Kanon Fantasia

 

 

 

第41話 オーバーリミット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火山の地下不覚で魔獣と祐一達の戦いが始まろうとしていた頃、上空では凄まじい光景が繰り広げられていた。
隣りの山からそれを見ていた八輝将の面々は、我が目を疑ったほどだ。

瑞佳 「な、なんなの・・・あれ?」

詩子 「笑えないね・・・」

並の魔術師が使う大魔法クラスの爆発が立て続けに起こっている。
目を凝らして見れば、それを起こしているのは数匹の魔獣達だったが、逆にその魔獣も何者かの攻撃を受けている。

みさき 「・・・あんなものじゃないよ」

茜 「どういうことですか?」

みさき 「彼女の力は、まだまだあんなものじゃないよ」

 

 

 

また一匹、魔獣が攻撃を受けて空間の狭間へ逃げ帰る。
召喚魔獣は、その気になればいつでも元の世界へ戻ることができる。
呼び出されて役目が終わる、或いは行動不能なダメージを負うと、帰っていく。
もう何匹目になるのか・・・。

レギス 「どうした? こんな小物魔獣をいくら召喚したところで私の相手にはならんぞ」

莢迦 「あら、そう?」

レギス 「人間では最強の魔術師と聞いたからどれほどかと思えば、これなら相沢夏海の方がよっぽど楽しめたぞ」

莢迦 「だ〜いじょ〜ぶだよ。お楽しみは、まだまだこれからだから♪」

レギス 「・・・・・・」

確かに高い魔力を持っている。
莢迦を見た時、レギスはまずそう感じた。
しかし驚くに値するほどかと問われれば、否と答える。
そのはずなのに、莢迦を見ていると全身が警戒信号を発する。

レギス 「人間風情が、魔族をなめるな」

莢迦 「なら、見せてあげようか、この莢迦の本当の力を」

自分が乗っているケーツハリーを残して、全ての魔獣が帰っていく。
そして莢迦は御神刀久遠を抜いた。

莢迦 「行こうか」

レギス 「ならば、私も本気を出そう」

それに対し、レギスはローブを脱ぎ捨てる。

莢迦 「それが君の正体か」

人型ではあるが、明らかにそれは人間の姿ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「どぉぉぉりゃぁあああああ!!!!」

気合一発、壁を利用した三角跳びで魔獣の頭上にまで行く。
いきなり全開の魔力をデュランダルに込めて振り下ろす。
硬い表皮と言えども、額はそうでもないはずだった。

ガキィン!

そう思ったのだが、刃は僅かに食い込んだだけでほとんど傷を与えることはなかった。

祐一 「マジ?」

グランザム 「グワァァァァァ!!!!」

それでも少しは痛かったのか、魔獣は首を振って祐一を振り落とす。

祐一 「ちっ、やっぱり弱点になりそうなのは口の中だけか・・・」

舞 「祐一」

祐一 「おう!」

今度は舞と二人で同時に突っ込む。

グランザム 「ガァアアアアアアアアアア!!!!」

向かってくる二人に向かってグランザムが咆哮する。
声に魔力がこもっているのか、凄まじい圧迫感だった。

祐一 「この程度・・・」

舞 「むしろ好都合」

ちょうどグランザムは大口を開けているところだった。

祐一 「デュランダル!」

魔力でできた剣なら、折れることはないはずと、祐一は開いた口の中にデュランダルを立てる。
支えになってグランザムの開いた口が塞がらなくなる。

グランザム 「ゴァァァァアアアア!!!」

当然魔獣は暴れる。
支えになっているものを振り払おうと首を振るため、祐一は酔いそうだった。

舞 「はっ!」

舞がレヴァンテインから発生させた力場が開いた口の中に撃ち込まれる。

グランザム 「グァ・・・!」

佐祐理 「あははー、お次は佐祐理のを喰らってくださいねー。シューティングシャワー!」

魔力の光線を束にして放つ佐祐理の魔法が魔獣の口内に侵入する。
やはり中からの攻撃はさすがに効果があるのか、魔獣が僅かに動きを止める。
その隙に祐一と舞も離れ、様子を見る。

グランザム 「・・・・・・」

祐一 「やったか?」

そう思ったのも束の間、ギロリと魔獣の目が祐一達を睨み付けた。
次の瞬間、祐一は横からの衝撃を受けて壁まで吹き飛ばされる。

祐一 「な・・・!?」

本能的に防御したことで直撃は免れたが、飛んできたのは魔獣の尾っぽだった。
さら魔獣の前足が舞に向かって落とされる。

舞 「く・・・っ!」

それを何とか回避した舞だったが、すかさず尾っぽの攻撃を受けて同じく吹き飛ばされる。
魔法を放とうとした佐祐理に対しても、口を開けての衝撃波を放つ。

佐祐理 「きゃっ!」

祐一 「佐祐理さん! 舞!」

先ほどまでとは比べ物にならない。
速さも魔力もさらに段違いに上がっている。
まるで、寝ていたものが起きたように。

祐一 「今までは寝起きで調子が出なかったとでも言うのかよっ」

それに答えるように、魔獣の攻撃が祐一を襲う。
とても反撃する暇などなく、逃げるのが精一杯だった。

 

 

 

 

夏海 「っ・・・祐一・・・」

じっと祐一の戦いを見ている夏海は、今にも飛び出しそうになる自分を必死に抑えていた。
相手は魔獣、本来なら自分でさえ本気で戦って勝てるかどうか五分五分の敵だ。
三人がかりとは言え、まだ祐一達の手におえる相手ではない。

夏海 「(でも・・・祐一は強くなりたいと言っている。ここで私が力を貸しても、意味はない)」

成長しようとする子供の背中を押すことはできる。
しかし、手助けしてしまえば、その成長を妨げることにもなる。

夏海 「(見守ろう。それが、親の務め)」

羅王丸 「あんだけ速い攻撃を、よく避け切ってる」

美凪 「・・・ですけど、決め手を欠いたままでは、いつかやられます」

羅王丸 「だな。どうするか」

 

 

 

 

 

 

見た目の巨体とは裏腹に、信じられない俊敏性だった。
高速で襲い来る尾っぽの攻撃を完全にかわすことは不可能に近い。
しかも相手を倒す手段がない。

佐祐理 「祐一さん、確かそのデュランダルって、無限に魔力を溜め込めるんじゃなかったですか?」

祐一 「そうなんだが、集めすぎると制御しきれない」

佐祐理 「う〜ん・・・あっ、魔力を集められるんですよね、祐一さんとその剣があれば」

祐一 「ああ?」

佐祐理 「なら、佐祐理に考えがあります。ただ・・・・・・」

ちらっと舞の方を見る佐祐理。
かなり心配そうな目だ。
そして舞には、佐祐理の意図がわかったようだ。

舞 「・・・わかった。私が時間を稼ぐから、佐祐理は準備をして」

佐祐理 「でも・・・術を完成させるのに五分くらいかかっちゃうかもしれない・・・そんなに・・・」

舞 「・・・五分くらいなら・・・もつ」

祐一 「何をする気だ? 佐祐理さん」

佐祐理 「佐祐理が使える最大の魔法をやります。ただ、佐祐理だけでは魔力が足りないので、祐一さんに力を貸して欲しいんです」

 

 

 

 

羅王丸 「お、なんかおっぱじめる気だぜ」

魔獣の前には舞だけが進み出て、最後列に佐祐理、そのすぐ前に祐一が剣を構えて立っている。
縦一列の奇妙な隊列だった。

 

佐祐理 「祐一さん、すみませんが、魔力を集めるのは全部お任せします。佐祐理は少しでも早く術を完成させますから」

祐一 「わかった」

佐祐理 「チャンスは一回です。絶対に決めましょう」

祐一 「おう!」

舞 「はちみつくまさん」

 

祐一 「行くぜっ! うぉおおおおおおおおおお!!!!」

いきなり全開状態で魔力を集める祐一。
その時点で、数字にして大体一万くらいの魔力が集められる。
しかし、まだ足りなかった。

祐一 「おおおおおおおおおお!!!!」

ねじり出すような感じでさらに周囲から魔力を吸い上げる祐一。
それに伴い、剣の光が増していく。

佐祐理 「・・・行きます」

そしてその魔力を受け、佐祐理が魔法の準備に入る。

 

何かを察したのか、魔獣が前に進み出ようとするが、それを舞が阻む。

舞 「・・・ここから先へは行かせない」

グランザム 「グァァアアアアアア!!!」

舞 「レヴァンテイン・・・行くっ!」

爆発が起こった。
誰もがそう思うほどの魔力が一気に舞と魔剣から発せられる。
それこそ本当に爆弾でも使ったような勢いで舞が突進する。

羅王丸 「速ぇ!」

羅王丸さえ驚くほどのスピードで突っ込んだ舞の一撃は魔獣の腹部にまともに入り、その巨体を浮かせた。

舞 「はぁああああああ!!!!」

乱撃。
舞は一秒たりとも休むことなく剣を振り続ける。
一撃一撃に桁違いの魔力が込められていた。
数十発、否、数百発の剣撃が絶えず打ち込まれ、魔獣はどんどん浮かび上がっていき、ついには吹き飛ばされて床に叩き付けられる。

グランザム 「グァァァァァァ!!!!」

舞 「やぁああああああ!!!!」

それでもまだ舞は攻撃の手を緩めない。
剣の力場を無数に発生させ、魔獣の上に落としていく。

 

 

 

 

留美 「す・・・すごい・・・」

繭 「みゅー・・・」

浩平 「・・・なるほどな、あの剣の力がわかったぜ」

留美 「何?」

浩平 「あれは重力波だ。魔剣レヴァンテインは重力も操るってことか。エターナルソードがざわつきやがる」

 

 

 

 

祐一 「ぐぁぁぁぁぁぁ・・・・・・佐祐理さん、まだか?」

佐祐理 「も、もうちょっと・・・待ってくだ・・・さい・・・」

 

美凪 「・・・あれは・・・カタリナさん、あの魔法を佐祐理さんに教えていたんですね」

夏海 「あれを・・・、無茶だわ! カタリナでさえ全魔力を放出するほどの極大魔法よ。祐一の剣、デュランダルが莢迦の言っていたとおりの力があるとしても、魔力を汲み上げるポンプの役割をしてる祐一の体がもたないわ!」

美凪 「・・・大丈夫。相沢さんなら、大丈夫」

夏海 「大丈夫って・・・!」

羅王丸 「夏海。黙って見てろや。ガキがどこまでやれるのかをな」

夏海 「・・・・・・」

美凪 「・・・ふふ」

こんな状況ながら、美凪は夏海を見て微笑ましい気分になる。
或いは最凶と言われた莢迦以上に冷徹で、何を考えているのかわからないところのある夏海だったが、こうしている彼女は、普通の母親だった。

美凪 「・・・相沢さん、倉田さん、川澄さん、ガッツ」

 

 

 

 

舞 「せぃっ!」

下あごに重力波を打ち込み、舞は上へ飛び上がる。
肩越しに剣を思い切り振りかぶる。
剣を中心に、強力な魔力と重力場が発生する。

グランザム 「グルルルルル・・・・・・」

舞 「超重圧墜斬(グラビティザッパー)!!」

 

ドゴォーーーーーンッ!!!!!!!

 

魔獣の体が完全に見えなくなるくらい床が陥没した。
凄まじい破壊力に、見ている者ほとんどが唖然とする。

 

潤 「おいおい・・・マジかよ?」

香里 「信じられない・・・」

真琴 「あぅーっ」

美汐 「いつの間にあんな技を・・・?」

あゆ 「すごい・・・」

 

浩平 「くそぉ、またすごいもん見せてもらったぜ」

留美 「呑気に言ってる場合?」

繭 「みゅー」

 

美凪 「・・・ぱちぱちぱち」

夏海 「・・・・・・」

羅王丸 「大したもんだ。だが、見せ物はまだ続くぜ」

 

栞 「すごいですね。どうですか? 幽さん」

幽 「まあまあだな。だが、まだ終わっちゃいねえぜ」

 

 

陥没した穴から、魔獣の足が現れる。
淵に足をかけて、体を持ち上げた。

グランザム 「グフゥゥゥゥゥ!!!」

さすがにまったくの無傷とはいかなかったが、まだまだグランザムは健在だった。
傷は各所についていたが、中でも腹部の傷が深い。
しかしそれも致命傷ではない。

舞 「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

それに対して舞は、剣を杖にして立っているのがやっとだった。
だが、時間は十分だった。

 

佐祐理 「舞! 下がって!」

舞 「・・・・・・っ」

最後の力を振り絞って舞は佐祐理の魔法の射程内から出る。
祐一の持つデュランダルは既に剣の形を維持できないほど魔力を放出しており、佐祐理の周りにその力が集まっている。

佐祐理 「行きますよ・・・!」

体の前で両手を合わせ、弓を引くように左手を前、右手を後ろに引く。
左手から左右に扇状に光が広がり、本当に光でできた巨大な弓矢を引いている形になる。

佐祐理 「くっ・・・!」

だがその途端、佐祐理が体を真っ直ぐに保てなくなる。
魔力が暴れて、留めて置けないのだ。

佐祐理 「す、すごい魔力・・・制御しきれない・・・!」

祐一 「佐祐理さん! そのまま撃て!」

佐祐理 「でも、このままじゃ狙いが・・・!」

祐一 「もうこっちが限界だ! 狙いは俺がつける。撃て!」

佐祐理 「祐一さん・・・」

祐一 「俺を信じろ」

佐祐理 「・・・わかりました。祐一さんを信じます。行きますよ!」

祐一 「おう!」

佐祐理 「アルテミスノヴァ!!」

右手を放すと、光の矢は撃ち出された。
しかし制御できていない魔力はとんでもない方向へ飛んでいこうとする。
祐一はその魔力を強引にデュランダルで押しとどめた。
そして魔獣に狙いを定める。

グランザム 「グワァァァアアアアアアア!!!!」

祐一 「喰らえっ!!」

バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!

光の矢を抱え込んだ剣を、魔獣目掛けて振り下ろす。
そこから巨大な光の奔流が魔獣の腹部にある、舞がつけた傷へ向かって飛んでいく。
傷付いた皮膚では防ぎようもなく、光は魔獣を貫き、壁さえも貫通していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォ!!!!!!

莢迦 「およよ?」

山の中腹辺りから、凄まじい光が地面を突き破って飛び出し来た。

レギス 「これは・・・」

莢迦 「今のは、アルテミスノヴァ。カタリナったら佐祐理にあんなもの教えてたんだ。どうやら、向こうは終わったっぽいね」

レギス 「まさか、グランザムがやられたのか?」

莢迦 「こっちも時間ないし、いい加減切り上げようか。さすがに魔族、君は強い。だから、四大魔女でも四死聖でもない、このドラゴンロードマスター莢迦の本気を見せてあげるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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