V3890 Sagittarii

いて座の反復新星 V3890

2019年9月2日 20:30のいて座V3890

 右の小さな連なった円は37・5倍の視野を示し、上の明るい星はいて座λ星。V3890は一番下の視野に暗く見えています。左の大きな円は75倍の視野を示し、中央にある星は6等後半ぐらいの星らしい。中央からやや右下にある三星の角のものがV3890 おそらく光度は中央の星より3等ぐらい低い感じ。

いて座V3890は反復新星(recurrent nova)。文字通り訳すと回帰新星とも呼ばれる部類の星です。新星とは、それまで星が見えなかった場所に星が輝くことを言います。このためノヴァ(nova)、ラテン語で新しいを意味する呼び名がつきました。だから日本語では新星。しかし、実際には新しい星が生まれたわけではなく、暗くてそれまで見えなかった星が、大増光して輝き、目に付くようになる現象です。原理は高密度の天体である白色矮星に、お供の星からガスが流れ込むことで引き起こされます。ここは矮新星と同じですが、矮新星はガスが落下して高温となり輝く現象。一方、新星は堆積したガスが核融合を起こして着火、爆発することで引き起こされます。

 新星が輝くにはガスが核融合を起こすほど堆積する必要があります。このため着火するのに時間がかかる。通常なら数千年とか数万年。しかし中には比較的短期間で十分なガスが堆積し、着火するものがある。そういう星は10年、数十年程度の間隔で着火、増光するので反復新星と呼ばれるようになりました。いて座V3890は1962年、1990年に輝いたので、周期およそ28年の反復新星とみなされた星です。そして2019年8月27日、29年ぶりに増光が確認されるに至ります。

 2019年8月後半から列島上空には秋雨前線がかかり、天気は良くありません。V3890増光のニュースを聞いたものの、ずっと悪天候。流れる雲の切れ間からようやく見れたのは9月2日でした。V3890の位置はいて座λ星の近く。発見時の8月27日には6・7等の明るさがあったそうですが、9月2日の観測時には9等後半から10等台にまで減光しています。あと肉眼ではわずかに赤っぽく見えました。

 

2019年9月6日 19:45のいて座v3890

 9月6日 17:45 いて座V3890からいて座の球状星団M22までのスケッチ。台風13号レンレンが九州西の海上を北上中で、秋雨前線が日本海にまであがった天気。南の空気が入ったせいか気温は夜になっても30度あまり。空はほぼ快晴だけども半月がさそり座にあって明るく、星は見にくい。とはいえ観察は可能。V3890は2日に比べると多分、1・3等ぐらい暗くなっている(昨晩5日に比べると0・5等か0・3等ぐらい減光)。中央の明るい星は24番星。右側がM22。連なった円は75倍の視野を示します。

 

2019年9月9日のV3890

 9月2日のスケッチに、9日のスケッチを付け加えたもの。画面一番上の大きな円は150倍の視野を示し、中央にあるのが9日のV3890。2日の時点では右隣と直下の星より明るかったのに、9日になった今、それらよりすっかり暗くなっています。画面右の連なった円は37・5倍の視野を示し、2日のV3890。画面左下の円は70倍の視野で見た2日のV3890の様子を示します。

 V3890は9日の時点で、2日の明るさより光度を1・6等ほど落としました。15日にはさらに0・6等ほど光度を落として、ほぼ見えない状態に。ここで観測終了

 

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