Comet 2017 T2 (Panstarrs)

パンスターズ彗星

 2017年10月、ハワイ大学の望遠鏡パンスターズ1(PanSTARRS 1)によって発見された彗星で、2019年10月にはおうし座。11月にはぎょしゃ座を運行中。2020年5月に近日点を通ると予報されています。パンスターズが見つけた彗星はたくさんあるので、ここでは2017 T2彗星で表記します。

 備考:パンスターズは the Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System の頭文字 Pan S T A R R Sをつなげたもの。まんま訳すと ”広域捜査望遠鏡および早期反応体制” 。その運用目的は地球に接近する小さく暗く、必然的に発見が難しい小天体、それでもなお地球に衝突すると核兵器なみの破壊力をもつ危険な天体を見つけることにあります。つまるところパンスターズを意訳すれば、広域視野望遠鏡を用いた地球接近危険天体の早期発見システム、とでもなるでしょうか。パンスターズはマウイ島のハレアカラにあり、二つの望遠鏡よりなります。1号望遠鏡は2010年から運用。暗い天体を見つけるためのものだけに、彗星をいくつも発見しています。2号は2019年末に運用の見通し。

 

 以下は10月10日 おうし座β星の近くを運行中の C/2017 T2

 2019年10月10日 4:30 ぎょしゃ座を運行中の2017 T2彗星 。画面の左上はファインダーで見た様子で明るい星はおうし座の角先を作る、おうし座β星Elnathと周辺の星。左下の円は35・5倍の視野。そして右上の大きな円は150倍の視野を示します。光度は11等級で見えるとは思わなかったけど見えたもの。しかし本当に見るのはぎりぎり。スケッチでははっきり描いていますが、実際にははるかに淡く、こうは見えません。まず星をスケッチして、予報の星図と比べて、どうもここにあるらしいとじっと見ていたら見えた。それほどに淡いものでした。

 

 以下はカペラへ近づき、その脇を抜けようとする2017 T2彗星

 2019年11月25日 3:05〜4:20の 2017 T2彗星。カペラとぎょしゃ座ε星の間を抜けていくところ。2017 T2彗星は2020年5月に最大光度をむかえる予報です。先の10月10日に見た時点では、見るのがやっとの明るさ。それからわずか1ヶ月後、11月の今でも観察するにまだ苦しいだろうと思っていたところ、案外はっきり見ることができたもの。

 南風が流れ込んで空が晴れ、日付変わった25日。市街地で街明かりがあるとはいえ、月は新月間際で空は暗く、オリオン座からカシオペア座までかすかに天の川を見れる空模様。さらに、2017 T2彗星があるぎょしゃ座は3:00の時点で天頂をやや過ぎるころで透明度も良好。かように条件が良いこともあって、はっきり見れた2017 T2彗星。あるいはこの彗星、思ったよりも早く明るくなっているのかもしれません。予報光度は10・8等ですが、それより明るいように思えます。

 観測に使ったのは30センチ反射。彗星はぎょしゃ座ε星とカペラの間ぐらいを移動中で、右上はファインダーで見たカペラとε星周辺の様子。カペラとε星の間にある、おそらくは7等級の微星の近くに彗星がいます。右下はその微星を35・5倍の視野で覗いたもので、視野の右下端に彗星が見えています。このスケッチの時刻は4:10

 画面左の大きな円は150倍の視野を示します。ファインダーで見た7等級の微星は、この視野で一番明るい輝く星になっていて、相対光度を示すカタカナはア。彗星は視野の右下を移動中で、最初に位置を描いた3:05から4:20の間に、画面上(方位でいうと北西)へ少しだけ動いています。

 

 以下はカペラから遠ざかりつつある2017 T2彗星

 2019年12月1日。日付が変わった直後の0:15から3・20までの彗星。カペラの脇を抜けて、北西へ移動しつつあります。

 画面左の大きな円は75倍の視野を示し、0:15、0:55、2:30、3:20における彗星の位置を示します。こんなに長く観察する気はなかったのですが、この周辺は明るい星がありません。目立つ配置の星など目印になりそうなものもない。その割りには銀河の中なので微星がたくさんある。これを描くのはかなり面倒な作業。星の配置をスケッチして描き止めている間にどんどん時間がたって、結局、3時間あまりの長丁場に。結果的に四つの時刻における彗星の位置を示すこととなりました。

 画面右下の円は37・5倍の視野を示します。その上はファインダーで見たカペラとε星周辺の様子。倍率は多分、10倍ぐらい。

 

 以下はカペラから4度ほど北西を移動する2017 T2彗星

 12月4日 23:55から5日1:20までの彗星。カペラから北西に4度。ぎょしゃ座からペルセウス座に入ってすぐのところを移動中。上の円はファインダーの視野で、カペラから彗星の場所までを描いたもの。大きな円は彗星とその周辺の星々で、視野の倍率は75倍。予報光度は11・1等。見た目の印象も、先日よりちょっと明るい感じ。半月がちょうど沈んだ23:55から、1:20まで観察。

 月はこれから満月へ向かって空が明るくなり、さらに天気も悪くなる予報。しばらく彗星観察はできそうにないので、晴れ間を縫って観察。

 

 以下はペルセウス座λ星の近くを移動していく2017 T2彗星

 2019年12月20日 21:35〜23:25の2017 T2彗星。月は下弦より細くなったものの、天気が悪い状態で、晴れたり曇ったりを繰り返す空模様の中でスケッチ。画面右下の小さな円はファインダーで、ペルセウス座λ星とその周辺。λ星の画面右上にある二つ並んだ微星が彗星を探す手がかり。画面右上の連なった円は35・5倍の視野で、二つの微星が下にあって、その左上(方位でいうと東)に視野1つぶんいった場所に彗星がいます。

 画面左の大きな円は150倍の視野で、21:35と23:25の彗星を示します。はっきりしたコアを持ち、暗く、淡いけども、ちかちかするようなきれいな雰囲気を見せながら北西へ移動中。現在自分が住んでいる場所が盆地なせいか、急に雲が出たり、晴れたりする空模様。観測に2時間も間が空いているのもそのためで、23:30以降はまた雲が出て、観測を断念。35・5倍視野のスケッチも当日は中途半端だったので、この部分を25日未明に完成させてアップロード。

 

 以下はNGC957の近くを移動していく2017 T2彗星

 2020年1月22日 1:05の2017 T2彗星。1月だというのに冬の終わりのような天気。日本海側よりもむしろ太平洋側の天気が悪く、湿った南の雪や雨が続きます。当然、空もよく見えない。ようやく見れたのは1月の22日。前回から1ヶ月が過ぎています。彗星はペルセウスの頭まで移動し、二重星団の近くにまで来ました。この日は二重星団近辺の散開星団NGC957の脇を移動中。視野は75倍

 さて、見た時刻は日付が変わった1:05 すでにペルセウス座が地平線近くにまで降りていて、予報の位置を見てもまるで見つからない。星団の暗い星もみえているのだから見えないはずはない。おかしいなと思ったら、鏡筒と鏡に街灯の光が入ってました。そこで影に移動して確認すると、ぼんやりした光のしみを発見。見かけの移動速度は遅くなっているらしく、1時間ばかり観測していても明瞭には動きが分からず。多分、周囲に星がなかったので相対的な位置変化が分かりにくかったのでしょう。

 

 以下は二重星団を通り過ぎた2017 T2彗星

 2020年2月1日 21:30の2017 T2彗星。二重星団の脇をすでに通過した彗星。二重星団と一緒に視野に収まったら印象的に違いなかったでしょうが、天気はずーっと悪くて、見えた時にはすでに通過済み。大きな視野は75倍の視野で中央にぼんやりした白いしみのように彗星が見えています。左下の円はファインダーの視野で多分、10倍ぐらい。二重星団NGC869と884が小さく見えており、その左の星が、75倍視野下にある明るい星。

 画面右下の小さな円は75倍視野の中央だけを抜き出したもので、22:30における彗星の位置を示します。動きは遅いですが周囲に微星があり、移動がわかりやすい。どうも西北西に向けてゆっくりと動いている模様。

 

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