Kanon Fantasia

 

 

 

第26話 強者激突

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名雪 「ゆ・・・ゆういちーっ!」

舞 「さゆ・・・り?」

驚きだった。
空から二人が降ってきたこともさることながら、一瞬にして船団を壊滅させた力やら何やら、とにかく驚いたのだ。
何より、名雪と舞には、目の前に降り立った二人が以前とは別人のように感じられた。

レオ 「また遺跡にいたという奴らか・・・・・・まさか今のはおまえ達がやったのか?」

祐一 「俺じゃなくてこの人ね。無茶するなって言ったんだけど・・・」

佐祐理 「ちょっとした実験ですよ。ちょうどいい按配だったもので」

上空から光のみを発する魔力を落とし、反射すると同時に膨大なエネルギーを爆発させる。
船は一瞬にして破壊されるが、乗っていた人間は軽い火傷で済むらしい。
見渡した限り、とてもそうは思えなかったが、とにかく佐祐理の魔力が以前とは比べ物にならない充実振りを見せているのは間違いなかった。

佐祐理 「佐祐理流広域魔法リフレクトシャイン、いかがでしたか?」

祐一 「面食らったか?」

レオ 「少しな。魔力の総量に関してはともかく、発想がとんでもない」

祐一 「俺もそう思うよ。あんたは、十二天宮か。その紋章は・・・レオか」

レオ 「その通りだ。しかしやってくれたものだな。覇王様からお借りした軍勢がこの有り様とは・・・」

祐一 「なーに。あとの心配はいらないさ。おまえは覇王の下に戻る必要はないからな」

祐一は剣、デュランダルを構える。
大きさ的にレオの大剣と同じくらいだ。

レオ 「戦うつもりか。構わんが、軍勢の立て直しをせねばならん。手加減せずにすぐに終わらせてもらう」

祐一 「ああいいぜ、すぐに終わらせてやるよ」

剣を構えて対峙する二人。
一対一の対決に、他人の入り込む余地は存在しなかった。

佐祐理 「・・・ささっ、佐祐理達は一先ずここを離れましょう」

名雪 「で、でも倉田さん、祐一一人を残して・・・」

舞 「あいつは強い」

佐祐理 「心配いりませんよ。祐一さんも強いですから」

自信たっぷりな佐祐理の笑み。
名雪と舞はそれに圧倒される思いだった。

佐祐理 「さぁ、そちらの方達もどうぞ。一度城まで飛びます」

往人 「あ、ああ・・・。そうだな」

五人を集めると、佐祐理は何かの術式を組み立てる。
往人も観鈴も佳乃もはじめて見るものだったが、名雪と舞はよく似たものを見たことがあった。

名雪 「まさか・・・」

そう思った瞬間、疑問を解消するように六人の体が光に包まれ、消えた。

 

 

 

 

次の瞬間、六人は城のテラスにいた。

晴子 「どわぁ・・・びっくりしたー! あんたら一体どっから出てきたんねん!?」

往人 「こっちが聞きてえよ。今のは・・・転移魔法か?」

観鈴 「ほ、ほんとだ・・・」

舞 「・・・佐祐理、いつの間に・・・?」

佐祐理 「一度見てますから、そこから少し工夫したらできるようになりました」

たった一度見ただけで、しかも超高等魔法をも模倣してしまう。
倉田佐祐理は紛れもない天才だった。

名雪 「それよりも! 祐一がまだあそこに・・・!」

テラスから見下ろすと、旗艦は三分の一ほどまで沈んでいた。
完全に沈没するまで十分といったところか。

佐祐理 「大丈夫ですよ」

名雪 「大丈夫って・・・倉田さんは祐一のことが心配じゃないのっ? 敵は十二天宮なんだよっ!」

佐祐理 「もちろん心配ですよ」

名雪 「だったら・・・!」

佐祐理 「でも佐祐理は、祐一さんが勝つと信じていますから」

まったく曇りのない笑みを浮かべる佐祐理。
少しも祐一が勝つことを疑っていない者の顔だった。
自分に同じことができるかと問われれば、名雪は否としか答えられない。

名雪 「・・・・・・」

舞 「・・・・・・」

茫然とする二人の前で、佐祐理はテラスの端まで歩き、船を見下ろしながら身を乗り出した。

佐祐理 「フレー! フレー! ゆーうーいーちーさーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキィンッ!

剣と剣とが打ち合わされる。
その合間に、遠くから佐祐理の黄色い声が聞こえてきた。

祐一 「元気だな、佐祐理さん」

レオ 「ふん、余裕だな。女の声援を受けるなど」

祐一 「そうでもないさ。あんた滅茶強いじゃないか」

遺跡で実際戦ったライブラよりも上。
幽にさえ劣らないほどの強さを感じる。

レオ 「おまえも、剣の腕はなかなかのものだ。しかし、私の鎧は魔力による防御が成されている。千人斬りの幽のラグナロクほどの力のある剣ならばともかく、おまえの剣では傷一つつけられん。ましてや、魔力を持たないおまえにはな」

祐一 「また魔力かよ。面倒くさいな」

いい機会だった。
砂漠で覚えた魔力の使い方、そして聖都で手に入れたこのデュランダルがその力に耐えられるかどうか。
どちらも初の実戦投入だった。

祐一 「そんなに魔力がお望みなら・・・くれてやるぜ!」

祐一は剣を立てて精神を集中する。
大気の声、大地の声、水の声、全ての自然の流れに我が身を委ね、自らをその流れの一部とする。
そうすれば魔力は自然と体の中に流れ込んできた。

レオ 「ほぉ、これがライブラの言っていた不可解な魔力か。おもしろい。なら私も本気でお相手しよう」

 

 

 

 

 

聖 「魔力測定器を持ってきたぞ。これが気休めになるか、かえって怖い結果を出すかはわからんが」

佐祐理を除く全員がその数値に注目するために集まる。
測定器が船の上で戦っている二人に対して向けられ、数字が表示される。

 

祐一
 魔力5500 デュランダル・攻撃力2400、魔力6300

レオ
 魔力10700 武器攻撃力2000、魔力3680

 

名雪 「嘘・・・・・・何これ? どうして祐一に魔力が・・・?」

舞 「・・・まさか、あの時と同じ・・・」

佐祐理 「同じというのは正しくありません。祐一さんは本来の自分の力の使い方を覚えたんです」

 

 

 

 

 

 

 

祐一自身が掻き集めた魔力と、それに呼応してデュランダルが発した魔力を合わせれば、十分にレオと互角以上の力となった。
そして、剣の腕はほぼ互角。

祐一 「うぉおおおおおおっ!!!」

レオ 「ぬぉおおおおおおっ!!!」

キィンッ!
ガキィンッ!

二人の剣が何度も打ち合わされる。
戦い始めてから既に九分。
船は大半が沈んでおり、二人は足場を求めてマストの上にまで登っていった。

祐一 「うぉりゃああぁぁ!!」

レオ 「む・・・とぉおおおお!!」

祐一が剣を繰り出せば、レオはそれをガードして反撃に転じる。
それをさらに祐一が避け、そこからもう一度攻撃を仕掛ける。
両者一歩も譲らないまま、ついに戦いの舞台はマストの一番上にまで移った。
尚も船は沈み続ける。

祐一 「ふぅ・・・ふぅ・・・」

レオ 「はぁ・・・はぁ・・・」

いつしか二人の体はぼろぼろになっていた。
祐一の服はところどころ裂け、露出した肌には切り傷が無数にある。
レオの鎧も傷が多数ついており、完全に剥がされた部分からは血が滴っていた。

戦い続ける二人の、しかしまだまだ衰えないものがあった。
両者の剣が放つ輝きと、充実した魔力と、相手を見据える眼光。

レオ 「・・・強いな。我ら十二天宮以外にこれほどの力の持ち主がいたとはな」

祐一 「どうも。けど聖都から休みなしで飛ばしてきたんで疲れてるんだ。そろそろ終わらせたいな」

レオ 「そうだな。おまえとの戦いは楽しいが、いつか決着はつくものだ」

祐一 「当然、俺は負けないぜ」

レオ 「私とて、覇王十二天宮の誇りと名誉に賭けて勝利を手にする。おまえは何を賭ける?」

祐一 「俺に賭けるものなんていらねえよ。でも勝つさ。俺には、勝利の女神様がついてるからな」

レオ 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

もはや言葉は不要だった。
二人の強者が出会った時、その二人はいずれがより強いか雌雄を決する。
その瞬間が近付いていた。

いよいよ決着と思われた時だった。

バシャーーーンッ

祐一 「何!?」

レオ 「・・・誰だ?」

アリエス 「・・・レオ、退却なさい。作戦は失敗よ」

祐一 「おまえ・・・!」

水飛沫をあげる爆発を起こした張本人、十二天宮のアリエスが水面上に立っていた。

レオ 「貴殿の指図を受ける理由はないが?」

アリエス 「覇王様からの命令よ。退きなさい」

レオ 「・・・・・・了解した。おまえ、名前を聞いておこうか」

祐一 「相沢祐一」

レオ 「相沢祐一。次に会った時こそ決着をつける」

懐から何かを取り出したレオは、それを宙に放る。
空中でそれは弾け、閃光を発した。

祐一 「ちっ・・・」

視界が晴れた時、レオはいなかった。
残っていた兵達も、泳いで岸に向かっていく。
そして祐一の眼前にいるのは、アリエス一人だった。
既に船が沈むのは泊まっており、マストに乗っている祐一の足は辛うじて水面の上にあった。

アリエス 「・・・ますます強くなったようね」

祐一 「ああ・・・」

アリエス 「この短期間に・・・大したものだわ」

祐一 「聞きたいことがある。あんたに」

アリエス 「・・・・・・何かしら?」

祐一 「あんたは・・・俺の・・・・・・・・・母親なのか?」

アリエス 「・・・・・・・・・」

ずっと感じてきた疑問。
最初に会った時からまさかと思っていた。
美凪の話を聞いた時、それは確信に変わった。
しかしやはり、本人の口から真実を聞きたかった。

アリエス 「・・・私はかつて、四大魔女の一人、青嵐の大魔導師と呼ばれていた、相沢夏海。その頃出逢った一人の男と契り、祐一と名付けた男の子を産み、妹に預けた。十七年前のことよ。けれど今の私は、覇王十二天宮が一人、アリエス。あなたの敵よ」

祐一 「・・・どうしてもかよ?」

夏海 「今まではあなたの成長を見るのが楽しかった。けれど、この次会う時は、敵として容赦しないわ。四大魔女の力、存分に見せてあげるわよ」

最後に夏海は祐一に微笑みかけ、転移魔法でその場から消え去った。
敵の引き際は見事で、追撃する間もないまま綺麗さっぱりいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如復活した覇王軍の襲撃を受けていたのはセレニア城だけではなかった。
各地で同様の事件が起こっていると知らせを受けた晴子は、一度中央へ行って対策を練ることにした。

晴子 「すまんな。ほんまやったら、敵を追っ払ってくれたあんたらのために祝勝会開きたいところやけど・・・」

祐一 「いえ、気持ちだけで十分です。俺達もまだ他の仲間を探さなくちゃならないし」

晴子 「あんた強い上に男前やな。気に入ったで、今度一緒に酒飲もか」

祐一 「俺、未成年っすよ」

晴子 「細かいこと気にしたらあかん! ほなな、ほんまおおきに! 絶対いつか借りは返すで」

馬を走らせ、晴子は城をあとにした。
城の方は聖に一任していっている。

聖 「本当にもう行くのか? 昨日の今日で疲れているのではないか?」

祐一 「いえ、おいてきた二人とも合流しなくちゃならないし」

聖 「そうか。まぁ、無理には引き止めんよ。それと、困ったことがあったらいつでも来てくれ」

祐一 「ありがとうございます」

往人 「おまえ、相沢って言ったな」

祐一 「ああ」

往人 「昨日の戦いぶり、なかなか驚かされたぜ。俺もまだまだだな」

祐一 「いや、あんたもすごかったって名雪が言ってたよ」

往人 「当然だ。今度会う時までに、俺もさらに技を磨いてるからな。いつかやりあってみてえよ、おまえとは」

祐一 「手加減しないぜ」

往人 「こっちこそ」

二人は握手を交わして別れた。
あとから行って見せ場を奪ってしまったが、祐一は往人の実力が一目でわかった。
以前の自分だったら間違いなく負けている相手だろうし、今回も色々と制限がなければ往人だけでも敵を撃退できたかもしれない。

祐一 「まだまだ世の中広いってことだな」

名雪 「観鈴ちゃん、佳乃ちゃん、またねー」

観鈴 「うん、バイバイ」

佳乃 「まった来てねぇー」

ポテト 「ぴこぴこー」

祐一 「・・・・・・それ、何?」

佳乃 「? ポテトだよ」

祐一 「犬・・・なのか?」

舞 「らしい」

名雪 「わたし達も最初見た時はびっくりしたよ」

祐一 「・・・そうか」

深くは追求しまい。
そう思う祐一だった。

 

 

名雪と舞を仲間に加え直して、祐一達は聖都で一旦別れた美凪、みちる、あゆと予め決めておいた合流ポイントへ向かう。

佐祐理 「あははーっ、でも美凪さんの飛行魔獣がいなかったら大変だったかもしれませんね」

祐一 「確かに。かなり遠かったからな。戻るのも大変だ」

名雪 「・・・・・・」

舞 「・・・・・・」

名雪と舞の二人は城を出てからずっと押し黙っていた。
祐一と佐祐理がやけに仲良く話すのに若干の嫉妬を感じているというのもあったが、それ以上に昨日の戦いを通じて力の差を見せ付けられたことによるショックが大きかった。
別れてから一ヶ月、同じ時間を同じ様に修行して過ごしたはずなのに、何故これほどの差が生じているのか。

祐一 「ん? どうした二人とも」

名雪 「落ち込んでるんだよ」

祐一 「おまえがか?」

名雪 「すっごく意外そうな顔しないでよ〜。わたしだって落ち込むよ。結構がんばったのに、祐一、わたしなんかより全然強くなってるんだもん」

祐一 「・・・ん〜・・・俺はさておき・・・強くなったのは・・・」

佐祐理だと祐一は思った。
確かに自分も強くなったとは思うが、祐一は今の佐祐理に勝てる気がしなかった。
そう感じているのは、祐一だけでなく、舞も同じだった。

舞の感覚としては、祐一は元々強かった。
ただ、魔力がないというハンデから、どうしても戦いになると遅れを取ることもあったが、逆に言えばそのハンデがなければ祐一は十分に強いということだ。
祐一はただ、他の人間とは違う魔力の使い方を覚えただけ。
それに対して佐祐理は、まったく今までと別次元の力を手に入れていた。
正直、ずっと一緒にいた舞としては、祐一に遅れを取ったことよりそっちの方が複雑な心境にさせられた。

佐祐理 「はぇ? どうしたんですか、みなさん揃ってこっちを見て」

わかっていないのは本人のみ。

 

 

 

 

 

一方その頃、祐一達一行の預かり知らぬところで、壮絶な戦いが始まろうとしていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻る     次へ