Algol

アルゴル

β Persei ベータ・ペルセイ

2014年12月27日 23:51  西の地平線へ傾き始めたペルセウス座と極小のアルゴル

27日予報された極小の時刻は23:42

ペルセウス座のβ(ベータ)星アルゴルは有名な変光星で、変光の周期は2.86739日。伴星がより明るい主星の光を隠すことで変光が起こる星です。つまり原理は日食と同じであり、地球から見て伴星が主星の前を通過する間だけ光度が下がります*。このため、アルゴルの光度はいつもは2.1等のままで、食が始まってから終わる9時間あまりの間、最低3.4等まで減光します。以上の画像はほぼ、予報された極小の時刻のものです。アルゴルの光度変化は1.5等程度なので、明るい時の画像(以下)とはあまり顕著な差は認められません。しかし、極小時のアルゴルの光度が、お隣のρ(ロー)星とほぼ同じであることは分かるでしょう。

*厳密に言うと、地球から見て、伴星が主星の後ろ側に回り込んだ時にも伴星が隠される分、光度が下がるのですが、この減光は本当にわずかで目立ちません。

以下は2014年1月6日のペルセウス座とアルゴルで、減光が起きていない状態のものです。

減光していないアルゴルの光度は、光度1.79等のα(アルファ)星ミルファクに迫るものであることが分かります。自分も含めて、あまり経験のない人が一般的に見分けられる星の光度差は0.2等と言います。ミルファクはほぼ1.8等で、そこに0.2を足せば2等。アルゴルはα(アルファ)星よりも数字の上では暗いですが、実際に見れば、ミルファクよりもなんとなく暗いかな? と思える程度です。

 

Algol

アルゴル

 β Persei ベータ・ペルセイ

アルゴルは変光星で、その光度は2.1~3.4等まで変化します。変光の周期は2.86739日、2日と20時間48分56秒です。ほぼ3日なので変光は3日目ごとに見ることができますが、周期が丸三日よりも3時間あまり短いため、減光が見られる時刻は前に減光が見えた時刻よりも3時間ずつ早まっていきます。

当然、星が見れない明るい時刻に入ると観察できませんから、しばらく減光を見れない日が続き、再び、夜空で減光を見ることができるようになる。これを繰り返します。

星の光度が変ることは1667年に発見されました。しかし、アルゴルの名前の元となったアラビア語、アル・グール**が”悪魔の星”という意味であることを考えると、光度が変ることはずっと前から知られていたのかもしれません***。光度の変化とその周期が決定されたのは1782年。この時、アルゴルは伴星を従えた星であり、伴星が主星の光を隠すことで光度の変化が起こるという説明が提案されています。この仮説は後に分光的に論証されました。このように食によって変光が起こる星を食変光星(Eclipsing variables)とか、食連星(Eclipsing binaries)と呼びます。

**アル・グール、より正確にはラース・アル=グール(ras al-gul)だそうです。この場合の意味は”悪魔の頭。参考は「星の名前の始まり」 近藤二郎 2012。アル・グールのアルはアラビア語で使われる定冠詞で、英語のtheに当たります。一方、グールは死体を食らうという伝説上の怪物のこと。つまりアル・グール、アルゴルとはザ・グールの意味。意訳すれば悪魔の星であり、ファンタジー的に言うのならグールの星です。

***アルゴルの名前の由来は、これが変光星であるから、という解釈はよく言われることですが、異論もあります。そもそも古くからこの星座はギリシャ神話の英雄ペルセウスに見立てられており、アルゴルは単純に、ペルセウスに倒された怪物メデューサの首としてその名をつけられたのかもしれません([Star Names Their Lore and Meating] Richard Allen 1963 pp332)。

 

変光星の光度とその変化は、肉眼でも記録することができます。というかそもそも18世紀に変光の周期が決定された時にも、それは肉眼で行なわれたものですし、星の光度の決定には幾つかの方法があります。そのひとつが、変光星よりも少し明るい星と暗い星を選んで光度を決定するやり方です。例えばペルセウス座を眺めると、α(アルファ)星ミルファクはアルゴルよりも明るく、ε(イプシロン)星はアルゴルよりも暗いことが見て取れます。次にα(アルファ)とε(イプシロン)の明るさの差を10等分したとして、アルゴルはどこに来るのかを目算します。例えば私の場合なら、アルゴルは9であるように見えました。これを

a 1 V 9 b

と書きます****。aは明るい星、bは暗い星、Vは変光星(Variable)の頭文字です。

****個人的には、どれがどの星か分かるように、α 1 V 9 εと書いておきました。

後は単純な比例計算で答えが出ます。α(アルファ)星の光度を1.79等、ε星の光度を2.90等とすると、V(この場合はアルゴルですが)の光度は1.9等ということになります。これは2.1等という公式の数字からはずれていますが、なにをどうしようが観測には誤差がつきもの。データを累積させればより確かなことが分かるのですから、この調子で次々に時間ごとに光度を記録していきます。こういう光度の決定を比例法と言いますが、これを使って、2014年12月27日の減光を記録し、図にすると以下のようになりました。

 

 20時を過ぎた当たりから急に暗くなり始めたことが見て取れます。以上の図はちょっと頼りないですが、観測を重ねていけば詳しい変光の様子が分かるでしょう。ちなみに途中からε(イプシロン)星よりも暗くなってしまったので、アルゴルの隣にあるρ(ロー)星を暗い方の基準に使っています。以上では記録にありませんが、一番暗い時はρ(ロー)星とほぼ同じか、アルゴルの方が幾分暗く感じることもありました。ρ(ロー)星の光度が3.32等であることを考えれば、アルゴルの極小時の光度が3.4等(資料によっては3.5等)というのはうなづけるように思えます。

 

参考:

「変光星の探求」 下保茂 1972 恒星社

[Burnham's Celestial handbooks] vol.1

「星の事典」鈴木駿太郎 恒星社

[Guidebook to the Constellations ] Patrick Moore's Practical Astronomy Series 2012

 

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