種の起源: On The Origin of Species By Means of Natural Selection or The Preservation of Favoured Races in The Struggle for Life 序言:04.09.17
ここの概要は生物が進化する原因やその仕組み、機構を説明する理論をどのようにダーウィンが思い付いたのか、そのことに関する説明と「種の起源」を刊行するにまで至る経緯について説明されています。ビーグル号に乗船した経験からヒントをえたこと、そのアイデアを確実にするまで時間をかけ、慎重に証拠を集めたこと(それらの証拠は本文でえんえんと述べられることになるのだけど、よくもまあ、あそこまでいろいろな事例を集めたものだ・・・。行動力あったんですねえ、Mr.ダーウィン)。そして同じく自然淘汰による進化を思い付いたウォレスの出現により、2人同時に発表することになったことなど、が説明されています。
また生物の様々な種が他の種の生き物に由来するだろうという考えには、当時の博物学者(英語ではnaturalist)たちが持っていた知識なら十分にたどり着けるものであったこと、しかしその変化の原因として博物学者たちが考えたものは気候や食物であったことが上げられています。
まあたしかに同じ植物でも荒れ地で育てるのと条件のよい場所で育てるのとではまるで姿がかわっちゃったりするから、これは無理もない発想なのでしょう(事実、こうした原因で進化が起きるという発想は現在でも時々見られます)。でもダーウィンが述べているように、環境に基づく変化では、なぜ生き物の姿がある動作やある行動のために都合のよい形であるのか?、それを説明するのは困難。そもそもどうして新しい器官が出現するのかそれでは分かりませんからね。
さて、序言ではこの後、彼のアイデアの概要、つまり人間に飼育栽培される動植物の品種と人為選択、形質の分岐、がのべられます。興味深いことに彼は飼育栽培品種とその品種改良を具体的な例にして野生の動植物の進化を説明しようとしたのですが、彼に言わせればそういう発想をした博物学者はいなかったようです。
品種改良に注目する研究者がいなかったという事実はちょっと意外なのですが、現在と当時の飼育栽培品種に関する考え方の違いにもよるのでしょう。このあたりの話は本文でまた語られます。
とはいえ、むしろ重要かなあと思えるのはダーウィンは自分のアイデアを確かめるために、人間が実際に行ってきて、そしてまた現在も行っている品種改良に注目したってことですね。これ、ようするに実験に基づく検証ってことでしょう。
序言の最後では同じ属に属する異なる種が、もともとは同じ種に属するものであったこと、自然選択が進化のメインな原因(meansをちょっと意訳・・・)ではあるが唯一のものではなかっただろう、ということが述べられています。
前半は分類群というものがじつは系統を反映したものであること(注:ただし分類学の分類群=系統とは限らない)を述べたものです。
そして後半は自然選択以外のなにか生物の適応を押し進めるものが(メインではないにしても)あるのではないか、ということです。ただしどうも誤解している人がいるみたいですが、彼はラマルク的な獲得形質を認めていたわけではありません。