好みが分かれるところでしょう。
また、本の値段と大きさから察しがつく人もいるかと思いますが、このシリーズはどちらかというと図書館に入れることで、想像力を子供に与え、自然の不思議を広く読んで感じてもらうことを前提としたものです。
それゆえ、”深海魚の写真がたくさん載っているに違いない!”、とか、”最新情報がたくさん載っているに違いない!”、とか考えた個人が購入することは、どっちかというと想定していません。そういうわけで、個人で購入する場合には書店や図書館であらかじめ眼を通しておく方が良いでしょう。
*ちなみにリンク先のアマゾンにある書評ではパステル画は深海にむかない、コウモリダコがテディベアのようだ、がっかりした、というものがありますが、一応書いておくとこの本にコウモリダコは登場しません。多分、この人は軟骨性の突起で体を覆っているサメハダホウズキイカをコウモリダコと勘違いしているんでしょう。
なお、黒地のボードにパステルで描くというのは自分を含め、初めての試みでした。そのため三冊シリーズの中で一番発色が良いのは実は三冊目、「世界で一番深い海」、です。
登場する生物と本の構成
三冊シリーズの第一作なので深海の基本的な事柄を扱っています。
ススキハダカ、マグナピンナ・パシフィカ(子供)、チョウチンハダカ(子供)、ミツマタヤリウオ(子供)を皮切りに
ホシホウネンエソ、テンガンムネエソ、デメエソダマシで光を使ったカモフラージュを
クラゲイカ、マダラヤリエソ、 ナガムネエソで光迷彩の破壊を
ホウライエソ、ワニトカゲギスオニハダカ、ハゲクロハダカ、サメハダホウズキイカで深海生物の狩りを
デメニギスとクロデメニギスの生態を
ミツマタヤリウオ、ホテイエソ、オニアンコウ、チョウチンアンコウ、ペリカンアンコウでワニトカゲギス類とチョウチンアンコウ類の性戦略と発光器の様子を
ホソミクジラウオ、エウリセネス・グリルス、ハナビラクジラウオ、オオクチホシエソ、クレナイホシエソで赤い光を戦略に使う生物群を
フクロウナギ、そして大洋底に着底したチョウチンハダカの成体とマグナピンナ・パシフィカの成体で締めくくります。
以上、各テーマごとに分かれたページを、浅い水深で成長したチョウチンハダカたちが成長するにつれて深海へ移動するという鉛直移動を軸にすることで本を構成しています。末尾に各生物の解説があります。