輸出伊万里 芙蓉手花鳥文兜形大皿
元禄年 : 径40.1cm  高9.0cm

明けましておめでとうございます。

当コレクションも終結に向けての段階に至りましたが、古伊万里の歴史を辿るというコンセプトにおいて、
中世ヨーロッパの王侯貴族に好まれて盛んに輸出された古伊万里の視点が欠けていることに
遅まきながら気付きました。

中国の遷界令(1661年〜)の時代に、輸出が出来なくなった景徳鎮の磁器に代わって、
輸出された伊万里製品は当初、景徳鎮の意匠である染付の芙蓉手が主なものでした。
それはオランダ東インド会社が買い付けの際に見本として景徳鎮のお皿が提示されたからです。
肥前の陶工は注文に示された見本を忠実に写したためと考えられています。
その後、次第に日本独自の意匠の作品も注目されるようになりました。特に柿右衛門窯の作品は
大変な人気を博し、現在でも各地の美術館や中世の宮殿の装飾品として数多くの作品が残っております。
「海を渡った古伊万里」や「パリに咲いた古伊万里の華」等の書籍掲載の製品を眺めると、
当コレクション所蔵の柿右衛門手の作品のなかにも同系品が数点あることが分かりました。
とは言え、輸出伊万里の代表的な芙蓉手兜形の大皿等がありませんでしたので注目して手に入れました
今月のお皿がその第一号です。

本品は景徳鎮意匠の見込に花鳥文を描いた古伊万里芙蓉手の代表的作品であります。
見事な絵付けと、これ以上は望めないともいえる呉須の発色で、抜群の焼き上がりとなっています。
裏白と呼ばれる無地の裏面が殆どの中にあって、「角福」の在銘が伊万里の心意気を示しております。

2020年 元旦


  「参  考」
ヨーロッパで確認されている伊万里作品の同系品 (当コレクション所蔵)







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