個人的な経験からするとシャモティランヌスはティラノサウルス科に近い動物なのかどうか、一般の人から疑問をもたれることがしばしばあるように見えます。

 そう考えられる原因は、どうもシンラプトルという中国産の獣脚類が持つ特徴がシャモティランヌスに見られるためのようです。シンラプトルは一般的にティラノサウルス科ではなく、むしろアロサウルスに近い動物であると考えられているから(Sereno et al 96. sci vol.272 pp986~991)、そのためシャモティランヌスはティラノサウルス科ではない、そう見なされるのでしょう。
 
 しかしこの見解、この証拠は説得力を持つものとは思えません。生物の特徴はたいてい矛盾した分布を示すものであって、系統解析をしないとその特徴が系統を反映しているかどうか分かりません。

 シンラプトルとシャモティランヌスの間に共通の特徴があるからといって、それだけではシャモティランヌスがティラノサウルス科ではないという証拠にはならないし、シンラプトルの仲間であるという証拠にもなりえません。もしそういうことが言えるのならば、人間とムカシトカゲは鳥の仲間になるでしょう。

 系統解析については「系統分類学入門 ー分岐分類の基礎と応用ー E.O.ワイリー他、1991 文一総合出版」を参考のこと。

 以上のように分岐学を知らなくては恐竜のことは理解できません。

  

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