紫苑―SHION―
~Kanon the next story~
序章
夢。
夢を見ている。
子供の俺。
泣いている俺。
どうして泣いているんだろう?
いや・・・。
俺はもう、そのわけを知っている。
思い出したから。
だからこれは、昔の俺。
俺の前には、一人の女の子がいた。
泣いている顔を上げると、いつもその子がいた。
「・・・君の事嫌いだ」
はじめて話し掛けたのは、そんな言葉だったと思う。
女の子は何も言わない。
深い目で、じっと俺を見ている。
「君は、白いから嫌いだ」
女の子の肌、髪、みんな白かった。
だから嫌い。
「君は、赤いから嫌いだ」
女の子の瞳は、真っ赤だった。
だから嫌い。
白は雪。
赤は血。
嫌い。
「・・・悲しい事があったんだ」
「忘れてしまいたいくらい・・・悲しい事が」
そこまで話した時、はじめて女の子が口を開いた。
「・・・なら、忘れてしまえばいい」
儚げな姿で。
虚ろな目で。
女の子は俺に近づき。
俺の顔を引き寄せ。
そして・・・。
彼女は、そっと俺に口付けをした。