Demon Busters!



   第一章 空からきた少女  −2−





















 衝撃が収まるのを待って、ラークは目を開いた。
 まず確認したのは、自分が無事だということだった。身体に異常は感じられない。しいて挙げるなら、全体重を支えている腕が少し痛いくらいだろうか。
 次に周囲の確認。
 上を見ると、元いた場所から数メートルほど落下したようだ。建物の一階にいたのだから、今はハイアータウンの地盤――プレートの中にまで落ち込んでいるということだった。
 下を見ると、今度はさすがにちょっとゾッとする。下の街並みが見えた。
 突如として落下してきた光る物体は施設の天井を破り、厚さ三十メートル余りもあるプレートを貫通してその下の地面まで落ちていったようだ。落下事故防止のために二重に張り巡らされた、象が十頭落ちても平気なはずの網もぼろぼろになっている。 いくつかの支柱の間に設けられた区画にも引っかからなかったようで、二百メートル以上の高さを地表まで一気に落ちていったようだ。
 足下が割れて自分も落下しかけた時、咄嗟にプレートの中で剥き出しになった鉄骨に捕まることで自身の落下を防いだが、鉄骨ごと持っていかれなくて幸いだった。 百万人以上の生活圏を支える分厚いプレートを貫くほどの衝撃だったのだ。もう少し落下の中心に近かったらひとたまりもなかったろう。そしてそれは、まさに落下の中心そのものにいたあの男、祐漸が無事ではないだろうという予測に繋がった。
 光の落下は二人が互いに相手目掛けて踏み込もうとする直前の出来事で、タイミング的に回避することは不可能だった。
 あれの直撃を受けたとしたらただでは済まないだろうし、仮にそれで無事だったとしてもこの高さから落ちたのだとしたら、やはり助かる見込みはないだろう。
 ただの人間らしかったあの男と、強化兵である彼とでは勝敗は明らかだったと思うが、それでも少し戦ってみたい気を起こさせる相手だったため、惜しいことになったと思う。さらに言えば、目の前で一つの命が失われたことに、軽い痛みを心に覚える。
 戦うための存在、強化兵に望んでなったラークだが、人の死を戦いの必然と割り切るのは苦手だった。
 敵として対峙した以上は倒すべきであり、それで相手を殺すこともあるだろうとは思うのだが、できる限り敵にも味方にも犠牲者を出さずに済ませたらと思っていた。

「・・・・・・」

 過ぎてしまったことは仕方がない。
 ラークは目を閉じ、僅かな間対峙した相手の冥福を祈ると、鉄骨を伝って上へと登った。
 上へ戻ったところで、まずは通信機を手に取る。
 二度目のコールですぐに相手が出た。

『ラークか、無事だったか?』
「ええ、なんとか。危ないところでしたけどね」
『そうか。こちらでもおおよそは把握しているが、まずは状況を報告してくれ』
「はい」

 通信の相手はヴェルハルトという帝国軍の若き将軍だった。
 ラークとは同じ師の下へ剣を習った兄弟子にも当たり、軍に入った後もよくしてもらっていた。彼にとっては直接の上司ではないが、今回のようにヴェルハルトからの個人的な要請で任務に就くこともしばしばあった。
 この場で起こったことを、ラークは事細かにヴェルハルトへ報告していく。
 もっとも、最後の出来事に関しては、目の前の状態を伝える以外に話しようもなかった。

『その光る物体を、はっきりと見たか?』
「いえ、一瞬のことでしたから。大きさは二、三メートルくらいだったと思いますけど、正確なところは・・・・・・」
『ふむ・・・隕石の類か?』
「かもしれませんけど、それだとちょっと変なんですよね」
『どんな風に?』
「隕石って、たいてい地表に向かって斜めに落ちてくるじゃないですか。けどあの光は垂直に落ちてきたんです。地表の落下地点も穴の真下にありますから、間違いありません」
『なるほどな。ただの隕石にしては確かに妙な点が多すぎる。だが、他にそれだけの落下エネルギーを持つものとなると・・・・・・』

 強化兵の攻撃能力をもってしても容易には破壊できないハイアータウンのプレートを貫いた威力は計り知れないものだった。空から降ってきたこともあり、隕石でもなければ説明できそうもないのだが、はっきりそう言い切る材料もなかった。

『まぁ、落下物の正体について俺達があれこれ考えても仕方がない。それに関しては調査隊が組まれることになるだろう。おまえはもう戻って構わんぞ』
「わかりました」
『すまんな。直属の部下でもないのにわざわざ手を煩わせて』
「未来の大将軍が何言ってるんですか。もっと顎で使ってくれていいですよ」
『そういうわけにもいかん。おまえももう“特戦”のナイツだ。表向きの階級では俺の方が上だが、実質的な権限は同等かそっちの方が上と言っていい。本来なら俺は、おまえに命令なんてできる立場にはないよ』
「それでも、あなたは僕にとってずっと尊敬する兄弟子です。こんなことでいいなら、いくらでも頼みは引き受けますよ」
『助かる。上層部はレジスタンスへの対応に消極的でな。小事など捨て置けとのことだ。国境付近の様子も最近慌しくて、正規の部隊は動かし辛い』
「そういう事態に対処するためにも、僕達“特戦”がいるんですよ」
『そうだったな』

 それから一頻り事後処理についての打ち合わせをして、もう話すこともないだろうというところで思い出したようにヴェルハルトが切り出した。

『そういえば、例の噂の傭兵はどうだった?』
「名前は祐漸。どうやら強化兵やミュータントじゃないみたいでした」
『ただの人間か?』
「見たところは。実際に戦う前にあの光が落ちてきたので、どれくらい強いのかは結局わかりませんでした」
『そうか。それは残念だったな・・・もっと色々知りたかったのだが』
「どの道、もう大して意味はないでしょう。あの高さから落ちた以上、まず助かりませんよ」

 強化兵のラークでさえ、あの高さでは無事では済まない。生身の人間なら尚更だった。

『そうだろうな。まぁ、一応調査隊にその男の捜索もするよう伝えておこう。死体探しになるかもしれんがな』
「・・・あの、どうしてそんなに気にかけてるんです? あんな傭兵一人くらい」
『・・・・・・・・・』

 ヴェルハルトは数秒間押し黙る。
 何か異様な迫力を感じて、ラークはそれ以上追求することに躊躇いを覚えた。
 その内、静かにヴェルハルトが口を開く。

『ラーク、おまえは、竜という生き物を見たことがあるか?』
「竜? ドラゴンですか? いえ、資料では見ましたけど、実物はまだ・・・・・・というか、実物を見る時は死ぬ時と思え、って教わりましたよ」

 竜はこの地上に生息する生き物の中で最強の存在と言われている。
 大きさは小振りなものでも十メートル近く、最大種になると三十メートルを超すと言われ 、大地に住むものはひと踏みで大地震を起こし、空を飛ぶものの羽ばたきは嵐を巻き起こし、火山のマグマの中でも生きられるという常識外れの超生物である。その前では、ルベリア自慢の強化兵と言えども霞んで見えるという。
 まず少なくとも、一対一で遭遇したなら死を覚悟すべきだった。
 強化兵が十人いて、ようやく小さめの竜と戦えるだろうというくらいだ。

「それが、どうかしたんですか?」
『・・・・・・噂でな、単身竜の巣へ潜り込み、そこに巣食っていた竜を倒した男がいるらしい』
「・・・・・・まさか・・・?」
『その男の風体というのが、レジスタンスの傭兵をしている男と似ているという話を耳に挟んでな』
「う、噂でしょう?」
『まぁな。だからおまえに見極めてもらおうと思ったんだが・・・・・・そういう結果になったなら、このことをこれ以上考えるのはよそう』
「そうですね。いくらなんでも人が竜を倒すなんて、荒唐無稽過ぎますよ」

 最後に二言三言話して通信を切ると、ラークはもう一度光る落下物によって空いた穴の淵に立って下を覗き込んだ。
 まさかと思う。
 ヴェルハルトがまったく根も葉もない噂を信じるとは思えない。何らかの確証か、それに近いものがあったからこそラークに真偽の見極めを頼んだのだ。けれどいくらなんでも、たった一人の人間が竜を倒すなど有り得ない話だった。もしもそれが本当なら、それは人間ではなく正真正銘の化け物だった。
 何であれ、もはや確かめようはない。
 あの傭兵の男は死んだのだから。
 けれど、だからこそ空恐ろしいものを感じて身震いがした。
 もし、この高さから落ちて無事だったとしたら、それも立派な化け物の定義に当てはまる。そうなったら、竜退治の話も真実味を増すのかもしれない。
 本当に、まさかの話だった。



















「――ってぇ・・・・・・」

 身体の上に圧し掛かった木材をどけて、祐漸は瓦礫の下から抜け出した。
 落ちる際にあちこちにぶつけたようで、さすがに全身の節々に痛みがあった。
 とはいえ、相当な高さを落ちたはずがこの程度で済んでいるのは、他人から見たらとんでもないことだろう。

「派手に落ちたものだな」

 顔を上げると、鋼鉄の天井が見えた。
 自分が落ちてきた場所を探すと、遥か二百メートル頭上にある天井に穴が空いているのが見えた。その上、プレートの表面から換算すれば二百数十メートルの高さを落ちてきたことになる。普通ならばただでは済まない。
 生きていたら化け物、といったところだが祐漸からしてみればそれほど大したことではなかった。
 頭上から降ってきた光の塊の落下に巻き込まれ、その速度があまりに速かったため避ける暇はなかったが、落下中に体勢を立て直し、地表に叩きつけられる直前で真下に向かって剣圧による衝撃波を放ち、 落下の勢いを緩和したのだ。身体に残るダメージは、プレートを貫通する際の衝撃によるものがほとんどだった。

「ん」

 各部の調子を確かめる。
 痛みは打撲によるものばかりで、活動に支障をきたすだけの怪我は負っていない。問題はなかった。
 落ちた場所が無人の廃墟だったのも幸いだった。
 ロウワータウンには無人の区画が多く存在しているのだ。廃墟は、ここでの生活に疲れてアークタウンを離れていった者達の住んでいた場所だ。上は大騒ぎだろうが、ここでまですぐに騒ぎが起こることはなく、犠牲者もいなかったならこれも問題はない。
 むしろ問題は、あの生意気な魔法戦士の小僧に世の中の姿というものを教えてやれなかったことの方だった。

「まったく、いったい何が落ちてきたってんだ?」

 祐漸は周囲を見渡して、自分と一緒に上から落ちてきたモノを探した。

「んゅ〜・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

 奇妙な音、というか声らしきものに気付いた祐漸は、足元の瓦礫に手を突っ込む。どうやら祐漸と共に落下してきたソレは、さらに深いところに埋まっているようだ。
 思えば祐漸は落下の衝撃を抑えることができたが、さすがに他のことにまで気を回す余裕はなかったため、最初に落下の原因を作った光の塊はそのままの勢いで落下したことになる。ただでさえ頑丈なアークタウンのプレートを貫通するほどの勢いがあったのだから、地面深くまで沈み込んだとしてはおかしくはない。
 わりとすぐに何か柔らかい手応えを感じて、慎重な手付きでソレを引っ張り出す。分厚いプレートを貫いたのがブレーキになり、瓦礫の山がクッションになったようで、あまり深くまで沈んでいなかったのは幸いだった。

「もへ」

 瓦礫の上に放り出すと、ソレは意味不明な呻き声を上げた。
 落ちてきた時に一瞬見ただけだが、ソレが光の塊であったもので間違いなかったが、さて、これはいったい何だと祐漸は首を捻る。
 見た目は、人間だ。
 人間の女、外見年齢十五、六歳ほどの少女だ。わりと、というかかなりかわいい顔立ちをしている。上質な絹糸のようなしなやかな長い髪も、どこぞの民族の儀礼服のような装束も似合っているが、そうした諸々の要素はどうでもよかった。
 気にすべき点は、この女が本当に人間かどうかだ。
 パッと見、人間であることを疑う要素は見受けられない。
 だが実際にはそれは有り得ない。
 この少女は空から降ってきたのだ。
 空を飛ぶ技術がないわけではないので、物理的にそうした事が起きる可能性はある。が、そもそも人間サイズの物体がただ落下しただけであそこまでの速度は出ない。それだけの加速をするには、いったいどれほどの高さから落ちる必要があるのか。ましてやプレートを貫通したあの速度と勢いでは、生身の人間が五体満足であるわけがない。
 ハイアータウン上から落ちた祐漸でさえ無傷ではないのだ。それをさらに遥か上空からあの速度で落下してくれば、まずプレートに激突した時点で身体が潰れて粉々になるだろう。強化兵の肉体でもおそらく大して変わらない。
 最初に落ちてきた時、この少女が光に包まれていたのは身体の周りに魔法によるバリアを張っていたということも考えられるが、それにしても彼女をただの人間と判断するのは難しかった。

「ま、別に人間だろうと人間じゃなかろうと構わんがな。人外に会うのがはじめてというわけでもない」

 人の姿を象りながら人と一線を画する存在というのもこの世には確かにある。
 だから祐漸にとってこの少女が何者であろうと、大きな問題ではなかった。

「とはいえ、どうしたものかな、これは・・・・・・」

 いつまでもここでのんびりしているわけにはいかなかった。
 あれだけ派手に落ちてきたのだ、すぐにでも落下した光の正体を突き止めるための調査隊が帝国軍から送られてくるだろう。それに見付かると厄介なことになる。
 落下のダメージが多少あろうと、雑魚の五十や百程度は物の数ではないが、余計な騒ぎは避けた方が無難だった。特に騒ぎが拡大して目を付けられ、そこから“鷹の爪”のアジトの場所を探られるようなことになっては、雇い主との信頼関係に関わる。この傭兵稼業、信用第一で行かねば立ち行かない。
 というわけでさっさとこの場を離れたいのだが、この少女をどうしたものか。

1.このまま捨てていく
2.とりあえず持っていく
3.まずはヤッておく

「待て。何だ三つ目のは」

 そもそもかわいいのは確かだが女として見るには五つほど年齢が足りない、とそれもどうでもいい。
 冗談はさておき真面目にどうするか。
 現実的には、余計なお荷物は置いて行った方が良いだろう。この少女に対して何か義理立てしなくてはならないことがあるわけでもなく、むしろ己の方が被害者なのだから逆に何かしてもらいたいくらいだ。ならば持っていくかと言って、それはそれで厄介事を抱え込むことは確実だった。この少女、正体が何であれ訳有りなのは間違いない。
 しばらく逡巡して、まずは起こしてみようと思い立って声をかけてみることにした。
 すると、まるでそれを予期していたようなタイミングで少女がムクリと上体を起こした。
 寝惚け眼の少女と祐漸の目が合う。
 それから数秒の間が空いて――。

「おふぁようごじゃいましゅ・・・・・・」

 少女の方から呂律の回っていない挨拶があった。

「おはよう。と言っても、あまりちゃんと起きてるようにも見えないが」
「ん〜・・・・・・・・・・・・・・・おきてますよ?」

 返事までしばらく時間がかかる。どう見ても寝惚けている。

「ぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜と・・・・・・なんですか?」
「いや、何も言ってないが」

 そう言いながら祐漸は少女の様子を改めて観察する。
 外傷は見当たらない。あれだけ派手に落ちて、祐漸でさえ小さな擦り傷は多くできているというのに、彼女の身には傷一つなかった。やはりあの光が少女の身体を守っていたのは間違いないようだ。
 少女はと言えば、右を見て、左を見て、右に首を捻ってから左に捻ろうとして思い留まり、上を向いてからまた右に首を捻って、結局改めて左に首を捻った。どう見ても挙動不審だった。

「・・・・・・何をしている?」
「はぇ・・・・・・? ・・・・・・はい・・・・・・えーと・・・・・・・・・・・・あ、はい、わたしです、はい」
「おい?」
「いえ、うん、そう、わたし・・・・・・だね。それで・・・・・・わたしは、何してる?」
「いや、俺が聞いてるんだが」
「あれ? そっか〜・・・・・・うん、じゃあ、わたしは、わたしが何をしているかを考えている、を、してる」
「・・・・・・・・・」

 頭が痛くなってきた。
 もしかするとこの少女は頭が弱いのかもしれない。ならば余計なことはせずにこのまま立ち去るのが一番良い気がした。
 何かを悩んでいる少女を置き去りにして、そっと立ち去ろうとしたのだが、またしてもそのタイミングを読んでいたかのように少女が声を上げる。

「あ! わかった、わかりました」

 歩き出そうとした出鼻を挫かれた形になり、それでも強行してその場を去る気にもなれず、祐漸はその場に留まって聞き返した。

「何がわかったって?」
「わたしは、わたしのことがまったくわからない、ということがわかりました!」
「・・・・・・・・・」

 やはり立ち去るべきだった、と祐漸はこの男にしては珍しく自分の取った選択を後悔した。
 しかし現実において、一つ前の選択肢に戻る、などという道は存在しないのだから、こうなってしまった以上とことん付き合うしかない。
 少女の言葉は、内容は未だに意味のないものばかりだが、喋り方の方は段々と明瞭になってきているため、このままいけばまともな意志の疎通もできるだろうと期待して話を進める。

「おまえ、今の自分の状況わかってるか?」
「ううん、わかんない。・・・・・・・・・と、思う?」

 いちいち疑問系になる。頭を打って思考回路に異常をきたしているのだろうか。

「空から降ってきたんだよ、おまえ。ご丁寧に人のことを巻き込んでここまで落ちてきた」
「・・・・・・空? ・・・・・・上・・・?」
「そう、あそこだ」

 祐漸は頭上の穴を指差す。目を凝らせばその先にある空まで見ることができた。
 少女はしばらくその小さな空を見たままで固まっていた。

「ああっ!」

 ポンッと手を打って、また少女が声を張り上げる。

「今度こそ何かわかったか?」
「ううん、わかんない」

 ほんの一瞬、あまり女には向けない類の黒い感情が湧き上がったが、横へ追いやる。

「あのね、名前」
「名前?」
「そう、わたしの名前。天條かなた」
「自分の名前くらいはわかってるってことか」
「ううん、今思い付いたの。頭に浮かんだ言葉から響きの良さそうなの選んでね」
「・・・・・・・・・」

 そろそろ、これをこのまま捨てて行っても誰にも文句を言われないような気がしてきた。



















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あとがき
 いきなりライバル対決か、と見せかけて寸止め。まだまだストーリー序盤ですから、派手な戦闘シーンはもっと後になってからである。今回はこの物語全体における最重要人物、メインヒロインにしてもう一人の主人公、天條かなたの登場の回だ。物語開始の王道、ボーイ・ミーツ・ガールとなったわけだがこの二人、どちらも普通じゃない。そんな主役コンビがこれから騒がしく物語は盛り上げていくことであろう。

 かなたは旧シリーズで言えばさやかと楓を合わせたような位置付けだが、キャラの性格的なモチーフとなっているのはまた別の作品のとあるキャラである。だがいずれにせよ、普段はぽけぽけしているがやる時はやる人、というコンセプトを持ったヒロインという辺り、過去シリーズのさやかとそう違いはない。ただ大きく違うのは、さやかは話の中心から一歩引いた傍観者的立場にいることが多かったのに対し、かなたは話のど真ん中にいてがんがん物語を引っ張っていくタイプになる。 性格上、どうしても行動が受け身になりやすい祐漸に代わって話を進める行動力がほしいので、登場からキャラの性格までインパクトが求められるヒロインだ。