Betelgeuse

ベテルギウス

オリオン座のα星で変光星

光度0〜1・3等 周期2120日

 

2019年11月13日 0:45のベテルギウス

 手持ちの小型デジカメで撮影したベテルギウス。左隣のやや明るい星はオリオン座のμ(ミュー)星。左やや斜め上が北。ベテルギウスはオリオン座を特徴付ける鼓型の星並び、その左上を作る赤い星です。ベテルギウスはオリオン座のα星であり、肉眼で見える星の中では最大級の大きさを誇る星でもあります。ベテルギウスまでの距離は600光年。その大きさは太陽のおよそ1000倍。太陽系でいうと木星軌道に匹敵する巨大さです。あまりに大きいので、遠く離れた地球から見てもベテルギウスはその大きさがわかります...

 ...と書きましたが、星までの距離を測り、その大きさを測定することは想像以上に難しいことです。ベテルギウスはかなり詳しいことがわかっている星ですが、それでも距離と大きさには不明瞭な部分があります。星までの距離を測るには例えば三角法を用います。地球は太陽を回っている。つまり1年の間に軌道の直径分を動く。このため地球上にいる私たちは季節によって異なる場所からを星を見ることになります。ですから星はほんのわずかですが、季節によって位置がずれて見えます。右目と左目で見ると、近くのものが遠くの背景に対してわずかだけ位置がずれて見えるでしょう。これと同じ原理ですね。そしてこのずれの大きさは距離に比例します。だからずれを測定すれば星までの距離が分かる。ちなみにこの時に使われるが三角関数であり、三角法です。

 しかし星までの距離はあまりに大きい。地球軌道の半径1億5000万キロという距離をもってしても、ベテルギウスの位置ずれはほんのわずか、角度にして1度の3600分の1のさらに1000分の6程度にしかなりません。しかもベテルギウスは地球から見てもその大きさが分かるほど巨大な星です。その見かけの大きさは角度にして1度の3600分の1のさらに100分の5。比べれば分かりますが、位置ずれは星の見かけの直径よりも小さいわけですね。これでは、位置ずれの測定がいかにも厳しい。誤差も出るし、観測によって異なる数値が出てくるでしょう。実際、以上述べた数字も[BURNHAM'S CELESTICAL HANDBOOK] 1958-1979 に載っていたもので、文献によっては2倍ぐらい違う数字が出てきます。

 [BURNHAM'S CELESTICAL HANDBOOK] 1958-1979 は文献としては古いものでしょう。しかし21世紀の今になってもベテルギウスの数値には誤差や異なる数値が与えられ続けています。ですから目安となる古典として引用しましょう。ベテルギウスまでの距離は520光年。直径は最大で太陽の920倍です。

 さて、1989年に打ち上げられたヒッパルコス衛星は三角法を用いて星までの距離を求めるものでした。ヒッパルコス衛星の測定によるとベテルギウスまでの距離は157パーセク(512光年)、あるいは190パーセク(620光年)です。衛星を使っても誤差は当然生じますし、測定値も測定によって異なっています(もっと違う数字が出ている場合もある)。それでもベテルギウスまでの距離は以前よりもやや遠くなって600光年ぐらい。その大きさは太陽の1000倍ぐらい。木星軌道に匹敵する超巨星である。こう考えればおおむね正しい理解と言えます。

 

 2019年11月13日2:45のベテルギウスとその周辺の星 右側が明るいのはおうし座とおひつじ座の境界線に満月があるから

 ベテルギウスはわずかに光度が変わる変光星で、その周期は2120日、およそ5年と10ヶ月。しかしながら周期はやや不規則です(言い換えるとあまり厳密に周期を覚える必要はありません)。明るい時は0等。暗い時は1等を切って、1・3等ぐらいまで光度が落ちます。周辺の星と比べると、光度が上がった時はこいぬ座のプロキオンよりも明るくなり、光度が落ちるとふたご座のポルックスよりも暗くなるということです。2019年11月13日の時点ではアルデバランよりもやや明るく、プロキオンよりも暗く、光度はおよそ0・6等でした。

 

 以下は2019・12・30 ほぼ極小のベテルギウス

 2019年12月30日 0:35のベテルギウス。どうもここしばらく星座を見るとなんとなくベテルギウスが暗い感じ。12月の前半でポルックスと同じぐらい。しかし、前回の観察から1ヶ月程度しかたっていないのでそんなに速く暗くなるのか? と怪訝に思っていたけども、やっぱり暗い。アルデバランよりはっきりと暗く、ポルックスと同じだが、やや暗い。ほとんど同じだがやや暗いとは、多分、0・2〜3等ぐらい光度が低いということ。つまりベテルギウスの光度は1・3等ぐらい。変光幅から考えるとほぼ極小になっているようです。

 

 2020・01・07 さて、以上見たように2019年11月13日のベテルギウスの光度は0・6等。12月30日には1・3等。47日間の間に0・7等、光度を下げました。実際には、12月30日の一週間前から10日前には1・3等程度に下がっていたので、40日で0・7等下がったと言って良いでしょう。ちなみに同じ時期にくじら座の変光星ミラは11月5日の2・8等から11月24日の3・5等まで光度を下げています。つまりミラはベテルギウスの半分、20日で0・7等の減光です。2019年のミラ=>

 ミラの大きさは太陽の400倍ほど、ベテルギウスの大きさは太陽の1000倍。ミラの2倍の大きさを持つベテルギウスがミラの2倍の時間をかけて同じ程度の減光をする。数字だけ見るとよくできた話ですが、太陽の1000倍の星がわずか1ヶ月でこれだけの光度変化を引き起こす。説明するのは物理的に大変なことでしょう。このように今回のベテルギウスの減光は奇妙に急激なので、2019年の年末は”これはベテルギウスが超新星爆発を起こす前触れではないか?”と話題になりました。

 実際のところベテルギウスの長い一生の終わりに、私たちがたまたま居合わせて超新星爆発を目撃する。その確率はずいぶん低いものです。そもそも超新星爆発の直前に星が減光するという理屈もよくわからない(適当に言うと、ネオンフラッシュで星が膨張、温度低下するとか、そういうことなんですかね?)。

 このように超新星爆発の兆候という解釈はない。とはいえ、急な減光を説明する必要があるのは事実です。ミラの場合、その顕著な減光は膨張による温度低下で酸化チタンが形成。この酸化チタンに光が吸収されることで説明されています。ベテルギウスの今回の減光もそういうものでしょうか? 今のところ、これを含めていくつかの可能性が指摘されていますが、証拠に基づいた説明はまだされていません。

 ちなみにベテルギウスの光度は12月30日の少し前から1月6日に至るまで同じままに見えるので、減光は現状、底を打っているように思えます。

 

 2020年1月12日 9:05 ベテルギウスはγ星ベラトリックス(1・64等)よりはっきりと明るく、ポルックス(1・16等)と同じぐらいかやや暗いぐらい(画像はなし)。ベテルギウスの光度は多分、1・3等。時々、ポルックスより明るく見えたので、もしかしたらもう少し光度が高いかも。減光が底を打ったのみならず、感覚的にはむしろ増光に転じたように見えます。しかし正午月齢16・9の明るい月がふたご座の近くにあったのでポルックスが暗く見えたのかもしれません。反対に天頂近くにあるポルックスに比べてベテルギウスの高さが低いので、ベテルギウスが実際より暗く見えたのかもしれない。要観察継続

 

 2020年1月16日、眠気が激しく少し横になり暗闇の中で起きた8:35 見てみると夜空はほぼ快晴で、上り途中のオリオン座は東の空に斜めにかしがり、ベテルギウスとポルックスは同じ高さ。月は下弦の月で、この時間はまだ見えていません。空の透明度も比較的良好。この状態だとポルックスとの明るさ比較がより正確にできるのでは? そう考えて観察すると

 ポルックス≧ベテルギウス≧おうし座β星≧ベラトリックス

 ポルックス(1・16)とおうし座β(1・65)の間なので、ベテルギウスは1・4等。誤差を踏まえればやはり光度は先日と同様、1・3等程度で変わりないようです。ところで、おうし座β星は光度が1・65 オリオン座のベラトリックスは1・64。両者はほぼ同じ明るさのはずですが、おうし座β≧ベラトリックに見えたのは何ゆえか? おうし座βの方が天頂近くにあったので、より明るく見えたということでしょうか?

 その後、お茶を飲みに出かけて、帰りの23:00、店を出て夜空を見ると、ベテルギウス≒ベラトリック に見える。あれ? ベテルギウスが突然暗くなった?? しかし目が慣れてくるとやはりポルックス≧ベテルギウス≧おうし座β(ただしおうし座β≒ベラトリックス)だったので、ベテルギウスの光度は1・3で良いらしい。暗闇に目が慣れると赤さの感度が上がるとか、そういうことがあるのかもしれません。

 

 2020年1月21日 21:30、寝起きの暗闇になれた目で見たベテルギウスは

 ポルックス 2 > V > 1 ベラトリックス

 つまり1・5等。先日よりもやや暗い。あるいはポルックスの方がはっきりと明るい。しかし、一週間もしないうちにそんなに光度が変化するとは考えにくいので、これはむしろ、目で見た時の感じ方の誤差かもしれない。

 

 2020年2月1日 21:00のベテルギウスは

 ポルックス 2~3 > V > 1 ベラトリックス

 ベテルギウスの光度は1・5等。下げ止まったと思ったらまた少しだけ暗くなっている感じ。

 

 

参考:

[Observing Variable Stars ] David H.Levy

[Burnham's Celestical Handbook] Robert Burnham,JR

[Guidebook to the Constellations]

 

 

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