VY Canis Majoris

おおいぬ座VY星

おおいぬ座の変光星

光度8.8~9.3等 周期 不規則

 

2019年11月17日 3:30のおおいぬ座VY星

 画面を左から右まで連なっている円は37・5倍の視野を示し、左の明るい黄色の星がおおいぬ座δ星ウェズン。おおいぬ座は冬の天の川の中にあります。天の川は星が多く、赤い超巨星もよく見ます。このスケッチでも赤い星がいくつか見えていますが、そうした赤い星のうち、右端にある一番暗い赤い星がおおいぬ座VY星

 画面右上にあるやや大きな円は75倍の視野を示します。中央やや左の赤い星がVY星。画面でリを割り当てている星はチャートによると8.4等。VY星はそれよりやや暗かったので、おそらく8.6等ぐらい。

 

 おおいぬ座VY星は既知宇宙の中でも最大級の星で、Monnier et al 2004, [High-resolution imaging of dast shells using Keck aperture masking and the IOTA Interferometer] では距離は1500パーセク(4890≒5000光年)、半径はR=14AU、とされています。14AUとは14天文単位。1AU=1天文単位は1億5000万キロ。太陽の直径は140万キロですから、1AUはざっくりいって太陽の直径の100倍(より正確には107倍)。すると半径14天文単位とはざっくりいうと太陽の半径の2800倍、もう少し正確に計算するとほぼ3000倍となります。

 目で見える最大級の星ベテルギウスの大きさは太陽の1000倍。以上の推定値を採用した場合、おおいぬ座VY星はベテルギウスの3倍の大きさを誇る途方もない超巨星ということになるでしょう。その半径14天文単位とは、これは土星軌道の9・6天文単位より大きく、天王星の20天文単位よりも小さい。おおいぬ座VY星は土星軌道と天王星軌道の中間に届く巨体であることを示しています。

 一方、星の距離と大きさの推定値には計測誤差もあれば、仮定も前提もある。前提や数値が変われば当然数値も変わります。事実、VY星の大きさの推論値は太陽の600倍というものもあれば、以上に書いたように3000倍というものもあります。600倍と3000倍。とんでもない誤差に思えますが、このぐらいの誤差は科学の世界ではありがちですし、見当外れでもありません。本当に見当外れなことをしていたら100倍とか1000倍、文字通り桁外れなずれが出てきます。600と3000の間を取れば1800倍。おおいぬ座VY星の大きさは太陽の1800倍(ざっくり言えば2000倍)と考えても良いでしょう。

 さて、仮定や前提だけではありません。新しい計測で数値が変わることもあります。例えば距離。最近の研究はVY星までの距離を1170パーセク(3800光年)、あるいは1140パーセク(3700光年)と見積もっています。星の大きさ推定は距離にも影響を受けます。距離が変わった以上、VY星の大きさも当然変わる。2012年に出されたのは、大きさ太陽の1420倍という推定値です。 Wittkowski et al 2012, [Fundamental properties and atmospheric structure of the red supergiant VY Canis Majoris based on VLTI/AMBER spectro-interferometry]

 大きさ1420倍。先ほど600倍と3000倍の平均なら1800倍と言いました。1800ぐらいが1420倍に変わったわけで、結果的にさほど大きな変更があったわけではありません。少なくとも桁が変わったとか、そういうことは起こっていない。つまりこのあたりがやはり正しい数値だと考えて良さそうです。さて、この新しい見積もりで考えた場合、まず1天文単位は太陽のおよそ100倍(107倍)なので、大きさ1420倍とはおよそ14天文単位。この数字は直径ですから半径に直すと7天文単位。この推論値の場合、おおいぬ座VY星は木星軌道5・2天文単位を越え、土星軌道9・6天文単位までの中ほどに届く巨体ということになります。

 現状では、おおいぬ座VY星はベテルギウスを越える巨星であり、木星軌道よりも大きいこと。太陽の1400倍の大きさを持ち、距離はおよそ4000光年と覚えておけば良いでしょう。

 

 おおいぬ座VY星は変光星でもあります。[BURNHAN'S CELESTIAL HANDBOOK]によると変光幅は8・8〜9・3等。AAVSOでは6・5〜9・6等。周期は不規則で具体的な数字は出ていません。

 

 

参考:

[BURNHAN'S CELESTIAL HANDBOOK]

[Guidebook to the Cnstellations] Phil Simpson Springer

 

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