Synapsida シナプシダ/単弓類(たんきゅうるい) 哺乳類+哺乳類型爬虫類+盤竜類 ディメトロドン Dimetrodon Sphenacodontidae:スフェナコドンティダー(スフェナコドン科)のシナプシダ。便宜的には盤竜類。ただし以下でも述べますがいわゆる盤竜類は側系統群なので、原始的な特徴を持つ初期のシナプシダという以上の意味はあまりありません。ディメトロドンはペルム紀前期、2億7000万年あまり前の北米から知られています。当時の北米は赤道にあって、どうも熱帯性の動物らしい。陸上脊椎動物としては地上最初の大型捕食動物で体長は3メートル以上になるものがいました。
なんかぶざまなイラストですけど、ディメトロドンの骨格に筋肉だのなんだのをつければこんな感じ、首なし、ずん胴になってしまいそうです。背中の帆はどうも太陽などに帆をあてて体温を上昇させることに使われたという説があり、それが有力。もっと派生的なシナプシダ、例えばテラプシダ/獣弓類にはこういう特徴はありません。その必要もなかったようです。
シナプシダ/単弓類とは:
シナプシダは哺乳類と、いわゆる哺乳類型爬虫類でなりたっている系統です。
テトラポードが地上に上がり、やがて乾燥した環境に適応して”硬い殻を持つ卵”を産む系統があらわれました。これがいわゆるオムニオタです。オムニオタはおおきく2つの系統に分化しました。ひとつは爬虫類。そしてもうひとつがこのコンテンツで取り上げるシナプシダです。およそ3億年前の地層からすでに初期のシナプシダが見つかっています。
それから数千万年の間、地上を歩き回っていた大型動物は原始的な爬虫類とシナプシダでした。しかしおよそ2億5000万年前、シベリアで起きた大噴火でそのほとんどが絶滅してしまいます。
以後、シナプシダは小型化し、シナプシダと原始的な爬虫類にとって代わって、より派生的な爬虫類が地球の大型動物になりました。一方のシナプシダは1億4000万年あまりの間、小型動物のままでした。シナプシダが大型化してさまざまな形態へ分化したのは6500万年前、巨大隕石の衝突で恐竜と大型爬虫類が絶滅し、地球が再びからっぽになってから以後のことです。
シナプシダの特徴:
インフラテンポラルフェネストラ(itf)があることです。これは私達にもあります。こめかみの部分がそれ。以上のディメトロドンの頭蓋骨の模式図でもそれを示しています。この頭骨には系統に関する数多くの手がかりがあります。例えばSTやTであらわされた骨は派生的なシナプシダでは縮小してなくなります。また口蓋には爬虫類の系統で見られる特徴 Suborbital foramen がありません。
ちなみにこの図は北村のメモの域をでないのでよろしく。
シナプシダの系統:
根___________カセア
|________オフィアコドン
|_______エダフォサウルス
|______Sphenacodontidae:スフェナコドン科
| (ディメトロドンなど)
|_____Therapsida:テラプシダ/獣弓類(じゅうきゅうるい)
(ビアルモスクス、ディノケファリア、ゴルゴノプス
キノグナトス、トリチロドン、哺乳類など)
「動物系統分類学」とRubidge&Sider 2001 Evolutionary Patterns Among Permo-Triassic Therapsids Annu.Rev.Ecol.Syst. 2001. 32:449-80を参考。
カセアとエダフォサウルスは初期にあらわれた植物食のシナプシダです。カセアからスフェナコドン科までがいわゆる盤竜類ですね。こうして系統を見れば分かりますが、盤竜類は側系統です。盤竜類とはいわば不正確な用語/あるいは系統を反映しない単語になってしまうので使うべきでないか、あるいは使うにしても注意が必要です。
ちなみに彼ら、いわゆる盤竜類はペルム紀の中頃には滅亡してしまいます。その後たくさんの種類に分化したのが獣弓類/テラプシダでした。
獣弓類はスフェナコドン科の動物よりも哺乳類に近いシナプシダのことで、こちらは単系統です。くわしくは以上のリンクをクリック。
盤竜類について:
古典的にはシナプシダはペリコサウルス類、いわゆる盤竜類とテラプシダ/獣弓類に分けられていました。盤竜類はシナプシダのツリー・オブ・ライフに従うと次ぎの緑の部分です。
____________カセア
|________オフィアコドン
|_______エダフォサウルス
|______Sphenacodontidae:スフェナコドン科
| (ディメトロドンなど)
|_____Therapsida:テラプシダ/獣弓類(じゅうきゅうるい)
(ビアルモスクス、ディノケファリア、ゴルゴノプス
キノグナトス、トリチロドン、哺乳類など)
見ればわかりますが、盤竜類はおもいっきりな側系統です。便宜的には使われますが、系統を反映した正確なグループではありません。
哺乳類型爬虫類について:
昔は盤竜類や哺乳類以外の獣弓類とをあわせて哺乳類型爬虫類とよんでいました。哺乳類に似ている/あるいは哺乳類に連なる系統であるけれども爬虫類だよね、そう認識されていたわけです。
実は古典的には爬虫類というのはとても範囲の広いグループでした。オムニオタのなかで鳥でもなければ哺乳類でもない動物。それらはぜんぶ爬虫類にまとめられていたのです。古典的な爬虫類とはツリー・オブ・ライフの以下の部分のことを指し示していました。
_____________両生類
|____________鳥類
| | | |====トリケラトプス、メガロサウルスなど
| | |_______ワニ
| |_________トカゲ ↑↓この緑の範囲はぜんぶ爬虫類という扱い
|___________カセア
|__________ディメトロドン
|_________ビアルモスクス
|________ディノケファルス
|_______ディキノドン
|======ゴルゴノプスなど
|=====キノグナトス、トリチロドンなど
|____哺乳類
でっ哺乳類型爬虫類とは以上の範囲のなかの次ぎの部分のことでした。
_____________両生類
|____________鳥類
| | | |====トリケラトプス、メガロサウルスなど
| | |_______ワニ
| |_________トカゲ
|___________カセア
|__________ディメトロドン
|_________ビアルモスクス
|________ディノケファルス ←古典的なシナプシダ。上を見れば分かるが
|_______ディキノドン 古典的な爬虫類に包括されるので、哺乳類型爬虫類
|======ゴルゴノプスなど ともよばれた。
|=====キノグナトス、トリチロドンなど
|____哺乳類
ようするにツリー・オブ・ライフのなかで、鳥やトカゲよりも哺乳類に近く、なおかつ哺乳類でない部分が、
”哺乳類のような爬虫類=哺乳類型爬虫類”
だったのです。また古典的にはこの部分のことをシナプシダと呼んでいました。
でも現在は爬虫類とシナプシダはツリー・オブ・ライフの形に正確にあわせるように調整されて以下のように設定されています。
_____________両生類
|____________鳥類
| | | |====トリケラトプス、メガロサウルスなど
| | |_______ワニ ←今はここを爬虫類と呼ぶ
| |_________トカゲ
|___________カセア
|__________ディメトロドン
|_________ビアルモスクス
|________ディノケファルス ←今はここをシナプシダと呼ぶ
|_______ディキノドン 哺乳類型爬虫類という名称の方はなくなった
|======ゴルゴノプスなど
|=====キノグナトス、トリチロドンなど
|____哺乳類
このように哺乳類よりもトカゲなどに近い系統はすべて爬虫類(あるいは爬虫類+αで竜弓類)と呼ばれています。この場合、必然的に鳥は爬虫類になります。
一方でトカゲなどよりも哺乳類に近い系統はすべてシナプシダになっています。この場合、哺乳類はシナプシダになります。
では哺乳類型爬虫類という呼び名はどうなったのか?。この呼び名は消えちゃいました。当たり前ですね。誤解まねく呼び名ですから。シナプシダ/単弓類は適用する範囲を拡大されて呼び名として残りましたが、哺乳類型爬虫類の方は消えちゃったんですね。
今でも便宜的には使いますが、爬虫類じゃないので、むしろ爬虫類型哺乳類とか爬獣類と呼んだ方が良いと言う意見もあります。