「るんらっら~、るんらっら~♪」

みなさんこんにちは。
あははー、ここでははじめましてかもしれませんね。
倉田佐祐理です。

「舞のすっきなたっこさんですよ~♪」

先日、久しぶりに祐一さんからお電話をいただきました。卒業式以来でしたから、声をお聞きしたのは一ヶ月ちょっとぶりでしたね。そこで週末のお花見に誘われ、そして今日がまさにその日なのです。

「たっまごは、卵焼き~♪」

舞共々、佐祐理はちょっと浮かれ気味です。
今朝は四時から起きてお弁当を作っています。舞に祐一さん、それに他のみなさんにも、たっくさん佐祐理のお料理を食べてもらいたいです。佐祐理はちょっと頭の悪い普通の女の子ですけど、お料理にはちょっと自信があります。祐一さんにお嫁さん合格と言われたのが少し自慢だったりしますけど、これは人には言えませんね。

「・・・おはよ」

「あ、舞、おはよう♪今日のお花見、楽しみだね~」

「はちみつくまさん」

言い忘れていました。
佐祐理は只今、舞と一緒に暮らしているのです。
諸事情がありまして、佐祐理は家出同然の身になってしまいましたけど、いっそそれをいい機会と思って、舞との二人暮しを敢行いたしました。お屋敷の様に楽には出来ませんが、むしろ佐祐理にはこの方があっています。
ちょっとの苦労なんて、舞と一緒なら怖くありません。
だって・・・。

「佐祐理と舞は愛し合ってるんですもの♡」

「・・・・・ぽ」

「あははー、舞、それはキャラが違いますよー」

ぽかっ

「・・・佐祐理につっこまれるのは、ちょっとぽんぽこたぬきさん」

「あははーっ」

佐祐理と舞は最強ですよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑―SHION―
~Kanon the next story~

 

第六章 お花見だよ全員集合 朝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・舞。

今日はお花見。祐一が誘った。祐一の知り合いがたくさん来るらしい。

「あははー、祐一さんのお知り合いってどんな人達だろうね?」

「・・・さあ?」

わからない。
祐一は変な人だから、変な人達かもしれない。
でも逆に普通の人達かもしれない。

でもなんでもいい。
どっちにしろ佐祐理が一番だから。(何がだ?)

「そういえば祐一さん、目印は白いのって言ってたけど、どういう事だろうね?」

「・・・たぶん、あれ」

私は目の前を指差す。
あれに間違いないだろう。

「・・・白い」

白い髪。
白い服。
白い敷物。
白い・・・。

「・・・もうなかった」

「はぇ?」

白いのに近づく。

「あの~、祐一さんのお知り合いの方ですかー?」

「・・・・・ん」

頷いた。たぶん。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・(にこにこっ)」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・(にこにこっ・・・)」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・(・・あははー・・・、間が持ちません・・・)」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・(はぇ~ん、ゆ~いちさぁ~ん)」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ、失敗だった。
こいつの所為で随分遅くなっちまったぜ。

「思ったより早く出れたねっ」

隣りを歩くうぐぅはそんな事を言っているが、俺の予定ではもう場所に着いているはずだった。
名雪が起きていれば。

「・・・失敗した・・・、秋子さんの言ったとおり、こいつは後から秋子さんと一緒に来させればよかった・・・」

「う~、祐一、何かひどい事言ってない?」

不満そうな顔をしている名雪は無視だ。
それよりも場所取りに行ったという紫苑だよ。あいつはどうせ先輩や綾香が起きるよりも早く出て行ってるからな。かなり待たせたかもしれん。
走れたらいいんだが、あゆがいるしな。

「それよりも祐一、今日は誰が来るの?」

「あれ?言ってなかったか?」

「言ってないよ」

「うん、聞いてないよね」

そうだったか。
まぁ、半分以上はこいつらの知ってる奴らだが。

「いつものメンバープラスアルファだ」

「それじゃわからないよっ」

「真面目に答えてよ~」

「着いたら紹介するよ」

 

 

 

 

その場所に着いた俺達は、ちょっと異様な光景を目撃した。
同じ様に花見に来ている人達も同じ心境なのか、心持ち距離を開けている様に見える。

「・・・何やってんだ?あいつら」

そこには、桜の大木の下で微動だにせずに向き合う舞と紫苑、そしてその傍らで冷や汗を流している佐祐理さんの姿があった。

「すみません、あの三人、いつからああしてました?」

俺は近くにいた人に尋ねた。

「ん?俺達が来た時にはもうああしてたぜ。かれこれ一時間以上だな」

「・・・ったく」

無口王決定戦でもやってんのかよ・・・。
佐祐理さんまで巻き込んで。

びしっ びしっ

「・・・・・んぅ」

「・・・祐一、いたい」

「はぇ~~~、やっと開放されました~」

「大丈夫か、佐祐理さん」

「あはは~、へっちゃらへーですよ~」

びしっ

「・・・キャラ違う」

む、この二人やるな。
ボケツッコミに磨きがかかったか?

「おまえらが睨めっこしても永久に勝負なんかつかないから、佐祐理さんまで巻き込んでくだらない事するなよな」

「・・・・・」

「・・・ごめん、佐祐理」

「あははー、佐祐理は全然気にしてませんよ。それよりも祐一さん、お久しぶりです」

「おう、一ヶ月半ぶりくらいか」

卒業式の日に会ったのが最後だったから、大体そんなものだろ。
春休みに一度手紙が来て、二人が同居し始めた事は知っている。

「引越しとか忙しくて、挨拶にも行かないですみません」

「気にしないでくれ。色々あるだろうし」

佐祐理さんなんて家出状態らしいからな。決して楽な状態じゃないんだろう。
詳しい事情は訊かない方がいいだろうな。

「・・・祐一君」

「・・・祐一」

「あ、忘れてた」

「うぐぅ、ひどいよっ」

「極悪人だよ」

今まで忘れていたあゆと名雪が寄ってくる。
二人とも、舞と佐祐理さんには初対面だな。舞と佐祐理さんは紫苑ともはじめてのはずだし、さっきの睨めっこの様子じゃまだ自己紹介なんてしてないんだろう。

「よし、順番に行くぞ。俺は相沢ゆ・・・」

「・・・知ってる」

「あははー、存じていますよー」

「うぐぅ、二度目だね」

「うん」

ぐ・・・。

「あははー、倉田佐祐理と申します。ちょっと頭の悪い普通の女の子で、趣味と特技は料理でしょうか」

普通の自己紹介だな。
しかし佐祐理さんが頭が悪いというのはどうもピンと来ない

「・・・川澄舞」

それだけかよ。
ま、こいつはな。

「水瀬名雪です。祐一とはいとこ同士です」

「月宮あゆです。祐一君とは、幼馴染かな?」

簡単だな、こいつらの自己紹介は。まぁいい。

「あとこいつは・・・」

「東雲紫苑」

「へ・・・?」

「・・・・・」

今、こいつが自分で名乗ったのか?
珍しいというか、変だな。
俺が知る限り、こいつが自分で名乗ったのは、俺に対してだけだ。
まぁ、俺の知らないところではどうか知れないけど。

「あははー、紫苑さんですか。よろしくお願いしますね」

「・・・・・ん」

やっぱりいつのも、反応してるのかどうか微妙なほど小さなリアクションしかしてない。
だが、さっきのは決して幻聴ではなかったはずだ。

・・・うーん、まだまだこいつの事はよくわからん。

 

 

 

 

 

それからしばらく女達が話に花を咲かせていると、美坂姉妹、北川、朱鷺先輩と綾香、さらに秋子さんがやってきた。

「よし、また知らない連中同士は自己紹介をするぞ。俺は相沢・・・」

「それはもういいよ」

止められてしまった。
そんな俺を余所に皆それぞれに、と言ってももっぱら舞と佐祐理さんの二人だな、と挨拶している。他はみんな知り合い同士だからな。

「あははー、朱鷺さんは佐祐理達と同い年ですねー」

「そうね。同年代がいると嬉しいわね~」

「そうですねー」

歳が同じと言う事もあって、先輩と佐祐理さんはもう打ち解けあっている。
しかしこうして見ると朱鷺先輩って背高いんだよな。舞も高い方だが、それ以上、俺や北川と同じくらいある。

「ん?どしたの、祐一ちゃん。桜の木の下の艶やかな美女に恋をしてしまったのかなぁ?」

「・・・・・はぁ」

この人はどうしてこう目敏いんだ。
ちょっと見てただけですぐ気付いてからかってくる。
下手に返すと墓穴を掘るので無視するのが上策だ。

「栞、弁当作りすぎなかったか?」

「がんばってみました」

そういうのを頑張ったというのだろうか?
大きさを見る限り、前よりは量は減っていそうだな。この場にはたくさんいるから、なんとか全部なくなるだろう。こうした事態を予測して、秋子さんや名雪、綾香には量を抑えてもらっている。
最終的に弁当は秋子さん、佐祐理さん、名雪、栞、綾香の五人が持ってきたんだな。
ま、丁度いい量だろう。

「ところで祐一ちゃん」

また先輩か。

「なんだ?」

「十四人くらいって言ってたけど、また誰か来るの?」

「ああ、少なくとも後二人、用事があるから少し遅れるとか言ってたよ」

「そうなんだ。その二人も女の子?」

「?そうだけど?」

「ぬふふ、憎いねこの色男クン」

あのな・・・。
そういう事を言うと、ほらまた心中穏やかじゃなさそうなやつらが出てきた。

「うん・・・、前から思ってたけど、祐一って女の子の友達ばっかりだよね」

「うぐぅ、祐一君、ぷれいぼーい?」

「こらこら」

誰がプレイボーイだ。
そりゃなんというか、一部のやつと、まぁ、そういう事はあったけどよ。それは決して・・・やめよう、変な言い訳は。

「先輩・・・そうなんですか?」

「・・・なんとなく気になっちゃいますね。はっきり聞かせてほしいですけど、祐一さんは一体誰が好きなんですか?」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

おいおい・・・みんなして何見てんだよ。
俺に、今、この場で、どうあってもその答えを出させるつもりなのか?
あえて的を絞るなら、栞か・・・あゆか。
だけど、俺はまだあいつら好きなのかどうかはわからないし・・・、名雪の想いを知っている今こいつを無視する事は出来るのか?綾香に事は?

「祐一・・・」

「祐一君・・・」

「祐一さん・・・」

「先輩・・・」

「むふふふ」

約一名楽しんでるのがいるな・・・。
しかし、この状況をどう切り抜ける。
はぁ・・・、なんでこうなるんだ?せっかく今日はのんびりしたかったのに、いつのなら落ち着いてる栞もどうしてか最近こんな傾向が強いし。
頭痛くなってきた・・・。

ぐいっ

おわっ!
なんだ!?

「・・・・・」

「・・・・・紫苑?」

頭上に紫苑の顔があった。
頭の下にはやわらかい感触。
これは俗に言う、膝枕というやつか?

「わっ、祐一・・・!」

「う、うぐぅ、祐一君が膝枕に紫苑さんされて・・・、うぐぅぅ」

「な、なんて事を・・・」

「姉さん・・・」

「うーむ、やるわね妹」

なんか波紋が広がっているなぁ。
でも、俺自身はなんだか気分が落ち着いてきた。
そういえば昔はよくこうやって二人でぼーっとしてたっけな。

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 

 

秋子です。

どうやら祐一さんと紫苑ちゃんは二人だけの世界に入ってしまったようですね。
周りの子達は大騒ぎしていますけど。

「う~う~」

「うぐぅ~ぅ~」

「えぅ、えっと・・・」

「・・・佐祐理、私もあれ」

「あははー、お任せですよー」

あらあら、舞さんも佐祐理さんの膝枕に頭を乗せて寝転がってしまいました。
仲がよくていいですね。

「う、うぐぅ!舞さんと佐祐理さんもなんだか楽しそうだよっ」

「う~、わたし寝る!」

「うぐぅぅ~?」

「・・・くー」

さすが私の娘。
寝ると言って一秒で寝てしまいました。

「な、名雪さ~ん」

「すごいです・・・、あっという間に寝てしまわれました・・・」

「あっやかちゃ~ん、こんなにいい陽気なんだから、姉さんと一緒に昼寝しましょ」

「ま、まだ午前中ですけど・・・」

「気にしなーい」

綾香ちゃんは朱鷺さんに強引に寝かせられてしまいましたね。

「綾香さん、お姉さんと一緒なんてずるいです。そうだ、私もお姉ちゃんと・・・」

まぁ、香里ちゃんと北川さん、仲がよさそうですね。

「こういうのもいいな、美坂」

「そうね」

「えぅ!なんだかとってもほのぼのムードですか!?」

「あ、秋子さ~ん」

「あらあら」

「あー!あゆさんまで・・・!みんな嫌いです!!」

いいですねぇ、こういうのは。

祐一さんは紫苑ちゃんの膝枕でお休み中。
名雪と栞ちゃんは不貞寝をしてしまった様ですね。
香里ちゃんと北川さんは少し離れたところで一緒にお花見中。
舞さんと佐祐理さんは一緒に木の根元でお昼寝中。
綾香ちゃんは朱鷺さんのところであやされています。
そして私の膝の上にはあゆちゃん。

春の午前中は、とってもほのぼのしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

原作に近く、とか言って佐祐理さんちょい暴走気味・・・。
残りヒロイン登場とか前回のあとがきで言っておいて、まだ真琴と美汐が出せてない。
次は出るから。
ちなみに今更ながら、この話は一応栞エンドあゆエンドの後というのが一番近い設定ですね。ただし作中で述べた様に栞の病気は完治したわけではなく、あゆは本来ほどの元気はまだない。
でも二人のエンドなわけだから、もしかしたら二人は祐一と・・・・・かもしれない。
次は真琴と美汐(どちらかというと美汐か?)と、ちょっと意外な人物が意外な一面を・・・。