染付  唐獅子牡丹図大皿
後期: 径47.5cm  高7.0cm

尺6寸の大皿で、縁周りは波文を巡らせ、見込みは唐獅子に牡丹を描く、
いわゆる唐獅子牡丹である。この画題は江戸後期の作に数多く見られます。
本品はその中でも手の良い作と思っております。

古伊万里には唐獅子を描いた作品は、盛期 柿右衛門に代表されるように古くから見られますが、
唐獅子牡丹として描かれるのは後期に集中しております。
これは何故なのか疑問に思えて調べて見ました。

古来より 唐獅子は中国伝来の神威ある守護獣として、 聖域守護の意味を有して来たものである。
しかし、江戸時代後期になると、唐獅子の神威ある王者の守護獣といった性格はうすれてゆき、
ひたすらに怒りたける 勇壮なる野獣性の象徴に転じていった。
ことに浮世絵の発達にともなう刺青の流行につれて、鳶(とび)の者、火消、俠客らは、
唐獅子牡丹の文様をからだに刻みこむことがあった。 (平凡社 世界大百科事典 抄)

こうした風俗から、勇猛果敢さの象徴として認知されたことによって、
流行の縁起物として後期作品に描かれるようになったものと思われる。

したがって、盛期作品の唐獅子と後期作品の唐獅子とは意味合いが異なり、
描き方も異なっていることに納得できるのである。

裏を見ると古作の兜形を意識した造形で、裏絵も良く見ると梅花を付けた梅枝で三方に配している。

2018.5.1
 
   




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