Kanon Fantasia

 

 

 

第39話 全員集合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「やるな、真琴に美汐。十二天宮の一人を倒すなんて」

真琴 「当然よぉ」

美汐 「さすがに、簡単ではありませんでしたが」

先へ進みながら、二人は佐祐理の治癒魔法を受けている。
戦いの後であることと怪我人がいるということで、先ほどまでより足取りがゆっくりだった。

祐一 「ん? 誰かいる・・・」

通路の少し先に、微かに気配を感じた。
羅王丸と莢迦も感じ取っていた。

祐一 「俺が見に行く。佐祐理さんは真琴と美汐の快復。あゆはここで見張っててくれ」

佐祐理 「わかりました」

あゆ 「任せてよっ」

四人を残して祐一は先に進む。
羅王丸と莢迦も一緒だ。

莢迦 「・・・ていうか、この魔力は・・・」

何か別のことに気付いたのか、莢迦が一足先に進む。
珍しい行為に、祐一が訝しがる。

その莢迦が通路の角を曲がると、気配の主がいた。

莢迦 「夏海?」

夏海 「・・・・・・莢迦・・・」

莢迦 「どうしたの?」

夏海 「・・・ちょっと・・・ドジった・・・かも・・・」

そこで力尽きたのか、壁に寄りかかっていた夏海の体が前のめりに倒れる。
莢迦が前に出るより先に、その体を支える者があった。

莢迦 「なにやら妙な展開になってきたね」

祐一 「ん? あんたは・・・!」

莢迦 「奇妙な場所での奇妙な親子対面・・・って感じだね」

祐一 「とにかく! 佐祐理さんを呼んで・・・」

莢迦 「待った」

祐一 「ぐぇ・・・」

踵を返して走り出そうとした祐一の襟首を掴んで止める莢迦。

祐一 「何しやがる!」

莢迦 「快復なら私がやるよ。夏海は結構プライド高いから、他人に無様な姿は晒したくないはずだよ。この場に他に誰かいたら、意地でも気絶なんてしなかったろうね」

祐一 「・・・そうなのか?」

莢迦 「そうなの。意地っ張りなあたりは君に似てるよね」

しゃがみこんだ莢迦は、素早く魔獣カーバンクルを呼び出す。
その額のルビーが光って傷を治していく。

莢迦 「・・・傷は治せそうだけど、かなりのダメージ受けてるから、完全回復には時間がかかるね」

夏海 「ぅ・・・」

莢迦 「起きた?」

薄っすらと目を開けて、自分の状態を確認すると、夏海は素早く起き上がる。
まだ辛そうに見えたが、気丈に振舞うあたりが意地っ張りと言われる所以なのかもしれない。

夏海 「・・・久しぶり」

羅王丸 「ああ、そうだな」

お互いに素っ気無い態度だったが、他の者には絶対に見せないであろう感情がこもっているように祐一には思えた。
そしてそれは、自分もこの場では他人でないことを意味しており、はじめてこの二人が自分の両親なのだと認識できた。

莢迦 「いや〜、派手にやられたね〜」

夏海 「・・・悔しいけど反論できないわ」

羅王丸 「しっかし、おまえがこんなにやられるとはな」

莢迦 「イイ男にでも見惚れた?」

夏海 「私が愛する男はこの世で二人だけよ」

莢迦 「うわっ、さりげなくすっごく恥ずかしい台詞を、しかも本人達の前で・・・。もしかして、私って思い切りお邪魔虫?」

他の三人それぞれにとって気の許せる仲間である莢迦だが、家族という単語の中では完全な部外者だった。
はじめての家族三人水入らずの中で、莢迦の存在は異端だった。

夏海 「冗談はこの際どうでもいいのよ」

莢迦 「そう? で、あんたがこんなにやられる相手・・・・・・レギス・・・十二天宮アクエリアスかな?」

夏海 「知っているの?」

莢迦 「さっき来たよ。挨拶程度だったみたいだけど」

夏海 「会ったのね。なら聞くけど・・・あれは、何者?」

莢迦 「さ〜ね」

夏海 「知っているはずでしょ」

莢迦 「人間万能じゃないし」

夏海 「はぐらかすな。あれは・・・」

 

佐祐理 「祐一さーん、何かあったんですかー?」

なかなか戻ってこないのを心配してか、佐祐理が通路の角を曲がってやってきた。
他の三人も一緒だ。

真琴 「あーっ! 十二天宮の奴!」

美汐 「みたいですけど・・・少し様子が違いますね」

莢迦 「ま、積もる話は後にして。先に進もうよ。夏海も一緒に行くでしょ?」

夏海 「・・・ええ」

皆の前で追及するのはやめにしたのか、夏海は先頭に立って歩き出す。
おそらくこの先の道を知っているであろう夏海は無言で進み、祐一達はその後をついていく。
夏海の後ろを歩いていた祐一は、小声で話し掛けられて少し前に出る。

夏海 「・・・祐一、また強くなったみたいね」

祐一 「そう、か?」

羅王丸 「なかなか見所あるぜ。さっきなんかあの元と正面からやり合ってやがった」

夏海 「そう。かっこ悪いところ見せたわね。次は敵として会うなんて言っておいて」

祐一 「いや・・・そんなことは・・・」

羅王丸 「なんだなんだ、男なら言いたいことはすぱっと言えよ」

夏海 「羅王と違っていい子なのよ」

羅王丸 「情けねえぞ。世の中不良こそ最強よ」

夏海 「祐一、父親にはあんまり似ちゃ駄目よ」

祐一 「それは俺もさっきから思ってた」

羅王丸 「なんだよ、そりゃ」

 

莢迦 「いや〜、いいね〜、ほのぼのしてて」

佐祐理 「いつの間にか行方知れずだった祐一さんのご両親が揃ってしまいましたね」

莢迦 「相沢一家、初揃い踏み」

佐祐理 「祐一さん、とっても楽しそうです」

莢迦 「思いっきり照れてるけどね」

 

 

 

 

 

 

 

夏海 「そろそろ最下層の一つ手前よ。私が知っている場所はここまで。これより奥は知らない」

莢迦 「つまり、信用されてないんだ」

夏海 「当然ね」

夏海を先頭に、祐一達は階段を下り、通路を通って先へ進んでいった。
そして、アーチ状の通を抜けると、巨大な通路に出た。
ちょうど反対側からも一団がやってきている。

佐祐理 「あ、舞ー!」

祐一 「おお、舞か」

舞 「・・・ただいま」

羅王丸 「よぉ、幽。久しぶりだな」

幽 「相変わらず筋肉にばかり血が行って、脳みその方は足りてなさそうな顔してやがるな」

莢迦 「まぁまぁ、久々なんだからいきなり喧嘩しない。ちゃおっ、美凪。この前はありがとね。それとちるちる、ぎゅ〜」

みちる 「んに〜」

美凪 「・・・ちゃお。夏海さんも、ちゃお」

夏海 「相変わらずね、あんた達は」

潤 「なんか、すげぇ人数だな」

香里 「名雪はいないみたいだけどね」

あゆ 「名雪さんなら一度家に帰るって言ってたから」

真琴 「ていうか、知らないのもいっぱい・・・」

美汐 「折原さん、またいらしてたのですか」

浩平 「まぁな。よろしく」

留美 「本当にすごい人数ね」

繭 「みゅー」

それぞれが再会を喜び合い、新たな出会いの挨拶をかわす。

 

あゆ 「・・・・・・幽・・・」

幽 「またおまえか。覚悟は決まったのか?」

あゆ 「・・・まだ、わかんないよ。でも、一つだけ、やっぱりボクは君がしたことを許せない」

莢迦 「・・・・・・(そうか。あの子はあの時の・・・)ねぇ、あの二人、前にも会った?」

祐一 「? ああ、聖都であゆと最初に会った時な、いきなり幽に挑みかかった時は驚いたけど」

莢迦 「幽は、あの子を殺さなかったのね」

祐一 「まあな。けど、自分が殺した相手を覚えてもいないってのはどうかしてるぜ。あいつの理屈はわからなくもないけど・・・」

莢迦 「・・・・・・忘れてたとしたら、幽が自分に楯突いた子を生かしてなんかおかないよ」

祐一 「え?」

莢迦 「しっかしほんと、すごい人数だよね。読者様のために整理しようか」

祐一 「なんの話だよ?」

 

 

 

 

 

 

相沢祐一
 魔力0 神剣デュランダル(4000+/無限?)

倉田佐祐理
 魔力7700 シャイニングホーン(1500/5800)

川澄舞
 魔力12000 魔剣レヴァンテイン(4200/18000)

月宮あゆ
 魔力6930 フェザーロッド(1680/4000)

沢渡真琴
 魔力6250 フォックスロッド(1420/3500)

天野美汐
 魔力5500 闇の魔導書(850/4200)

北川潤
 魔力3680 ゴールドスピア(1420/1250)

美坂香里
 魔力3530 ゴールドアックス(1570/1040)

折原浩平
 魔力5000 真・エターナルソード(3333/15000)

七瀬留美
 魔力4800 ルーンレイピア(2200/5000)

椎名繭
 魔力5720

美坂栞
 魔力9300

羅王丸
 魔力28700 トールハンマー(3800/7400)

相沢夏海
 魔力34000 サファイアロッド(2600/12900)

遠野美凪
 魔力33000 +みちる(2000/7000)

莢迦
 魔力35000+ 御神刀久遠(2900/19000)

千人斬りの幽
 魔力0 魔剣ラグナロク(4980/25000)

 

 

 

 

 

 

 

潤 「なぁ、美坂、この早々たるメンバーの中だとよ、俺達霞んでないか?」

香里 「悔しいけど、確かにレベルが足りてないわ」

魔力の上でも劣っている。
中には伝説級の武器を持っている者もいたり、伝説上の人物さえいた。
特に四大魔女と四死聖の力は格が違った。

美汐 「私達も、この中では似たようなものですよ」

真琴 「ふんっ、今はよ今は! 絶対追い越してやるわ」

 

浩平 「俺も大分強くなったよな」

留美 「お陰様で、私達も前より強くなってるけど・・・伝説になってる連中ってのはほんと化け物ね」

繭 「みゅー・・・すごい」

浩平 「なーに、誰だって最初は同じさ。あいつらと俺らとじゃ、年季が違うってことだろ。いずれ追いつけるさ」

 

祐一 「四大魔女三人、四死聖三人、莢迦が重複するけど、伝説にまでなった人間が五人・・・。これだけ揃うと、とんでもない迫力だな・・・」

佐祐理 「そうですね。鳥肌が立ってきます」

舞 「・・・でも、私達だって強くなった」

祐一 「確かに、舞の強さはこうして見てるだけで伝わってくるな。何してきたんだ?」

舞 「・・・ちょっと」

 

栞 「・・・すごい人達が揃ったみたいですけど・・・」

幽 「大したことねえ。どうせ俺様が最強なんだからな。こいつら全員俺の下僕どもだ」

栞 「私もですか?」

幽 「下僕一号だ。光栄だろ」

栞 「嬉しくありませんよ」

幽 「無駄口はどうだっていい。こいつらがいようがいまいが関係ない。ゼファーの野郎は俺がぶっ殺す。とっとと行くぞ」

 

誰よりも先に立って、幽は通路を進みだす。
先が見えないほど長い通路を、ただ真っ直ぐ進んでいく。
やがて皆その後に続く。

羅王丸 「待ちな、幽。俺様をおいて勝手に楽しもうなんざ許さねえぞ」

夏海 「・・・・・・」

祐一 「この先に用があるのは、俺達も同じだ」

佐祐理 「行かさせてもらいますよー」

舞 「・・・行く」

浩平 「俺も行くぜ。あんたとゼファーの戦いの顛末を見届けたいからな」

留美 「私はこいつのお守りだからね」

繭 「みゅー」

潤 「俺達だってな、雑魚扱いはされたくないぜ」

香里 「まったくだわ」

真琴 「あたしはまだまだやれるわよ」

美汐 「まだ、退場するには早いですから」

みちる 「いっくぞー」

美凪 「・・・はい」

莢迦 「ってことで・・・」

栞 「だそうですよ、幽さん」

幽 「・・・阿呆か、おまえら。下僕どもがご主人様に付き従っていくのは当たり前だろうが。さっさと来な」

伝説の魔人、千人斬りの幽を先頭に、覇王との決戦に臨む・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻る     次へ