Comet 2019 Y4 (ATLAS )

アトラス彗星

 2019年の12月28日にATLASによって発見された彗星です。発見者であるATLASとは人名ではなく、Asteroid terrestrial-impact Last Alert System の略。まま訳すと地球激突小惑星早期警報システム。これは地球に接近衝突、被害を及ぼしうる小惑星を発見するためのものです。数百とか数十メートルの天体は、地球に衝突すれば核兵器並みの威力を持ち、都市を消滅させるだけの破壊力を発揮する一方、小さく暗い。このため危険度の割にはそう簡単に見つかりません。そうした危険で暗い天体を見つけることに特化した望遠鏡と発見の仕組み、それがATLASです。つまり、ATLASの目的はパンスターズ彗星を見つけたパンスターズと同じ、場所も同じくハワイです。ただしATLASはNASAによって運営されています。

 Comet2019 Y4 (アトラス彗星)は発見時の明るさは19等でしたが、急激に明るくなって現在は11等級よりも上。しかも5月31日の近日点では太陽から0.25天文単位にまで近づきます。これは地球軌道の4分の1で、彗星軌道よりもさらに内側。太陽に近づいて彗星の氷が盛んに蒸発すれば大きく尾を引くでしょう。ひさしぶりの明るい彗星になると期待されています。ちなみにこのアトラス彗星。1844年に現れた大彗星( C/1844 Y1 )とよく似た軌道を描いているので、1844年の彗星から別れた破片と考えられています。

 

 2020年3月17日 0:28の2019 Y4彗星。スケッチ左の大きな円は75倍の視野を示し、右はファインダーの視野(多分10倍ぐらい)。ファインダーの視野右下にある明るい星はおおぐま座23番星。23番星はおおぐま座のひしゃの上の角、その前にある、おおぐまの後頭部を形作る星です。この23番星から左上、方位で言うと北東にいったところこにある四つの微星。そのひとつが75倍視野の右下の明るい星(ア)となります。

 自分が今いる場所は人口35万の地方都市の住宅街。街明かりはそこそこ強く、空は決して良い状態ではありません。彗星は予報の位置を注意深く観察すると見える程度。ネットでは10等級という判定ですが、自分にはもっと暗く感じました。近くには系外銀河がいくつかありますが、そのひとつNGC3077よりも暗く、NGC2976と同じくらい。ただし、NGC3077は手持ちの資料では11等級、NGC2976は10・8等級です(つまり3077の方が暗い)。銀河の明るさは銀河の集中度とか光の粗密で見え方がずいぶん変わります。そのこともあって銀河を用いた光度の比較は、単純にはできません。とはいえ、現状、2019 Y4彗星が10等級後半の明るさであるとは言えそうです。

 

 

 2020年3月20日 0:35の2019 Y4彗星。スケッチの大きな円は75倍の視野。右上のやや明るい星(イ:8等級ぐらい?)の近くにぼんやりと彗星が見えています。ネットでは2019 Y4の明るさは8等級という測光結果が流れていますが、自分が眼視で見る限り、明るさはNGC2976よりやや明るいぐらい。10等級の後半です。機械による測光や人間の目では色々と感じ方に違いがあるということでしょう。大きな円左下の二重星にはハを割り当てていますが、この星は画面右下の円(ファインダーで見た視野)にある二等辺三角に並んだ星のひとつです。ファインダー視野の一番明るい星はおおぐま座23番星(23 UMa)

 そして画面左上の小さな円は1:20における彗星の位置。0:35における周辺の微星だけを取り出して、相対的な位置変化を示したもの。彗星は画面右上、方位でいうとほぼ西、やや北よりに動いています。

 天候は19日昼は快晴。夕方から曇り。夜中に出てみたら快晴。観測が終わる1:30には雲が出て、2:00には雨。急な変化だけども二つの前線が隣接しながら列島を通過しており、観測できたのはちょうど二つの前線の間の晴れ間だった模様。

 

 

 2020年4月3日 2:32の2019 Y4彗星。スケッチ左の大きな円は75倍の視野。視野左上の明るい星が、右の連なった円の左上にあるやや暗い星。この連なった円は35・5倍の視野。この視野の左下にある斜めに並んだ明るい二つの星が、画面中央下、ファインダー視野の中心にある二つの星。ちなみにこのファインダー視野の上にあるやや明るい星(6等級)は近くに系外銀河NGC2366があります。NGC2366は光度が12・6等で、見ることはできませんした。しかし、星の指定をするには便利でしょう。星の座標自体は赤経がおよそ7時間30分、赤緯がおよそ68度で、星座はきりん座になります。

 空の状況は快晴。しかし半月があり、ちょうど沈んだところで空はやや明るめ。そして観察した時刻が2:32と遅く、星座はすでに低くなっています。それでも以前よりははっきり観察できたので、光度はあげている模様。彗星は、より高度が高いおおぐま座の系外銀河NGC3077(11等級)よりも明るく見えたので、光度は10等級といったところでしょうか。ネットでは8等級より上、7等級としている人が多いようです。ちなみに現在、2019 Y4彗星の増光は鈍くなっているので、予測や期待よりも明るくならないのでは? という悲観論が流れている最中。

 

戻る=>