・・・・・くー

・・・・・くー

・・・・・くー

・・・ねこーねこー

にんじん食べれるよ・・・。

らっきょも好きだもん。

「名雪ーっ!起きろーっ!」

ゆーいち・・・

好き。

けろぴーも好き・・・。

「でもやっぱりねこさんだおー・・・」

「何がねこさんだ!起きろ!」

「・・・うにゅ」

わたし、ゆーいち好き・・・なのに・・・

「祐一・・・、紫苑さんとどーゆー関係なの・・・?」

「は?」

「・・・・・くー」

「・・・・・はっ、起きんかい!名雪!授業初日から遅刻するつもりか?!」

「・・・いちごじゃむ・・・・・うにゅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑―SHION―
〜Kanon the next story〜

 

第四章 祐一と紫苑の関係

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー、祐一どうしてもっと早く起こしてくれないの?」

「・・・言うに事欠いてそれか?」

何度起こしたと思ってんだ。まったく。
やっぱりこいつと一緒に登校するのは考えた方がいいんじゃなかろうか?

「祐一、今何かひどい事考えなかった?」

「おう、その通りだ」

「う〜、仕方ないんだよ〜」

「その台詞は聞き飽きた」

ま、今更期待もしていないが・・・。

「おまえさ」

「ん?」

「いい加減起きられる様になれよ。いつまでも俺が起こせるわけじゃないんだからな」

「え・・・?」

「どした?」

名雪のやつが急に立ち止まった。
時間ないのに何やってるんだか。それに何驚いてるんだ?

「それ・・・どういう事?」

「それって?」

「いつまでも起こせないって・・・」

は?
・・・・・こいつ、何を勘違いしてるんだか・・・。

「深い意味なんてねえよ。学校卒業して、仕事する様な頃まで俺が水瀬家にいるかどうかなんてわからないだろ」

「あ、そ、そうだよね。あははは・・・」

渇いた笑いしやがって。
こんなちょっとした話題に過剰に反応する事ないだろうに。

『祐一、紫苑さんとどーゆー関係なの?』

・・・やっぱり、あれか?
なんでそんな事が引っかかるんだよ、キスの事なら昨日説明しただろうに。

「ほら、早くしないとほんとに遅刻するぞ」

「うん、行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか初日遅刻は免れたな・・・、ほんとぎりぎりだったけど。

「三年生もなって・・・、よく飽きないわね」

いや、飽きてるって。
そう言いたいところだが、息が上がっているので目だけで訴えた。一緒に走ってきた名雪はほどよく体が温まった程度の顔をしている。さすが陸上部。夏の大会までは部にいるらしいからな。もしかして毎朝わざと寝坊しての早朝ランニングで鍛えているとか?ありえそうだが、この天然娘にそんな真似は出来まい。

キーンコーンカーンコーン

チャイムだ。
HRが始まると誰もが思ったのだが・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・遅いわね、先生」

「・・・・・そうだな」

忘れていた。
あの人は遅刻の常習犯だった。

HR開始時間から四分三十秒後。

「おーっす生徒諸君、おはよう!」

もうHRが終わる直前という時間になってやっと朱鷺先輩、いや先生が来た。
少し前に外で激しいエンジン音がしたのはたぶん先生だろう。
綾香は大丈夫かな?まぁ、あいつはしっかりしてるから、姉貴が遅れそうとわかれば先に出るだろうけど。そういえば、先生達の家ってどこなんだ?もし歩いてこられないほど遠かったら綾香もやばい?後で確かめておく必要がありそうだな。

「よし、出席終わり」

「は?」

いきなりクラス内を一望しただけでそう言った朱鷺先生にみんなが疑問の声を発する。当然だろうな。先生は誰の名前も呼んでいない、見渡したのはほんの数秒の事だ。

「・・・どういう事?」

「あの人のIQは段違いだからな。教室見渡しただけで誰がいて誰がいないかわかるんだそうだ。教師としては非常に便利な能力ではあるな」

昨日一応全員の顔と名前を確認はしたけれど、まさかそれで全部覚えていたとは誰も思わないだろうな。

「自慢じゃないが六時間以内に見た人間の顔しか憶えていない俺からすると信じられないな」

「それはいきすぎだけど、確かにすごい能力ね・・・」

再び、今度はHR終了のチャイムが鳴って先生は教師を出て行く。

ガララッ

だがすぐに戻ってきて、意表をつかれた生徒達を驚かす。

「そうそう、一つ言い忘れてたけど・・・」

何言うつもりだ?

「私が遅刻するからって、みんなは遅刻しちゃ駄目だぞ♪」

そう言って今度こそ出て行った。
なんて無責任な教師だ・・・。しかもそんなにかわいらしくしたらクラスの男子どもが引っ掛かるじゃないか。

「おお!東雲センセー!」

「だぞ♪って激萌えー!」

「誰か先生のデータを・・・!」

愚かな。
知らぬが仏という言葉の重みを俺は今ひしひしと感じているよ。

 

 

 

 

 

 

午前中の授業終了。
ま、初日だから大した事なかったな。

「祐一、お昼休みだよ」

「ふーん」

「う〜、今日は無反応・・・」

そういつもいつも同じリアクションしててたまるか。特に香里につっこまれるのがオチだからな。

「それで、祐一はお昼はどうするの?」

「学食に行く。一応、綾香とも約束してるしな」

「・・・綾香ちゃんと、ね」

一瞬名雪の眉が動いたような気がしたが、見なかった事にしよう。

「たぶん栞もいるだろうし、名雪と香里も行くだろ」

「もちろんだよ」

「そうね」

というわけで俺達三人は教室を出る。
途中、北川を加えて四人で学食へ行くと、一足先に来ていた栞と綾香に出くわした。

「あ、祐一さん」

「こんにちは、祐一先輩」

「よ、二人とも」

早めに来たつもりだったけど、結構混んでるな。
席は確保出来たが、何かを買ってくるとなると大変だ。買ってる間に席を取られる可能性もあるし、ここは二手に分かれるのが上策か。

「よし、俺と香里と北川で買ってこようぜ」

「え?」

「先輩、私自分で行きますが・・・」

「駄目だ。まず名雪はとろくて要領が悪いから残ってろ。栞と綾香もなぁ・・・」

「なんでしょうか?それは」

「あの人垣を超えようにも、その胸じゃなぁ。人を掻き分けるにはスケールが小さすぎる」

「そんな事言う人、嫌いです!大体なんで胸が関係あるんですか!?」

「先輩、ひどいです」

くくく、こういうリアクションをしてくれるからこいつらをからかうのはやめられん。
尚も抗議する栞と落ち込んでいる綾香を置いて、俺達は昼食を買いに行く。

「っとその前に、おまえら何食う?」

「私はなんでもいいですよ」

「まだよくわからないので、先輩が決めてください」

「よしわかった。超激辛カレー二つだな」

「そんな事言う人、嫌いです」

「先輩、ひどいです」

栞は辛いものが人類の敵と豪語しているし、綾香も基本的に辛いものは駄目な方なんだよな。そんな綾香の好物は酸っぱいもので、紫苑もそうなんだが先輩だけが酸っぱいものが苦手なんだ。姉妹でも違うものだ。

 

さて、それぞれに昼食の用意も出来た事だし。

「みんなでいただきましょか♪」

・・・・・・・・・・

「なんであんたがいるーっ!」

「祐一ちゃん、学食では静かにね。それより、私がいちゃいけない?」

別にいけなくはないが、何故教員が学食に、しかもこの人の場合制服を着ていないという以外に違和感がないし。

「ま、いいか。食べよう」

「それもそうね」

朱鷺先生の突然の出現には皆面食らっていたが、さすがに香里と、慣れている綾香は立ち直りが早い。
結局総勢七人で昼食を取る事になった。
皆各々に喋ったりしながら食事を取っている。

「そういえば綾香、今朝は遅刻とかしなかったか?」

「はい、早めに家を出ましたから・・・。もしかして朱鷺姉さん、やっぱり遅刻しました?」

「四分半ほどな。教師という立場を考えるともっと遅刻していると言うべきかもしれない」

「はぁ・・・、一応紫苑姉さんに頼んでおいたんですけど・・・」

「ええ、耳元に目覚し時計を突きつけられたわよ」

「それでどうして遅刻するんですか?先生」

「それはね、起きたと見せかけて紫苑が出てった後にまた寝直すのよ」

駄目だこの人は。
こんなグータラが世界トップの大学に招かれるなんて、ほんとに信じられん。
社会的立場に性格は関係ないのか?

「ほんとに、姉さんにはもっとしっかりしてほしいです」

「ほほう、朝はよから出かけて、登校中のいい人に会えるのを期待してた子が言える事かのう?」

「わ、私先輩に会える期待なんて・・・・・あ・・・」

「むふふ」

綾香がトマトみたいに真っ赤になって俯く。
かく言う俺の顔も若干赤いかもしれない。今のは明らかに先生の逆襲だな。綾香も俺もこの人には頭が上がらない。

「・・・綾香ちゃんって、祐一の事好きなの?」

今まで黙っていた名雪がいきなりそんな質問をする。
普段鈍いくせに変なところ敏感に反応するな。綾香はすっかり戸惑っている。

「わ、わ、私は、その・・・、先輩は尊敬する人でして・・・、そ、それに先輩には姉さんが・・・」

「やっぱり、祐一さんと紫苑さんってそういう関係なんですか?」

「どうなの?祐一」

矛先が綾香から俺に向く。
それは昨日やっただろうが。

「言っただろ。俺と紫苑はそんな関係じゃない」

「あら?そうだったの?」

「・・・先輩まで何を言う・・・」

思わず学校である事を忘れて“先輩”と呼んでしまった。俺なりに動揺したのかもしれない。

俺と紫苑の関係・・・。
改まって訊かれると答えようがない。

「じゃあ、どういう関係なの?」

「姉として、妹の事を知っておく必要はあるわね。どうなの祐一ちゃん」

「祐一さん!」

「先輩・・・」

名雪と栞がずずいと、先輩が楽しげに、綾香が遠慮がちに俺に詰め寄る。
えっと・・・、香里と北川は・・・。

「おい美坂、この新作メニュー結構いけるぞ」

「そう。一口もらえる?」

なんかほのぼのムードだし・・・。
くそ、この場は自分で切り抜けるしかないか。でも本当に、俺と紫苑の関係ってなんだ?

「祐一!」

「祐一さん!」

「白状なさい、祐一ちゃん」

「先輩・・・」

あのな〜・・・。

「まぁ、このくらいにしときましょ」

うぬ・・・先輩に助け舟を出されてしまった。って俺が追い詰められた原因の一つはあんただろうが。

「紫苑本人の言葉を借りるなら、祐一ちゃんは紫苑の対」

「対?なんの事ですか?」

「さあ?」

先輩も知らないらしい。
というか、あいつがそんな事言ったのか。初耳だぞ。

「なんだろう?対って・・・」

悩んでいるな、名雪も栞も。
とりあえず危機は回避できたか。

「男の対は女よね」

「って事は、夫の対は妻ってわけだな」

ぐはぁ、香里、北川・・・、今まで会話に参加してなかったくせに余計な事を・・・。

「祐一!」

「祐一さん!」

「「どういうことなの(ですか)!?」」

「だから・・・」

どう収集つければいいんだ、この状況。
助け舟はまたしても朱鷺先輩からだった。

「私達姉妹の中で最初に祐一ちゃんと出会ったのが紫苑。ちょっと驚いたわね、あの子ああいう感じだから誤解受けやすくて、友達少ないけど、祐一ちゃんとは自然に一緒にいたんだもの。いつも一緒にいたけど、確かに恋人って印象じゃなかったわね。そんな歳でもなかった、っていうもの理由だけど。だけど少なくとも、普通の関係じゃないわねぇ」

だから・・・、一言多いんだよ、あんたは。
全然助け舟になってねえ。

結局俺は昼休みが終わるまで名雪と栞に詰め寄られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

うぬ・・・主演のはずの紫苑が名前しか出られなかった。
ほんとは出るはずだったんだけど、長くなったのでそのシーンは次回に持ち越し。
まぁ、立場上学校のシーンに登場できないのが出番の少なくなる要因か。
そのうちね・・・。