こだわりの展示室



氷裂地撫子文
   これが最初に手に入れた氷裂地紋の猪口。
染付の収集を始めたばかりの頃、近隣の骨董屋さんを巡り歩いていた時分である。

その店は染付の品が結構置いてあって、今思えば後期の猪口ばかりであったが、しばしば購入していた。

あるとき店主が「良いものがあるんだよ、ちょっとまって」と言って店の奥から取り出してきた。

見て 「ええっ!」と思ってしまった。
ホツはあるし、呉須は流れているし、なんじゃこりゃーである。

今なら、
「べた底の薄手で磁胎も白くて中期の上手猪口の、出来の悪いの」と判断できるが、当時は分からなかった。


さすがにプロの目だったのだ。

店主は「Hさん、猪口集めてるんならこれ位の持たなきゃだめだよ」、自信満々である。

中期といわれるべた底は初めてだったし、そんなもんかな、と首をかしげながらも買ってきた。
後期の完品ぐらいは払ったような気がする。

当時まだ、手持ちの染付も少なかったので、サイドボードに並べて飾っていた。
毎日眺めてしばらくするうちに、呉須の色が明らかに他のものと違い綺麗な色をしている、磁胎も白い。
これで、滲みがなくて完品なら さぞ美しいだろうなーと思うようになってきた。

よし!完品を手に入れよう!・・・・・こだわりの始まりである。



氷裂地菊花文
そして出会ったのがこの猪口。
ちょっと時代は下がるのであろう、磁胎、作りともにやや落ちる。

それと、花が違う。
これは菊花文、最初のは撫子文と称されるもの。
並べて比較すると、花の配置も違う。

前者のほうは、配置についても意匠としての配慮が見られ、格調がある。「いやーぁ、これはちがうなー」、これは私の探しているものじゃない。
人違いだったけど、私のところに来た以上、大事にするから安心しなさい、と言い聞かせている。

そんなわけで、花文にも注目するようになってしまった。


その次に出会ったのが、芭蕉文の氷裂地の猪口。


この猪口は、磁胎と呉須の発色が綺麗で、私のイメージの氷裂地文であったので、購入したものである。

この感じなんだけどねー、撫子文じゃないんだよねー。

芭蕉の描き方がやや雑なように思われるので、少し下がるのかね。

器形的にもやや浅めなのも特徴的である。
薄手で胴ぶくれのこの形は、この時期の上手猪口らしい。

氷裂地窓抜芭蕉文













氷裂地窓抜竹文


この猪口は、大変大振りで、意匠的にも作業的にもしっかりしたもので貫禄に魅了されて、手に入れたものである。

大変気に入っているのではあるが、本来私の探している「氷裂地撫子文」はいまだ見つからない。

早く出てきてもらわないと、決まりがつかなくて困る。
いろいろ手が出てしまう。


花文もそうだ、どうしても花文にも目が行ってしまうので、下に掲載したように、系統的に類似するものも集まってしまう。





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氷裂地文   第2弾

氷裂地コスモス文

当初の記事からもう数年経ってしまったが、それなりに こだわりは続いているのです。

この猪口は薄手の大振りで、べた底、裏銘は渦福があります。
時期的には上の窓絵のものと同時期で中期の上手と言えます。

花文が特徴的で「コスモス文」と書かれてありました。
たしかに、撫子文とも菊花文とも違う第3の形ではあります。
目くじらたてて検証するほどのことでもないので、コスモス文で表記することにしました。





氷裂地撫子文   bQ
ついに氷裂地撫子文に辿りついた。
小振りで薄手のべた底、銘無し、呉須の色も綺麗。

やっと出会えたか!と思ったのですが、ここまで こだわって来ると  そうそう安易に納得は出来ない。

少し小さいかなとか、撫子の絵がやや雑かなとか、注文が煩いのだ。
  「まだ満点には届かない」
我が儘オヤジにも困ったもので、そう結論を出した途端、可愛さ半分に なってしまった。
・・・・・・でもまだ半分あるから、大丈夫だよチョコ君!

   ということで、もうしばらく こだわりは続きそうである。
                                                                              2006/7/13


以下は、「類似の花文」 後期のものだけど、結構面白いものがある。



発色は悪いが武骨さが良い。
五客組



お気に入りの煎茶碗五客