ベニシダ
Dryopteris erythrosora
*「神奈川県植物誌2001」参考
撮影:2012/12/25 神奈川県
神奈川では林や森をゆく小道の脇などで普通に見られるシダです。この株は水が湧き出ている谷間の奥に生えていたもの。近縁種に同属別種のトウゴクシダがいます。
ベニシダの特徴
:葉っぱの柄(羽片の柄を含む)の裏面には袋状鱗片が多い
:胞子嚢群(ソーラス)は円腎形(というかほぼ円盤形)の包膜に覆われる
:包膜は紅色(白いものもあるそうです)
:最下羽片下側の第1小羽片は、羽軸まで切れ込むことは少ない(以下参照)
:葉柄につく鱗片は茶褐色
*注:以上の特徴とは共有あるいは固有派生形質であることを必ずしも意味しません。
解説
ソーラスを包む包膜が紅色をしていることが特徴のシダです、ソーラスは円盤状で、ソーラスをつけた葉っぱは表側から見ても、なにやらぶつぶつした見た目。
撮影:2012/12/25 神奈川県 以上とは同じ個体
撮影:2012/12/25 神奈川県(個体は同上)
表側から朝日を透かしたところ
撮影:2012/12/19 神奈川県(個体は同上)
以上は葉っぱを裏返してみたところ。ソーラス(胞子嚢群)がずらりと並んでいること、包膜が円腎形で紅色をしていることが分かります。また葉っぱの柄に糸のついた小さな風船みたいなものが見えますが、これがどうも文献にある袋状鱗片であるらしい。ベニシダは紅色の包膜を持つこと、袋状鱗片がやや密につく点などで、近縁種と識別できます(ただし包膜が白いものもいるそうです)。
撮影:2013/01/04 神奈川県 個体は同上
包膜の紅色が印象的な、美しいシダです。
また、ベニシダは葉っぱ全体が2回大きく切れ込みます。3回目は切れ込みが浅くあまり目立ちません。そのため、縁に切れ込みが浅く入った小さな葉っぱ(小羽片)が集合して葉っぱ(実際には羽片)を作り、さらにそれが集合して1枚の葉っぱを作るように見えます。ベニシダの特徴のひとつは最下下側の小羽片(一番小さな葉に見える部分)が葉の柄(正確には羽軸)にくっついているように見えることです。
ただし、「神奈川植物史2001」にも書いてある通り、”縁は小羽軸まで切れ込むことは少ない”であって、切れ込まない、ではありません。公園を歩いてみて見ると、これはベニシダに見えるけども、ほとんど切れ込んでるよな、という株もあったりします(誤同定の可能性も当然ありますが)。
ただ、このコンテンツでこれまで紹介してきた株の場合、この特徴は比較的分かりやすい方のようです。また、以下の画像を見ると、最下の小羽片よりも先の小羽片の場合、軸に流れるようにくっついていることが明瞭に分かるでしょう。トウゴクシダの場合、もっとはっきり切れ込み、柄が出来ます。
撮影:2013/01/13 神奈川県 個体は同上 ベニシダの最下小羽片を写す
また、ベニシダは葉柄につく鱗片が以下のように、薄い茶褐色をしているのも特徴です(ただし、黒褐色のものもいるらしい)。
撮影:2013/01/13 神奈川県 個体は同上
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