Hemichordata ヘミコルダータ/半索動物 ヒメギボシムシ Ptychodera flava 腸鰓類:Enteropneusta ギボシムシ科:Ptychoderidae 同定はやまだかずゆきさんにしてもらいました。感謝!!
やまださんのサイトはこちら→Maniac Invertebrate Animal's World
ヒメギボシムシはインド洋〜西大平洋に分布する種類で日本では和歌山県、串本まで。形は典型的なギボシムシ。この標本自体の大きさは3センチぐらい。本によるとギボシムシは伸縮自在なので体長はあまりあてにはならないとはいうものの、まあ3センチぐらいだってことはいえます。
ヘミコルダータとは?:
ヘミコルダータはすべて海にすむ動物です。あまり知られておらず、数も種類も少ないマイナーな動物群で大きく3つのグループ、
:腸鰓類(Enteropneusta:エンテロプネウスタ)
:翼鰓類(Pterobranchia:プテロブランキア)
:筆石類(Graptolithina:グラプトシリナ)
に分けられています。
腸鰓類(ちょうさいるい)はいわゆるギボシムシの仲間です。現在のヘミコルダータの大部分はこの腸鰓類。腸鰓類の外見はミミズのようなワーム/蠕虫型で、ミミズやゴカイとおなじく泥や砂のなかにすんでいます。しかし身体の基本構造はミミズのような環形動物とまるでちがいます。身体は3つの部分に分かれ、多数の鰓裂(さいれつ:Gill slit)を持ちます。具体的な姿は以上の写真と以下の解説を参考のこと。ギボシ(擬宝珠)とは古い橋のらんかんなどにあるタマネギ状の飾りのことで、ギボシムシの前端の吻がそのような形をしていることから名付けられています。このグループはマルグリスに従えば65種類しかいません、人間が識別できた種類ということなのでしょうからもっと増える可能性はあるわけですが、特に種数をほこるわけでも、あまり目につく動物でもないことは確実ですね。
翼鰓類(よくさいるい)はもっとマイナーなグループで、種類もすくなく3属しかいません。奇怪な姿をしており、触手のはえた腕を持ち、そのことからフサカツギとも呼ばれます。身体は3つのパーツになんとなく分かれていて鰓裂を持ちます(ただし鰓裂がない種類もいる)。そのような特徴から腸鰓類に近縁で、ヘミコルダータであろうと考えられています。深い海にいる生き物で群体性か単独性。大部分は身体から出した分泌物で作った管、棲管のなかでくらしています。標本はあまりないようで、北村も標本の写真を1枚見たことがあるだけ。身体の特徴はなんとなくカルポイド類を思わせるものがあり、なにか関係があるのでは?と思わせます。
筆石類(ふでいしるい)は絶滅種です(ただし深海性のある種の動物がこれの生き残りだというニュースがありましたが・・・)。彼らはカンブリア紀の中頃に出現し、石炭紀に絶滅しました。見た目は植物の枝や鳥の羽毛、昔の羽毛ペンを思わせる外見をしています。これらはおそらくは群体生物の棲管であり、多分、翼鰓類と共通点があると考えられています。
ヘミコルダータの特徴:
身体が前の方からはっきりと違う3つの部分、
前体(Protosome)
中体(mesosome)
後体(metasome)
にわけられることです。右のギボシムシを例にすると、前方から、
:吻部(Proboscis/あるいは前体)
:襟(Collar/あるいは中体)
:躯幹(Trunk/あるいは後体)
の3つのパーツからできています。またこれはデウテロストミアの多くに共通しますが、消化管を貫通して外部から続く穴、鰓裂(さいれつ:Gill slit)を持つのも特徴です。この写真ではBranchial regionという部分に鰓列があるはずなのですが・・・、写真ではいわずもがなで手持ちの10倍ルーペでもさすがに不明瞭で確認できず。将来的には高解像度のスケッチをしたい予定。
なお、Hepatic Saccules というのは肝盲突起という器官です。
参考:
「動物系統分類学」
「脊椎動物の起源」H・ジー 2001 培風館
[Graptolites come to life] Sue Rigby 1993, Nature,vol.362, 18 pp209~210
「五つの王国」リン・マルグリス/カーリーン・V・シュヴァルツ 1987 日経サイエンス社